年の瀬ですね
今年ももう終わり。
すみません!! そうです、私が悪いんです。
すっかり前回から間が空いてしまいました!!
もう皆様、3大ファンタジーご覧になりました?
ナルニアのビーバー夫妻の愛らしさも、指輪物語の壮大なスケールにも増して、目から鱗が落ちるかのごとき衝撃をもたらしてくれたのが、今回ご紹介する
そう、ゲド戦記。
「あのゲド戦記が映像に?!」とワクワクして見ていた私は、冒頭数分でひっくり返りました。
ゲドが!!
ゲドって呼ばれている?!
原作をお読みなっていない方には、何が何だかわからないですよね。
ゲド戦記の舞台となるアースシーでは、ものはみな真の名を持っています。真の名を知ることは、そのものを支配すること。なので人々は皆、通り名で呼び合います。
日本で言う、言霊のような。
ゲド戦記の中では、この真の名と通り名がとても重要な働きをします。
ゲドの通り名は、ハイタカ。
ハイタカの真の名は、ゲド。
そう、真逆なの。
ちゃんとカラスノエンドウは、エスタリオルって真の名を持っているのに。
なんだかゲド一人だけ、ズボンを履き忘れて出てきちゃったかのような、違和感。しばらくして慣れたかなと思っても、「ゲド!!」って呼ばれると、びくっとしちゃう。
「あぁ、そうだった!! この人ズボン履いてなかった!!」
ここは、この作品最大の不思議点でした。
カラスノエンドウが漁師の息子になっているよりも、ロークの学院が共学になっているよりも、腕輪が謎のお守りになっていることよりも、1巻と2巻がくっついているよりも。
でも、原作をそのまま映像化しようとすると、すっごく地味な観念的な物になってしまうので、エンターテインメントとしては、多少の脚色はやむを得ないところなんでしょうね。
三大ファンタジーの中でも、ゲド戦記は際だって、土の匂いのする作品です。
ナルニアがルイスの作り出した、キリスト教的な箱庭。
指輪物語が、トールキンの描く、一大事叙事だとしたら。
ゲド戦記は、ル・グインによる、遠眼鏡。
垣間見える景色は素敵。でも、その向こうにもっともっと深い、リアルな世界を感じさせる不思議な遠眼鏡です。
一人一人の人物に、それぞれに物語があって、人生がある。ル・グインが描き出したかったのは、ゲドでもテナーでもなく、アースシーという世界そのものだったのではないかと思います。
第一巻「影との戦い」。青年ゲドは、己の慢心から影を呼び出し、それと向かい合い克服することを余儀なくされます。昨今のファンタシーやゲームに溢れかえっている、アイデンティティーの再発見というテーマを、ル・グインならではの重厚な筆致で描ききった傑作。
続く第二巻「壊れた腕輪」では、アチュアンの巫女アルハの元へ、成長して現れたゲド。食らわれたる者アルハに、真の名テナーを取り戻すと共に、長らく世界から失われていた腕輪を全きものへとします。この第二巻の主人公はテナー。失われた自己、信頼と愛情を取り戻す物語。
そして第三巻「さいはての島へ」。初老にさしかかったゲドは、世界の均衡を取り戻すため、若き王子とさいはての島へ出かけます。生きることと、死ぬことの意味、そして若き少年の成長の物語。
第四巻「帰還」が出るまでには、18年の歳月を要しました。ジュブナイルとして世に出たゲド戦記、でも、この第四巻はけして子供のための物語ではありません。魔法の力を失ったゲド、一人の女として生きることを選んだテナー、そして全てを奪われた少女テルー。それぞれの弱さを抱えた三人が、その弱さを抱えたまま、どう人として生きるか。今までの三部作とはがらりと変わった、ル・グインと世界、双方の変化が18年分詰まった作品。
そしてまた11年後、第五巻「アースシーの風」。この第五巻だけは、短編集となっています。新しい世代、新しい流れ。さまざまな愛の形と、それと呼応する死。全ての流れが収束して、ひとつにまとまる、完結編。
今回、実写版を見てゲド戦記をお知りになった方は、ぜひ原作を手に取ってみていただきたいのです。
けしてわかりやすいとは言えない、むしろ非常に晦渋な世界ではありますが。
でも、ゲド戦記を知っているのと知らないのでは、確実に人生の重みが違う。そう断言できるほど、深い作品です。
ゲドとテナーの関係も、いわゆるラブロマンスではなく、酸いも甘いもかみ分けた大人の男女が、人生を一周巡って、ようやく落ち着く感じ。
一人一人の人物に、それぞれに物語があって、人生がある。
そして、その全てを、時に厳しく、時に優しく包むアースシーという世界。
実写版との違いに、ちょっと度肝を抜かれるかもしれないけれど
。
それにしても
。
テナー役のクリスティン・クルックの可愛らしいこと。『スノー・ホワイト』では白雪姫、そして『ストリート・ファイター』ではチュンリーを演じているそうですよ。
アジア系の馴染みやすい顔立ちだけど、エキゾチックさもあり。そう言う意味では、正に日本人の理想のヒロイン像なのかも。
後半はすっかり「可愛いテナーに惚れ惚れする」作品になっておりました。
今回、「ナルニア物語」「指輪物語」そして「ゲド戦記」と、私の大好きな三つの作品を語らせていただくことが出来、とてもとても幸せでした。
少しでも作品の魅力をお伝えすることができれば。
より多くの方に、この世界に触れていただくことができれば。
このような機会を与えて下さったザ・シネマさんに感謝。そして、すみません、ブログが大幅に遅れて
。
来年も、ザ・シネマをよろしくお願いいたします。
そして、心の片隅で、ワタクシ、池澤春菜のことも、よければ
。
では皆様、良いお年を。
【1月 吹き替え版 放送日】
※編成部注:池澤さん特別寄稿第一弾はコチラ
池澤さん特別寄稿第二弾はコチラ
SF。近未来。アクション。
上記のジャンルで名作・秀作はもちろんたくさんあります。
でも、2008年流行語大賞に選ばれた「アラフォー」に押され、すっかり陰の薄くなった「アラサー」の独身女性、すなわち私(ちなみに厄年)が仕事帰りについつい手を伸ばしてしまうのは、「そうよね! 人生って捨てたモンじゃないよね、オー!」みたいな自分への応援歌的な作品だったりします。
SFや近未来ものは設定が複雑だったりすると、仕事や世間の荒波で疲れた私の脳はショートしてしまうからです。
しかし、当チャンネルが新年の幕開けと同時にお届けする『フリージャック』は必見です。しかも2009年に観ることに意味がある。
なぜなら、舞台が「2009年」だからです!
ストーリーはエミリオ・エステベス演じるF1レーサーのアレックスがレース中に事故ってしまい、その衝撃で2009年にタイムスリップ。そこで彼が見たものは富める者が若く健康な肉体を買いあさり、自らの魂を移入し肉体を移動しながら生き存えることが可能な世界だった というトンデモナイ時代。
映画が公開されたのが1992年(劇中は1991年)なので、「17年後にはこうなっていると思われてたのね
、フムフム。」というのがこの『フリージャック』という映画の正しい楽しみ方のひとつなのです。個人的意見ですが。
ね、観たくなったでしょ?
ところで、アレックス役のエミリオ・エステベス。そう、父親が『地獄の黙示録』のマーティン・シーン、弟は『プラトーン』のチャーリー・シーンというのはご存知のはず。さらに年下の弟と妹も俳優といういわゆる芸能一家。日本でいうと松本幸四郎一家みたいなもんで、由緒正しいのです。
さらに忘れちゃいけない映画の見どころを、もうひとつご紹介しましょう。
な、な、なんと!あのミック・ジャガーが出演しております。ミック・ジャガーと言えば泣く子も黙るローリング・ストーンズのカリスマボーカルです。
そのミックが主人公を執拗に追いかけまわす悪役を熱演しています。
ミックのタラコ
いや筋子並のクチビルだけでも一見の価値有りです、ハイ。
話を『フリージャック』に戻しましょう。
主人公のF1レーサー、アレックスがレース中にダイビングクラーーーーッシュ!!!死んだと思われたアレックスは2009年11月23日(勤労感謝の日)にタイムスリップ。訳のわからないアレックスは恋人だったジュリーのマンションにとりあえずダッシュ。しかしジャックが訪れた家には、すでに別の家族が住んでいたのです。
そこに状況をまったく把握できてないアレックスが「あぁジュリー! 僕のジュリー!」と泣きつくものですから、完全に不審者扱い。そのうえ、背後で怯えてた奥さんがなぜかジュリーの名前に反応して、「キャー!フリージャックよ!」と叫びだしたのです。
「な、なぬ?フリージャック?」
フリージャック・・・もちろん2009年に現役で生きてる私(アラサー)なら当然知ってるわ!と言いたいところですが、ウソ、知りません。
フリージャックってなに? 誰かアレックス(と私)に教えてあげて!と祈りつつ行方を見守っていると、見ず知らずの尼さんから、この時代ではお金持ちが若い肉体を買い、自分の魂を注入してさらに長生きできちゃうのだと聞かされます。どうやらフリージャックとは精神(魂)を他の肉体に移動することのようです。
つまり、老いる→ピチピチの肉体を買う→特殊な装置で自分の魂をイン!
肉体が若返るので、記憶はそのままでさらに長生きできちゃうという仕組み。
一方、肉体を買収された人は過去の精神データを消去されてしまう、すなわち、実質的な「死」。パソコンのハードディスク、古いしそろそろ交換か?みたいなことが人間で出来てしまうわけです。
いやーーー、2009年にはこんなことができると思われていたんですねー。
本当だったらものすごくコワイ。精神的に抹殺されるなんてダメージがデカ過ぎです!
