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ハル・ベリー目当てで騙される価値アリ! 甘くて苦い『チョコレート』

 今更かつ当たり前のことなのですが、当チャンネルは連日たくさんの映画をお届けしております。
 しかし、星の数ほど(ちょっと言い過ぎ?)ある作品のなかから、視聴者の方が「今月はコレを観よう!」と選ぶのにはどんな理由があるんでしょう。

 

 もちろん、テレビをつけてたらそのまま見入ってしまった作品もあるとは思いますが、公開当時に見逃したとか、口コミで面白いと聞いたとか、好きなジャンルだからとか、監督・役者が好きだからといった、ちゃんと「観たい理由」がある作品も多いですよね。

 

 そんなあまたある理由のなかでも、心に秘めながらなかなか声高に叫べないモノ。それが美しい女性のセクシーシーンで話題の作品です。いま、心の中で「そうだ!」と叫んだあなたは正直です。

 

 こういう下心を不純な動機と呼ぶか、極めてまっとうな映画の楽しみのひとつであると呼ぶかは意見が分れるところではありましょうが、(僕は後者です)いずれにせよ映画を観る動機には十分なりえます。

 

 そんなわけで僕は下心から『チョコレート』を見はじめました。なんせ公開当時から、美しいハル・ベリーが濃厚なラブ・シーンを演じているとあちこちで聞いていた話題作。当初は数館での公開だったのが、ジワリジワリと拡大して、いつの間にやら全国に広がったという実績も、男性諸氏の支持を受けた結果に違いあるまい!と推測していたのです。

 

 
 物語はハル・ベリー演じる黒人女性のレティシアと、ビリー・ボブ・ソーントンが演じる白人男性、ハンクとの交流を描いた感動作・・・。

 

 と、これだけ書くと『チョコレート』という甘いタイトルから受ける印象もあって、わりとよくあるラブ・ストーリー、ついでにハル・ベリーが大胆に脱いじゃった・・・と判断されがちですが、オシャレ感漂うタイトルとは対照的に、全体的に重苦しいテーマを扱っている映画なんです。

 

 テーマの中心は、アメリカに深く根付いている人種差別の問題。舞台はアメリカのなかでもとくにその傾向が強い南部、ジョージア州です。
 あ、そうそう、今回はネタバレを多く含んでおります。これから初めてご覧になる方、あるいは見たことあるけどハル・ベリーのナイスバディしか覚えてない!という方はご注意を。

 

チョコレート.jpg
 刑務所で看守として働くハンクは、一緒に暮らす父の影響をモロに受けていて、黒人差別を隠そうとしない孤独な男。彼の働く刑務所で、ある日、死刑が執行されます。その男というのが、後に知り合うレティシアの夫。しかもその死刑執行が引き金となり、ハンクと同じ刑務所で看守をしている息子のソニーが自殺してしまいます。
 一方、夫を亡くしたレティシアにはさらなる悲劇が待っていました。夫を亡くした直後に、交通事故で息子まで失ってしまうのです。もうすべてがどうでもいい・・・状態になってしまうレティシアですが、この事故のときに偶然車で通りかかり、2人を病院へと送ったのがハンクなのです。

 

 そうして家族を失った悲しみと寂しさを埋めるように、2人はその後、男性諸氏が期待する濃厚なシーンへとなだれ込むワケです。

 

・・・。(画面に見入る)
・・・。・・・。(画面に食い入る)
・・・。・・・。・・・。(画面にかぶりつく)

 

 確かに激しい。噂は本当だ!
 多感な年齢のお子さんと一緒に観るのは、結構勇気がいります。

 

 でもですね、このシーンはイヤラシさを感じるというよりも、むしろ切ないのです。それというのも、2人の行為は愛情の延長線上ではなく、寂しさを埋め合わせるためのものだからでしょう。

 

 もしこの後、レティシアとの出逢いによってハンクの黒人差別主義があっさりなくなり大団円を迎えていれば、それはそれでヒジョーにわかりやすいラブ・ストーリーなのですが、この映画はそこまでシンプルではありません。なんせ、公開当時のキャッチコピーは「たかが愛の、代用品。」ですから。

 

 でも、安易なハッピーエンドはおろか、人種差別も含めて諸々の問題に答えを提示せずに意味深で終わるところにこそ、『チョコレート』の魅力があるのです。

 

 さて、意味深と申しましたが、この映画を観た人の間で必ずと言ってもいいほど物議をかもしだすもの。それが「タイトル問題」と「ラストシーン問題」です。
 まず『チョコレート』という邦題ですが、原題は『Monster's Ball』で、これは死刑執行前夜に関係者たちによって開かれるパーティを意味する言葉。直訳すれば「怪物の宴」とかになるようですが、これじゃあまるでホラー映画

 

 そこで映画会社の方々は「これじゃあヒットしねーだろ!」ということで、ちょっとお洒落なラブ・ストーリーの匂いがする『チョコレート』にしたのでしょう。英語タイトルをそのままカタカナ読みして公開する映画が主流の昨今にあって、これは結構珍しいコトのようです。
 しかし! そんなご時世にも関わらず、あえてまったく違うタイトルを付けた方に拍手を贈りたい。

 

 だって、「怪物の宴」だとキモチワルイとか言って敬遠されそうなのが、『チョコレート』になると、一気にイメージアップ。この映画の1年ほど前に劇場公開された『ショコラ』効果も手伝って、まんまと「コジャレタ恋愛映画」的印象を与えたハズです。これならデートにも誘いやすい。

 

 しかもタイトルがいくつもの隠喩になっているのもスバラシイ。
 ハンクの好きなものが「チョコレート・アイスクリーム」であることは言うに及ばず、レティシアの肌の色を示す隠喩でもある。そして単純なラブ・ストーリーではなく、苦みも含んだ映画でもあることを示唆します。あるいはチョコレートのようにドロドロとしたものを人は持っていて、それを暗示しているのだ! と捉えるヒトもいるかもしれませんね。

 

 そしてもう一つが、さきほどちょこっと触れたラストシーン問題です。
 墓を映すやや意味深なカメラワークと、ハンクが夫の死刑を執行した人物であることを知ったレティシアの表情から、何を受け取るかは本当に人それぞれ。
 このいかようにもとれるラストシーンの演技が、ハル・ベリーにアフリカ系アメリカ人として初めてアカデミー主演女優賞受賞に大きく貢献したのは間違いないでしょう。ちなみに僕はレティシアが(何かを諦めながらも)ハンクを受け容れようと決心した・・・と捉えたクチです。

 

 そうそう、言い忘れていましたが、ハンクの息子を演じたのは、今は亡きヒース・レジャー。短い時間ながら強烈な印象を残す役なので、ファン必見です。

 

 米男性誌エスクァイアで「2008年最もセクシーな女性」にも選ばれたハル・ベリーのヌード目当てでご覧になる方は「想像と違うな」と思われるかも知れませんが、『チョコレート』はそれを補ってあまりある良作ですので、まだの方はぜひ年内にご賞味ください!

 

(映画ライター 奥田高大)

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【12月放送日】 18日26日30日

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