ザ・シネマをご覧の皆様

来る6月!ザ・シネマでトークイベントを開催いたします!!



                       その名も

               『全身映画人・古澤利夫の映画人100人斬り

古澤さんポートレイト.jpg

お迎えするのは元20世紀FOX映画の宣伝部長を務めた伝説の映画人・古澤利夫氏。


「映画の仕事は常に人ありき」。


そう語る氏は、約800本に渡る映画の宣伝/興行/製作を手掛け、現在も映画の未来のために精力的な活動を続ける、まさに「映画人生」を爆走し続けた男。長きに渡る映画人生の中で出会ってきた数々の映画人達。

ルーカス、キャメロン、黒澤明、ハリソンフォード、マコーレカルキン、角川春樹…。


監督、俳優、女優、スタッフ、興行主、裏方などなど、その数厳選して100名の人々との、どんな映画史にも載っていない、エピソードを緊急放談!

今だからコッソリ話す事の出来る裏話に思い出、ハチャメチャなエピソードの数々、そして映画に対する情熱。

今の現役で活躍する全ての映画人、映画好きに聞いてほしい、古澤利夫が駆け抜けた映画人生を公開します。



<キャスト>

メイン:古澤利夫

MC/アシスタント:ザ・シネマ編成部

<詳細>

日時:2017年6月8日(木)18:00 OPEN/19:00 START

場所:LOFT9 Shibuya(渋谷・円山町のトークライブハウス)

これを使う.png


チケットの購入はこちらから


映画を愛する全ての人に聞いてほしい、とっておきのお話しをご用意して6月8日(木)渋谷でお待ちしております!!ぜひのご来場を!!

洋画専門チャンネル ザ・シネマの編成部スタッフが、1人1本、きわめて個人的にオススメしたい作品をご紹介!


sexテープ.png期待は裏切りません!


SEXテープ


5月放送日はこちらでチェック!

© 2014 Columbia Pictures Industries, Inc., LSC Film Corporation and MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.




『バッド・ティーチャー(2011)』の主演キャメロン・ディアスと監督ジェイク・カスダンの二人が再タッグ!セックスレス打破のために自撮りしたエッチな動画を巡る大騒動を、下ネタ満載で描くエロコメディ。


冒頭からキャメロン・ディアスの全裸が出てきて、かなり期待できる!・・・と思いきや、肝心のSEX自撮り撮影するシーンになると、あれ?あれあれあれ?!コトが始まる直前で、アッという間に翌朝の疲れ果てたシーンに切り替わってしまったではありませんか。・・・まだ何もヤッてないのに!そのシーンだけを楽しみに映画観てたのに!!

(とまあ取り乱したものの、気を取り直して)主演のキャメロンは昔に比べて「老けたな~」と感じるものの、やっぱり明るいテンションと最強のスマイルは健在。やっぱりキャミーはかわいい!共演のジェイソン・シーゲルとも相性抜群で、二人の仲睦まじさは見ていて清々しい気さえしてきます。さらに特筆すべきはこの人、ロブ・ロウ!キャミーの上司役で出演しているのですが、この映画、どこか身に覚えのあるストーリーだったんじゃなかろうか(この方もかつて自撮りテープが流出する大失敗を経験している)。出演しているだけでギャグになるという、最高にオイシイ役どころは必見です。

ちなみに、最後の最後で、期待以上のオモシロSEX映像がちゃーんと入っていました(あ~、最後まで観てヨカッタ!)。私ったら恥ずかしげもなく社内のデスクで堂々と試写してしまったけれど、今思うと隣の席の男性上司&先輩的には大分迷惑だったかも。今更ですが、ごめんなさ~い!

それにしても、あんだけ素っ裸なのにキャミーのニップルは一切見えないというのが不思議。撮影・編集マンの苦労を考えると脱帽です。ドタバタエロコメディですが、途中でグッとくる素敵なメッセージが込められていたりして、とにかく期待は裏切りません。5月のプラチナ・シネマでどうぞお楽しみに~!

【キャロル】


コンテイジョン.jpg我々はこんな死に方する可能性ある…オレが言ってんじゃないんだよ国と専門家が言ってんだよ!新型インフルのパンデミックを描く、これは最恐のホラー映画だ!


コンテイジョン


5月放送日はこちらでチェック!

© Warner Bros. Entertainment Inc.




 ソダーバーグによる伝染病パニック映画だが、この“新型インフルのパンデミックで人が死にまくり社会が麻痺して文明社会が一時停止状態におちいる”は、いずれ確実に起きる! 国立感染症研究所のHPには「どの程度可能性があるか、それがいつくるかは、誰にもわからないというのが事実です。しかしながら、インフルエンザ専門家の間では、『いつ来るかはわからないが、いつかは必ず来る』というのが定説」とある。厚労省はHP死亡者「17万人から64万人との試算を公表しているが…ただし! 09年1月2日付け産経新聞は「政府(筆者注:麻生政権)は、死者数の見込みを現在の『最大64万人』から上方修正するなど、より厳しい被害想定を立てる方針を固めた。他の先進諸国に比べ、死者数や感染率の見積もりが低すぎるという指摘が専門家らから強く出されたことが理由となった」と報じている。なお、厚労省は自治体に向けて「埋火葬の円滑な実施に関するガイドライン」を策定しており、その中では「感染が拡大し、全国的に流行した場合には、死亡者の数が火葬場の火葬能力を超える事態が起こり」と想定。「火葬の実施までに長期間を要し、公衆衛生上の問題(筆者注:死体山積み野ざらし腐敗)が生じるおそれが高まった場合には、都道府県は、新型インフルエンザに感染した遺体に十分な消毒等を行った上で墓地に埋葬(筆者注:土葬)することを認めることについても考慮するものとする。その際、近隣に埋葬可能な墓地がない場合には、転用しても支障がないと認められる公共用地等を臨時の公営墓地とし」との指針まで示している。一方、農水省は、我々国民に向けて「新型インフルエンザに備えた家庭用食料品備蓄ガイド」を配布しており、その中では「電気、ガス、水道の供給が停止した場合への備えについて」なんて章まで設けている…ヤバい!これはマジでヤバいぞ!! 全国民、この映画を心して見て、もっと本気で怖がって、各自がXデーに備えるべき!!!

【飯森盛良】


マッキー.jpg体は小さいけれど、「ウザさ」は無限大!愛する彼女を守るべく、ハエの、ハエによる、ハエのための壮大な復讐劇がいま始まる!


マッキー


5月放送日はこちらでチェック!

©M/s. VARAHI CHARANA CHITRAM


 『ザ・フライ』は人間がハエ男になってしまうというお話でしたが、本作は一度人間としては死んで、ハエとなって甦るお話。前代未聞、インド発の「フライ」アクションです。

 お調子者のジャニは、近所に住む美しい慈善活動家ビンドゥに一方的な想いを寄せている。はじめはウザがられていたが、努力の甲斐あって次第に2人の距離は縮まっていく。資産家でありながらヤクザとしても暗躍しているスディープは、それを良く思わず、ジャニを殺害してビンドゥに近づく。ジャニは執念でハエ=「マッキー」となって死から甦り、彼女を守るべく立ち上がる。

 あらすじを読むだけで笑ってしまう、誰も想像しえなかったであろう奇想天外ストーリー。これだけ聞くと正直「B級」のニオイが漂いますが、決して侮ってはなりません!ハエの視点で巨大な人間の世界を飛び回るCGの迫力は思わず息をのむクオリティ。本国で大ヒットしたのがうなずける、一大エンターテインメント作品になっています。

 特筆すべきは脚本。「よく思いつくなあ…!」と思わずうなってしまう細かい描写の連続。小さな体の非力なハエが、最強のヤクザたちに勝てる唯一の武器、それは【ウザさ】!相手が手を動かせない状況で顔にペタッと止まったり、耳元を飛び交って羽音を聴かせたり、文字通りの「ウザッ!!」という攻撃を仕掛けるジャニ。しかもスパ中、会議中、お休み前など、一番ウザいタイミングで襲ってきます。それを「んもううっ!やめんかいっ!」と嫌がる悪役スディープの演技も爆笑必至です。

 一見史上最弱の生き物であるハエが、どんどん筋トレしてたくましくなり、持ち前のウザさでライバルを追い詰めてくストーリーが本当に秀逸!本作を観たら、それ以降ハエを見る目が変わること請け合いです。

 もちろん踊るシーンも歌うシーンもありますよ。インド映画ですもの。「僕はハエ 地獄に落ちろ」と繰り返す、めちゃくちゃな歌詞も必見です。エンディングには目を疑うダンスシーンが登場しますので、最後までしかとご覧ください!

【タラちゃん】

レミゼ.png 失業率が3%を切ってほぼ完全雇用が実現!? 人手不足で大変だ!だから賃金上がるかも。就活も空前の売り手市場だったしね❤︎などと景気のいいことばかりが言われております、春もうららな今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。今回は、放送回数が残すところあと2回となったレミゼについて書きます。

 唐突ですが、下流社会、ワーキングプア、貧困連鎖、子どもの貧困、若者の貧困、貧困女子、貧困女子高生、女子大生風俗嬢、下流老人、老後破産etc。この10年でこうした不景気なワーディング、増えましたねぇ…。

 お仏蘭西語でこれを何と言うか知ってます?何を隠そう「レ・ミゼラブル」と言うんです。

 というわけで、レミゼという作品を格差や貧困問題とからめて話すことは、実は、意外と正攻法なのです。なので、しばらくは格差と貧困についての話にお付き合いください。

 まずですけれど、上記の様々なワーディング、それぞれの発火点となった出どころは、たぶんコレら↓ではなかったしょうか。天下御免の公共放送様は受信料ぶんの良い仕事してますね!さすがです。

2005年9月16日発売 三浦展著『下流社会/新たな階層集団の出現』
2006年7月23日放映 NHKスペシャル「ワーキングプア――働いても働いても豊かになれない」
2014年4月27日放送 NHKスペシャル「調査報告 女性たちの貧困~“新たな連鎖”の衝撃~」
2014年9月28日放送 NHKスペシャル「老人漂流社会 "老後破産"の現実」
2014年12月28日放送 NHKスペシャル「子どもの未来を救え ~貧困の連鎖を断ち切るために~」
2015年10月13日発売 中村淳彦著「女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル」
2016年3月17日発売 三浦展著『下流老人と幸福老人』
2016年8月18日放送 NHKニュース7「特集:子どもの貧困(に出てきた貧困女子高生うららちゃん)」
2017年2月12日放送 NHKスペシャル「見えない“貧困”~未来を奪われる子どもたち~」

 当時見たとき「これは…日本だいじょぶなのか!?」とかなりショックを受けた覚えがあり、事態はそれから年々悪化していったという実感がありますなぁ…。


 「プレカリアート」という言葉もできました。これ「プロレタリアート」+「プレカリアス(【形】「不安定な」)」のカバン語。非正規雇用の人+そういう不安定な雇用形態のせいで失業してしまった人を指すワーディングです。

2009年2月26日発売 雨宮処凛著『プレカリアートの憂鬱』

 この「プレカリアート」が90年代のグローバリゼーションの進行によって世界中で増え、西側各国で中間層が消滅して格差が広がり、ひと握りの狂ったスーパー富裕層が生まれる一方、大多数の国民(=大多数の有権者)が経済的な安心感を得られなくなって、その怒りと不安が今、豊かで自由だったはずの西側資本主義各国で、極端な投票行動の形をとって噴出し、世界を激変させています。これは世界史の大転換点になっちゃうかもしれません。まず悪い方への転換でしょうねえ…。

 イギリスがEUを抜けてトランプさんが大統領になるという、いわゆる“内向き”というやつ。2017年いま現在目の当たりにしているディストピアSF的なこの現実も、すべては格差と貧困のせいです。格差と貧困はマジでヤバい!テロやミサイルに負けず劣らずものすごくヤバい!! なぜなら“内向き”、“孤立主義”、“保護主義”が行き過ぎると、いずれ国家間の戦争へと発展するからです(第二次世界大戦の原因は“保護主義”でしたからね ※注)。どうにか改善しなければもっともっと極端でヤバい事態におちいっていく、こんにちの自由世界にとって喫緊の課題が、この、格差と貧困問題でしょう。


※注)第二次大戦10年前の1929年の世界恐慌の際、欧米列強が保護主義政策をとったことが、大戦の最大の原因です。「ブロック経済」と言いますが、英国£経済圏(=大英帝国圏)の「ポンド・ブロック」、南北アメリカ$経済圏の「ドル・ブロック」、そして金本位制をとり続けていた仏+蘭+ベルギーとその植民地からなる経済圏「金ブロック」と、自分たち仲良しグループだけの経済圏を作り、そこの中だけで保護貿易政策をとって経済を蘇らせようとしたのですけれど、このグループに入れなかったのがご存知、日独伊でした。植民地などの「圏」を持っていない「持たざる国」三国です。この三国が日独伊三国同盟を結んで結束しつつ、「オレたちも独自の経済圏を急ぎ築かねば!」と周辺国に勢力を伸ばそうとしたので軍事的緊張が高まり、各地で衝突を生み、しまいには世界大戦に突入しちゃって8000万人もの死者を出したのでした。トランプさんが「TPPいち抜けた!」と言った時、引き留めようと安倍さんが「自由貿易こそが世界の平和と繁栄に不可欠」と言ったのは、こうした歴史を踏まえているのですけど、はたしてこれからのトランプ時代の世界はどうなっていくのやら…。