と、ここまでは分かったものの、じゃあどうしてジュリーの家に住んでいた家族は、「フリージャックよ!」なんて叫んだのでしょう? これが実は周到に張り巡らされた(ってほどじゃないんですけど)映画の伏線になっているのです。
その後、かつての旧友に再会したアレックス。この旧友が見るからに完全「負け組」なんですが、「オレはのし上がってキャビアを食ってやるぜ!」というような、彼のチープなアメリカンドリームを聞きつつ、和気あいあいと一緒に食事をしていたわけです。しかもジュリーの居場所に心あたりがあるから教えてやると、嬉しい言葉もかけてくれる。
旧友の優しさにアレックスは「やっぱ友情はプライスレス」なんて思っていたのですが、その矢先、銃を片手に武装したロボコップ的な人々がわんさわんさと突入してきて、アレックスを捕まえようと銃を乱射。どうやらフリージャックに必要な装置を扱う大企業「マッキャンドレス社」の手下らしい。そう、コイツ(旧友)裏切ったのです。
なぜならアレックスの体には高額の懸賞金がかけられていたから。その額1000万ドル。
日本円に直すと約90億!!
でも今は円高だから日本の公開当時だと130億くらい。スゲー。
さて、物語中の2009年、要所要所にもちろん矛盾アリです。
まず、車。形が変。ビートルをもっと変にした感じ。それから、お金持ちのジュリーの家。
「door」(ドア開く)
「monitor」(テレビ電話のモニター電源オン)
声で家電とか作動しちゃうんです。やるよねー、現実だったらよかったよねー。
「いやいや、これはナシだろ」と突っ込んでもヨシ、「これ、実現してたらよかったのにー」と羨んでもヨシ。こういった楽しみ方も設定が2009年だからできることでしょう。
そんなこんなで逃げまどうアレックスと、精神転送のために必要な装置を扱うマッキャンドレス社の幹部、ミック・筋子・ジャガーとの攻防戦のはじまりはじまり。そしてマッキャンドレス社とアレックスには、ある繋がりが 。と、ここまでにして続きは本編で。
最後に非常に気になったシーンをひとつ。
終盤にてミック・ジャガー扮するバセンダックが数を数えるシーン。
字幕では「カウント1
2
」ってなってるんですが、ミックは
「ワン ミスィスイッピーーー、トゥーミスィスィッピー」とか言ってる気が。
誰か真相を教えて下さい。
描かれた世界の時代に改めて、過去のSFを観る。こんな楽しみ方もあったんですねー。それを教えてくれた『フリージャック』に感謝。
2009年の目標は積極的にSFモノをチェックする、にしようと思います。
そして2009年が皆様にとって良い年になりますように。
(映画ライター 三田衣純)
© 1991 Morgan Creek International,Inc.
すでに不具合は修正済みです。ここにお詫びして訂正いたします。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
ザ・シネマ一同
このほど、ホームページなどの一部情報で、12月30日14:05より
『泳ぐひと』
を放送する、と告知しておりましたが、正しくは
『奇跡の人』でした。
『泳ぐひと』は12月30日には放送いたしません。12月中の最終放送は28日です。次回の放送は3月に予定しております。
ここにお詫びして訂正いたします。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
ザ・シネマ一同
今更かつ当たり前のことなのですが、当チャンネルは連日たくさんの映画をお届けしております。
しかし、星の数ほど(ちょっと言い過ぎ?)ある作品のなかから、視聴者の方が「今月はコレを観よう!」と選ぶのにはどんな理由があるんでしょう。
もちろん、テレビをつけてたらそのまま見入ってしまった作品もあるとは思いますが、公開当時に見逃したとか、口コミで面白いと聞いたとか、好きなジャンルだからとか、監督・役者が好きだからといった、ちゃんと「観たい理由」がある作品も多いですよね。
そんなあまたある理由のなかでも、心に秘めながらなかなか声高に叫べないモノ。それが美しい女性のセクシーシーンで話題の作品です。いま、心の中で「そうだ!」と叫んだあなたは正直です。
こういう下心を不純な動機と呼ぶか、極めてまっとうな映画の楽しみのひとつであると呼ぶかは意見が分れるところではありましょうが、(僕は後者です)いずれにせよ映画を観る動機には十分なりえます。
そんなわけで僕は下心から『チョコレート』を見はじめました。なんせ公開当時から、美しいハル・ベリーが濃厚なラブ・シーンを演じているとあちこちで聞いていた話題作。当初は数館での公開だったのが、ジワリジワリと拡大して、いつの間にやら全国に広がったという実績も、男性諸氏の支持を受けた結果に違いあるまい!と推測していたのです。
物語はハル・ベリー演じる黒人女性のレティシアと、ビリー・ボブ・ソーントンが演じる白人男性、ハンクとの交流を描いた感動作・・・。
と、これだけ書くと『チョコレート』という甘いタイトルから受ける印象もあって、わりとよくあるラブ・ストーリー、ついでにハル・ベリーが大胆に脱いじゃった・・・と判断されがちですが、オシャレ感漂うタイトルとは対照的に、全体的に重苦しいテーマを扱っている映画なんです。
テーマの中心は、アメリカに深く根付いている人種差別の問題。舞台はアメリカのなかでもとくにその傾向が強い南部、ジョージア州です。
あ、そうそう、今回はネタバレを多く含んでおります。これから初めてご覧になる方、あるいは見たことあるけどハル・ベリーのナイスバディしか覚えてない!という方はご注意を。
刑務所で看守として働くハンクは、一緒に暮らす父の影響をモロに受けていて、黒人差別を隠そうとしない孤独な男。彼の働く刑務所で、ある日、死刑が執行されます。その男というのが、後に知り合うレティシアの夫。しかもその死刑執行が引き金となり、ハンクと同じ刑務所で看守をしている息子のソニーが自殺してしまいます。
一方、夫を亡くしたレティシアにはさらなる悲劇が待っていました。夫を亡くした直後に、交通事故で息子まで失ってしまうのです。もうすべてがどうでもいい・・・状態になってしまうレティシアですが、この事故のときに偶然車で通りかかり、2人を病院へと送ったのがハンクなのです。
そうして家族を失った悲しみと寂しさを埋めるように、2人はその後、男性諸氏が期待する濃厚なシーンへとなだれ込むワケです。
・・・。(画面に見入る)
・・・。・・・。(画面に食い入る)
・・・。・・・。・・・。(画面にかぶりつく)
確かに激しい。噂は本当だ!
多感な年齢のお子さんと一緒に観るのは、結構勇気がいります。
でもですね、このシーンはイヤラシさを感じるというよりも、むしろ切ないのです。それというのも、2人の行為は愛情の延長線上ではなく、寂しさを埋め合わせるためのものだからでしょう。
もしこの後、レティシアとの出逢いによってハンクの黒人差別主義があっさりなくなり大団円を迎えていれば、それはそれでヒジョーにわかりやすいラブ・ストーリーなのですが、この映画はそこまでシンプルではありません。なんせ、公開当時のキャッチコピーは「たかが愛の、代用品。」ですから。
でも、安易なハッピーエンドはおろか、人種差別も含めて諸々の問題に答えを提示せずに意味深で終わるところにこそ、『チョコレート』の魅力があるのです。
さて、意味深と申しましたが、この映画を観た人の間で必ずと言ってもいいほど物議をかもしだすもの。それが「タイトル問題」と「ラストシーン問題」です。
まず『チョコレート』という邦題ですが、原題は『Monster's Ball』で、これは死刑執行前夜に関係者たちによって開かれるパーティを意味する言葉。直訳すれば「怪物の宴」とかになるようですが、これじゃあまるでホラー映画。
そこで映画会社の方々は「これじゃあヒットしねーだろ!」ということで、ちょっとお洒落なラブ・ストーリーの匂いがする『チョコレート』にしたのでしょう。英語タイトルをそのままカタカナ読みして公開する映画が主流の昨今にあって、これは結構珍しいコトのようです。
しかし! そんなご時世にも関わらず、あえてまったく違うタイトルを付けた方に拍手を贈りたい。
だって、「怪物の宴」だとキモチワルイとか言って敬遠されそうなのが、『チョコレート』になると、一気にイメージアップ。この映画の1年ほど前に劇場公開された『ショコラ』効果も手伝って、まんまと「コジャレタ恋愛映画」的印象を与えたハズです。これならデートにも誘いやすい。
しかもタイトルがいくつもの隠喩になっているのもスバラシイ。
ハンクの好きなものが「チョコレート・アイスクリーム」であることは言うに及ばず、レティシアの肌の色を示す隠喩でもある。そして単純なラブ・ストーリーではなく、苦みも含んだ映画でもあることを示唆します。あるいはチョコレートのようにドロドロとしたものを人は持っていて、それを暗示しているのだ! と捉えるヒトもいるかもしれませんね。
そしてもう一つが、さきほどちょこっと触れたラストシーン問題です。
墓を映すやや意味深なカメラワークと、ハンクが夫の死刑を執行した人物であることを知ったレティシアの表情から、何を受け取るかは本当に人それぞれ。
このいかようにもとれるラストシーンの演技が、ハル・ベリーにアフリカ系アメリカ人として初めてアカデミー主演女優賞受賞に大きく貢献したのは間違いないでしょう。ちなみに僕はレティシアが(何かを諦めながらも)ハンクを受け容れようと決心した・・・と捉えたクチです。
そうそう、言い忘れていましたが、ハンクの息子を演じたのは、今は亡きヒース・レジャー。短い時間ながら強烈な印象を残す役なので、ファン必見です。
米男性誌エスクァイアで「2008年最もセクシーな女性」にも選ばれたハル・ベリーのヌード目当てでご覧になる方は「想像と違うな」と思われるかも知れませんが、『チョコレート』はそれを補ってあまりある良作ですので、まだの方はぜひ年内にご賞味ください!
(映画ライター 奥田高大)
©2001 LIONS GATE FILMS,INC.ALL RIGHTS RESERVED.
