日本だけなのか、あるいは知らないだけで実は世界中に氾濫しているのかよくわからないもののひとつに「世界三大」ナンタラ・・・というのがあります。
ホラ、よく言いますよね。
たとえば世界三大映画祭はカンヌ、ベルリンの二つはデーンと腰掛けているものの、もうひとつの席には歴史の長いヴェネツィアが入ったり、規模の大きさでトロントが入ったりと、ものすごく曖昧。一般的に認知されている映画祭でさえ、こんな風なのですからほかの「世界三大」は言わずもがなですよ。
こんなことなら、世界三大「最古」映画祭とか、世界三大(来場者)映画祭にしちゃえばいいのにとまで思ってしまいます。
しかし!
とかく怪しい「世界三大」シリーズにおいても、揺るぎない、いや揺らいではならないものが2つだけあるのです。
ひとつは当チャンネルが12月に総力を挙げてお送りする「世界三大ファンタジー」。これはもう、説明するまでもなく『ナルニア国物語』と『ロード・オブ・ザ・リング』そして『ゲド戦記』に決まっております!
え? 誰がきめたって?
それは厳正なる審査の上、当チャンネルが決めたのです。テヘヘ。
(きっとこういう風に、他の「世界三大」シリーズも決まっていったんでしょう・・・)
※編成部注:いやいやライターさん、これは世の中的にホントにあるんだってば!ウチが勝手に捏造したんじゃありませんから。
そしてもうひとつが、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、エリック・クラプトンの三人からなる世界三大ギタリストなのです。
10月より当チャンネルで始まった新企画「ミュージック・シネマ」が『ボディ・ガード』、『スペース・ジャム』に続き、満を持してお送りするのが、この三大ギタリストの一人、クラプトンの名曲と切っても切れない『フェノミナン』です。
エリック・クラプトン。
口にしただけで、ある人は遠い目をしながら「クリームの頃のあいつはさ・・・」と語りだし、ある人は「ベ?ル・ボト?ム・ブルース??」と歌い始めてしまう、まさにリヴィングレジェンド。
これまでクラプトンの影響で家に連れてこられ、押し入れにつっこまれたギターは世の中にいった何本あるのでしょう・・・。
そんなクラプトンが映画『フェノミナン』に提供したのが90年代を代表する名曲中の名曲「Change the World」なのです。
当時のクラプトンはすでにライヴアルバム「アンプラグド」や「Tears in Heaven」をリリースした後。音楽ファンでなくとも十分すぎるほど知られた名前でしたが、その敷居をさらに下げたのがこの曲でしょう。
映画は観たことなくとも、曲は知ってるという人も多いはず。
なんつってもうちの母親でも知ってるぐらいですから。
さて、そんな名曲を生むきっかけとなった映画『フェノミナン』は農家とディスコが似合うただ一人の男、ジョン・トラボルタ演じるジョージがある日、不思議な光を浴びて、スゴイ能力を手にしてしまうという物語。
つまり突然すごい力を手に入れたために、彼自身が「Change the world」してしまうわけです。(←ベタ)
光を浴びて以降、ジョージは突如発明や読書に目覚め、すごい勢いで知識を身につけていきます。最初はその能力を発揮して、周囲に歓迎と驚きをもって迎えられるジョージ。しかし、あまりに普通とかけ離れた能力に、いつしか人は彼を怖がり、近づかなくなってしまうのです。
そうして、ある日ジョージに思いも寄らぬ来訪者が・・・というお話。
当企画で放送するぐらいですから、『フェノミナン』には、数多くの名曲が効果的に使用されていますが、今回はとくに注目して欲しい見所を二つご紹介しましょう。
まず一つ目はジョージが自分の能力に初めて気づくシーン。
ペンを取ろうとすると、なんとペンがするすると近づいてくるんです。
ええっ!! マジで?! さわってないけどペン動いてる!!
と驚いた表情でペンを見つめるジョージ。
ここに最高のタイミングでピーター・ガブリエルの「I Have The Touch」が流れてくる。
「アイ・ハヴ・ザ・タッチ!」
・・・・・・そのままっつうか、何というか。まあ、言いたいことは何となくわかりますけどね。
そしてもうひとつは、ジョージが思いを寄せる女性、レイスが彼の家を訪れるシーン。このときのジョージはすでに、人から避けられて憔悴状態。ここでレイスは傷つき、疲れ果てているジョージの髪を洗い、ヒゲを剃ってあげるという、女神のような優しさをみせます。
この場面は作品の中でもとりわけ美しいシーンなのですが、アマノジャクな僕としては、ここに至るまでの説明が少なく、「アレ!ちょっと唐突じゃない?!」って思ったりしたのです。というのもそれまでレイスはジョージと距離を置いて、お友達としてしか付き合っていなかったから。
でも、そんなアマノジャク体質の僕でさえ、アーロン・ネヴィルによる甘〜いラヴソング「Crazy Love」がきこえた途端
あぁっ! もうそんなのどうでもイイ!
