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 冒頭からなんですが、僕にとってジョン・ウーといえば『フェイス/オフ』である。

 

 『男たちの挽歌』シリーズもいいし『レッド・クリフ』の大ヒットぶりもすごい。しかし僕にとって、ハリウッド映画として、娯楽作として、しっかりツボを押さえながら、自分のカラーもだすことに成功している『フェイス/オフ』は、ジョン・ウーの一番いいところが凝縮されている作品なのである。

 

 大ヒット作なので、知っている方もたくさんいるとは思うけれど、ここで簡単にあらすじ。

 

 ショーン(ジョン・トラボルタ)は6年前に子供を殺された過去を持つFBI捜査官。で、かわいいわが子を殺した宿敵というのが、ニコラス・ケイジ演じる凶悪テロリスト、キャスター。息子を殺されて以来、トロイをひたすら追いかけてきたショーンは、ある日トロイがジェット機で逃亡するという情報を手に入れ、空港へと急ぐ。

 

 ショーンはそこでトロイが乗るジェット機にヘリでぶつかり、離陸を防ぐ超荒技を繰り出した後、ついにトロイを逮捕する。

 

 と、ここまでが冒頭約15分。

 

 1時間ぐらいは引っ張れそうなネタを15分ぐらいで出してしまう冒頭に少し不安になるが、そこはさすがジョン・ウー。ちゃんと残り2時間弱もしっかり面白い。

 

 

 トロイ逮捕後、ほっとしたのもつかの間。ショーンはトロイがどこかに細菌テロを仕掛けていたことを知るのだが、詳しい情報がわからない。本人から聞き出そうにも、ショーンとの銃撃戦でトロイは意識不明の重体で、話を聞くことが出来ない。

 

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 最後の手段として残ったのが、トロイと一緒に悪事を働いていた弟から情報を聞き出すこと。そのためにショーンは自分の顔を剥がして(フェイスオフして)憎いトロイの顔を移植することを決断する。もちろん、後でちゃんと元に戻せるという条件付きで。


 その甲斐あってトロイの顔を貼り付けたショーン(←ややこしい)は、まんまと弟から、細菌テロを仕掛けた場所を聞き出すことに成功。だが、直後にショーンの顔をつけた(フェイスオンと言うかは不明)トロイが目の前に現れる・・・というもの。

 

 『フェイス/オフ』を語るうえで絶対に欠かせないのが、『男たちの挽歌』でチョウ・ユンファが見せ、世界中の男の心をわしづかみにしたユンファ撃ち(2丁拳銃のこと)が、ジョン・トラボルタとニコラス・ケイジのハリウッド版で見られることである。

 

 極端に言ってしまえば、このシーンだけでも映画を観る価値がある。

 

 映画を見終わった頃には、トロイ愛用のやけに趣味の悪い金ピカ銃でさえ、思わず欲しくなってしまうほど、この二人の銃撃戦がカッコイイのだ。

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 さらにジョン・トラボルタとニコラス・ケイジの演技もいい。1本の映画で、いい人と、キレキャラを演じられるというのはそんなに多くないだろうから、撮影はきっと楽しかったはずだ。なにか嫌なことがあったりしたら、二人ともトロイ役のときに、周囲に当り散らしたりして、ストレス発散していたのかもしれない。(あくまで想像です)
 

 『フェイス/オフ』を観て、僕と同じように感じる人も多いかと思うが、これはハリウッド版の『インファナル・アフェア』である。

 

 順番的には『インファナル・アフェア』が2003年公開なので1997年に公開された『フェイス/オフ』のほうが先。乱暴に言うと『インファナル・アフェア』が”フェイスオフ”なしの生身でマフィアに潜入するのに対して、トラボルタはハイテク医療技術で顔を変えて潜入するほかは結構同じである。

 あくまで僕の好みだけれど、ジョン・ウーに始まる香港ノワールの頂点は『男たちの挽歌』と『インファナル・アフェア』とが競り合った末に『インファナル・アフェア』が僅差で勝利する。


 だが、実はジョン・ウーは潜入モノのプロットを、『インファナル・アフェア』が公開される前に、チョウ・ユンファとトニー・レオン出演作『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』(92年公開)と、今作『フェイス/オフ』とで二回も実践していたのだ。しかもハリウッドではハイテクで顔を取っ替えるという、いかにも娯楽作的味つけをして大ヒットさせている。