本作のメイン舞台は、まずゴンドール国(の都ミナス・ティリス)。ここを舞台に、ガンダルフ、アラゴルン、レゴラス、ギムリ、メリー&ピピン、さらには『2』に出てきたローハン騎馬軍団やゴンドールのお坊ちゃまファラミア隊長らが勢ぞろいで大活躍します。
もうひとつのメイン舞台がモルドール国。とうとうフロドとサムはモルドール領内に足を踏み入れ、この壮大なる物語はついにクライマックスを迎えるワケっすわ!
ゴンドール国の戦いはゴンドール防衛軍と援軍のローハン騎馬軍団、人間の軍隊だけで二勢力が出てきますが、どっちも鎧と盾って衣装なんで、よっぽどそういうのに興味がないと、どっちがどっちだか見た目で区別つかん、話がますます混乱する、という事態になるかもしれません。
見分けるポイントとしては、バイキングみたいな戦士が馬に乗ってるのがローハン軍です。色的には赤茶っぽい鎧に緑のマント。あと、だいたい金髪か明るい茶髪の人が多いですな。助けに来てくれる側がこのローハン軍っす。
ゴンドール軍は、町の守備兵で、黒鉄色の甲冑を着てて(胸や盾に樹の紋章あり)、基本・徒歩だちで、黒髪かダーク茶髪の人が多いです。救援される側がゴンドール軍です。
ゴンドール国の戦いは、この二国、助ける軍・助けられる軍の関係を把握しながら見れば、あんまし混乱しないですむかと。
んじゃ、以下、ストーリーのおさらいです。
警告:以下の文章には、致命的なネタバレ情報が含まれます。映画本編を見る前には、絶対に読まないでください!
・ 騎馬民族国ローハンを救ったガンダルフ、アラゴルン、レゴラス、ギムリは、ローハン軍と一緒に陥落したアイゼンガルドにやって来て、そこでメリー&ピピンと再会を果たす。ピピンは瓦礫の中から、悪の魔術師サルマンの持ち物だった黒い水晶玉みたいなのを発見する。
↓
・ この玉は悪のテレパシー装置みたいなもんで、素手でさわると、冥王サウロンと意識が直接つながっちゃって、未来が見えたりもする。トラブルメーカーのピピンがこれをさわってしまう。そして見たのは、燃え落ちるゴンドール国の都ミナス・ティリス市の幻影だった。
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・ 冥王サウロン軍の攻撃目標がミナス・ティリス市だと分かった一行は、その救援に向かおうっつー話に。でもローハン王セオデンは、『2』で自分たちが攻められてた時にゴンドール国が助けてくれなかったことを根に持ってて、救援を渋る。
↓
・ とりあえずガンダルフは、トラブルばっか起こしてるピピンを連れて、一足先にゴンドール国ミナス・ティリス市に警告するため先行して旅立つ。
※ここにきて再び一行は2チームに分裂。以下、TEAMガンダルフとTEAMアラゴルン別々に見てきます。
【TEAMガンダルフ】メンバー:ガンダルフ、ピピン
・ ゴンドール国ミナス・ティリス市に着き、執政デネソール候に謁見。このデネソール候って、『1』で死んじゃったボロミア・『2』でTEAMフロドを捕らえたファラミア隊長兄弟のパパで、いちおう王家の絶えたゴンドール国では代理トップの地位にいる人。
この人、ピピンのことは気に入って自国の城兵として取り立てたりするが、「騎馬民族国ローハンに助けを求めれば?」っつーガンダルフの提案は拒否。ってのもローハン軍には王家の末裔アラゴルンが参加してるからで、アラゴルンがここに帰ってきたら(=王の帰還)、権力の座を返さなきゃならない、ってことが気に入らない模様。ま、今年ブームの『篤姫』風に意味もなく例えりゃ、大政奉還・王政復古をイヤがってるワケですな。
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・ と、かたくなに助勢を拒否されても敵を利するだけなんで、TEAMガンダルフは勝手に救援狼煙に火をつけちゃう。この狼煙が上がるとローハン騎馬軍団が助けに来てくれるっつー約束が両国間には結ばれてる模様。
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・ ゴンドール国にはミナス・ティリス市より敵国モルドールに近い場所にオスギリアス市っつー町(廃墟。『2』でファラミア隊が戦ってた場所)がある。そこがモルドール国のオーク族軍団の攻撃を受けちゃって、陥落。
守備隊長のファラミアはどうにかミナス・ティリス市まで退却してきて、そこでTEAMガンダルフに会い、こないだTEAMフロドと会ったばっかだと伝える。
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・ デネソール候は、息子のうち故ボロミアをえこひいきしてて次男ファラミアを毛嫌いしてるんで、「おめおめ生きて帰って来やがって、兄さんとは大違いの、この不肖の息子めが。お前が死にゃよかったんだ、今からでも特攻してこい」的なヒドいことをファラミアに言う。凹んだファラミア、仕方なく寡兵でオーク族のオスギリアス市占領軍に向かって特攻するが、とうぜん全滅。
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・ ファラミアが死にかけて戻ってくると、自分のせいなのにパパのデネソール候はうろたえ、さらに、自国がついに敵軍に包囲されちゃった光景を目の当たりにして「なんでローハン騎馬軍団は救援に来てくんないんだ!」と完全に逆ギレ。「もう自殺する!!」などと言い出し、ファラミアと一緒に無理心中(焼身)するが、ファラミアだけがTEAMガンダルフに救出される。
↓
・ オーク族の包囲軍がミナス・ティリス市への攻撃を開始。さらに、空から翼竜みたいなのに乗って飛来した指輪の幽鬼ナズグルの親分に、ガンダルフが襲われる。
ちょうどその時、ローハン騎馬軍団の援軍が到着!ナズグル親分はそっちの戦場へ向かって飛び立ち、ガンダルフは助かる(こっから先の展開はTEAMアラゴルンの箇所を読まれたし)。
【TEAMアラゴルン】メンバー:アラゴルン、レゴラス、ギムリ、メリーおよびローハン騎馬軍団(国王セオデン、青年将校エオメル、男勝りの姫エオウィンなど)
・ TEAMガンダルフが勝手に上げた狼煙を見て、救援に行くことを渋ってたローハン国王セオデンも考えを変える。かくして、中つ国最強の緑備えのローハン騎馬軍団、およびTEAMアラゴルンは、ゴンドールの都ミナス・ティリス市をめざすことに。
↓
・ 途中、アラゴルンの先祖に不義理を働いたため呪いをかけられて成仏(?)できないでいる亡霊どもを味方にできたら、戦局もちょい有利になるかもね、と思い立ったアラゴルンは、レゴラス・ギムリとともに、亡霊どものいる洞窟に向かう。この時点で一時的にローハン騎馬軍団から離脱。そして亡霊どもを「子孫のオレに加勢してくれたら先祖の呪いをオレが解いてやってもいいけど、どうよ?」的に誘って、連中を味方に引き入れることに成功する。
↓
・ ローハン騎馬軍団、ゴンドール国の都ミナス・ティリス市に到着。すでにゴンドール守備軍とモルドール国オーク軍団との間で戦端は開かれてたが、その敵軍の側背に騎馬突撃を敢行。その後、象の超巨大版みたいなバケモノや、翼竜みたいなのに乗った指輪の幽鬼ナズグルなどとも死闘を続ける。そのさなか、ローハン国王セオデン、討ち死に!
↓
・亡霊軍団を率いたアラゴルンとレゴラス、ギムリは、まず敵国側についた傭兵海賊を倒して船を奪い、その船で河を進み戦場ミナス・ティリス市に馳せ参じ、敵の包囲軍や象の超巨大版みたいなのを攻撃。敵を全滅させた。かくして、善の勢力、勝利!ただし亡霊軍団は、約束どおり成仏(?)してしまい、以降の戦いでは加勢してくれず。
※ここでTEAMガンダルフとTEAMアラゴルンは再合流をはたす。アラゴルンは王としてゴンドール国の指揮官となり(執政デネソール候の焼身自殺、その息子ファラミア隊長の負傷による戦線離脱のため)、ゴンドール軍、ローハン騎馬軍団、それにガンダルフ、レゴラス、ギムリ、ピピン&メリーらと、敵国モルドールをめざして進軍。モルドール国の玄関口「黒門」のところ(『2』でTEAMフロドが侵入をあきらめた場所)にて敵軍を挑発する。その目的は、敵軍の注意を最大限こちらにひきつけ、TEAMフロドの滅びの山突入作戦を容易にすること。
↓
・勝ち目のない陽動作戦だったが、TEAMフロドが任務を遂行し、指輪が破壊されたため、悪の魔力が消えて敵軍は壊滅し、ついに善の勢力は完全勝利をおさめる!
【TEAMフロド】メンバー:フロド、サム、ついでにゴラム
・ モルドール国めざしてどんどん進む3人。途中、ミナス・モルグルっつー、指輪の幽鬼ナズグルの居城である、緑色に光ってるヤバそうな要塞みたいなとこの脇を通過(この時、ミナス・ティリス市攻撃のためナズグルとオーク軍団が出陣してく)。
↓
・ フロドとサムを仲たがいさせようというゴラムの悪だくみによって、フロドはサムの友情と誠実さを疑い、追い払ってしまう。
↓
・ 邪魔者サムがいなくなったことで、いよいよゴラムはフロドのことを罠にかける。「キリス・ウンゴルっつー峠のトンネルしか先に進める道はない」と言い、フロドをそこに誘い込んで、その中に巣を張ってる巨大グモに襲わせる計画。で、フロドが泡食ったところにすかさず襲いかかり、指輪をふんだくろうと試みるものの、フロドに蹴飛ばされ、ゴラム、崖の上から転落。
↓
・ フロドに追っ払われちゃったサムはトボトボもと来た道を帰ろうとするけど、その途中の道端にはゴラムが陰謀をめぐらしてる決定的な証拠が残されてた。それを見て、フロドを助けようと急ぎ引き返し、フロドが巨大グモに襲われてる現場に駆けつけ、どうにかこうにか巨大グモを撃退。だが時すでに遅く、フロドはクモの毒針に刺されて死んじゃってた
。
↓
・ フロドの死体は、その場にやって来たオーク族によって運ばれてく。でも、実は死んだんじゃなくて、毒針で麻痺してただけ。と、いうことを知って愕然となったサムは、フロドが運ばれてったオーク族の牢獄みたいなとこに突入、息を吹き返したフロドを救出する!