言葉や説明がなくても愛は伝わるんだぜ、クレージーラブだぜ。
溢れる感情を抑えきれなくなったんだね、レイス・・・。
とあっさり納得し、ささいなことはどうでも良くなってしまうのです。
音楽が良い映画ってのは得だなあとつくづく思いますね。
優れたミュージック・シネマに、余計な言葉はいらないのです!
さて、こんな具合に名曲が至る所に散りばめられた『フェノミナン』ですが、サントラも充実しております。エグゼクティブ・サウンド・プロデューサーは「ザ・バンド」のロビー・ローバートソン。彼はクラプトンに勝るとも劣らないロック界の大物だけに、錚々たるメンバーの楽曲がずらりと並びます。
と言っても、ここでポイントなのは、「知っている人には大物だけど、ふだん洋楽を聴かない人にはまったくキャッチーじゃない」セレクトなのがポイント。
ブライアン・フェリーとか、ジュエルあたりはまだヨシとしよう。
でもタジ・マハールとか、知ってます?
絶対、インドの「タージ・マハル」を想像する人のほうが多いはず。
しかも大ヒットしたサントラの宿命なのでしょうか、昨今の中古CDショップでは大抵「100円均一」コーナーに並んでたりします。映画ファン、音楽ファンとしては嬉しいような、悲しいような気分です。
それと『フェノミナン』にはシェリル・クロウの「Everyday Is A Winding Road」も使用されているのですが、シェリル・クロウと言えば一時、クラプトンと付き合っていた美人ロッカー。それだけに
クラプトン「ロビー、オレいま狙ってる美人ロッカーがいるんだけどさ、その子の曲も映画に使ってみてよ」
ロビー・ロバートソン「エリック、おれたちゃいい歳なんだから、そろそろ、そういうことはさ・・・」
クラプトン「いやー、そこを何とか」
みたいな経緯を経て、映画に使われたのカモと想像するのも醍醐味かもしれません。(2人の名誉のために補足すると、この時点でシェリル・クロウはすでに大スター)
ま、それはさておき映画の後には恒例のミュージック・クリップが愉しめますので、そちらもお見逃しなく。
今回は言うまでもなく「Change the World」です。
(映画ライター 奥田高大)
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っていうか『LotR』って何よ!? という人、そんな人のために、このブログを書いてますんでご安心を。
まぁ、ただ単に『ロード・オブ・ザ・リング』の頭文字ってだけの話なんですけどね。そう略すのがナウいらしいんすわ。
この12月、当チャンネルでは、世界三大ファンタジーを大特集するってことは既報のとおりであります。世界三大ファンタジー(文学)とは、『ナルニア国物語』、『指輪物語』、『ゲド戦記』のこと。それぞれ映画化もされてます。それを放送するってワケです。
あ、ちなみに『ゲド戦記』って言っても、いろんな意味で話題になった例の宮さんの息子のアニメ版じゃありません。実写です。なんと実写あったんですねぇー。知らなかった 。
でも、ここではあくまで『指輪』限定で話します。あ、ちなみに『指輪物語』の映画版が『LotR』ですから。
なんで『LotR』だけ特別扱いでブログに書くかって言いますと、『ナルニア』と『ゲド』って、ハッキリ言って、見りゃ分かる映画なんですわ。
『LotR』も、いちおう見りゃ分かると言えば分かります。そのこと自体、実はスゴい!奇跡と言ってもいい!!