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 で、本題レミゼの話。『レ・ミゼラブル』という映画は、もとがミュージカルであることは皆さんご承知の通り。さらに大もとはヴィクトル・ユーゴーの大河小説だってこともご存知の通り。で、その原作レミゼのテーマこそ、何を隠そう実は、格差と貧困なのです!「レ・ミゼラブル」とは「悲惨な人々」という意味なのですから、もう、当然それがテーマに決まっています。

 映画版(といってもたくさんあるので、ここではウチで放送している2012年のトム・フーパー版)も元のミュージカルも、格差と貧困をテーマにしているようには、正直それほど見えません。まず、原作は岩波文庫版で全4冊、新潮文庫版で全5冊というボリューム。ミュージカル版も映画版も2時間半を優に超す長尺ではありますけれども、その尺でこの原作小説4ないし5巻に書いてあること全てを再現するなんて、どだい無理な話。どうしても抄訳版というかダイジェスト的なものにならざるをえません。プロットを大づかみに追うだけで時間いっぱいで、一つ一つの挿話にまで言及している尺がない。これは長編小説の映画化の宿命です。それで、格差と貧困というテーマがかなり省略されちゃってる。

 もう一つ、ミュージカル化された時代のニーズもあったかもしれない。映画の元になったミュージカル版は1985年にロンドンで初演されました。鉄の女サッチャー流の新自由主義「サッチャリズム」のせいで失業率が上がり賃金は下がっていた時代ではありますが(日本はこれから逆に失業率が下がりきったんで賃金が上がるそうな。だといいけど…)、80年代は今よりずっと浮かれ気分の時代でしたので(なにしろそこにテロと難民問題までは絡んできませんでしたし、まだリベラリズムも健在でしたし)、格差と貧困問題がこんにちほどアクチュアルな時事テーマではなかったということもあったのかもしれません。そこ膨らませてもあんまし共感する人いないよ、そんな時代気分じゃないし、あんたネクラね、と。ネアカがウケてた時代だったんです。

 というわけで、格差と貧困問題をそこまで掘り下げているようには見えないミュージカル/映画版ですけど、原作小説はタイトル通りそれこそが最大のテーマとして、長大な全編を縦串として縦貫しているのです。

 たとえば主人公のジャン・ヴァルジャン。ひもじくてパン1斤を盗んだ罪により19年間も服役させられた、というところから話は始まりますが、映画版ですと「パンを一つ盗んだだけた。妹の子が飢え死にしそうだった」と歌詞で一言説明されるだけなので、格差と貧困というテーマが深刻には浮かび上がってきづらい。しかし原作だと、読んでる方までしんどくなるくらいの赤貧描写でジャン・ヴァルジャンの前半生が綴られていきます。しかもこういう話はきょうび日本でも大いにありえそうなので、読んでいて余計にしんどい…。

 以下、著作権が切れている豊島与志雄の翻訳版で、原作から直接引用します。

ジャンバルジャン.jpg彼はごく早くに両親を失った。母は産褥熱の手当てがゆき届かなかったために死に、父は彼と同じく枝切り職であったが木から落ちて死んだ。ジャン・ヴァルジャンに残ったものは、七人の男女の子供をかかえ寡婦になっているずっと年上の姉だけだった。その姉がジャン・ヴァルジャンを育てたのであって、夫のある間は若い弟の彼を自分の家に引き取って養っていた。そのうちに夫は死んだ。七人の子供のうち一番上が八歳で、一番下は一歳であった。ジャン・ヴァルジャンの方は二十五歳になったところだった。彼はその家の父の代わりになり、こんどは彼の方で自分を育ててくれた姉を養った。それはあたかも義務のようにただ単純にそうなったので、どちらかといえばジャン・ヴァルジャンの方ではあまりおもしろくもなかった。そのようにして彼の青年時代は、骨は折れるが金はあまりはいらない労働のうちに費やされた。彼がその地方で「美しい女友だち」などを持ってるのを見かけた者はかつてなかった。彼は恋をするなどのひまを持たなかった。」

「彼は樹木の枝おろしの時期には日に二十四スー得ることができた。それからまた、刈り入れ人や、人夫や、農場の牛飼い小僧や、耕作人などとして、雇われていった。彼はできるだけのことは何でもやった。姉も彼について働いたが、七人の幼児をかかえてはどうにも仕方がなかった。それはしだいに貧困に包まれて衰えてゆく悲惨な一群であった。そのうちあるきびしい冬がやってきた。ジャンは仕事がなかった。一家にはパンがなかった。一片のパンもなかったのである、文字どおりに。それに七人の子供。」


 こうしてパンを盗まざるをえないところにまで追い詰められたジャン・ヴァルジャン。初犯です。ビビりながらやってるんで腰が引けてます。パン屋のおやじに追っかけられてパンを投げ捨て逃げるもとっ捕まり、懲役まずは5年…(後に脱獄未遂で合計19年に)。徒刑囚として首枷をはめられます。


「(前略)頭のうしろで鉄の首輪のねじが金槌で荒々しく打ち付けられる時、彼は泣いた。涙に喉がつまって声も出なかった。ただ時々かろうじて言うことができた、「私はファヴロールの枝切り人です。」それからすすり泣きしながら、右手をあげて、それを七度にしだいにまた下げた、ちょうど高さの違っている七つの頭を順次になでてるようであった。彼が何かをなしたこと、そしてそれも七人の小さな子供に着物を着せ食を与えるためになしたことが、その身振りによって見る人にうなずかれた。

 彼はツーロン港へ送られた。(中略)過去の生涯はいっさい消え失せ、名前さえも無くなった。彼はもはやジャン・ヴァルジャンでさえもなかった。彼は二四六〇一号であった。姉はどうなったか?七人の子供はどうなったか?だれがそんなことにかまっていようぞ。若い一本の樹木が根本から切り倒される時、その一つかみの木の葉はどうなるだろうか。


 それはいつも同じことである。それらのあわれな人々、神の子なる人々は、以来助ける人もなく、導く人もなく、隠れるに場所もなく、ただ風のまにまに散らばった、おそらく各自に別々に。そしてしだいに、孤独な運命の人々をのみ去るあの冷たい霧の中に、人類の暗澹たる進行のうちに多くの不幸な人々が相次いで消え失せるあの悲惨な暗黒のうちに、沈み込んでいった。彼らはその土地を去った。彼らの住んでいた村の鐘楼も彼らを忘れた。彼らのいた田畑も彼らを忘れた。ジャン・ヴァルジャンさえも獄裏の数年の後には彼らを忘れた。」


 読んでてしんどい…。「ただ風のまにまに散らばった、おそらく各自に別々に」って…生々しくてコワっ!一家離散ですよ。今の日本でも十分ありえそうってのがますますイヤですなぁ…。1985年(ミュージカル化された年)とか少し前であれば、このくだりを読んでもそこまで生々しくは感じなかったと思うんですが、いま読むとイヤ〜にリアルなんです。ま、完全雇用が達成され賃金が上がるんだったら、これからはそんなこともなくなるのかもしれませんが(ホントかよ!?)。


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 続いてファンティーヌ。アン・ハサウェイが「♪夢やぶれて」を大熱唱しアカデミー助演女優賞に輝きました。あそこは確かに泣けるほど哀れでアカデミー賞も納得なんですが、原作を読むと、もっとずっとしんどい転落人生だったことがわかります。もう、まんまこんにちの日本の“貧困女子”や“女子大生風俗嬢”とおんなじなんです。


 まず、映画を見ていても、男に逃げられシングルマザーになって風俗に身を沈めた、という転落過程の概略はわかりますが、これがディティールまで見ていくと予想以上にヒドい話でして。ファンティーヌは女子4人と男子学生4人でグループ交際をしてたんですが、グループデートに行ったある日、レストランで男子たちが突如いなくなり、待てど暮らせど戻ってこない。かなり経ってからウエイターが女子チームのもとに男子チームからのメモを届けに来て、


「愛する方々よ!
 われわれに両親のあることは御承知であろう。両親、貴女たちはそれがいかなるものであるかよく御存じあるまい。幼稚な正直な民法では、それを父および母と称している。ところで、それらの両親は悲嘆にくれ、それらの老人はわれわれに哀願し、それらの善良なる男女はわれわれを放蕩息子と呼び、われわれの帰国を希ねがい、われわれのために犢(こうし)を殺してごちそうをしようと言っている。われわれは徳義心深きゆえ、彼らのことばに従うことにした。貴女たちがこれを読まるる頃には、五頭の勢いよき馬はわれわれを父母のもとへ運んでいるであろう。(中略)すべて世間の人のごとくに、われわれの存在もまた祖国に必要である。われわれを尊重せられよ。われわれはおのれを犠牲にするのである。急いでわれわれのことを泣き、早くわれわれの代わりの男を求められよ。もしこの手紙が貴女たちの胸をはり裂けさせるならば、またこの手紙をも裂かれよ。さらば。
 およそ二カ年の間、われわれは貴女たちを幸福ならしめた。それについてわれわれに恨みをいだきたもうなかれ。
追白、食事の払いは済んでいる。」


 とそのメモには書いてあったのです。つまりこれ、女子チームを置き去りにして永遠に姿をくらまし連絡も断つという、男子チームによる究極の“ヤリ逃げ”なのです。うん、クズ野郎だわ!まあ勝手なことを言いやがります。「両親、貴女たちはそれがいかなるものであるかよく御存じあるまい」とあるのはファンティーヌたちが孤児だからで、だから「両親」という言葉の意味もよく知らんだろ、と言っていて、加えて「民法では、それを父および母と称している」なんてわざとバカにして言うあたり、良いとこのボンボンが孤児を見下しているのは明らか。二度と会うつもりのないヤリ逃げ相手への一方的な別れの手紙とあって、そうしたゲスな差別意識を隠そうともしていません。


 かくしてファンティーヌはデキちゃった子供コゼットとたった2人きり経済援助もなく捨てられ(相手のクズ男は子供が生まれたことちゃんと知ってます)、ファンティーヌは食うために働かなきゃならず面倒見きれないのでコゼットを断腸の思いでテナルディエ外道夫婦に預け…という展開になってしまったのです。

 今の日本でも、たまに外道な保育所に預けられた子供が虐待されたり死んじゃったりする痛ましいニュースが報じられますが、いやでもそれとダブります。園児を自治体への申告数より多く受け入れて一人あたりの給食を減らし利ザヤを稼いでいた外道すぎる保育園なんてのもありましたが、テナルディエにかぎらず、子供を引き取れば行政から助成金がもらえるということで、カネ目当てで子供を預かり、面倒なんかハナっから見る気なし、メシも与えず完全ネグレクトのド外道という輩は、19世紀のフランスにもいたそうです。

ファンティーヌ.jpg ちなみに、このファンティーヌの元カレにしてコゼットの実の父ですが、


「(そいつ)のことを語る機会はもう再びないだろう。で、ただちょっと、ここに言っておこう。二十年後ルイ・フィリップ王の世に、彼は地方の有力で富裕な堂々たる代言人となっており、また賢い選挙人、いたって厳格な陪審員となっていた。けれど相変わらず道楽者であった。」


 というのが、そいつの語られざる後半生になります。ファンティーヌはとっくに亡くなりコゼットがアマンダ・セイフライドに美しく成長したくらいの時期に、このクズは、田舎の名士になっていたと。死んでほしいですね!