↓
・ そっからモルドール国はすぐで、ついにフロドとサムはモルドール領内に足を踏み入れることに。そこには見渡すかぎりオーク族がウジャウジャいて、とても踏破できそうになかったが、なぜか急に、オークたちがどっかあさっての方向に向けて移動を開始。冥王サウロンの監視の目もそっちの方角に向けられ、2人はノーマークで先に進めるようになる(実はこの時、TEAMアラゴルンが「黒門」で陽動作戦を展開し、敵の注意が逸らされたため)。
↓
・ ついに滅びの山に到着。だが、崖から落ちたはずのゴラムが実は生きてて、襲ってくる!で、取っ組み合い、くんずほぐれつのドツキ合いをしながら、ついにフロドは、指輪を奪い取ったゴラムごと、滅びの山の溶岩流の中に、指輪を叩き落すことに成功する。溶岩流の中で指輪は溶解、かくてミッション達成!ついに世界は救われた!!
【エピローグ】
旅の仲間全員は再会を果たし、アラゴルンはゴンドールの王位に就き、ハッピーなムードのうちに旅の仲間は解散。フロドらホビット族4人衆はホビット庄(シャイア)に無事に戻り、その後、サムは結婚。そして、何年かが過ぎる。
フロドは例の養父ビルボが書いた『ホビットの冒険』の続編として、自身の回想録『指輪物語』を執筆するんだけど、その頃になっても『1』で指輪の幽鬼ナズグルに刺された古傷が癒えず、西の海の彼方、神々の土地に移住して養生しなきゃならなくなる。フロドは、エルフ族、ガンダルフ、養父ビルボ(指輪の超自然パワーが無くなってから急に老け込んだ)とともに、船に乗って西の方角へと旅立ち、二度と戻らなかったのでした。
終劇!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
いっやー、お疲れ様でした! このブログも異常な文章量になっちゃいましたけど、実はこれでも、覚えとかなくてもとりあえずストーリーについてく上で困らない固有名詞の解説やら、本筋に直接影響してこないサイドストーリー的なエピソードなんかは、極力、省いてるんですわ。
が本当は、その細部にこそ、神は宿る!『指輪物語(LotR)』のほんとにほんとの魅力は、実はそこなんです。たとえば、ミナス・ティリス市と、ナズグルの居城だったミナス・モルグルって、なんとなく名前が似てるけどなんでだろ、とか、オスギリアス市はなぜ廃墟なんだろとか、こういったことにもちゃんとワケがある。
フロドが去っていった西の海の方には何があるのか、その背景も、実はちゃーんと作られているんです。
さすがにマニアうけのいい作品だけあって、ネット上には『指輪物語(LotR)』関連の情報、用語解説なんかがいくらでも載ってますんで、映画見て、この魅力にハマりそうだ、と思った人は、まずはネットでどんどん調べてみてはいかがでしょう?
映画『LotR』は、小説では読んだ人が頭の中で想像するしかなかったシーンを、ワタクシのようなド凡人の乏しい想像力では無理なレベルの圧倒的ヴィジュアルに映像化してみせたって点で、本当にすばらしい! 原作ファンも、その点では100点満点をピージャック監督にあげられるんじゃないでしょうか?
映画のヴィジュアルをまぶたに焼き付けた上で、ボクとしては、やっぱり原作も読まれることをオススメいたします。この長大な映画版より実はもっともっと情報量の多い超大河小説を、映画が見せてくれた圧巻のヴィジュアルイメージの記憶で補完しつつ読み進められりゃ、まさに鬼に金棒! 100%完璧にファンタジー文学の最高峰『指輪物語』の魅力を堪能できるだろうと思いますよ。
長い小説ですけど、20世紀文学史の金字塔でもある大傑作ですんで、この年末年始の休みにでも、未読の人はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょ。
(編成部 飯森盛良)
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さぁ、物語もいよいよ佳境に入る『2』こと『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』です。『二つの塔』とは、冥王サウロンの住むバラド=ドゥア塔と、裏切り者の魔術師サルマンの本拠地アイゼンガルドにそびえるオルサンク塔のこと。いわば、悪の枢軸みたいなもんですな。
しかし、本作で重要になるのはオルサンク塔の方で、それが『2』のメイン舞台のひとつ(バラド=ドゥア塔は『3』のメイン舞台です)。ここで活躍するのがメリー&ピピンの名コンビです。
一方、もうひとつのメイン舞台が騎馬民族国ローハンで、こちらではアラゴルン、レゴラス、ギムリが活躍します。
フロドとサムの2人は今作ではしゅくしゅくと滅びの山のそびえるモルドール国をめざして歩き続けます。
『1』のラストで旅の仲間は3つに分裂、『2』では各チームがそれぞれの冒険を続けます。以下、TEAMフロド、TEAMメリー&ピピン、TEAMアラゴルンとして、『2』でのそれぞれの動きを追ってきましょう。
警告:以下の文章には、致命的なネタバレ情報が含まれます。映画本編を見る前には、絶対に読まないでください!
【TEAMフロド】メンバー:フロド、サム、ついでにゴラム
・ 滅びの山がそびえるモルドール国めざして、ドヨーンと暗いムード漂う荒れ地を進む2人(暗いムードすぎてここがすでにモルドール領内かと勘違いする向きもありそうですが、全然モルドールの手前です。モルドール領の陰鬱さはこんなもんじゃありません!)。道中、2人はゴラムの襲撃を受ける。こいつ、現指輪所有者フロドの前の所有者ビルボの、そのまた前のオーナーだった奴で、まだ指輪に未練がある。
※ 補足:なんだけど、そこらへんのいきさつ本編では詳しく描かれてません。描かれてるのが『ホビットの冒険』だってのは前回ブログにて既述のとおり。ゴラムの襲撃を撃退する際、フロドが「この剣は“つらぬき丸(スティング)”だ。見覚えあるだろ、ゴラム」とかミエ切ってますが、この剣も元は養父ビルボの物。『1』の時に“裂け谷”でフロドがビルボから譲られるシーン、ありましたよね。『ホビットの冒険』に、洞窟の中でゴラムがビルボの持つ“つらぬき丸(スティング)”にややビビり気味という記述があるんですが、それ知らなきゃこんなセリフ意味わからんって。
↓
・ ゴラム、その剣で脅され、指輪の奪回を断念。以後、下手に出てフロドにおもねる。TEAMフロドはこのゴラムを案内役に立てモルドール国を目指すことに。『1』で描かれてたとおり、ゴラムはモルドール国に拉致られて拷問うけた暗い過去があるんで、モルドールへの道はよく知ってる。
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・ 変な沼とかでいろいろあったけど、どうにかモルドール国の玄関口である「黒門」に到着。ただ、どう見ても突破なり潜入なりできるような状態じゃなかったんで、そこからのモルドール入りは断念。ゴラムが「別ルートがある。ヤバい道だけどそっちのがまだ可能性ある」とここにきて初めて明かしたんで、そっちルートに変更。
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・ 新ルートを進んでると、モルドール勢と対抗勢力との小競り合いに巻き込まれ、その対抗勢力の方にTEAMフロドは捕まってしまう。その対抗勢力ってのがゴンドール国。部隊を率いるのは例の死んじゃったボロミアの弟ファラミアだった。ゴンドール国はモルドール国と戦争してるんでTEAMフロドにしてみたら味方サイドのはずだけど、この国の連中、どうも禁じ手とされる「指輪使って一発逆転」狙いたがる悪いクセがあって、今度のファラミア隊長も兄貴のボロミアと同じことを考え、指輪を自国ゴンドールに持って帰ろうとする。
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・ でモルドールとの戦争の最前線にあるゴンドール国の町(といっても今は廃墟)オスギリアス市が攻撃を受けてるってんで、ファラミア隊に連行されてTEAMフロドもそこに行くハメに。ここでの戦闘では指輪の幽鬼ナズグルが翼竜みたいなのに乗って襲いかかってきて、そのさなかにフロドとサムの友情パワーの感動シーンが描かれたりする。その麗しい模様をコッソリ影で見てジーンときちゃったファラミア隊長は、2人を(ってか指輪を)ゴンドール国へ運ぶっていう禁じ手的な企みを断念。滅びの山への旅を続けていいと言い、TEAMフロドは無駄な足止めからやっと解放される。
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・ っていうか結局モルドール国に一歩も足を踏み入れられないまま、『2』終劇!しかもゴラムはしおらしく案内役を努めているようでいて、腹に一物ある模様
。
【TEAMメリー&ピピン】メンバー:メリーとピピン
・ 悪に寝返った魔術師サルマンが放った強化オーク族“ウルク=ハイ”を中心としたオーク部隊に誘拐された(指輪を持ってるフロドと間違われて)2人だが、隙を見て逃げ出す。
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・ で、逃げ込んだ森で、木の精というか生きている樹というか樹木型二足歩行生命体というか、そんな感じのエント族と知り合い、実は死んでなかったガンダルフとも再会を果たす。ガンダルフの依頼で、エント族が2人をかくまうことに。
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・ メリーは、エント族も悪との戦いに加わるよう演説をぶつが、いまひとつ響かず。そこで今度はピピンが一計をめぐらし、エント族を悪に寝返った魔術師サルマンの根拠地アイゼンガルド近くまで連れて行くことに。
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・ アイゼンガルド周辺はサルマンの富国強兵策によって豊かな森林が伐採され、一部、工業地帯化されてた。それを見た森の守護者たるエント族は、ピピンの思惑どおり激ギレ!おりしもアイゼンガルドの10,000を下らないと言われる軍勢は騎馬民族国ローハン攻めのため出払っていて空城同然だった。その空城でエント族は大暴れを始め、堤防を決壊させて水攻めに。アイゼンガルドは床上浸水で復興不能状態、完膚なきまでに叩き壊されちゃう。それを自宅兼事務所(多分)である塔の上からなすすべもなく見てるしかない魔術師サルマン、泣きそう
。「二つの塔」のうちの一方(オルサンク塔)、陥落!