と言うのも、原作『指輪』って、詰め込まれてる情報量がハンパじゃないんですよね。固有名詞多すぎ!イコール設定がすさまじく緻密ってことでもあるんですけどね。その情報の多さ・緻密さに、オタクな人々はイ・チ・コ・ロの模様(いや、自分自身を含めて)。それこそが『指輪物語』最大のウリであり、だからこそマニアうけするんですな、この作品は。
あと、時間的な壮大さも魅力のひとつ。『指輪』世界の長大な時系列の一時点を切り取ったストーリーが『指輪物語』なんで、この物語以前にも物語があって、この物語以後にも物語があり、その断片情報が『指輪』の中にもチョイチョイ顔をのぞかせてくる。
なので、今、自分が読んでいる『指輪』は氷山の一角で、その下にはさらに巨大な物語群、関連作なり関連情報なりが埋ずもれている。それも知りてー!というマニア願望をくすぐるようにできてるんです。
まぁ、こういう『スター・ウォーズ』とか『ガンダム(宇宙世紀系の)』とかとも相通ずる(さすがにちょい強引か)ディープな魅力を持ったオタク向けの作品(の元祖的存在)なんで、ハマろうと思えばどこまでもズブズブとハマってける底なしの奥深さがあり、そこに首までドップリつかってるのがキモチいいんだ!っていうマニアな方たちのウケはすこぶる良いんですわ。
でも、ズブズブが快感なんて理解不能!という一般大衆の皆様方には、手に余る作品なんじゃないかとも思うんです。
それほど厄介な原作を、マニアも納得の奥深さを残しつつ、シロウトさんでも、いちおう見りゃ分かる、予備知識なしでも話についてけるレベルに映像化してみせ、最終的には誰が見ても楽しめる映画に仕上げたピージャック監督の手腕は、ほんと、神がかってるとしか言えませんわ。スゴい!奇跡だ!! というのは、そういうワケです。
でも、「いちおう」見りゃ分かると書いてる通り、「いちおう」なんですな。たとえば見終わった後、マニアだけでなく一般大衆のほとんどの人もこの映画を「面白かった!」と感じるとは思うんです。エンターテインメント映画としても不世出の作品ですから。でも、じゃあどんなストーリーだったか思い出しながら説明してみてくれ、と言われて語れる人って、少ないんじゃないでしょうか?
たとえば『ナルニア』なら、ふつう見た直後なら誰でもスラスラ言えちゃいますわ。良い意味で単純なお話なので。
『LotR』だと、そうスラスラは言えないはずです。たぶん「結局、話的にはどういう話だったんだっけ!?」となる人が多いと思います。それぐらい複雑な話です。
スラスラ言えなくたっていいんだよ講釈師じゃないんだから。ストーリー展開が頭に残らなくたって、見てる最中だけ楽しければ映画なんてそれでいいじゃん。というのは、もちろん正しい考え方です。
でも、スラスラ言えちゃうぐらい内容をしっかり把握しつつ見ていくと、『LotR』はもっともっと面白く感じられるようになる、ってのもまた事実。掘り下げる気がなくても「いちおう」は楽しめるけど、掘り下げる気になれば、楽しさが質的に飛躍的に向上するハズなんですわ。
そもそもが掘り下げて楽しむという楽しみ方ができるよう、奥深く作られてる作品なんですから。
なんといっても大ヒット作ですから、ウチのチャンネルでやる前にどっかで三部作とっくに見てるよ、という人も大勢いらっしゃるかと思います。でも、その時は深く掘り下げるほどのモチベーションがなかったので、「いちおう」は楽しめた、でも所詮「いちおう」だった、という人、実際問題かなり多いんじゃありません?
今回、年末のウチの放送は、その時よりもちょっと掘り下げたレベルで見てみませんか?
そのお手伝いをする目的で、お節介を承知でこのブログを書くことにしました!
もちろん、ヒット作ながら今まで見逃していたという人、今回が初見だという人。そういう人のこともケアしたい。映画本編を見て「複雑なストーリー展開だなー、2、3と見続けても話についていけるかなー」と気力が萎えかけても、大丈夫!後でこのブログの補足説明とかフォローとかを読んでいただければ、きっと、ついてけるハズです!
これから、『1』、『2』、『3』各回のザックリとしたストーリー展開をここのブログに書き込んでいきますんで、それで大づかみで流れを把握しちゃってください。もっとも、文中には致命的ネタバレ情報も含まれますんで、必ず映画本編を見た後にしてください!
『1』本編を見た後で『1』のブログを読み、理解を深めた上で、それから『2』本編を見る、というのが一番望ましいです。
昔いちど『LotR』見てる、という人は、ネタバレも何もないので、本編前に予習的に読んでしまってもいいかと思います。その上でもう1度本編を見てみると、「これはこういうことだったのか!」と話がつながってくる部分も出てくるかと思います。
とにかくですねえ、上辺だけサーッと見て、それだけでも楽しいは楽しい作品なんですが、それじゃもったいないワケですよ。やっぱ、最終的にはアカデミー賞とってますから!しかも史上最多部門とってますから!極論すれば、映画史上最高の作品(極論です!)とも言えるのかもしれません。さすがにこれは、できるかぎり深いレベルで堪能しといて惜しくはない作品でしょう。
ということで、今さらながら感は若干残しつつも、当チャンネルで手厚く紹介しとくべきだよなーと思い、これから3回に分けて、三部作各話について書いてきますんで、おつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
(編成部 飯森盛良)
『ロード・オブ・ザ・リング』©MMI New Line Productions, Inc.All Rights Reserved.