 余談ながら、虐待里親テナルディエ外道夫婦の実娘はご存知エポニーヌですが、現代日本人が聞いたところで変だとも何とも思いませんけど、これ、今で言うところの“キラキラネーム”みたいなんです。19世紀フランスにもあったんですね!通俗小説とかのキャラにはありがちで(今だと2次元か)、普通は3次元のリアルな人間にはまず付けないような、なかなか奇抜なネーミングセンスらしいです。そうした珍妙な名前を貧しい人たちは我が子につけがち、ということを、原作者ユーゴーはいささか批判的に書いていますが、これもまた、格差と貧困の副産物と言ってもいいでしょう。

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 それ以外も、原作ではほとんど全ての登場人物が、貧困階級の出身か、次第に貧困に堕ちていくか、一度は貧困を経験したことがあります。マリユスは金持ちの祖父の家を飛び出してから貧乏学生として苦学して身を立てますし、ジャヴェールは親が服役囚で刑務所生まれというコンプレックスの裏返しで犯罪者を異常に憎悪しすぎていて更生すら許さない。あと、原作には激レアお宝本のコレクター爺さんというのも出てくるんですが、この人はその歳まで世間様に迷惑をかけることもなく真っ当に生きてきたのに、だんだんと貧乏になっていって、食うにも困るようになり、人生のささやかな贅沢であったコレクションの本を切り売りして、とうとうそれさえ全て売り尽くし、最晩年に何もかも失って、ついに革命に身を投じる、男版「♪夢やぶれて」みたいな老後破産の下流老人で、実に泣かせるキャラなのです。

 原作では、ヴィクトル・ユーゴーは序文を記しております。ちょっと難しいんですが、


 法律と風習とによって、ある永劫の社会的処罰が存在し、かくして人為的に地獄を文明のさなかにこしらえ、聖なる運命を世間的因果によって紛糾せしむる間は、すなわち、下層階級による男の失墜、飢餓による女の堕落、暗黒による子供の萎縮、それら時代の三つの問題が解決せられない間は、すなわち、ある方面において、社会的窒息が可能である間は、すなわち、言葉を換えて言えば、そしてなおいっそう広い見地よりすれば、地上に無知と悲惨とがある間は、本書のごとき性質の書物も、おそらく無益ではないであろう。
  一八六二年一月一日
オートヴィル・ハウスにおいて
ヴィクトル・ユーゴー


 というのが全文。ここまで難しいのは全編でもこの序文だけで物語本編は先に引用したように全然わかりやすく読みやすいので、本編まで難しいのか!?と尻込みしないでいただきたいのですが、とにかくこの序文は意味不明です。


 ワタクシ流に噛み砕くと、


 前科者の社会復帰ということを法律や風習がまるっきし考慮に入れておらず、一度でも罪を犯したら人生そこで終了。または、下流社会、貧困女子、子どもの貧困といった問題が解決されない。つまり「社会的窒息」ということが起こりうる。言い換えれば「地上に無知と悲惨とがある間は、本書のごとき性質の書物も、おそらく無益ではないであろう。」


 というようなことを言っているのだろうと思います。今の時代が、ユーゴーの生きた1862年と同じように、格差と貧困に苦しんでいるのだとしたら、この小説は今ふたたび、存在意義を取り戻し、読む価値がある、そして考える必要のあるものとして蘇った、と言えるのではないでしょうか。


コゼット.jpg よく「不朽の名作」などと軽々しく言います。不朽、「朽ちない」ということですけど、それってたいていの場合ちょっと大げさに誉めすぎだとワタクシ常々思っておりまして。普通は朽ちますって!映画でも小説でもマンガでも、物語ってものには賞味期限も消費期限も存在しますから、某ファストフードの腐らないハンバーガーじゃあるまいし、朽ちるのが自然、オワコンになるのが自然だと思うのです。


 ただ、このレミゼに限ってだけは、こんにちの格差社会が行きすぎてしまった結果、1862年に発表されたこのフランス文学で取り上げられているテーマが、ぐるっと一周回って再びタイムリーになってしまったがために、155年も前の小説であるにもかかわらず、ものすごく旬なのです。155年目の今日、小説『レ・ミゼラブル』を読むと、旬感・不朽感がハンパありません。


 映画版は、先にも書きましたが、格差と貧困というこの旬なテーマをそこまで掘り下げてませんので、見ていて「旬だ」、「タイムリーだ」ということは感じづらいのですが、原作小説の方はヤバいです!


 原作は文庫で4〜5巻ととにかくボリューム満点で、しかもラノベみたいに改行がやたらと打ってあって白場が多いというものではなく、文字ビッチリ真っ黒で4〜5巻という純文学ですから、けっこう手ごわい大物。しかし、旬感・タイムリー感を味わうためには、映画版だけでなくぜひとも、この原作小説にもチャレンジなされることを、本稿では激しくお薦めしたいのであります。


 副読本としてご推薦したい、大いに助けとなる本も1冊あるんです。鹿島茂著『「レ・ミゼラブル」百六景』(文春文庫、定価:本体819円+税)という本がそれ。映画版が公開されるタイミングで文庫化されたんですが、原作小説を読み解く上で、これは超役立つサイドブックです!見開きの左ページにはレミゼ原作本の19世紀の木版挿絵を掲載し、対向右ページには仏文学者の鹿島茂先生の文章が掲載されている。文章の前半半分ぐらいはその挿絵のシーンのざっくりダイジェストで、残り後半半分でフランスの歴史やその当時の世相などが解説されています。たとえばジャン・ヴァルジャンが盗んだパンは当時の労働者の日給と比較して幾らぐらいしたのか!?とか、ジャン・ヴァルジャンは姉と7人の甥・姪を養っていましたが、それが当時の肉体労働者の日当でまかなえるのか!?といったことが解説されていて、当時のフランス社会への理解が大いに進みます。原作にチャレンジされるのであれば座右にマストの必読本です。

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 ここまで本稿では、映画そっちのけで原作小説を激オシしてきましたが、では映画版に独自の価値はないのか?単なる原作のダイジェスト版にすぎないのか?と言えば、言うまでもなく、もちろんそんなことはありませんよ、というフォローを、最後に入れさせてください。

 まず、映画版には歌がありますよね。音楽の感動は、どれだけ原作小説を読んだところで1デシベルたりとも得られません。当然です。原作には「♪夢やぶれて」も「♪民衆の歌」もありゃしません。


 次に、映画版には映像があります。これも当然ですけど、19世紀前半のフランスの、街はどうなっていたのか?暮らしぶりはどうだったのか?登場人物たちはどんな服を着ていたのか?どんな部屋に住んでいたのか?それらを小説を読んで想像しろと言われたって無理です。それが、映画界最高峰のスタッフ、何度もアカデミー賞にノミネートされた美術のイヴ・スチュワートや衣装のパコ・デルガドらの一流の仕事によって目視できるのです。逆に、先に映画を見て映像を脳に焼き付けておけば、原作を読みながら服や街やインテリアを思い浮かべることは可能になります。


 原作小説に当時の木版挿絵が載っていれば、服装や街の感じを19世紀の雰囲気ごと味わうことはできますけど、映画のように迫力まで感じることはできません。徒刑囚ジャン・ヴァルジャンが乾ドックで造船のような過酷な肉体労働に従事している冒頭の圧巻のシーンや、クライマックスの革命に立ち上がる群衆の感動的シーンなどは、木版挿絵でその迫力まで表現することは不可能です(ドックのシーンは原作にそもそも無いし)。さらに、出版元によっては挿絵を1カットも載せてないところもありますし。


 あと、2時間半オーバーとはいえ、原作小説を読破するのと比べれば、そりゃはるかにお手軽に物語に接することができるというものです。ハショられてるとはいえ最低限あらすじは拾うことができます。世界文学の最高峰『レ・ミゼラブル』がどんなお話か、最低限知っているか知らないか。2時間半の映画版を見るだけで「最低限知っている人」の方に入れちゃうんですから、これも大きなメリットでしょう。


 と、映画にも独自の価値はありますが、それでも、やはり原作じゃないと得られないメッセージがあるということも確かなので、映画版のウチでの放送もあとわずかで終了します。その後でお時間にもし余裕がおありなら、ぜひ、映画を見た後で原作にもチャレンジしてみては?というご提案でした。

(編成部 飯森盛良)

© 2012 Universal Pictures. All Rights Reserved.


【放送回ラスト2回】
04月10日(月) 15:15 - 18:15
04月22日(土) 深夜 03:00 - 深夜 06:00

ジャパニメーションを世界中に知らしめた名作映画アニメ『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』がハリウッドで実写映画化!『ゴースト・イン・ザ・シェル』として4月7日(金)より全国公開されます。公開に先駆け、豪華キャスト&監督が緊急来日!ザ・シネマでこの模様を完全レポートでお届けします!

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▼登壇ゲスト


少佐役:スカーレット・ヨハンソン
荒巻大輔役:ビートたけし
バトー役:ピルー・アスベック
オウレイ博士(オリジナルキャラ)役:ジュリエット・ビノシュ

監督:ルパート・サンダース

日時:2017年3月16日(木)
場所:ザ・リッツカールトン東京2F グランドボールルーム
司会:伊藤さとり(以下司会)


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作品の世界観を表現した記者会見会場。BGMと共にルパート・サンダース監督、ジュリエット・ビノシュ、ピルー・アスベック、ビートたけし、スカーレット・ヨハンソンの順で登壇。

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司会:本当に日本でも、ファンが多い『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』がついに、待望のハリウッド実写化ということで、記者の皆さんもすごく楽しみにされています。早速皆さんから一言ずつご挨拶をいただきたいと思います。
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スカーレット・ヨハンソン:
皆さんこんにちは。東京に来ることができ、とても嬉しく思います。この作品を、皆さんにご紹介できることを大変嬉しく思っています。非常に長い旅となった体験ではありますが、この作品をお披露目する初めての都市が東京であるということがとてもふさわしいと思いますし、とても興奮しています。本日はありがとうございます。

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ビートたけし:
あ、どうもご苦労様でございました。やっと幸福の科学からも出られて、今度は統一教会に入ろうかと思ったんですけども、やっぱりこの映画のためには創価学会が一番いいんじゃないかっていう気がしないでもないですけども(会場で笑いが起こる)、初めて本格的なハリウッドのコンピューターを駆使した、すごい大きなバジェッドの映画に出られて、自分にとってもすごいいい経験だし、役者という仕事をやるときに、もう一度どう振る舞うべきかっていうのをスカーレットさんに本当によく教えていただいた。さすがにこの人はプロだと、日本に帰ってきてつくづく思っています。それくらい素晴らしい映画ができたと思っています。

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ピルー・アスベック:
日本は初めてなのですが、本当に大好きになりました。いつもこういうふうに皆さんと接することができるのであれば、もっとこれからも来日したい。夕方に着きまして、神戸ビーフを初めて口にしました。人生最上のお肉で非常においしかったです。また、今日は皆様お越しいただいてありがとうございます。僕らも本当に努力してこの作品を作り上げました。それをやっと皆さんとこういう形で分かち合えることが非常に嬉しく、光栄に思っております。


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ジュリエット・ビノシュ:
皆さんこんにちは。こうして東京、日本に来られてとても嬉しく思っております。『ゴースト・イン・ザ・シェル』というのは、日本発のコンテンツということで、日本にこの映画とともに帰ってこられるということを本当に嬉しいことだと思っています。そして、『ゴースト・イン・ザ・シェル』の素晴らしい世界観の一部に自分がなれたということもとても嬉しいですし、この映画を作り上げた素晴らしいアーティストたちとの体験も本当に楽しかったです。正直、脚本を最初に渡されて読んだときに、まるで暗号書を解読でもしているかのように、まったく理解ができませんでした。そういった意味でも非常に自分にとっては挑戦しがいのあるとても難しい役柄でしたが、素晴らしい映画にできあがっていると思いますので、皆さん是非見て頂きたいと思います。ありがとうございます。






ルパート・サンダース監督:
本当に今回ありがとうございます。今ジュリエットが言ったように、この素晴らしいレガシーの一部になるということは非常に光栄なことです。私が美術学校の学生だった頃に、この『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』には出会い、本当に素晴らしい作品で非常に想像力をかきたてられ「この実写版を作るんだったら、僕が作りたい」とそのときは思ったんですが、スティーヴン・スピルバーグが作るということが分かって、「ああ、僕じゃない」とそのときは諦めたんです。でも色々なことがあり、非常に幸運にも私が作ることになりました。この映画を通して、本当に日本が生んだ素晴らしい文化、そして非常に芸術性豊かな正宗士郎さんのオリジナルな漫画、押井守さん、神山健治さんのアニメーションや作品に、世界の皆さんがこの作品を通して知ることになるということ、私が若いころに触発されたように皆さんもこの『ゴースト・イン・ザ・シェル』を通して色んなものに出会っていただきたい。日本、東京が大好きですし、この作品を生み出したこの日本という国を本当に素晴らしいと思います。

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司会:どうもありがとうございました。私から皆さんに代表質問をさせていただきます。本当に日本が生んだ、そして日本にもファンが非常に多いこの『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、これを実写化するというプロジェクトに実際参加されてみてどういうふうに感じられたのかっていうお話を聞いてみたいと思うのですが、スカーレット・ヨハンソンさんからお願いできますか?
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スカーレット・ヨハンソン:
初めて原作アニメーションを拝見して、この作品をどう実写化していくかが自分の中ではっきり見えていなかったんです。気持ち的に怖気づくといいますか、ひるむといいますか、原作アニメーションがとても詩的で、夢のような世界が描かれていたり、その存在について静的なところがあったりと色々な要素があり、登場するこのキャラクターに対して自分がどう入っていけるのか、というところがありました。ただ、とても興味があって、アニメが自分の頭の中に残り、ルパート監督と長い時間をかけて彼が集めた色々な素材や資料を見て、彼の考えているその世界観が原作に敬意を持ちながら、独自のものを持っていることがわかりました。自分が演じる役どころ、彼女の人生というか彼女のその存在というものについて二人で色々会話をして、自分の中で否定できないようなものになりましたし、この『ゴースト・イン・ザ・シェル』というものが頭から離れないものになったんですね。監督と二人三脚で未知の世界に大きく一歩を踏み出しました。