【TEAMアラゴルン】メンバー:アラゴルン、レゴラス、ギムリ
・ 誘拐されたTEAMメリー&ピピンを助けようと跡を追うが、森の中でガンダルフと再会。「あの2人はもう大丈夫」と聞いて一安心する。自分たちで救出はできなったが、結果よければすべて良しで、TEAMアラゴルンは別の戦いに身を投じることに。めざすはローハン国だ。
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・ 騎馬民族国ローハンでは国王セオデンが悪の魔術師サルマンの魔法で廃人同然になっており、憂国の青年将校エオメルを国外追放するよう仕向けられるなど、魔術師サルマンの意のままに操られてた。
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・ローハン国にやって来たガンダルフの善の魔法によってセオデン王の呪縛が解け、以後、ローハン軍は善の側として戦いに参戦。TEAMアラゴルンもこの軍に加勢する。
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・ 悪の魔術師サルマンは冥王サウロンの指令に基づき人間絶滅のいくさを本格始動。その手始めに狙われたのが、自分のコントロール下から抜け出し反抗的になった騎馬民族国ローハンだった。ハンパない数の軍勢をローハン国に差し向ける魔術師サルマン。ローハン国王セオデンは都を捨てて難攻不落の砦がある渓谷に全住民で立てこもると決める。TEAMアラゴルンも同行。ただしガンダルフは、例の追放された青年将校エオメルを呼び戻しに、どっかへ行っちゃう。
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・ アラゴルン、ローハン国の威勢のいいお姫様(セオデン王の姪)に片想いされちゃったり、崖から落ちたりといろいろあった後、渓谷の砦はいよいよ魔術師サルマンが差し向けた軍勢に包囲される。彼我兵力差、なんと10,000vs300。スパルタ人でもなけりゃまず勝てない!
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・ ローハン国王セオデンは「ウチには親しくしてる国なんて無いから、どうせどこも援軍には来てくれない」と捨て鉢ぎみだったが、 『1』に出てきたエルフ族が善の勢力同士ってよしみだけで援軍に来てくれて、人間のローハン国+エルフ族の混成軍が出来上がる。
↓
・ でもやっぱ多勢に無勢で勝てない。そもそも騎馬民族に篭城戦は向いてないってことで、最後は残った10騎ぐらいで騎乗カミカゼ特攻を敢行し華々しく散ろうとするが、ちょうどその時、ガンダルフが例の追放された憂国青年将校エオメルとその部隊2,000騎を引き連れて戻って来て敵攻囲軍の後背を突いたんで、形勢逆転!勝った!!
とまぁ、こんな推移で『2』は終わり。『3』ブログに続く。
→『3』補足ブログへはコチラから
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『ロード・オブ・ザ・リング』の『1』についてちょいと補足します。ちなみに原作『指輪物語』ですと『旅の仲間』ってサブタイトルがちゃーんと付いてます。
まずは、しょっぱな冒頭ですよね、『LotR』を初心者にとっつきにくくしてる元凶は。指輪がどうして世に生まれて、どうやってホビット族の手に入るに至ったのかを、ものすっごく駆け足でハショりまくって見て行くプロローグ的部分です。ここだけ補足説明しとけば『1』はまず完璧でしょう。
ものの7分ちょいのプロローグなんですが、この7分間が超重要なんです!
えー、この7分の中に、ホビット族のビルボ(主人公フロドの養父)が洞窟の中で指輪をたまたま拾うシーンがございますが、これ、実は『ホビットの冒険』っていう『指輪物語(LotR)』とは別の物語から引っぱってきた重要場面なんです。
『ホビットの冒険』ってのは『指輪物語(LotR)』のいわゆる“エピソードI”的な前日譚です。これも前・後編でそのうち映画化されるらしいっすけどね。
『ホビットの冒険』の主人公はビルボで、13人のドワーフ族とともに大冒険を繰り広げるってお話なんすわ。ガンダルフとかエルロンドとか、ガンダルフを塔のてっぺんから救出した鷲とかも出てきます。映画『1』冒頭、ビルボとガンダルフが再会を喜ぶシーンがありますが、2人は『ホビットの冒険』時代に一緒に冒険した仲なんで、えらい懐かしかったんでしょう。
そのシーンで、ビルボがガンダルフに「隠居してどこかで静かに本を書き終えたい」とかなんとか言ってますけど、本ってのはビルボの回想録のこと。それこそが『ホビットの冒険』なんです。つまり『ホビットの冒険』はビルボ・バギンズ著のノンフィクション、っつー設定になってるワケ(後で“裂け谷”のシーンで完成した本が出てくる)。
さて、ビルボが指輪を拾った話に戻りますと、それがらみで『ホビットの冒険』に登場してくるキャラがゴラムです。さすがに重要すぎるキャラなんで映画『1』でもちょいちょい説明されてますが、かなり説明不足ですんで、ここで補足しときます。
ゴラムは指輪の元の所有者で、指輪の魔性に魅入られ、洞窟の中で引きこもりな生活をしてた奴です。こいつがある時、大事な指輪をたまったま洞窟の中で落とすかなんかしたんです(っていうか、いつまでヒッキーに死蔵されててもラチ明かんと、冥王サウロンのもとに帰りたがってる指輪が、おのれの意志で逃げ出した)。
で、その指輪を、大冒険のさなか、たまたま別件でゴラムのいる洞窟をさまよってたビルボが拾ったんすわ。直後、ビルボはゴラムと出会い、なぜか洞窟の真っ暗闇ん中でナゾナゾ対決をするハメになります。実はゴラムって、ナゾナゾ大好きという、意外にカワイイ一面があるんで。で、ビルボが勝てば洞窟の出口までゴラムに案内してもらえ、ゴラムが勝てばビルボを食ってもいいという、まさに生死を賭した勝負になったんです(『2』以降、ゴラムが刺身好きってのは描かれますが、平気で人も食っちゃうんです、実は)。
で、押され気味だったビルボが最後に、
ビルボ「いま私のポケットに入ってるものなーんだ?」
ゴラム「分かるかそんなの!」(正論です)
という反則技で逆転勝利(?)するんですが、ゴラムがその直後に大事な指輪を紛失したことに気づき、「指輪だな!?ポケットの中に入ってたのは指輪だな!お前が盗みやがったんだな!? 返せこのヤロー!!」
という展開になるワケです。ビルボは指輪はめて透明になってその場を無事に切り抜けました(よく指輪はめた時のあの強烈な不快感に堪えれたな、ビルボは)。
えー『1』の劇中、ビルボが旅立った後、主のいなくなったビルボの家で、主が残していった指輪を前に、ガンダルフがパイプをくゆらせつつ物思いに耽りながら「発端は“暗闇の謎問答” 」などとつぶやくシーンがございますが、このことを言ってたんですな。ナゾナゾ合戦のことは映画『LotR』劇中ではいっさい触れられてませんので、このセリフは『ホビットの冒険』を読んだことない人には完全に意味不明です。ちょいヒドいよな、この作りは。だから分かりにくい映画とか言われちゃうんだよ 。
とにかくですね、このゴラムってのは『2』、『3』以降、フロドとの絡みで決定的に重要な役割を果たしていくキャラなんで、以上ながながと記した映画では言及されてない経緯、よーく把握しといてください。
とまぁ、こんなところで『1』の補足説明は十分だと思います。あとはストーリーを簡単におさらいしときます。
警告:以下の文章には、致命的なネタバレ情報が含まれます。映画本編を見る前には、絶対に読まないでください!