『ロード・オブ・ザ・リング(旅の仲間)』補足ブログ コチラ
『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』補足ブログ コチラ
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』補足ブログ コチラ
まずは、言わずと知れた「ナルニア国物語」。
C.S.ルイスの手による、七作品からなるナルニア国にまつわる物語。時々名前がC.W.ニコルとごっちゃになるのは、ナイショ。
第六巻の「魔術師のおい」でナルニアの創造を、そして第七巻の「さいごの戦い」でナルニアの終焉と再生を描く、不世出の児童文学です。
子供に対する優しい目線。
世界には善も悪もあるが、最後は必ず善が勝つ、という明確な観念。
物言う獣と、フォーン、ユニコーンといったファンタジー世界の生き物たち。
そして、圧倒的な存在感のアスラン。
読めば読むほど、心に明るく温かいものが満ちてくる、そんなお話。
あぁ、ナルニアのある世界に生まれてきて良かった!!!!!
子供の頃、寝る前にナルニアを読んでは、夢の中でナルニアに行くのが一日の一番の楽しみでした。
「ライオンと魔女」は正に目の前でナルニアの扉が開かれるような、入門編にはピッタリの一冊。初対面の人とはお茶、どんな緊急事態でもお茶、イギリスの方にとって(ビーバーにとっても)お茶がどんなに大切かが良くわかる一冊でもあります。お茶がなくては夜も明けぬ。
「カスピアン王子のつのぶえ」は「ライオンと魔女」のなんと1000年後。あのビーバーご夫妻も、タムナスさんも、もはやチリも残っておりませぬ
むごい。でも、新登場のカスピアンは、素敵に頑張る少年です。なんとシリーズ最多の四作品に登場!!
「朝びらき丸 東の海へ」は、そのカスピアンが少し成長して、東の海へ探求の旅に出る物語。
「銀のいす」は作品中では、どちらかというと地味目の印象。だって荒野に、巨人の国に、地底国。そして、三人いる主要登場人物の一人の名前が「泥足にがえもん」。でも、このにがえもんさんのキャラ、ジワジワ来る中毒性アリ。
「馬と少年」は唯一、ナルニアのお隣カロールメンの子供が主人公。異国的な雰囲気溢れる、作品中でも少し色彩の変わった一作です。自惚れ屋さんのものいう馬ブレーが最高。
「魔術師のおい」は、ナルニア創世編。大人になっても駄目な人はダメ、との印象を幼い私に植え付けた一作でもあり。善良な馬車屋さんと、彼の馬イチゴの伏線には、仰天です。
「さいごの戦い」で、ナルニアは一度終焉を迎えます。でもなくなってしまうわけではなく、箱庭のように展開されていたナルニアの世界の蓋が一度閉じられるような終わり方。そしてまたいつの日か、箱を開ければ、そこにはちゃんとナルニアはあるはずです。
七作品どれも捨てがたいけれど、一番のお気に入りは「朝びらき丸 東の海へ」。
もうあの、異国情緒溢れる青い表紙を見ただけで、今でもわき上がるパブロフの犬的なトキメキ。
どちらかというと、ていうか完璧にイヤな子のユースチス(子供心になんて言いにくい名前かと)が、見事にギャフンと言わされて改心する様にもスッとしますし。
各島の特徴ある魅力、船の生活。
ちょっと大人になったカスピアン王子の「つのぶえ」時代とは打って変わった統率力。「お前、あんなに初々しかったのに 」と、その成長っぷりに一抹の淋しさを覚えたものです。
リーピチープは微笑ましくも、凛々しいし。
そうして最後にたどりついた、海の果て ここの描写が圧巻!! 西の人は「東」にこんなにも憧れを持っているんですねぇ。
現在映画は「カスピアン王子のつのぶえ」まで公開されているので、この「朝びらき丸」がもう、楽しみで楽しみで。
リーピチープはやっぱり、ふるCGなのでしょうか ?