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監督がとても色々と努力をなさってこれだけ愛されている原作、作品であるということで、私も今回(参加できて)とても光栄に思いますし、とても責任を感じています。この役に自分が息を吹き込むことができ、本当に素晴らしい経験になりました。感情的にも肉体的にも大変な経験でしたけれども、人として学ぶことも多かったですし、また役者として今作から色々学べました。演じた役と一緒に成長を感じることが体験できたのでとても感謝をしています。皆さん作品をご覧になるとお分かりになると思うのですが、この役が遂げている成長を投影して、自分も成長できた作品になっていると思います。ちゃんとした答えになっているか分かりませんけれども、それだけとても大きな意味、体験ができた作品となっています


※ヨハンソン一通り話した後、お茶目に通訳の方を向いて「GOOD、LUCK!」と話す。




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司会:はい。素晴らしかったです。ありがとうございました。通訳さんもさすがでございます。では続きましてビートたけしさんはどういうふうに感じられたのでしょうか。
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ビートたけし:
このアニメは自分の世代のちょっと下の人たちが読んでいたアニメであって、自分はこの作品のオーダーがあったときに、まずアニメ化されたものを見て、漫画を見て、かつてマニアックな人は実写版というのは必ずもともとのコミックとかアニメに必ず負けて文句を言われるというのが定説で、ファンは絶対「違う、違う、こういうのじゃない」というような感じがよくあるんですが、今回は自分の周りにもその世代の子どもたちがいっぱいいて、ちょっと見た限り、昨日ちょっと見たんだけども、やっぱりすごいということで、忠実であって、なおかつ新しいものが入っていて、もしかすると最初にアニメ、コミックの実写版で最初に成功した例ではないかというような意見があって。唯一の失敗作は荒巻じゃないかという噂もあるし(笑)。その辺は言わないようにといってますけども(笑)。それくらい見事な作品だと自分は思っているし、現場でもいかに監督がこの作品にかけているかっていうのもよく分かったし。まあ、全編大きなスクリーンで見ていただければ、いかに迫力があってディテールまでこだわっているかよく分かります。よろしくお願いします。




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司会:ありがとうございます。素晴らしい本当に作品でございました。ではピルー・アスベックさんは今回参加されていかがでしたでしょうか。
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ピルー・アスベック:
日本で生まれた最も素晴らしい物語のひとつに参加することに、もちろん怖い思いはありました。特に演じるキャラクター、バトーは本当に愛されているキャラクターで、ファンの期待も裏切られないという思いもありましたが、この素晴らしいチームに恵まれて、そんな不安も吹き飛びました。本当に参加していて大好きでしたし、すごく楽しめました。それに攻殻機動隊のファンなんです。押井さんのアニメがヨーロッパ、そして世界公開された当時、僕はこの作品に出会いました。色々と話を聞きながら僕が士郎正宗さんの漫画を手に取り、原作のバトーは軍人であり年上なので、僕はもっと歳は若いし、平和主義者だし、ちょっと共通点が見出せなかったんですね。けれども漫画を読みましたら、ビールもピザも大好き、「これだ!」と思いました。ここからキャラクター作りというのができ、もちろん道のりは簡単ではありませんでしたが、ここにいらっしゃるスカーレットさん、ジュリエットさん、そしてたけしさんと、もちろん監督とともに仕事ができたことは大きな喜びでした。


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司会:ありがとうございました。ではジュリエット・ビノシュさんお願いいたします。
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ジュリエット・ビノシュ:
先ほども申し上げましたように、脚本を受け取って一読したときには本当にまったくさっぱりわからなかった。このSFというジャンル自体にもあまり馴染みがないこともありましたし。ただ、自分の息子が映画関係の仕事をしており、特に3Dの特殊技術の関係の仕事をしていて、その息子が原作のアニメーションの大ファンで、私が監督と話し合いを重ねている間、息子が脚本を2回も読んで、色々と逆に説明をしてくれたり、「是非出たほうがいいよ。これは本当に素晴らしい話だから、本当に素晴らしいコンテンツだから」というふうに勧められたことも後押しになった理由のひとつでもありました。本当にとても難しい内容で、独自の言語みたいなもの、暗号にも近いコードみたいなものが存在する話で、自分が演じる役は非常に複雑なキャラクターでした。そういう意味で別に喧嘩したわけではないんですが、監督とかなり熱論を何度も交わしてから役づくりしていたということがあります。撮影自体は、本当にとても刺激的な現場で素晴らしい仲間に恵まれて、共演者やスカーレットが朝から現場に行くと頑張ってトレーニングをしていたり、またルパート監督が目の下にクマを作って昼夜通して働き詰めの中、とても国際色豊かな各国から集まった素晴らしいアーティスト、スタッフたちが一丸となってこの映画に取り組んでいる本当に素晴らしく活気あふれる現場でした。

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私が演じるオウレイ博士というキャラクターというのは非常に多層的なキャラクターで、色々な陰謀が明らかになる悪魔のような企業で働きながら、自分が作り上げた「少佐」という存在に対して、あくまで人間的な部分を保たせようと必死になる役柄で、自分自身の人間性というのにも向き合っていくという非常に複雑でとても演じがいがあったんですね。登場シーンが非常に少ないので、その中で自分のキャラクターというのをしっかり観客に伝えなければいけない。そういう意味でもとても演じがいがある分、とても難しいキャラクターでもありました。普段は滅多に出演しないSFの映画作りの新しい側面というのにも触れて、自分にとってエキサイティングな体験でした。日本と縁があるのか、『GODZILLA ゴジラ』(2014)にも出演しているので、少しそういった世界を体験していましたが本格的なSF映画というのは今回が初めてで、これをきっかけに原作マンガを読み返したりして、とても日本のマンガとかアニメに興味を持つようになりました。


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司会:どうもありがとうございました。さあ、では、監督はいかがだったんでしょうか。
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ルパート・サンダース監督:
本当に映画っていうものは常にプレッシャーがあるものですね。大きいものも小さいものも。本当に多くの人に見られて判断される、非常に気に入っていただけるか、憎まれるのか、何が起きるかわからない。今作の場合、世界中に原作のファンがいますし、カルトクラシックとされているものです。登壇されている人たちに、このプロジェクトに是非とも参加してほしいと私から説得しました。たくさんのファンがいる中で、士郎さんや押井さん、そういうクリエイターたちに対して恥のないような本当にいいものを作らなくてはいけないというプレッシャーがありました。私はそういったプレッシャーの中で仕事することがかなり好きな方で、疲労困憊した中で狂気の中を彷徨っている部分もありましたが、とにかく最高のものを作るんだという気持ちの中で、私の想像力を全開にして、すべてやり尽くすという気持ちでいました。本当に戦いでしたし、まるで戦争のような形でここまで漕ぎつけました。世界中の人たちの心に響くものを作りたいというふうに思いましたし、皆さんが見たことのないような新しい作品、スカーレット・ヨハンソンの出演でさらに特別なものになっていますので、『ゴースト・イン・ザ・シェル』を世界中の人たち、多くの方々に見ていただきたいと思っています。


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司会:どうもありがとうございました。さあ、ではお待たせしました。今日は記者の方がたくさんいらっしゃっておりますので、質疑応答タイムに移ります。
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記者:ビートたけしさんにご質問です。今回出演なさってハリウッド映画と日本映画の違い、どのような点がありましたでしょうか。監督作に取り入れたいような部分があったら教えてください。
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ビートたけし:
自分が監督をやるときは非常に簡単に、ワンテイクが多いんですけども、ハリウッド映画はカメラの台数も、自分は最高で3カメくらいしか使わないけども、5カメも6カメもあって、ただ歩くシーンだけでも日本で役者やってるつもりで、「よーい」、まあ「ローリング」っていうんだけれども、「よーいスタート」で歩いて、監督が「Good.」っていって、良かったのかなと思って、「Good. One more.」そのあとまた「Nice. One more.」。そのあとやると「Very good. One more.」、「Excellent. One more.」、「Genius. One more.」(笑)。結局、歩くシーンだけでも5カメラで5回か6回歩いて、30カットあるってくらいの撮り方をして、その各カメラが各パーツを狙っていたり、全体を狙っていたりして、これはお金がかかるなとつくづく思いました。


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記者:スカーレット・ヨハンソンさんに質問です。この映画を撮ることで、新しい自分を発見した、新しいスキルであり自分的なキャラクター、パーソナリティでありを発見したというふうにおっしゃっておりましたけれども具体的にどの点が、「あ、私こんなところなかったのに。こんな自分があったのか。」というような発見があったのか教えていただけますでしょうか。
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スカーレット・ヨハンソン:
とても個人的な質問ですね。過去5年位の間で興味を持っていることは、自分の仕事に関していろんなことを発見していく中で、自分が何か不快に感じるような状態に自分を置いて、それが肉体的な面である場合もあれば、ちょっと恥ずかしいと思うような気持ちの面であったりと心地よくない状態に長く自分を置いたときに、考えたことや感じたことを大切に感じて生きています。俳優としてそういうものをいい意味で利用していくというところがあるんですが、深く掘り下げていって本能的な部分、なにが芯の部分であるか、特定のキャラクターを演じるときに、そういうものが使えるのではないかと思っています。この役は、その存在が危機に直面しているという状況を5ヶ月間くらい演じ、決して心地いい体験ではありませんでした。それをどう乗り切るか、またそういう体験をして、2週間ほど前に初めて本編を見て、乗り切ることができたと思っています。質問に答えるのが難しいのですが、とても個人的なものでもありますし、多少抽象的なものであると思うんですけれども、今回非常に難しい困難な仕事ではありました。役者としても、人としても成長することができた作品と思っています。


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司会:ありがとうございました。本当に最後の時間になってしまったので、最後の質問になります。
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記者:監督にお伺いしたいのですが、先ほどたけしさんがご指摘になったように、漫画やアニメーションの大ヒット作には厳しい目があります。それを越えるための戦略、そしてこの作品を実写にするための意義、その辺をどのように考えて挑みましたか。
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ルパート・サンダース監督:
この作品は大きなチャレンジでした。アニメーションでは簡単にできることが実写になると非常に難しい。例えばバトーの目。実写にすると滑稽なものになってしまう可能性はあります。そして荒巻の髪型、これも実際に滑稽にならないように実写化するのは難しい。少佐の全裸に見えるようなスーツ。これはちゃんとやらないとやはり映画的にはよくない。色々なことがあるんですが、若い頃に出会ったこの作品に非常に縁を感じ、あらゆるチャレンジを受けて立つという気持ちで挑みましたし、本当にこの中でカットのスタイルですとか、ペースですとか、本当に日本映画を意識しているっていうところがかなりあるんですね。『酔いどれ天使』と『ブレードランナー』が出会うようなそういう世界観。黒澤明さんの作品、西洋のSF映画、そういうようないろんなチャレンジはあっても、題材が本当に偉大、素晴らしいものというふうに思っていたので、単にポップコーンがズボンについたまま映画館を出て、全て忘れるような映画ではなくて、見た後色々考えたり、いろんな話をしたりという、そういう作品にしたかったんです。

今回はスカーレット・ヨハンソンが本当に素敵な演技を見せてくれました。非常に複雑な役柄で、「誰なのか」「なんなのか」というアイデンティティの問題や技術革新のテクノロジーが発達した世界で、何が人間たるものかという比喩になっていると思います。士郎さんが発表した当時はインターネット、携帯電話のないそういう時代でしたから、このテーマというのは非常に今日的なテーマであって、多くの観客にこの映画を見ていただいて、テーマやアイデアについて士郎さんがパイオニアであったこの作品を見ていただきたいと思います。

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司会:どうもありがとうございました。たくさん質問、皆さん手を挙げてくださっておりますけども、お時間の都合で申し訳ありませんでした。ではこのあとフォトセッションに移りますので、よろしくお願いします。
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ジュリエット・ビノシュが今日はルパート・サンダース監督のお誕生日!といって称え、会場に拍手が起こる。ゲストが後段しフォトセッション後、会見終了となった。

<終了>

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GINTSlogos.jpg原題:GHOST IN THE SHELL
原作:士郎正宗『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(講談社「ヤングマガジン」所蔵)
監督:ルパート・サンダース
脚本:ジェイミー・モス、 ウィリアム・ウィーラー、アーレン・クルーガー
出演:スカーレット・ヨハンソン、ピルー・アスベック、ビートたけし、ジュリエット・ビノシュ、マイケル・ピット

2017年/アメリカ/2D・3D
©2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
配給:東和ピクチャーズ
2017年4月7日(金)より全国公開

■公式サイト:http://ghostshell.jp/

                                          <編成部>

洋画専門チャンネル ザ・シネマの編成部スタッフが、1人1本、きわめて個人的にオススメしたい作品をご紹介!


