僕がまだ今に比べてずっと純心だった幼少時代。テレビでよく「ドッキリ」なるものが放送されていました。ホラ、たとえばコワモテのお兄さんが突然絡んできたり、タレントの悪口を言っているところに本人が登場。驚きと後ろめたさのあまり、途端にダンマリ・・・といった場面に出くわしたあと、「ドッキリ」と書かれたでかい看板を持ったヒトが登場してくるアレです。
まあお世辞にも趣味がイイとは言えないタイプのコンテンツですが、ほんの十数年前まではタレントだけでなく、一般の人まで巻き込んでやっていたのです。ところが最近では名誉毀損とか、肖像権なんかの関係でしょうか、この手のドッキリ系バラエティに遭遇する機会はずいぶん少なくなってしまいました。
ところが、このドッキリ、日本では絶滅危惧種並に減ってしまいましたが、海外ではいまでもチョイチョイ行なわれているようです。それこそアメリカでこんなことをやった日にゃあ、すぐ裁判ザタになるんじゃないかと思うのですが、「Ha Ha Ha!! You驚いたかい?? アメリカンジョークってやつさ」と煙にまいてしまうのかもしれません。
さて、なぜ唐突にこんな話をしたかと申しますと、今回ご紹介するマイケル・ダグラス主演の『ゲーム』の軸となっているのは、まさに「ドッキリ」なのです。
マイケル・ダグラスが演じるニコラスは、イケメン実業家。誕生日が近づいたある日、弟(こちらはショーン・ペン。たしかに似てなくもない)から、CRS社という妙な会社が主催する「ゲーム」への招待状をお祝いに渡されるのです。「まあ、兄貴、そんなに働いてないで、これで息抜きしなよ」ってコトですね。弟はカードを渡すだけで、詳しいことは何も話さない。そこでニコラスは後日、ゲーム開始の契約を結びます。
で、サインしたらもう後の祭。ニコラスにこれでもかとイベント、というよりトラブルが相次ぐのです。 でもまあゲームの契約を結んだ後だから、当初ニコラスは驚きながらも、「あー、これね、弟がくれたヤツ。ゲームなんでしょ?」と実業家らしく、全身から余裕を感じさせます。 もちろん、観ている方も同じ。「ニコラス、大変やなあ。でも、まあ、ゲームなんだから、そのうちCRS社の人が出てきて、プレゼントでも渡すんでしょ」 とバリバリお菓子でも食べながらのんびり観ていられるわけです。
ところが。
どれだけトラブルが発生しても一向に「ゲーム」が終わる気配ナシ。当のニコラスはもちろんのこと、観ているこっちもだんだんと余裕がなくなってくるのです。 そうしてあまりに救いのない状況に、観ている側は「いやいや、『ゲーム』ってぐらいなんだから、早く助けてあげてよ!」と、意味なくすがりたくなるほど、ニコラスは人生真っ逆さまなヒドイ仕打ちを受けるのです。
果たしてニコラスが巻き込まれた悲惨な状況はゲームなのか、はたまた現実なのか? そいつぁ観てのお楽しみです。
さて、この『ゲーム』。監督は『セブン』やら『ファイト・クラブ』やら『ゾディアック』、さらに来年2月にはブラピとケイト・ブランシェットの『バベル』コンビを起用した『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』が公開されるデヴィッド・フィンチャー(忘れちゃいけない『エイリアン3』もね)。
こうやって並べると、ヒットメーカーとして着々とステップアップしているカンジなフィンチャーですが、『ゲーム』のスゴイところは、観る人に前情報を大盤振る舞いしてからスタートすることでしょう。
たとえて言うなら、マジシャンが種アカシしてから、手品をはじめるみたいなモノ。
もっと言うなら、合コンで、自己紹介もそこそこに「私、カレシいるんだよね」と言うようなモノ。(←じゃあ来るなよ!)
どちらも普通なら相当に興ザメします。
だってタイトルに「ゲーム」ってつけてるんだから、大抵のことは想定内ですよ。でも、想定内のはずが、だんだんと想定外のものになり、ニコラスが「ゲーム」のなかにいるのか、はたまた「ゲーム」に見える現実のなかにいるのかが、分からなくなってしまうのですよ。まさに監督の思うツボ。
まあ「ドッキリ」要素以外にも、やや傲慢なニコラスが究極の体験をすることで変化していく姿は、たしかにフィンチャーぽいのですが、『ゲーム』においてはそういった「人間の罪とか業」みたいな問題はあくまでオマケ。それよりももっと単純に「種アカシしても、俺はお前らを驚かせてやるよ、ベイベー」的なフィンチャーからの挑戦に、真正面から挑むのが正しい見方でしょう。
あ、そうそう、皆さんにひとつ質問。この映画には途中で一体のピエロが出てくるんですが、ピエロっていつから怖キャラとして用いられるようになったんでしょう? 近年では『SAW』でイッキに株を上げた感がありますが、僕の知るところでは『キラークラウン』や『IT』あたりかと思うのですが、いかがでしょ?
もしご存じの方は、)ぜひコチラまでお送り下さい!
そうそう、最後に手前味噌な宣伝をひとつ。 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の公開に合わせて、当チャンネルでは来年『ファイト・クラブ』をお送りすることが決定!! 2009年に控えるフィンチャーワールドをお腹いっぱい楽しむためにも、まずは上質ドッキリムービー『ゲーム』を一度ご覧下さい。
ほんと、最後の最後まで分かりませんから・・・。
(映画ライター 奥田高大)
【12月放送日】 28日、30日