・ 主人公フロド・バギンズが、隠居する養父ビルボ・バギンズから指輪を受け継ぐ。
↓
・ 魔術師ガンダルフの調査で、指輪が冥王サウロンのものと判明。これをサウロンが取り戻すとMAXパワーを発揮できるようになり、世界が滅ぼされる(蛇足ながら、『ロード・オブ・ザ・リング』とは「指輪の王」ってな意味で、つまりこのサウロンのことをさす)。
↓
・ 冥王サウロンはひっ捕らえたゴラムを拷問し「指輪は“ホビット庄(シャイアとも。ホビット族の村のこと)”のバギンズが持ってる」と聞き出し、恐ろしい指輪の幽鬼ナズグル9人衆を派遣。
↓
・ と、いう話をガンダルフに聞かされたフロドは、ホビット庄に居たらヤバそうだってんで、とりあえず指輪を持ってあわただしく逐電。ガンダルフは先輩魔術師サルマンにアドバイスをもらうためサルマンが住むアイゼンガルドに向かう。フロドは独り、しばらく行った所にある村を目指し、後日そこでガンダルフと落ち合う、っつープラン。だが結局フロドには、庭師のサム、遠縁のピピン&メリーというホビット族仲間3人が同行することに。
↓
・ アイゼンガルドでサルマンと会うガンダルフ。だがサルマンは冥王の側に寝返っており、ガンダルフは監禁されてしまう。そのためフロドとの待ち合わせ場所に行けず。
↓
・ フロドらは待ち合わせ場所でガンダルフを待つが、一向に現れない。次第に追っ手ナズグルたちが迫ってくるが、その場にはアラゴルンがおり、以降、彼がフロドのことを護ってくれる。
↓
・ アラゴルンによって、フロドたちは、この待ち合わせ場所を出、エルフ族の領土“裂け谷”に導かれる。道中、ナズグルに攻撃されるが、なんとか“裂け谷”まで到着。そこには監禁から辛くも脱出してきたガンダルフの姿も。
↓
・ “裂け谷”のエルフ族領主エルロンドは、自分たちでは指輪を守りきれないので、指輪を“裂け谷”で管理することはできない、と言い、けっきょく指輪を今後どうするのか、各勢力の代表者を集めた会議にて決めることに。
↓
・ 会議の結果、指輪を破壊することに決まる。とは言え、この指輪は何をやっても破壊できず、唯一、指輪を作った滅びの山の業火だけがこれを物理的に破壊できると判明。ちなみに滅びの山は冥王サウロンの国モルドールにそびえてるんで、誰かビンボーくじ引いた奴が直接そこ(敵国の真っ只中で、かつ地獄の一丁目みたいな土地)まで行かにゃなんない。
↓
・ フロド、その超ビンボーくじ任務に志願。会議に出てた各勢力の代表者はフロドをサポートすることを誓い、ここに9人の“旅の仲間”が結成された。メンバーは、
フロド
サム
メリー
ピピン
ガンダルフ
アラゴルン(実はゴンドール国の滅びだ王朝の末裔であることが判明)
エルフ族のレゴラス
ドワーフ族のギムリ
ゴンドール国執政の息子ボロミア
っつー顔ぶれ。でもボロミアだけは指輪を破壊することには反対で、そのパワーで逆に冥王に対抗しようと主張する。彼の国ゴンドールは冥王の国モルドールに一番近くて、戦争状態にあるので、他の連中よりはるかに切羽詰ってて、そう考えるのもムリはないんですな。
あと、彼は執政の息子で、王家の絶えたゴンドール国の代理トップのご令息なんだけど、その王家の生き残り、ほんとのほんとのトップって血筋のアラゴルンがいきなし現れたんで、対抗意識ムキ出しになっちゃうのも、また仕方ないことです
。
↓
・ 滅びの山を目指し遥かな旅に出る仲間たち。途中、ドワーフ族の地下王国モリアを通るが、そこは今は廃墟と化しており、オーク族(この世界のザコキャラモンスター)がウジャウジャいて、その上、恐ろしいバケモノまで巣くってた。そのバケモノとの戦いで、ガンダルフ、死す!
↓
・ エルフ族の国ロスロリアンを通過。女領主からいろいろ素敵なお土産をもらっちゃう。『2』以降の冒険でお役立ちアイテムとして活用されるので要チェック。
↓
・ 道中の森で、フロドとボロミアが2人きりになるシチュエーションがあり、その際にボロミアは自国ゴンドールを守るため、フロドから指輪を腕ずくで奪おうとする(そういう挙に出たのも指輪の魔力に操られたせい)。辛くも逃れたフロドは、他の仲間も指輪の魔力に惑わされ態度が豹変しちゃう恐れがある以上、ここから先は独りで旅を続けるしかない、と腹をくくる。正気に戻ったボロミアは後悔しきり。
↓
・ 寝返った魔術師サルマンが作り出した強化オーク族“ウルク=ハイ(白い手の平マークが目印)”が旅の仲間の追跡に放たれる。その目的はフロドの拉致。旅の仲間たちもこの先の旅はフロド独りでしか続けられないことを納得し、それぞれが“ウルク=ハイ”からフロドを逃がそうと懸命に戦う。
↓
・ メリー&ピピンはフロドを逃がすため自らオトリとなり、助けに駆けつけたボロミアの奮戦もむなしく、“ウルク=ハイ”に拉致られてしまう(“ウルク=ハイ”はメリー&ピピンをフロドと勘違いした模様)。ボロミア、壮絶なる戦死!(ここ男泣きポイント)
↓
・ フロドに同行すんのを断念したアラゴルン、レゴラス、ギムリは、拉致られたメリー&ピピンの身柄奪還のため、悪の魔術師サルマンのもとに戻って行った“ウルク=ハイ”部隊を追撃することに。
↓
・ フロドは独りでモルドール国の滅びの山を目指そうとするが、忠実なる庭師のサムだけは死んでも同行すると言い張って聞かず、結局、この、主従であり親友でもあるコンビで、指輪を破壊するための旅を続けることに。
↓
・ 以上、『1』終劇!
どうでしょう?『1』の展開は飲み込めました? 『2』以降はますます複雑な要素がからみ合うようになってきますが、このブログをご参考の一助にしてください。
→『2』補足ブログへはコチラから
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このドキュメンタリー映画には、本編中何度か、象徴的なスナップ写真が登場する。写っているのは一人の男。試合後の拳闘家のように腫れぼったい瞼をした初老の男性である。東洋人の見本のような面相と言っていい。発達した蒙古ヒダは、アジア人に顕著な外見上の特徴である。
私や、貴方が知っている男性の誰かに、きっと、似ている。
彼は、病室らしい部屋のベッドに横たわっている。包帯をターバンのように頭にグルグル巻きにされて。厚い瞼に覆われた瞳から表情を読み取ることは至難だが、口元には、微かに笑みらしいものを浮かべているようだ。
病床での滑稽な姿を写真に撮られることへの照れとはどうも違う、一種異様の表情が、わずかに上がった口角あたりに浮かんでいるように見えなくもない。
この写真が撮られる数日前、1983年2月10日の夜。アメリカ、シカゴ。
彼は、車を運転していた。させられていた。助手席と後部座席に同乗した、二人の男のナビゲーションにしたがって。
彼が指示どおりに駐車場で車を停めると、後ろの男はおもむろに拳銃を取り出し、超至近距離から彼の後頭部に三発、銃弾をブチ込んだ。
彼は、だが、死ななかった。血達磨になりながら、近所の店に助けを求めた。歩いて、である。
バケモノじみている。
彼はシカゴ・マフィアの一員だった。それも、日系人の。あまりに東洋的すぎる顔を持つ彼は、イタリア系マフィアの世界では毛色の変わりすぎた異分子であり、いわばアウトサイダーの中のマイノリティで、それがために侮蔑され続けた。だが同時に、畏怖されてもいた。彼は闇社会で幅を利かせた凄腕の博徒であり、また、冷酷な殺し屋でもあったからである。
彼はこの時期、捜査機関から賭博がらみで取り調べを受けていた。マフィアは、彼が組織にとって不利な証言をする前に、彼を消してしまおうとしたのである。
殺されかけてまで彼が組織に仁義をとおす理由はない。死の淵から蘇ると、彼は、捜査機関への協力を決断する。
例の写真は、その時に撮られたものだ。彼の顔に浮かんでいたあの曰く言い難い表情は、不敵なようでもあり、凄みがあるようでもあり、あるいは単なる照れ笑いだったかもしれないが、何にしても、これほど得体の知れない表情は、堅気の人間が真似して作れるようなものではない。
捜査機関に全てを暴露し始めた彼は、自分を殺す指示を出した暗黒街の顔役たちを手始めに、シカゴの刑事部長や郡の判事、さらには元州知事まで、マフィアと裏で癒着していた大物どもを端から刑務所送りにしていった。
シカゴ・マフィアは、かくして、壊滅した。
晩年、彼は“アジア系の元自動車修理工の好々爺”といった体を装い、地域社会に溶け込んだ。終いには、平凡な勤労市民の退職金と考えれば決して悪くはない額の25万ドルという慰労金までFBIから与えられ、気候温暖なハワイの地で、元殺し屋には不釣合いなほどの平和のうちに死んでいったのである。ただし、孤独に。
私や貴方が知っている誰かにも似た、典型的日本人の顔を持つ、一人の日系人。
1919年以降1,111件にのぼるというマフィアの暗殺事件で、生き残ったただ一人の男。
頭部に三発の鉛の弾をブチ込まれ、なお死ななかった男。
“トウキョウ・ジョー”とは、その男につけられたニックネームである。
本名、ケン・エトー。
この男の人生、あまりに、映画的でありすぎる。
「このドキュメンタリー映画を、1本の映画が完成し、公開されました、で終わらせるつもりはありません。これは、より大きな“プロジェクト”の始まりなんです」
そう語るのは、亀山千広氏。あの、亀山氏である。今さらわざわざ「『踊る大捜査線』の 」などと紹介するのも煩わしい、今日の日本映画界における最高のヒットメーカーだ。この2008年に限っても『少林少女』、『ザ・マジックアワー』、『容疑者Xの献身』、『ハッピーフライト』などのヒット作を連発した。フジテレビ映画事業局長であり、TV業界が映画界をリードする、ひいては、邦画そのものが劇的な再興をとげるという、ここ数年来の日本映画の活況を現出せしめた立役者である。今作で氏はエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。
もう一人のエグゼクティブ・プロデューサーが奥山和由氏だ。亀山氏がTVの世界からやってきた現代最高のヒットメーカーなら、奥山氏は伝統的な日本映画界が輩出した、現代最大の風雲児と言える。あえて一作品だけ挙げるなら今年の『ラストゲーム 最後の早慶戦』など、高い評価を受ける良作・話題作を次々とプロデュースする一方、ハリウッドに持つ華麗な映画人脈、監督としての北野武ら異能の発見・発掘、ファンドを通じての製作資金調達というシステムの日本映画界への革命的導入などなど、その閲歴はまさに風雲児と呼ぶに相応しい。