    お待たせしました!CSベーシック初★『ハリー・ポッター』シリーズ全8作を一挙放送します!


                『ハリー・ポッター』全8作一挙放送

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2.jpeg

【4月放送日】一挙放送4/30(日)他の放送日も特設サイトでチェック!



『ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2』
TM & © 2011 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R. 



ハリー・ポッターの何が面白いのか?魅力は沢山あるけれど、一つ挙げるとしたら、その「普遍性」。年代、性別、国籍などのバックグラウンドを問わず、誰もが物語とリンクするポイントが必ずあるということ。子供のときに観たことがある人は、大人になって、親になってから観なおすと、今まで気付かなかったキャラクターの存在や心理が手に取るように分かったりして。そうやってそれぞれのエピソードを多角的に捉えられるようになると、この果てしなく奥深い世界観に気付くはず。

未だ観たことがないという方や、1、2作目以降は脱落してしまった・・・という方。むしろ大人向きとも言える、ハリー・ポッターの“本当の”面白さは、後半の4作品に集中しています。最初の4作品は前フリだと思ってがんばってクリアさえすれば、後半はアッという間にサスペンスドラマに引き込まれてしまうこと必須です。

単なるティーンエイジャーの青春物語だと思ったら大間違い。11歳の少年が成人し、自己犠牲を覚悟で世界を救うまでを描いた、大河ドラマともいえる壮大なスペクタクルを、4月のザ・シネマで見逃すなかれ。


【キャロル】


21jumpstreet.png懐かしき「学生テンション」をもう一度!チャニング・テイタム×ジョナ・ヒルのポンコツ警官コンビが高校でスーパーおバカな潜入捜査、全米No.1爆笑コメディの第一弾


21ジャンプストリート




4月放送日はこちらでチェック!





21 JUMP STREET © 2012 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc.. All Rights Reserved


 今やハリウッド1のセクシーガイの名をほしいままにしているチャニング・テイタムと、親しみやすい風貌と確かな演技力で話題のジョナ・ヒルという、第一線を走るスターコンビを主演に、往年の人気テレビシリーズを映画化した本作。公開されるや否や全米1位の興行成績を記録、今や映画ファンの間でも「絶対に笑える1本」と名前が挙がることも多い作品です。

 頭はいいが全てにおいてドン臭いシュミット(ジョナ・ヒル)と、ルックスと運動神経は抜群だが筋金入りのおバカのジェンコ(チャニング・テイタム)は、高校以来の親友同士。互いに助け合い、何とか二人とも警官になるという夢を叶えた。しかし待っていた現実は憧れていたようなクールな日々ではなく、地味な捜査ばかりを任されてばかり。ついつい調子に乗って派手なことをやってみるものの逆効果で大失敗の連続。そんなある日、二人のあまりのおバカさを見かねた上司が、「21ジャンプストリート」という部署に左遷する。学校で子供たちを取り巻く麻薬犯罪を阻止するべく、潜入捜査を命じられた2人は、数年ぶりに「高校生」として生活することに…。

 とにかく、本作の魅力はどこまでも突き抜けた「学生テンション」。限界を突破するまで飲んだり、法律を破るスレスレ(すでにアウト?)まで暴れたり、見境なくやりたい放題しまくる2人の様子には抱腹絶倒です。現役高校生に交じって、何とか溶け込もうとするものの、とにかくやることなすこと全てが悪い方向へ行き、トラブルしか招きません。他の作品ではシリアスな演技を見せている人気者2人が、ここぞとばかりに嬉々としておバカコンビを演じているのを見たら、もはや清々しくなってしまいます。名シーンは数多くあれど、特に誤って服用してしまったクスリでラリっているのを、必死に隠そうとするシーンは映画史に残る「ベストくだらない」シーン。幻覚の中で、虹や雲の上でキャッキャと飛び跳ねる、文字通り『お花畑状態』の2人は必見です!

 脇を固めるキャストもとっても豪華!今やオスカー女優となった『ルーム』のブリー・ラーソンや、ジェームズ・フランコの弟としても知られる若手実力派デイヴ・フランコも最高ですが、特筆すべきはラッパーから俳優に転身したアイス・キューブ!ジェンコとシュミットの鬼上司を演じています。常に眉間にしわを寄せながら終始キレつづけ、2人をFワードで罵りながらムチャぶりを与える様子は、きっと爆笑間違いなし。本作で名個性派俳優として再ブレイク、新作『Fist Fight』も現在大ヒット中の注目株です。

 疲れたときほど、思い切りバカバカしいものを見て笑いたいですよね。そんなとき、ハリウッド製コメディはアメリカンジョークや政治風刺などがどうしても日本人には難しくて、選ぶのが難しいですが…。本作はだれが見ても楽しめる、超絶分かりやすいおバカっぷり!安心してご覧いただけます!もう戻れない学生時代のあの頃、やり直しをきかせようと、捜査に遊びに全力で熱くなる2人の姿を見たら、きっとうらやましくなるはず。皆さんもハチャメチャしていたあの学生時代を思い出して、全てを忘れてハッチャけてみてくださいね。続編も、本作よりさらにレベルアップしていますので要チェック!

【たらちゃん】


鞄を持った女.jpgほぼ放送でしか見られない超貴重な作品!60年代のセックスシンボル、クラウディア・カルディナーレの主演作


鞄を持った女



4月放送日はこちらでチェック!


'@TITANUS 1960





ブリジット・バルドー(BB)、マリリン・モンロー(MM)と並ぶセックスシンボル、クラウディア・カルディナーレ(CC)の主演で描く、年上美女と青年の美しくも切ない愛の物語。

兄の捨てた美女を弟が追い返すシーンから物語が動き出します。「兄貴ひどい!こんな美女を見捨てるなんて!」と思わず叫びたくなりますが、弟君であるジャック・ペランは彼女を見た瞬間、恋に落ちてしまいます。そして、二人の距離は近づいていき…背伸びをした年下男子と遊びからマジになってしまった年上美女の行方はいかに!男女共にそれぞれの視点で楽しめる作品です。

また、劇中で流れる楽曲にも注目で.す。当時のヒット曲『月影のナポリ』 をケンカのシーンで流したり、CCが踊るシーンでは、劇中にあるジュークボックスから映画の主題歌『鞄を持った女』をさりげなく流したりと、素敵な音楽がちリばめられていて、CCの魅力をより引き立てています。イタリア映画界の宝石クラウディア・カルディナーレ(CC)のキュートでコケティッシュな魅力が満載な1本。この機会を逃すと、今度はいつ見られるかわかりませんので是非!

【うず潮】



ゲティン’ スクエア.jpgこれはいいものだ!サム・ワーシントン主演、スカっと大!DON!DEN!返し!!系日本未公開クライム・ムービーを、ザ・シネマが買い付けてきました!


ゲティン’ スクエア


4月放送日はこちらでチェック!


© 2003 Universal Pictures. All Rights Reserved.


まさかの本邦初公開作!冒頭、強盗のヤマを踏む主人公サム・ワーシントンとムショ仲間デヴィッド・ウェンハム(ことウェナム)。が、ウェンハム撃たれて早々死亡。どうしてこうなった!?を1時間半かけてさかのぼっていくオーストラリア映画。凝りに凝ったプロットは『レザボア・ドッグス』とか『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』とかお好きでしたら絶対お気に召すはず。そして主役を喰うウェンハムの珍演たるや!なんちゅうもんを演じてくれたんやなんちゅうもんを…これに比べたら『トレインスポッティング』で嘆きのマートルん家で寝グ×もらしたあのスパッドすらカスや!ウェンハムが豪映画賞を総ナメにしたというラリパッパのパープリン演技を見逃すなれ!

【飯森盛良】

2017年3月の放送予定を、都合により下記の通り変更させていただきます。

当サイト上では、すでに下記の変更が適用済みです。

ご不便をおかけします事を謹んでお詫び申し上げます。

今後ともザ・シネマをどうぞ宜しくお願い致します。

                                         ザ・シネマ

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・3月31日(金)6:00~8:00

変更前)『地獄の英雄



変更後)『ミドルメン/アダルト業界でネットを変えた男たち

※『地獄の英雄』は、4月6、9、19、25に放送いたします。
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洋画専門チャンネル ザ・シネマの編成部スタッフが、1人1本、きわめて個人的にオススメしたい作品をご紹介!


エンドオブウォッチ.jpgエンド・オブ・ウォッチ【EOW】→「見回り終了」または「殉職」を意味する警察内の隠語



エンド・オブ・ウォッチ


【3月放送日】4日、5日、17日、30日



© 2012 SOLE PRODUCTIONS, LLC AND HEDGE FUND FILM PARTNERS, LLC




エンド・オブ・ウォッチ【EOW】 とは、警察官に義務づけられた業務日誌の最後に記入する言葉だそう。EOW=「見回り終了」を意味し、また、二度と見ることができない「殉職」も意味する警察内の隠語

2016年に話題をさらった『スーサイド・スクワッド』、ブラピ主演の戦争映画『フューリー』の監督、デヴィッド・エアーが放つ市警コンビの危険な日常をリアルに描くポリス・アクション!デヴィッド・エアーは舞台となった犯罪多発地区サウス・セントラルで若かりし頃を過ごした経験を活かし、現場の臨場感と緊張感を漂わせながら、死と隣り合わせな警察官たちの悩みや絆を再現。

『ナイトクローラー』で怪演ぶりが注目されたジェイク・ギレンホールが主演、警官の心情を見事に演じ、その相棒役に『フューリー』で戦車操縦士を演じたマイケル・ペーニャが好演。

ジェイク・ギレンホール&マイケル・ペーニャの市警コンビがパトロール中に、一軒家に潜む数十人の不法入国者を発見。それをきっかけに巨大麻薬カルテルから目をつけられ、2人の抹殺命令がギャングたちに下る。彼らと2人が繰り広げる息を飲む銃撃戦シーンは見事の一言。ロス市警の制服警官たちが過ごす日常を疑似体験できる1本。是非ご覧ください!

【うず潮】




王妃マルゴ.jpg陰謀と策略に血塗られたヴァロア家の、激しくも哀しいお姫様の物語



王妃マルゴ



【3月放送日】3日、19日



© 1994 - PATHE PRODUCTION - FRANCE 2 CINEMA - DA FILMS - RCS PRODUZIONE TV SPA - NEF FILMPRODUKTION



気弱な国王(ジャン=ユーグ・アングラード)に代わり、政治の実権を握る母后カトリーヌ・ド・メディシス(イタリア、メディチ家からやってきた)の絶対的権力の元、娘のマルゴは新興勢力である新教徒ユグノー派のアンリ公と政略結婚させられるが、マルゴは結婚など意に介さず、新婚初夜に男を求め街へ繰り出す。そこでユグノー派の貴族ラ・モール伯爵(ヴァンサン・ペレーズ)と運命的に出会い、二人は激しく愛し合う。しかし、カトリックであるマルゴの母カトリーヌによるユグノー派の大弾圧「サン・バルテルミの虐殺」がすぐそこまで迫ってきていた…

マルゴの周辺の男はみんなマルゴに夢中。史実にも「男を破滅させるたぐいの美しさだ」と言われたという記述が残るほどの美貌で、奔放に生きている様に見えますが、その実、政略結婚相手のアンリ公に愛情は全く示さないながらも、彼の命の危機を自らの危険を顧みずに助けたり、母であるカトリーヌ后に完全にいい様に操られている長兄の事も、心配し愛している、非常に情と懐の深い女性である事がよくわかる映画です。懸命に運命に抗おうとしながらも、どこか自分の生まれに諦めも抱えているという複雑な内面を、イザベル・アジャーニが演じ、唯一無二のマルゴにしている事も胸を打ちます。当時、イザベル・アジャーニ40歳。美しさ、天井知らず。

この映画のクライマックスである「サン・バルテルミの虐殺」も壮絶極まりますが、母后であるカトリーヌ・ド・メディシスの恐ろしさもこの映画の見どころの一つ。「絶対負けられない戦いがある!」という気迫で、ユグノー派を虐殺しまくる姿は、人間のそれではない様に感じるのであります。見応え抜群!

【にしこ】



テキサスの七人.jpg若きフーテンたちは戦場に行った…という物語をナム戦の時代に南北戦争期に舞台を焼き直して描いた、哀愁の青春戦争ウエスタン


テキサスの七人


【3月放送日】26日、29日


© 1968 Universal City Studios, Inc. Copyright Renewed. All Rights Reserved.