ちなみに。
余談ではありますが、C.S.ルイス、お友達でもあった「指輪物語」の作者、トールキンに第一巻を朗読して聞かせたところ、「サンタクロースが出てくるなんて変だよ!!」と言われ、しばらく凹んで続きがかけなかったそうです。
あ、危ないところでした トールキンったら余計なこと言って!!
私にとっての善きもの、明るいもの、幸せなものが何もかも詰まっているナルニア。
文中で箱庭と例えましたが、正にそんな感じ。蓋を開ければ、そこはナルニアの箱庭。のぞき込んでいると、外界の憂さなんて綺麗サッパリ忘れて、この世界にひたすら没頭できちゃいます。
原作を読んだことのある方は、また違った描き方をされている映画を楽しんでみてください。
まだ原作を読んだことのない方は、ぜひこの機会に原作も読んでみて下さいね。
で、以下「指輪物語」「ゲド戦記」と書き進めていこうと思ったのですが とても字数が足りない!!
以下次号 でも、良いですかね?
良いって事に勝手にして 待て、以下次号!!!
※編成部注:ということで、次号はコチラ
【『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』字幕版 放送日】 20日、23日
【『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』吹き替え版 放送日】 27日
『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』© Disney Enterprises. All rights reserved
唐突ですが、「情婦」と聞くと世間一般の人はいったい何を思い浮かべるんでしょうね?
僕は「情婦」っていうと、「婦」つながりで、ついつい「娼婦」とか「裸婦」といった、なまめかしいというか、ヤラシイというか、ヒワイというか、ともかくそんな言葉を連想してしまいました。
こんな思考回路なので、『情婦』にも、古くはシャロン・ストーンの悩殺足組ポーズで一世を風靡した『氷の微笑』に代表されるR18級の妖艶な映画を期待したわけです。しかし、ご存じの方もいるかもしれませんが、ビリー・ワイルダー監督の『情婦』は、まったくもってそういう映画じゃないのです。
そもそも製作されたのが1957年ですから、『氷の微笑』的セクシーシーンが出てくるわけない。モノクロだし!さらに追い打ちをかけるように、冒頭シーンは法廷。メインで出てくる男は、劇中で他のキャストからも指摘されるように、正真正銘の古ダヌキ的ジジイ。(演じたチャールズ・ロートンはこの作品でアカデミー賞にノミネートされました。)
絶対に違う! セクシー映画なワケない!
セクシーどころか、正義を貫くおカタイ法廷モノかよ?(←まだ勘違いしている)
諦めが早い僕の性格も手伝って、当初抱いていたヒワイな期待は冒頭であっさり覆されました。ですが僕は途中で見るのをやめるわけでもなく、なかば羽を失った鳥のように絶望の淵に立ち、さも期待せずに、虚ろな目で『情婦』を見始めたワケです。
もしまだこの時点でセクシーシーンを期待している輩がいるとしたら、相当にあきらめが悪いか根性のある人です、間違いなく。
ところが、期待を裏切られた作品(←勝手に思い込んだだけ)にもかかわらず、この『情婦』相当に面白いです。
ストーリーを簡単に説明すると、僕の期待を打ち砕いた古ダヌキってのは、病み上がりの重鎮弁護士。そこに退院早々、依頼人がやってくるわけです。
話を聞いてみると、ふとしたきっかけで仲良くなった未亡人がある日殺されていて、疑いをかけられていると言う。
依頼人はチョイ軽い感じのプレイボーイ風。でも話を聞いてみると、割とイイヒト。
嘘をついている様子はないし、話も筋が通ってる。
最初は乗り気じゃなかった古ダヌキも、依頼人を包むイイヒトパワーに負け、結局ヨッシャ!ワイに任せとけ!(←なぜか関西弁)と弁護を引き受けることに。
で、ここからが面白い。古ダヌキは早速、依頼人のアリバイを立証しようと奥さんに話を聞くことにします。
依頼人によると、夫婦仲はサイコー。
しかし夫婦仲サイコーの場合、法廷で奥さんの証言は有力な証拠にはならない・・・。
夫を愛していれば、彼を守ろうと奥さんがウソをつく可能性も高いですからね。
でもとにかく話を聞いてみなくては。古ダヌキは考えます。
そうして奥さん登場。
「主人は殺してません!彼がそんなことするはずないわ!!」
トーゼン、そんな台詞を期待(予想)する古ダヌキ+視聴者。
ところが!
奥さんチョー冷たい!