そもそも、“トウキョウ・ジョー”という怪人に注目したのは奥山氏だった。
奥山「この人物の存在は15、6年前に初めて知りました。しかし、当時は彼を知るための資料があまりに少なかった。それから時は過ぎて、ロサンゼルスでデ・ニーロと会い、彼と、自分は『ゴッドファーザー』が好きでさぁ、といったような話をしていた時に、改めて、この“トウキョウ・ジョー”はいずれ映画にできる素材だし、また、映画にすべき素材だと考えるようになったんです。ただ、その時点ではドキュメンタリーにするつもりはまったくなかった。劇映画にするつもりでした」
そして奥山氏は、後日、フジテレビ亀山氏に幾つかの企画の話を持ち込んだ際、その中の雑談の一つとして、“トウキョウ・ジョー”の話を披露した。結果、“トウキョウ・ジョー”の物語はドキュメンタリー映画として作られることになったのである。
亀山「劇映画がメインの僕たち二人なので、当然、劇映画・ドラマとして作ることを前提に話していたけれど、そのための分厚い企画書を作り、何人に読ませたところで、おのずと限界がある。それより映像があれば、見た人はすぐイマジネーションが沸くし、この人物のこういう部分を映画にしてみたい、といった具体的なアイデアも浮かぶでしょう」
奥山「今でも、最終目標はあくまで劇映画なんです。いざその時になって、向こうの役者さん、デ・ニーロと話すにせよパチーノと話すにせよ、キチっとした立派な映像企画書をまず見せられる方が、話は早い。それにどっちみち、劇映画の準備で資料を集めているんだし、どっちみち、フィクションを作るにせよ事実は隅々まで調べなければならないんだし、であるならば、その素材でまずドキュメンタリーを作ってみよう、ということになったんです」
そう。今作『TOKYO JOE マフィアを売った男』は、実は、将来ハリウッドをも巻き込んだ劇映画製作のための、贅沢きわまりないプレゼン資料なのである。だから、この映画は全編英語で作られているのだ。だから、“あの”亀山千広氏が製作に名を連ねているのだ。この硬質なドキュメンタリー映画の製作陣に、ある意味きわめてキャッチーなエンターテインメント作ばかりを手がける亀山氏の名前が加わっていることの違和感の種を明かせば、そういうことなのである。
亀山「僕がというよりも、フジテレビの映画に派手なイメージがあるのかもしれませんね(笑)。ですが、この映画に関して言えば、確かに僕は“プロジェクト”という言葉に敏感に反応したことは事実です。これが出来上がったら最後なのではなく、これが最初で、ここから始まっていく。そういう“プロジェクト”だから、僕が参加しているし、今回の説得力のあるドキュメンタリー映画を、それこそ企画書がわりにバラまくことによって、同じ興味と同じ志を持った人たちが集まって来てくれるんじゃないかな、と期待もしているんです」
今作が、93分間の映像企画書である、ということは分かった。しかし一般の観客は、完成されたこの一本の作品を、企画書としては観ないだろう。日本映画界の二人の寵児は、一般の観客に対しては、今作を通じて何を訴えようとしているのか。
奥山「こういう日本人がいた、という事実を、まずは知って欲しいんです。実際にこういう顔をし、こういう事件があり、こういう人生を送り、ということを目で見てもらえれば、日本人の血が持つ迫力とか魅力とかが、活字で読んで想像する以上に、より浮き彫りになると思うんです。まずそれを今回の映画で実感してもらうことが、次の映画、最終目的である劇映画への期待へとつながっていくんじゃないかなと」
亀山「映画作りとは、もちろん、映画を観に来ていただいた方たちに何かを感じさせる行為のことです。しかし、この“映画作り”の定義の中に、パブリシティということも含めていいなら、今回の映画の宣伝を見て、あるいは映画紹介の記事を読んで、“トウキョウ・ジョー”のことを初めて知る人、それに対して興味を持つ人が必ず出てくるはずで、そうした人が多ければ、僕らは次なるステップ、劇映画という最終ステップに、一歩前進できるかもしれません。その意味で、いい“映画作り”ができたと考えていますし、劇映画のための布石としては、今作は素晴らしい作品に仕上がったと思っています」
今日の日本映画界最高のヒットメーカーと、最大の風雲児の紐帯が生み出すであろう、ある怪人、一人の日系人マフィアの壮絶なるドラマ。それを銀幕で目撃できる日はいつになることか。続報が待たれる。
いずれにせよ、今、我々にできることは、今作『TOKYO JOE マフィアを売った男』というノンフィクションを観て、過剰なまでに映画的な人生を生きた男“トウキョウ・ジョー”の実像について知り、それがヒットメーカーと風雲児によってどう料理され、どのように華麗なフィクションに姿を変えて我々の前に饗されるかを、楽しみに待つことしかない。
(聴濤斎帆遊)
文中、一部敬称略
12月13日(土)、渋谷シネ・アミューズ、新宿バルト9ほか全国ロードショー
※渋谷シネ・アミューズは12月20日より“ヒューマントラストシネマ文化村通り”に劇場名が変わります
'08日 93分 エグゼクティブ・プロデューサー/亀山千広、奥山和由 監督/小栗謙一
公式サイトはこちらから
©2008 Tohokushinsha Film Corporation / Fuji Television Network Inc.
いよいよ年内最後の吹き替えの日がやってまいりました!24時間吹き替え版のみをお送りする恒例の吹き替えの日、12月12日に実施です。
今回は、イーストウッド=山田康雄を大特集!
の4タイトル
+サプライズ・クリスマス・プレゼント!(詳細は最後に)
というラインナップです。
実は、山田康雄のイーストウッドってのは、当チャンネルが吹き替えを重視するようになったキッカケでもあるんですよね。
思い返せばこの企画、そもそも考えついたのが、昨年の夏、『ダーティハリー』全作を一挙放送した時でした。それまではウチも吹き替えを積極的にやろうとは考えてなかったんですが、この時はタイトルがタイトルだけに、こればっかりはどう考えても吹き替えだろ!『ダーティハリー』を字幕で見るなんて考えられない!イーストウッドの声でしゃべるハリー・キャラハンなんてハリーじゃない(っつーか正直、原音で見たことない)、山田康雄だろ山田康雄ふつう!!! とボクは猛烈に感じたんですな。
作品的にそういう作品って、考えてみりゃいくつもあるよな、と思い当たり、それと同時に、世代的にボクとおんなじこと感じる人って絶対いるハズだとも思ったんですわ。ちなみにワタクシは70年代生まれの30代男性、団塊ジュニアの第2次ベビーブーマー。映画に目覚めた頃は淀長翁も水野さんも健在でピンピンしており(ギリ荻昌弘も知ってる)、TVのよる9時からのナンタラ洋画劇場とかなんとかロードショーとかで映画に開眼したクチです。
たぶん、いま40代から30代の結構な数の人にとって、映画の原体験はTV洋画劇場なハズなんですよね。
この世代、子供の頃には70年代や80年代のアニメ黄金時代にドップリ漬かって育ってる。で、ふつう映画って目覚める人は小学校高学年ぐらいから見始めますけど、アニメで耳に馴染んでた声優がそのまま掛け持ちで映画もやってた。「あ、ルパンの声だ」とか「あ、次元の声だ」とか「あ、銭形の声だ」とか(なんかルパン声優陣って洋画出現率やたら高かった気がすんな)、そんな身近なところから、あまり敷居の高さを感じることもなくアニメから映画へと入っていけたような記憶があります。
もっとも、「70年代や80年代のアニメを見て育った、40代から30代の人」って乱暴に十把一絡げに扱っちゃいましたけど、普通に考えて一世代ちがうんですよね。にも関わらず『ルパン』は両世代に共通体験としてある。ルパンの声、銭形の声って言っただけで同じ声を想像できちゃうってのは、考えてみりゃスゴいことです。
余談ながら、緑ルパン、赤ルパン、ピンクルパン(ジャケットの色がね)とTVシリーズが3つあって、そのどれかをリアルタイムで見てるか、再放送を見てるハズですからね、30代・40代の人は。ボクは関東なんですが、関東以外ではどうか知りませんけど、なんか子供の頃は平日夕方、4チャンで赤ルパンの再放送ばっかやってました。世代的にはボクはリアルタイムで見てるならピンクルパンなハズなんですが、そんなワケで赤ルパンが一番馴染み深い。
でも、実は意外に侮れないらしいピンクルパン。以下、余談の余談。ピンクルパンって、最初の緑ルパン同様、しっかりした大人向けの内容ってのと、幾つかの秀逸なエピソード、それにモンキー・パンチの原作に近いキャラデザ(赤ルパン再放送の見すぎで大塚康生顔に慣れてた当時のボクには、逆に違和感バリバリだった)など、赤ルパン(最もメジャーながらいかにも子供向けな感が拭えない)より、むしろ評価の高い緑ルパンに近いシリーズだったらしい、ということを、最近になって知りました。
いやーそのピンクルパン、ガキの頃に土曜の晩にやってて、ちょいちょい見てはいたんですが、その大人向け感がガキのボクにはどうにも取っ付きにくかったのと、歌からしてあのルパンのjazzyなテーマじゃない曲なんで、敬遠してたんすよね。
最近の再評価を知り、今さらながらちゃんと見ときゃ良かった、と思ってた矢先、正月にファミリー劇場というCSチャンネルで、怒濤の25時間全50話一挙放送やるらしいっす!
これだからCS多チャンネル放送ってのは凄いよね!このブログ読むだけ読んでる多チャンネル環境未導入の皆様方、特に「最近、なーんかTVがつまんないな」とかの不満を感じてるようでしたら、多チャン環境を導入すると、退屈なTV生活が180度かわるかもしれませんよ。2009年は、ぜひ導入ご検討を!
閑話休題。スンマセン、ようやく元の映画の話に戻ってきますとですねぇ、ボクの世代、まずTV洋画劇場で映画に開眼し、中学ぐらいからは今度はレンタル屋が普及しだしたんで、ボク個人の場合ですと、途中でTV洋画劇場からレンタルに転向しちゃったんすわ。白状しますと、実はボク、映画館って場所にあんまし行ったことがないんです 。それでこんな商売でメシ喰ってていいのか!?