ベトナム戦争真っ最中68年公開作。南北戦争時代の西部劇にかこつけた社会風刺。主人公七人のヤングガンは長髪でこぎたない格好。自由気ままで世間知らず。好きな馬を駆り戦場で大冒険ができると田舎から出てきたイージー☆ライダーたちだが、そこには知らなかった凄絶な黒人奴隷差別の問題や、“個”を抑圧する軍隊の理不尽が待ち受けていた。軍では、髪切れ、制服着ろ、口の利き方がなっとらん、馬には乗せん歩兵として戦えなど、冒険する暇もなく彼らは命を散らせていく…青春戦争ドラマの哀愁も漂う激レア西部劇。4:3トリミングSD版だがそれでも見逃すなかれ!

【飯森盛良】

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世界中が待ち望んだ!ナ・ホンジン監督待望の最新作。3月11日(土)公開『哭声/コクソン』の日本最速プレミア上映会が1月24日(木)に行われました!


5年3ヶ月ぶりの来日となるナ・ホンジン監督と、日本を代表する俳優であり、本作では「よそ者」という謎の男で作品を引っ張る國村隼さんのQ&Aのコーナーを(ほぼ)全文レポートさせて頂きます!

※ネタバレを含む部分があります!該当部分には警告がございますので

注意の上ご一読頂ければ幸いです!!


ザ・シネマでは3月、ナ・ホンジン監督の過去作『哀しき獣』と哭声/コクソン』でもその演技で深い印象を残す、韓国映画界の大スター、ファン・ジョンミンが人気を不動のものにした『新しき世界』を特集放送。哭声/コクソン』公開連動特集もお見逃しなく!

また、本作のチケットプレゼントも絶賛実施中です!!

公式サイトはこちら








pic_1701_03_2.jpgプレミア上映会&ティーチイン

日時:1月24日(火)
場所:シネマート新宿





司会:
では、ナ・ホンジン監督、5年3か月ぶりの来日となります。

國村さんもいらっしゃっています。さっそくお呼びしようと思います。

『哭声/コクソン』から、國村隼さん、そしてナ・ホンジン監督です。

拍手でお迎えください。


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ではまず、お二人にご挨拶を頂戴したいと思います。

まず國村さんからお願いします。


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國村隼(以下、國村):
こんばんは。今日は本当にありがとうございます。映画をご覧になった後のお客さんの前に出てくると、ほんとにちょっとドキドキしますが、ちょっとホッとしました(笑)。

この日本で、一番最初にこの『哭声/コクソン』をご覧になって下さった皆さんです。本当にもう嬉しくて、嬉しくて、皆さんお一人お一人をハグしたい気がします。今日は本当にありがとうございます!


ナ・ホンジン監督(以下、監督):
こんばんは、ナ・ホンジンです。お会いできて嬉しいです。
足を運んで頂き誠にありがとうございます。映画の上映時間が結構長かったと思うのですが、お待ち頂き本当にありがとうございます。トイレとかは大丈夫でしょうか(笑)?

シナリオから6年くらいをかけて作った映画なのですが、皆さんにお見せできるこの時間を迎える事ができて、本当に嬉しく思います。この後のQ&Aの時間もベストを尽くして挑みますので、よろしくお願い致します。


司会:
ありがとうございます。
では、お二人には(椅子に)おかけ頂いてお答えいただこうと思います。
今日は立ち見のお客様もいらっしゃいます。ではさっそくいきましょうか。


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素晴らしい映画を有難うございました。すでにリドリー・スコット監督の製作会社からリメイクのオファーが入ったとの事ですが、韓国サイドの代表の方が「この題材を撮れるのはナ・ホンジン以外いない」と明言されたとお聞きしました。もし、監督にハリウッドからリメイクのオファーが来たら、もう一度本作を撮ろうと思われますか?その場合、また國村さんを起用されますでしょうか?また、國村さんはハリウッドからリメイクのオファーがもし入ったらどうされますか?
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監督IMG_4380.jpg監督:
スコット・フリー(スコット・フリー・プロダクションズ※リドリー・スコットの製作会社)から連絡があったという事は聞きました。でも、対応の方が「演出できるのはナ・ホンジンしかいない」と冗談半分で言ったのだと思います。でも自分に要請が来たとしても、リメイク版を演出するつもりはありません。

でも隼さんはこの映画に重要な方なので、必ず必要になると思います。ですのでオススメしたいと思います(笑)。


國村:
あの…。オススメされてもやはり、ナ・ホンジンがメガホンを取らないのであれば、私もやることは多分ないんじゃないかと思います(笑)。


監督:
では両方ともしないということにします(笑)。


司会:
ここでやんわりお断わりが入りましたね(笑)。


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これまでのナ・ホンジン監督の過去作『チェイサー』や『哀しき獣』は、どちらかというと社会派サスペンスの様な作品だったと思いますが、本作はどちらかというと、ちょっと表現しにくいのですが「オカルト」の様な印象です。どちら(の作風)が監督が嗜好されていた作品、作りたいと思うものだったのでしょうか?教えて頂きたいと思います。

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監督:
この『哭声/コクソン』という映画は、前2作を撮った後に、もう少し自分らしく、自由に、やりたい様に作りたいという意欲が昂ぶった時に作った作品なので、自分のスタイルのままに作った、ありのままに作った、よりやりたいものに近い作品だと思います。

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今回、監督が國村さんを起用された理由は何でしょうか?日本では非常にベテランの俳優さんで、悪役から非常に良い方の役まで演じてらっしゃいますが、一番の決め手は何だったのでしょうか?それと國村さんは、ナ・ホンジン監督の現場で一番印象に残っている事はなんでしょうか?

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監督:
シナリオが出来上がった時に、日本人の俳優が必要だということになり、國村さんと同年代の俳優さんを沢山調べました。既に國村さんという存在を存じ上げておりましたし、ずっと尊敬し続けていた俳優さんであったのですが、(探す過程で國村さんの)全作品を集中して見続けているうちに、ある特徴に気づきました。それはカットごとに自分の演技だけで既に編集され尽くされている様な演技をされるなぁという事でした。カットの中で、自由に演技をされているところが、とても素晴らしいと思ったのです。

で、この『哭声/コクソン』の中で、(國村さん演じる)「よそ者」という役は、お客さんに「この人物ってどういう存在なんだ?」という疑問を投げかける、とても重要な存在なんですね。その役をやり遂げるのはやはり隼さんしかいない、國村さんしかいないという確信を持って、日本に来てオファーをさせて頂きました。

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國村:
最初にオファーを頂いて、彼の前作『チェイサー』と『哀しき獣』そしてもちろん(本作の)脚本を読ませて頂き、もうその段階で「このナ・ホンジンという人はとんでもない才能だな」と実感していました。いざ、現場に入り一緒に撮影をしていく中で、最初に思っていた以上に「この人はもう才能のカタマリがそのまま人の形をしている様な人だな」と感じました。

というのは、現場でテイクを撮っていくんですが、この人はなかなか終わらないんです。1つテイクをとり終わった後、最初の基本のビジョンから新たにどんどんイメージが湧いていくタイプの方で、その自分の中で膨らむイメージを、「もっともっと」と、テイクを重ねる、という様な事がありました。

ただ、むやみやたらに重ねるのではないんです。自分の中のイメージの膨らみ、その膨らみこそがすごい才能だと思います。それを現場で目の当たりにして、やっぱり想像以上にすごい人だと、そういう風に思いました。

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昨年、ソウルで『哭声/コクソン』を観させて頂きました。朝一で観たんですが、その日一日ブルーな気持ちになってしまいました(笑)。方言が難しくてあまり理解ができていなかったのですが、今日改めて拝見してさらにブルーになりました(笑)

私は、ファン・ジョンミンさんのファンなのですが、國村さんは、現場でどの様なお話しをされましたでしょうか?何かエピソードがあれば教えて頂きたいです。

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國村:
ファンさんとは、画面の上でやり合ったりする事はなかったので、撮影の現場を一緒に過ごした事はあまりないのですが、その少ない中でも、彼はやっぱり、韓国の役者さんってみんなそうなんですが、映画の世界に来るまでにものすごく色々なスキルを重ねてらっしゃる。彼もまた、学生時代に演劇というものを始めて、それからこの世界に入り、映画の世界に行くまで様々な経験を重ねてらっしゃった様です。だから当然のごとく、経済的にもとても苦労した、という様な話しを、「ああ、なんかその辺は日本の役者の事情と非常に似ていて面白いな。一緒なんだな。」と思って。もちろんファンでいらっしゃるので、ご存知だと思いますが、韓国の大スターでらっしゃいます。けれども全然驕るところのない方で、本当に色々なキャラクターを演じられます。今回の役も明らかですが、どこかにファンさん自身の、物事に対する真摯な人柄みたいなものがちょこっ、ちょこっと出てくる。そのまんまの人です。あの人は。はい。


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ナ・ホンジン監督は、キャスティングに関して何か基準があれば教えて頂きたいと思います。

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監督:

一番その役にふさわしい(正しい)という役者さんを選びます。(出演する)それぞれの俳優さん達のバランスというのも一番注意する部分の1つです。それぐらいが自分の原則と言えるところです。

先ほどのファン・ジョンミンさんのエピソードに関して補足を入れさせて頂きますが、國村さんとファン・ジョンミンさんが映画の中で実際会うシーンは「ない」と言っても過言ではありません。もともとワンシーンだけ二人が会うシーンがあったのですが、それすら自分が編集の過程でカットしたので、映画の中で二人が会うシーンは無かったと思います。








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キム・ヨンソク(『チェイサー』主演)さんが、「甲板の上から飛び込みさせられたが、そのシーンがあまり映っていなかった」という様な事をおっしゃっていましたが、監督は國村さんの事をソンセンニム(先生)とお呼びになるほど尊敬されていらっしゃる様です。目上の方に結構無理な事をお願いするのは大変じゃなかったのかな?と思いました(笑)。韓国では年上の方に敬意を払われるので、裸にしてしまったり、結構いろんな事を、國村さんにさせてらっしゃるので(笑)。國村さんもそういう大変なシーンについては、どの様に思われているか教えて下さい(笑)。

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監督:
本当に申し訳なかったと思っております(笑)。ただ、シナリオがそういう風に出来上がっていたので、自分としてもどうしようもなかった、というほかありません。大変な思いをされるシーンが多かったことについては、撮影以外のところでなんとかケアをする為に、最善を尽くしたつもりであります。自分なりに頑張りました(笑)。今でも申し訳なかったと思っています。もしこの映画が日本で良い成績を残せなかったら、自分自身になんと言ったらよいかわかりませんが、良い結果を残せたらいいなと思っております。撮影を通して、沢山の事を、國村さんから学び、驚き、感嘆する事が多くありました。またそういった撮影の過程を通して、さらに尊敬し、大好きになりました。謝罪と感謝の気持ちをこの場でまた、述べさせて頂きたいと思います。

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國村:
なんか気恥ずかしいですね(笑)。

私もまさに監督が今おっしゃった様に、台本の中でもう、「こういう事をしなければいけない」という事が予め分かっていたので、それを理解した上でオファーを受けました。ただ一番引っかかったのは、「あれ?俺、ひょとして、このカメラの前ですっぽんぽんになることなんて出来るのかな?」という事でしたが、「この『哭声/コクソン』という作品の世界観はすごいな、そして、この男の役を僕以外の人がやっているのを見たくないな」、という気持ちが正直なところで、「観客の皆さんのご迷惑になる様なものを晒す事になっても、やってみよう」と思った次第です。ですから、監督に「ひどいことをさせられてる!」という意識は全くありませんでした。あくまで自覚的にその世界に自分から飛び込んだということです。


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韓国で賞もとられて、テレビで観ていてとても嬉しかったです!これからもご活躍をお祈りしております!
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國村:
ありがとうございます。

                    <場内拍手>


IMG_4367.jpg司会:
ちなみに個人的にお聞きしたいのですが、ふんどし…姿じゃないですか?


國村:
あ、言い忘れました!最初の脚本はすっぽんぽんだったんです!


司会:
発案は國村さんからされたんですか?