エリカ様も真っ青の「別に・・・」的コメントが続きます。
おいおい! 夫婦仲サイアクですよ。
苦しい生活から救いだしてくれたはずの夫に、ぜんっぜん助けブネを出さない。
もしやこれって、最近よく聞くツンデレ?! アカの他人(ここでは古ダヌキです)の前では素っ気ない態度で、まわりに人がいなくなった途端、カレシに甘えるタイプ?!
夫が犯罪者になるかもしれないってときにツンデレてる場合じゃないですよ、奥さん。
ところが奥さん、ツンデレでもない。
というのも古ダヌキの前はおろか、法廷でも夫に不利な証言ばっかりしちゃうんですよ。しかも場外ホームラン級の決定打を何発も。
おい! ツンデレじゃなくて、ただの冷たい女かよ!
殺人の容疑で逮捕されたうえに、最愛の妻にまで裏切られ、なんて哀れな依頼人。
挙げ句の果てには、生前、遺産が依頼人へ相続されるように、被害者が遺言状を書き換えていたのが判明するわ、被害者宅で働いていたメイドが出てきて、自分が貰うはずだった遺産を横取りされた腹いせに、テキトーな証言をするわで、依頼人はさらに窮地に。
財産目当てっていう動機も見つかったし、奥さんとメイドの証言もあるし。アリバイは立証できないし。
もうダメ依頼人! 容疑確定!!
しかしさすがは腕利き弁護士。
哀れな依頼人の無実を立証しようと、古ダヌキはさらに頑張ります。
そこへ依頼人を窮地から救う、思いがけない有力な情報が・・・。
今作で哀れな依頼人を演じたのはタイロン・パワー。当時の二枚目スターなんですが、ほんと、その姿が同情を誘うんですよ。古ダヌキが彼を助けたくなる気持ち、痛いほど分かります。『がんばれ!ベアーズ』※もとい、頑張れ古ダヌキ!
「依頼人を助けてあげてくれ!」きっと誰もが、こう願うはずです。
そうして物語はエンディングへと流れ込み、ラストには映画史上に残るどんでん返し!が待っています。
うーん。参りました。
しかもですね、このどんでん返しがひとつじゃないんですよ。
僕もまんまとひっかかりました。
見終わった後、気になったので「情婦」を調べると、「内縁関係にある女性」って意味を持つようです。つまり愛人のことですね。
あ、常識?
当初、僕はヒワイな言葉を連想しただけでなく、「情婦」が情け深い女性、一途な女性のことを意味する言葉だと思い込んでいたので、途中までツンデレ奥さんのことを「ぜんぜん、情婦じゃないぞ!」と勝手に憤ってました。
でも映画を最後の最後まで見ると、タイトルが持つ意味もわかります。
蛇足ですが僕が映画を観てとくに気になったのは裁判風景。検事とか、弁護士とかがみんなバッハみたいなカツラをかぶってるんです。
気になったので調べてみると、イギリスの法廷ではカツラを着用するのが義務づけられており、驚くべきことにそれは今も続いているとのこと。
しかしここ数年、イギリスでは伝統衣装というか、制服というか、このカツラを含む法廷での服装について議論しており、ついに昨年から民事裁判ではバッハ風カツラも廃止されることになったそうです。
民事裁判では?
つまり刑事裁判では引き続き今も、バッハな出で立ちで弁護したり、立証したりするわけですね。うーん面白い・・・すごく変だけど。
ちなみにこのカツラ、結構お高いそうですが、支給されるらしいです。
日本では弁護士や検事にバッジが支給されますが、それと同じようなものなんでしょう。
と、ここまでイギリスの裁判事情を知ると、他のバッハ風法廷シーンが観たくなりますよね!
もしご存じの方は、このサイトの「ご意見・ご要望」のところからでもお知らせ下さい!
それにしても近頃、ミステリー小説の旗手、東野圭吾さんの「ガリレオ」シリーズが相次いで映像化されたり、『このミス』大賞を受賞した『チーム・バチスタの栄光』が映画に続いてドラマになったりと、にわかに盛り上がりを見せるミステリー界ですが、この『情婦』も負けてませんよ。さすがはアガサ・クリスティ原作です。
そんなわけでツンデレ女性好きだけでなく、イギリスのヘンテコな裁判風景も楽しめる『情婦』。
でも、その正体は最高のミステリー映画なのです。
※『がんばれ!ベアーズ』
1976年に製作された、スポーツヒューマンコメディ映画。
映画ライター 奥田高大