いいんです!ウチはTVで皆様に映画をご覧いただく商売なんだから。
逆に、TVならではの映画の楽しみ方ってやつも知っちゃってるワケですよ、ボクら、TVで映画見て育った、映画館を知らない映画好きたちは。その最たるものが吹き替えですね。イーストウッド=山田康雄とか。
ちなみに、そういう考えの人って世の中にどれぐらいいるんだろう? ボクがマニアだからそう考えてるだけってんなら商売には役立ちませんので、これはちゃんと検討せにゃならんと。吹き替え押しってのをウチのチャンネルで継続するんだったら、上を説得する意味でもちゃんと検討しようと。思いましたんです、はい。
で、去年の時点で、実は「なんとかかんとかマーケティングなんたら調査」的なのをやってですね、ちゃんと調べてるんですよ。ここでその当チャンネル社外秘情報を暴露しましょう。
ザックリ申しますと、字幕派6割、吹き替え派4割って結果だったんです(07年ザ・シネマ調べ)。
超意外!4割ってけっこう多い!!
その4割の中でもいろいろで、ウチでやってる、往年の昭和TV洋画劇場の吹き替え版へのノスタルジーという人もいれば、家事や育児の片手間に映画見るのに吹き替えの方がラクだとか、年とって視力的に字幕はキツいとか、理由は無いけどとにかく吹き替えの方が好きとか、いろんな回答がありましたわ。
ちなみに後者3つの線ですと、CSの同業他社では「日本唯一の吹替え映画専門チャンネル」ことスター・チャンネル プラスさんってのがありますな。あちらさんは近年のメガヒット作を吹き替えで24時間やられており、この年末年始には「吹替えメガヒット100時間一挙放送!」なんて企画で、『アイ・アム・レジェンド』とか『パイレーツ・オブ・カリビアン』の3とか『ダイ・ハード4.0』とかをブッ通しでやるらしいっす。
ノスタルジーじゃなく、近年の映画も吹き替えで、ってニーズ、実際、高いんすわ。そういうのウチではめったやりませんけど。なんせ、きょう日はシネコンとかでも必ず大作洋画は吹き替え版も併映するってご時世ですからね。
聞くところによると、最近の若いモンは字幕を読めくなってきてるらしいんで、字幕しかやらないと劇場に客が入らないんだとか 。ってオイ、好き嫌いじゃなく若者全体が能力的に読めないってのはさすがに我が国の前途が不安だぞ 。
ま、そんなこんなで、新しい映画を吹き替えで見たいって人には、スター・チャンネル プラスさんってのがありますし、シブ好みの人には、往年のTV洋画劇場で放送されたバージョン(できればDVD未収録音源)を発掘してる当チャンネルがありますし、ファミ劇さんではピンクルパンも見れるらしい。いやー、CS多チャンネル放送って、ほんっとーにいいもんですね。それではまた来年もお会いしましょう!(次回のウチの吹き替え特集は春以降で予定。乞うご期待)
(編成部 飯森盛良)
『夕陽のガンマン』 ©1965 ALBERTO GRIMALDI PRODUCTIONS S.A. All Rights Reserved.
蛇足:今回12月12日のラインナップ、「サプライズ・クリスマス・プレゼント」こと最後の1本、その正体とは
なぜにエディ・マーフィ!? そりゃサプライズだわ! スンマセン、ぶっちゃけ、吹き替えの日って24時間放送するのがお約束なのに、ラスト1本イーストウッドものがゲットできなかったんで、時間が埋められなくなり、じゃあ仕方ないってんで、全然関係ないのを持ってきちゃいました 。
ですがまぁ、DVDに収録されてる山ちゃん吹き替え版の方じゃなくて、下條アトムのゴールデン洋画劇場版なんで、「ま、いっか。レア音源だし」と心温たまるクリスマス精神で許してやってください。
にしてもこの映画、なんと、『エディ・マーフィのホワイトハウス狂騒曲』という邦題のくせに、一切ホワイトハウスが出てこないんです。出てくるのは議事堂です(あれも白い建物だけど )。いいのかそれで!もしかして、邦題つけた人、ホワイトハウスとアメリカ議会議事堂の区別ついてない ?
ゴルァ!! 邦題つけたウッカリ君、出てこい!11月のウチのチャンネルの大統領映画特集で、危うくこの映画も数に入れちゃうとこだっただろ!
前回勝手に続き物にしてしまって、ごめんなさい。
だって書ききれなかったんですもの!!
改めまして、池澤春菜です。
「ナルニアも物語」に続き、今回は「指輪物語」のお話を。
原題のThe Lord of the Ringsを「指輪物語」と訳してしまう、この直球にして豪快なセンス!!
原作には、この翻訳マジックがいかんなく発揮されています。トールキン自身が「翻訳はその国の言葉で」と言っているのもあり、地名やあだ名がしっくりと私たちにも馴染むものに。
ちょっと余談にはなりますが、こと翻訳物において、翻訳者の力量、翻訳者のカラーというものがどんだけ大事か!!
今まで数々の作品を読みながら感じてきた微妙な思い。
「 このしっくり来ない感じは、きっと原作にはないに違いない」とため息をついていた私としては、ここんとこは声を大にして言わせていただきたい!!
ギブスンのサイバーパンク三部作は、黒丸尚さんじゃなきゃダメだったんです。
タニス・リーの平たい地球は、誰がなんと言おうと浅羽莢子さんなんです。
「ナルニア国物語」と「指輪物語」。瀬田貞二さんがいなかったら、私の人生に光なし。
今回の「指輪物語」→映画版ロード・オブ・ザ・リングにも、数々の翻訳の苦労があったようで 。原作を読んできた人、まだ読んだことがない人、日本語の語感と、英語のとして正しさ、いろんなものを全部成立させるのは、至難の業ですよねぇ。
確かに、ヴィゴ・モーテンセンに向かって「馳夫さん!!」と呼びかけるには、相当な勇気がいる気がします。
でも、サルマンとサルーマンとサウロンには未だに混乱中。アイゼンガルドとイセンガルドも混乱中。伸ばす棒があるかないか、単語の始まりの音の雰囲気、細かいところでけっこう違うもんなんですね。
でも、そんな原作フリークの些細な戸惑いすら吹っ飛ばすほど、映像化された指輪物語は素晴らしうございました。
私が最初に指輪物語を読んだのは、小学生の時。
六巻というボリュームにしびれ。
活字のつまり方にしびれ。
補足にしびれ。
面白くて、しかも量もたっぷり、何度読んでも夢中になれる奥深さ。つまり、活字中毒の求める夢がそこには全部詰まっていたわけです。
全世界にいる無数の指輪物語フリークを差し置いて、この私がのうのうと語れることではないと思うけど でも、やっぱり、指輪物語は最高に面白い。
壮大な物語と言えばオデュッセイアもイリアスも、三国志も、マビノギオンも、古事記もそうですが、それに比肩するここまで大きな世界を、個人で創造したのは、歴史的に見てもかなり希有なことでは?
気候や風俗は言うに及ばず、言葉まで作り上げてしまったトールキンの緻密な構成力。さすが古英語の教授!!
奥深い歴史と広大な中つ国を背景に活躍する、生き生きとした登場人物達。
その中でも、やっぱり私は馳夫さんことアラゴルンが一番のお気に入りでした。
とはいえ、ファーストインプレッションは惨憺たるもの。
旅の途中、宿屋の食堂で出会った馳夫さんは「変わった様子」「履き古し、泥のついたブーツ」「半白のもしゃもしゃ頭」とあからさまに怪しい風体。暗い隅っこで目深にフード、ひっそり座って、フロド達の話に聞き耳を立てています。うん、これは、怖い。
小心者のフロドなんてさっそく、「きっと、ごろつきにお金を巻き上げられるんだ(泣)」と早合点。
でもアラゴルンは、本当はとても凄い人。王の血筋に生まれ、ゆくゆくは二つの王国を統べる上級王に。人間とエルフの希望をつなぐ者としてエステル(希望)、星の鷲を意味するソロンギル、エルフの石を意味するエレッサール とてもたくさんの名前を持っている、日本で言ったら寿限無みたいな人(ちょっと違う)。
でも、フロド一行と会うまで実に70年(!!)近く荒野を彷徨っていたので、そりゃもう惨憺たる見た目に。
暗くて、疑り深くて、割と陰湿。神経質で、秘密主義。
でも、誇りと孤独の重さを、存分に知っている。
どうもこの「孤高の」という存在に弱い私は、この時点でイチコロです。
映画の方では、ちゃんとカッコイイ登場の仕方になっておりますので、ご安心を。原作のアラゴルンに馴染んでいる身としては、ちょっと二枚目過ぎる気もしますが ま、逆のパターンに比べたら。
優しくて温かくてユーモラス、でも強大な力と、力の持つ怖さをも存分に知っているガンダルフも、おひげが似合うイアン・マッケランがピッタリ(正直、X-MENのマグニートーはどうかと思ったけど)。
原作で憧れていた、ガンダルフの愛馬飛蔭も、神々しい姿を見せてくれています。
読んだ人それぞれの頭の中にある像を、誰も違和感を覚えることなく映像化するなんて絶対に無理だとは思うけれど、この映画はその最大公約数に限りなく近いんじゃないかなぁ。
まだ原作を読んでいない方は、これを機に、じっくりたっぷり、指輪物語の世界に浸ってみて下さい。
小さなところから興味を引かれ始め、どんどんと深みにはまり、読む度毎に新しい発見がある。
私にとって指輪物語は、生涯に渡って飽きることなく、繰り返し読める魔法の本です。
と、いうことで、次回はとうとう「ゲド戦記」!!
【12月 字幕版 放送日】
『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』 6日、16日、23日
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』 6日、17日、23日
【12月 吹き替え版 放送日】
『(吹)ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』 21日、30日
『(吹)ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』 28日、31日
※編成部注:池澤さん特別寄稿第一弾はコチラ
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