國村:
いえいえ。やっぱり韓国にも映倫に相当する様な組織があるらしく、やっぱりそらーまずかろうという(笑)それで「日本でいったらなんだ?」という事で、「そらふんどしだろう」と。劇中で、あるおじさんが「おむつ」って言ってますけど、多分見まがうという事もあったんでしょうね(笑)

司会:
それじゃあ、日本で言ったら「ふんどし」だろうということで、あのセリフも付け加えられたんでしょうね。


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素晴らしい映画を有難うございました。監督に質問なんですが、この映画は観る側の想像に委ねる部分が沢山あると思います。監督の中で、國村さんが演じられた役については、細かい設定等は考えてあるのでしょうか?また、國村さんに質問なのですが、今回の役について、國村さんなりの解釈や背景は設定されて役作りをされたのでしょうか?
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監督:
映画を通して(國村さん演じる)「よそ者」はずっと観客に質問を投げかけ続ける立場にあります。これは映画そのものが観客に質問を投げかけるという設定なんですが、映画を観終えた方にもまだなお「「よそ者」をどう思いますか?」とずっと質問を投げかけ続ける映画であります。この「よそ者」というキャラクターはとても重要なのですが、その理由として、劇中の他の登場人物たちの「よそ者」に対する考えがどんどんどんどん変わってくるんです。「よそ者」に対するイメージが固まらない。まとまらないものが、まとまりつつある映画なんですが、その解釈が一人一人違うんですね。だから、「たった一つの解釈で定義するものではない」というのがこの映画の特徴であります。なので、自分自身もキャラクターを一言で定義することはできません。観客の皆さんがどんな解釈をしていようが、全ての解釈が合っていると、自分は思っています。この映画は観客の皆さんが自分で整理して完成させる。そういう映画であることを期待しております。


國村:
「その男」をやるにあたって私が考えた事を申し上げます。良く言われる「役作り」という様なアプローチは機能しない、もっと言えばご覧になってわかる様に、★★★★★★★★ここからネタバレを含みますので、本編をご覧になる前の方は絶対にお読みにならないで下さい!!★★★★ネタバレ★★★★ネタバレ★★★★ネタバレ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


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あれは実在するものでないかもしれない。つまり、人でもなければ、何かのエネルギー体なのか、本当に存在するのか?確かな事は、「この男を見た」という奴の「噂」の中に、あの男がいるということです。最後、イサムという牧師の若者が、自分が見ている目の前の存在に、「お前はどう思う?」と逆に聞かれた時に、「お前は悪魔だ」と言った途端、すっとそこに悪魔として現れる。存在しているのかどうかもわからない、そういうイメージなんですね。ですから、その存在自体が本当に有るのかどうかも分からないものを、どう作ろう、なんてことは全く無理な話しであって、無理やり1つ何かを言葉を与え、自分の実感を伴ったイメージを与えようとした時に、このお話しの中で、あのキャラクターの「存在意義」というか「役割」というのは一体なんだろう?と。そこからアプローチした方がいいかなと思いました。


例えばですが、コクソンという片田舎の小さな町のコミュニティを池に例えて、そこにぽんっと放り込まれた、異物としての石ころ。その石ころが、ぽんっと池に投げ込まれる事によって起こる波紋。みたいなものだと。つまり無理やりに「(その男とは)なんだ?」と言われると、「池に投げ込まれる石」かもしれない。そんな事を注意しました。


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こんにちは。最後までドキドキする映画で、でもその中に笑いの要素もあり、そこが救いで良かったです。キャスティングも皆さん素晴らしかったですが、監督と國村さんから見た、現場でのチョン・ウヒさんの印象をお聞かせください。
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國村:
彼女も若いですが、舞台からの経験を積んで、素養をきっちりと身に付け、女優さんとして本当にクオリティが高いなと思いました。何より彼女は例えば「ムミョン」というキャラクターを自分がどういう風に捉えているかも含め、それをきちんと言葉にして喋る事ができる。やっぱり若いけどクオリティの高い女優さんである、というのが僕の印象です。

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監督:
たくさんの女優さんがオーディションを受けた中で、チョン・ウヒさんを選んだ理由というのは、彼女が最適な女優さんだからです。外部から見えるものではなく、その方が持つ『技』という面で、ものすごい力を感じました。私はこの役には「見せる力」があってほしいな、と思っていました。その理由としましては、2時間半の上映時間の中、全ての登場人物のバックグラウンドにあるものは「コクソン」という地名なんですが、その「コクソン」という地域の中に存在する、「神」というものを直接描写することはしなかったんです。しかし、観客に、無意識的に「神」という存在を感じさせる様な描写をしたかった。「神」を描写する手段としては、BGMや後ろの背景、時間や天気の変化を通して、観客にも届くのではないかと思っていました。チョン・ウヒさんを通して皆さんに伝えたかったんです。出演の場面もセリフも少ないのですが、映画の緊張を持続させる力がある役者が必要だと思っていたので、彼女を選びました。また現場では、すごくかわいらしい、妹の様な存在で、映画をご覧になった方はお分かりになると思いますが、期待以上にパワフルな演技をして下さいました。


司会:
監督がなぜキャスティングも含めて、天気にそんなにこだわっていたのか、今の答えでもわかりました。
「神」を感じさせるという。

お時間の方が来てしまいましたので、公開は3/11なのですが、最速で観て頂いた皆さんにご挨拶を頂ければと思います。


國村:
今日は本当にいらしていただいてありがとうございます。ほんとは最初に聞こうと思っていたのですが、どうでした?


                      <場内拍手>


ああ、良かった!!楽しんで頂けたなら本当に良かったと思います!

で、ここからはお願いでございます。この『哭声/コクソン』という映画は今までには無かった映画だと思います。カテゴライズできない映画。映画の新たな楽しみ方が、この『哭声/コクソン』だと思います。ぜひお友達にこういう体験をさせてみたい、と思った方はお友達とまた一緒に観に来て下さいね。今日はありがとうございました!


監督:
監督としての未練というのはあると思うのですが、この『哭声/コクソン』を作り上げた後に、「一抹の未練もない!」と言い切れます。ナ・ホンジンという監督の全てを注ぎ込んだ、未練が残らない作品と言えます。どんな評価を皆さんから頂こうが、それを全部受け止める所存であります。そんなナ・ホンジンという監督が6年をかけて全てを注ぎ込んで作った映画なので、周りのお友達に、「こういう監督が6年もかかって作った映画」だとお伝え下さい。長い間ご一緒頂きありがとうございました!

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司会:
ということで、ナ・ホンジン監督、國村隼さん、もう一度大きな拍手でお見送り下さい。ありがとうございました!!

数日前にこの作品拝見して、どこか喉につかえたものがあったのですが、皆さんの質問、そしてお二人の回答によって、半分くらいは自分の中で咀嚼できたかなと思いました。そんな映画体験をさせてくれる作品というのは、今の上映作品の中でも珍しいと思います。3月11日公開ですが、公開後も応援して頂ければ幸いです。本日はご来場本当にありがとうございました。気を付けてお帰り下さい。

<終了>


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コクソンロゴpic_1701_03_2.jpg

監督:ナ・ホンジン
出演:クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼、チョン・ウヒ
2016年/韓国/シネマスコープ/DCP5.1ch/156分
©2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION
配給:クロックワークス

公式サイト:http://kokuson.com/
公式Twitter:@ kokuson_movie
公式Facebook:https://www.facebook.com/kokuson0311

2017年3月11日、シネマート新宿他にて公開

洋画専門チャンネル ザ・シネマの編成部スタッフが、1人1本、きわめて個人的にオススメしたい作品をご紹介!


ズーキーパー.jpgスタローン演じる三枚目がちょっと笑える


Mr.ズーキーパーの婚活動物園


【2月放送日】4日、7日、14日、27日


ZOOKEEPER, THE © 2010 ZOOKEEPER PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved




動物園の飼育員グリフィンの婚活を、言葉を話せる動物たちが全力でサポートする!?人気コメディアン、ケヴィン・ジェームズ主演で贈るハートウォーミング・ラブコメディ。

奥手な中年男のグリフィンは動物園の飼育員。超イケイケの恋人ケイトに「結婚相手に動物園の飼育員はイヤ」とあっさりプロポーズを断られてしまう。振られたショックを5年も引きずった挙句諦めきれないグリフィンは、再び彼女にアタックするため転職を考える。ところが、自分たちにとって最高の飼育員を失うことに危機を感じた動物園の動物たちは、彼の転職を阻止しようと必死になるあまり、なんと“掟”を破って人間の言葉で彼に話しかけるのだった!ケイトとうまくいけばグリフィンは動物園を辞めずにすむと考えた動物たちは、グリフィンを男前に仕立てるべく一生懸命応援するのだが、動物本能むき出しのアドバイスはどれもこれも的外れ。それどころか、ケイトのハートを射止めるためにイケイケになろうとしたグリフィンは、動物たちの努力むなしく高級車ディーラーに転職してしまう。自分らしさをすっかり失ってしまったグリフィンだったが、ついにケイトから逆プロポーズされる日が来て・・・!

見てくれや社会的地位に振り回されなくても、人間、中身が大切だよね。と、動物たちに教わる心温まるコメディ。それはそれとして十分楽しめるこの作品、実はシルヴェスター・スタローンやニック・ノルティといった超豪華キャストが動物たちの声を熱演しているのです!普段はいぶし銀な彼らの、ファンキーでちょっと笑える演技も見どころ。ぜひ2月のザ・シネマ、バレンタイン特集でお楽しみ下さい!

【キャロル】



地上(ここ)より永遠に.jpg地上(ここ)ほど残酷な場所は他にない…。1941年のホノルル米軍基地を舞台に時代に翻弄される男女の愛憎を描いた永遠の名作。


地上(ここ)より永遠に



【2月放送日】22日、28日


Copyright © 1953, renewed 1981 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.


 ついに開催まで1か月を切った第89回アカデミー賞。今回ご紹介するのは今から64年前にアカデミー作品賞を獲得した『地上(ここ)より永遠(とわ)に』です!

 時は1941年、夏のホノルルの兵営にやってきたラッパ手のプルー(モンゴメリー・クリフト)。ウォーデン曹長(バート・ランカスター)が取り仕切るこの部隊は一見平和に見えるものの、一筋縄ではいかない曲者揃い。その内情は惨憺たるものだった。正義感の強いプルーは、上官や同僚からの壮絶なしごきやいじめに遭い孤立無援となるが、お調子者のアンジェロ(フランク・シナトラ)だけは彼に優しく接するのだった。内部での嫌がらせがエスカレートする中、やがて第二次世界大戦の激化が、兵士たちをさらに翻弄することになる。

 ジェームズ・ジョーンズのベストセラー小説の映画化である本作は、国を守るはずの軍隊の腐敗しきった内部を、戦争を背景に赤裸々に描いています。1950年代といえば、戦後の混乱した時期とは一変、アメリカが世界を牽引する国家へと成長した時代。ヒーローが活躍する勧善懲悪もの、男女が健全な愛を育むラブストーリーなど、いわゆる「ハリウッドらしい」娯楽作があふれる中、リアリティを追求した社会派の作品も流行していました。

 まず本作の見どころは、当時を代表する豪華スターの夢の共演。モンゴメリー・クリフト、バート・ランカスター、デボラ・カー、ドナ・リード、そしてアメリカを代表する歌手フランク・シナトラ!本作で彼はプルーを支える陽気な同僚アンジェロを好演、見事アカデミー助演男優賞を受賞しています。さらに『北国の帝王』『ポセイドン・アドベンチャー』などで渋い演技を見せた名脇役アーネスト・ボーグナインは、憎たらしさ満点の悪役を熱演しており、これまたハマり役です。こんな豪華すぎる名優たちがリアルな人間ドラマを織りなすのだから、面白くないわけがない!嫉妬や憎悪、そして許されぬ愛。本作が描くのは、人間の心の奥に潜むエゴそのもの。モノクロの映像で淡々とつづられていく中、夜の兵舎でラッパを吹くプルーや、禁断の愛に燃えるデボラ・カーとバート・ランカスターの波打ち際のキスといった要所に登場する有名なシーンはドラマチックなものばかり。現代の私たちが見ても思わず熱くなる、本能のままに感情をむき出しにする人々の姿が垣間見えます。

 戦争という狂気の時代で起きる悲劇の数々。本当の正義とは。人間は何のために生きるのか。そして、タイトルの「地上(ここ)」の真の意味とは。プルーがこれらを自覚したとき、残酷な時代の波がホノルルに襲い掛かります。あの日、あの時、あの場所で、人々は今の私たちと同じように、それぞれの人生を精一杯生きていました。ストーリーはフィクションですが、背景に描かれる1941年のあの出来事は、まぎれもなく歴史上本当にあった事実なのです。壮絶なラスト30分間、皆さまは何を思うでしょうか。

 「生きる」とは何かを教えてくれる、名匠フレッド・ジンネマンの時代を超えた一作。アカデミー作品賞受賞の珠玉の名作を2月のザ・シネマでご堪能ください!

【たらちゃん】


シン・シティ2.jpgワイスピ時系列順一挙放送に続き、ザ・シネマからの超重大発表!“シン・シティのエピソード時系列順”はこの順番!


シン・シティ』&『シン・シティ 復讐の女神


【2月放送日】18日、21日、27日



©2014 Maddartico Limited. All Rights Reserved.


 シン・シティ1&2は短編集みたいな映画で、それぞれのエピソードはユルくつながってる。けど、時系列が映画も、原作コミックでさえもメチャクチャで、わかりづらい。そこで、時系列順で見るならこうだ!という懇切丁寧なガイドをここに発表!

まず①1のブルース・ウィリス主役のエピソード前後編をセットで

          ↓
②2のアバンタイトル、ミッキー・ロークがホームレス狩りしてる調子コイてる大学生どもをシバくくだり
          ↓
③2のエヴァ・グリーンがファム・ファタル無双のノワールなお話
          ↓
④2のジョゼフ・ゴードン=レヴィット主役の前後編セット
          ↓
⑤2ラストの、逆襲のジェシカ・アルバ
          ↓
⑥1のミッキー・ロークが一発ヤラせてくれたマブい女の仇を討つお話
          ↓
⑦1のクライヴ・オーウェン主役エピソード

 と、いう順番なんです実は。これでもう安心ですね?2本丸ごと録画して、ぜひ2度目はこの順番で再生してみてください。当方で編集してこう流すと著作権侵害で訴えられそうなのでゴメン無理!

【飯森盛良】



わんぱく戦争.jpg40歳以上男子必見!思わず少年時代にフラッシュバックしてしまう名画!


わんぱく戦争


【2月放送日】2日、15日、19日



© 1962 ZAZI FILMS.



ルイ・ペルゴーの小説「ボタン戦争」を原作にした1961年のフランス映画。インターネットもケータイもTVゲームもなかった頃のケンカを描く、子供抗争映画の名作。演技経験ゼロの子供たちが元気いっぱいに暴れまわる、フランス版「あばれはっちゃく」とも言える作品です。見ているうちに、自然と自分の子供時代に戻って、いつの間にか彼らの一員になっています。また、劇中の子供たちはフランス憲法を理解し、全てにおいて平等の精神で描かれているところも注目です。

「フニャチン」「〇〇はケツの穴」といった大人になって決して口にしなくなったことを叫び、全員まっ裸で戦ったり、秘密基地を作ったり、男子たるもの子供の頃、絶対にやりたかった、やっていたことを満載に描いた映画です。さらに映画の中では、両津勘吉バリに子供たちだけで商売をはじめ、軍資金をつくって必要な備品を揃える始末(逞しすぎ!)。そして色々見つかって、当然、親たちにめっちゃ怒られます(笑)。40歳以上の男子は是非見てほしい1本。見た後は、思わず竹馬の友に連絡したくなりますよ!

余談ですが、本作は1995年に『草原とボタン』のタイトルでリメイク。さらに、劇中で「来るんじゃなかった」が口癖の小さな男の子を演じたアントワーヌ・ラルチーグは、愛くるしい笑顔で本作公開後に人気者となり、彼が主演の映画『わんぱく旋風』が作られました。

【うず潮】

トランプ大統領就任演説.jpg

 掲題の件につき、ちょこっと駄文を書かせてもらいます。

 ここ数日来、この件でネット上がちょっとザワザワしていますね。今なら以下の各ニュースサイトのリンクがまだ生きているはず。

http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1768238.html

https://www.businessinsider.jp/post-458

http://news.livedoor.com/article/detail/12572697/

https://www.buzzfeed.com/bfjapannews/people-cant-get-over-how-much-trump-sounded-like?utm_term=.ewGQwJa1l#.wjRM1O0rx


 でもこういうリンクはすぐに切れちゃうものなんで、経緯を簡単にワタクシの方でも記しときましょう。

 去る2017年1月20日の大統領就任式で、トランプさんは15分という短尺の就任演説をブったのですが、この中で、

“we are not merely transferring power from one administration to another, or from one party to another - but we are transferring power from Washington, D.C. and giving it back to you, the people.

「(前略)我々は、ある政権から別の政権へ、またはある政党から別の党へ、ただ権力の移行をしているのではない。我々は、権力をワシントンD.C.から移譲させ、お前たち人民に取り戻してやるのである!」

 とおっしゃられました。この

“and giving it back to you, the people.”

 の部分が、『ダークナイト ライジング』劇中におけるベインのアジ演説のワンフレーズ

“and we give it back to you... the people.”

 というくだりを丸パクリしたんじゃないの!?との疑惑が出てネット界隈がザワついてるのです。

 ここ、全文ですと、

“We take Gotham from the corrupt! The rich! The oppressors of generations who have kept you down with myths of opportunity, and we give it back to you... the people. Gotham is yours.”

「我々が腐敗からゴッサムを奪い返すのだ!金持ちの手から!迫害者どもはチャンスという言葉をチラつかせ、長らく我々を搾取してきた。ゴッサムを奪い返すのだ、市民の手に。街は市民のものだ」

 と言ってるんですな。ベインがゴッサム市庁舎の前でブつ大演説からの一節であります。

 ワンフレーズだけ見ると確かにほとんど100%同じですが、こうして前後の文脈ごと読み比べてみると、全体としては当然、2人はまるで違うことを言ってる。でも、実はベインもトランプさんも、ある決定的に同じことを“口実”にすることによって、一部の層から人気を博して権力を握ったので、やっぱり最も根本的な根っこの部分ではこの2人、モロにやってることとキャラがかぶっているのです(2人とも、あくまでそれは“口実”にしてるにすぎないところまで同じ)。

 それは何かと言うと、格差社会批判です。

 当チャンネルの土日メイン作品枠「プラチナ・シネマ」でも、昨年末から立て続けに『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『パワー・ゲーム』、来月も『アップサイドダウン』をお送りしますが、まさに、今の時代に映画が描き、糾弾している、現代最大の社会悪こそが“格差”ではないでしょうか?

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ゴッサム版ウォールストリート.jpg ベインはゴッサム版ウォール街のような証券取引所を襲い、ゴッサム市民の前にはじめてその姿を現します。後に革命軍みたいな連中を率いて「我々は解放者だ!」と叫びながらゴッサムのアリーナに現れ、さらに先の市庁舎前演説では、

「刑務所にいる抑圧された者たちを解放する」
「今より市民軍を結成する。志願する者は前に出ろ」
「金持ちの権力者どもを豪華な住まいから引きずり出せ」
「今まで我々が味わってきた冷酷な世界に放り出すのだ」
「我々の手で裁きを下す」
「贅沢は皆で分け合え」

 などともアジ演説をブち続けます。言っとることはまさしく「革命」ですな。

 『ダークナイト ライジング』の『ライジング』とは「立ち上がる」、「蜂起する」、「蹶起する」といった意味。つまりは「革命」です。この映画、革命のイメージに満ち溢れておりまして、

①ベイン革命軍は真っ赤なスカーフを巻いており、まるで文革の時の紅衛兵みたい。

  • 球技場の誓い.jpg②人民法廷に資本家や旧体制の官憲が引き出され、上訴なしの即決裁判で死刑判決を受けるシーンがあるが、あの絵ヅラは世界史の教科書で見覚えがある。フランス革命のルイ16世の裁判か(ココから画像が見れます)、もしくは、「球戯場の誓い」のページに載っていた挿絵にソックリ。被告席の椅子もなんだかとってもヴェルサイユ風だし。

 ちなみに「球戯場の誓い」とは、フランス革命の直接原因となった事件。税金を払わされている圧倒的多数の平民が「一握りの特権階級が税金を免除されているのはおかしい!」、「三部会で特権階級の主張ばかりが通るのはおかしい!」と訴え、自分たちこそが国民の真の代表なんだと立ち上がった出来事。
 さらにこのシーン、判事席(裁判官はスケアクロウ!)は、机や椅子などを雑然とうず高く積み上げたもので、『レミゼ』の六月暴動やパリコミューンにおける「バリケード」を連想させる。「バリケード」はかつて革命市民軍にとって基本戦術だった(普通選挙が広まると、革命勢力は選挙による政権奪取を目指すようになり、エンゲルスが亡き同志マルクス著『フランスにおける階級闘争』1895年版に寄せた序文で「あの旧式な反乱、つまり1848年までどこでも最後の勝敗をきめたバリケードによる市街戦は、はなはだしく時代おくれとなっていた。」と批判し、バリケード戦術は廃れていった…かと思いきや日本では昭和40年代の大学紛争においてもまだまだバリバリ現役だったけど)。レミゼ.jpg


③その革命裁判で死刑を宣告されると凍った川を渡らされ、途中で氷が割れて死んでしまう。これは原作コミック『バットマン:ノーマンズ・ランド』の中ですでに描かれているイメージだが、この映画ではさらに、ロシア革命の時に赤軍に追われた人々が凍結したバイカル湖を渡ろうとして沈んだ歴史的悲劇“バイカル湖の悲劇”をも想起させる。

④ベイン率いる革命軍とバットマン率いる警官隊が衝突するシーンでは、バットマンは珍しくなぜだか日中に戦う。そのシーン、晴れた日で粉雪が舞っている昼間なのだが、ここはロシア革命の導火線となった「血の日曜日事件」の光景を彷彿させる。雪の積もる晴れた日の出来事だった。

 こうした革命のイメージの数々に、さらに9.11のNYのイメージや(ベインがテロを仕掛けるシーンではグラウンドゼロをわかりやすく空撮してます)、そしてコミック『バットマン:ノーマンズ・ランド』のイメージを掛け合わせ、見てると心臓に若干のプレッッシャーすら覚えるような、凄まじいまでに圧迫感のあるリアリズムを漂わせながら、このまま理不尽な格差社会が是正されないと遠からず現実になるかもしれない革命と混乱の様相を『ダークナイト ライジング』という映画は生々しく描出しているのです。


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 つい数年前の“ウォール街を占拠せよ”運動というのをご記憶でしょう。正確には2011年の出来事です。この『ダークナイト ライジング』のまさに撮影中に全米を揺るがしていた社会運動で、特にウォール街があるためロケ地ニューヨークがかなり騒然としていた様を、ワタクシもニュースで連夜見ていた記憶があります。

 アメリカは、上位1%の富裕層がケタちがいの富を独占している格差社会とよく言われます。しかもその1%が2008年リーマンショックを起こして世界を経済危機に陥れ、99%の中からは失業する人もおおぜい出たのに、1%は税金で救済され、挙げ句の果てにその公的資金を自分たちのボーナスに回したということで、99%側の人たちの間で「フザけんじゃねえ!」という機運が高まり、”We are the 99%”をスローガンにデモを行ったのが“ウォール街を占拠せよ”運動でした。

 この運動とちょうど同時期に撮影・公開されたため、当時から『ダークナイト ライジング』はこれと結び付けられて論じられるケースが多くて、実際、ベインと彼の革命軍の姿と“ウォール街を占拠せよ”運動の様子はものすごくオーバーラップします。一時は実際のデモの模様をノーラン隊が撮影し、劇中にそのフッテージを使うのではという噂まで流れていたぐらい。

ノーラン.jpg ノーラン監督自身は「この映画に政治的な意図はない」、「モデルはフランス革命だ」と語っており、他の制作陣も「ベインと“ウォール街を占拠せよ”運動が似ているのは単なる偶然」と言ってはいますけれど、その言葉を鵜呑みにはできません。たまたま似ちゃったのか、炎上沙汰にならないようしらばっくれているのか定かではありませんが、しかし、意図してやってはいないとしても、時代が感じとっている理不尽感をこの映画が生々しく撮らえていることは間違いありません。

 そして今、2017年、格差社会を徹底的に攻撃し、貧しき人びとの“味方”を自称して大統領選を勝ち抜いてきたトランプさん就任に際して、再びこの『ダークナイト ライジング』と時事・世相がシンクロしたのです。

 映画史に残る文句なしの傑作『ダークナイト』と、ヒース・レジャーが命をかけて演じたジョーカーは、誰もが、全員が全員、高く評価するところでしょう。それに比べて毀誉褒貶あることは否めない『ダークナイト ライジング』ですけれども、ジョーカーというヴィランが「正義とは何か」という普遍的かつ哲学的な問題提起をしてくるのに対し、ベインの主張は逆に、きわめてタイムリーかつアクチュアル。トランプさんと同じ、“ウォール街を占拠せよ”運動とも同じ、格差社会批判です。

 格差社会、暴走するマネー資本主義。こんなのおかしい!こんなの理不尽だ!という至極ごもっともな鬱積した怒りが、昨年2016年には、数年前なら想像すらできなかったような“極端な政治的選択肢”に世界中の人々を飛びつかせてしまいました。

 文革やフランス革命、ロシア革命は、やがては反対派を弾圧・粛清しまくる恐怖政治になっていきました。ベインの革命も、ちょっと良いことを言ってるようでいて、歴史を知っているとその恐ろしさとオーバーラップして見えてきます。

 “極端な政治的選択肢”に飛びつきたい気になったら「まずは落ち着け」と、ひとまず深呼吸して見るべき映画、それこそが『ダークナイト ライジング』!このような時代になってしまった2017年、この作品の重要性は今こそ相対的に高まっているように思えるのであります。

 ちょっと良いことを言ってる人、「権力を大衆の手に取り戻すのだ!」とか胴間声でアジってる人、実はこいつベインじゃねえのか!? ということを慎重に見極めないといけない時代に、なんか、なっちゃいましたなぁ…。寒い時代だとは思わんか…。


(編成部 飯森盛良)

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