 

 引き合いに出してちょっと申し訳ないのだが、『インファナル・アフェア』はマーティン・スコセッシによって『ディパーテッド』という名でリメイクされた。でも、これもあくまで個人的な意見ということだけれど、『ディパーテッド』と『インファナル・アフェア』を選ぶとしたら、僕は『インファナル・アフェア』をとる。やっぱり"男の哀愁"という意味では、ディカプリオよりトニー・レオンのほうが断然あるのだ。

 

 そんなわけで、僕はこの場を借りて、ジョン・ウーさんにぜひお願いしたい!

 

 『インファナル・アフェア』をぜひハリウッドリメイクしてください!!これを観たいのはきっと僕だけではないはずである。きっとスコセッシ版『ディパーテッド』とはまた違う、テイストに仕上がるに違いない。

  でももしこのリクエストをジョン・ウーが聞いたら、「あれと同じことは『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』と『フェイス/オフ』でもうやりつくしたよ」と言われてしまうのかもしれない。

 

(映画ライター 奥田高大)

©Touchstone Pictures


【3月放送日】 6日21日30日

 先日、米フォーブス誌のウェブサイトが行った「スターの価値」という調査で、ウィル・スミスが「最も金になる男」に選ばれた。日本でもヒットした『ハンコック』では2億ドルという興行収入を記録したのが記憶に新しいが、これに限らず、最近の出演作はことごとく大ヒット。とにもかくにも、出れば当たる「ドル箱俳優」として確固たる地位を築いているのだという。

 映画『7つの贈り物』はそんなウィル・スミスの最新作である。

 監督は、ウィル自身もアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた映画『幸せのちから』で一緒に組んだガブリエル・ムッチーノ。この組み合わせを聞いただけで、そそられる人も少なくなさそうだ

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 で、簡単にストーリーを説明すると、何かのきっかけで心に深い傷を負った男が、「ある計画」を進めている。その途中で、ロザリオ・ドーソン演じるエミリーと出会い、恋に落ちるのだが・・・というあらすじ。

 こうなると気になるのは、「ある計画」って「どんな計画?」 ということになる。ところが、『7つの贈り物』ではそれが何なのか、観客に知らされるのは、エンディングまで残り30分ばかりとなった頃なのである。

 つまり、観ている側はぼんやりとした手探り状態のまま、物語の大半を観ることになる。物語が進行していく合間に、ところどころ、ベンの過去を映し出すシーンが入ったりはする。でもそれもヒントというよりは、事実の説明といった感じで、それを観たからといって、謎が解けるタイプのものではない。

 映画でこういった手法は頻繁まではいかなくとも、たまにはある。上手くはまれば、非常に効果的なのだけれど、ある意味ではとても危険な方法でもある。

 最初の30分ぐらいまでなら、たいていの人は我慢できるけど、1時間30分ずーっと「何なにナニ?」みたいな状態だと、途中で席を立つ人が出てきても仕方ない。そんなリスクを抱えながら、物語は進行していくわけである。

 だが幸いにも、僕が観た試写会場では途中で飽きて帰っちゃった人は1人もおらず、(試写会で途中で帰る人は、そもそもほとんどいないけど)それはきっと映画館でも同じだろう。つまり観客は謎で惹きつける作戦にまんまとひっかかってしまったのだ。

 それはストーリーの持つ力もさることながら、やはりウィル・スミスとロザリオ・ドーソン、さらに出演時間はそれほど長くないものの、ウディ・ハレルソンの演技によるところが大きい。 

 そんなわけで、この映画のストーリーそのものは、これからご覧になる人のためにも、詳しく説明するのはやめておきたい。というか、一つを説明すると、それが、ほとんどの答えになってしまう。

 でもさすがにこれだとさすがに消化不良なので、来日記者会見の様子をご紹介したい。

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 ここ1年で3度も訪れているウィル・スミス、登場した途端に冒頭から飛ばしまくる。

 席に着くなりマイクを手に取り、

「監督に伺いましょう。ウィル・スミスほどの有名人と仕事をするのはどんな気分ですか?」と会見を自らリード。

 ところがそれにも監督は慣れた様子で

「3年間、ずっとこんな調子なんだよ」と記者に向かって笑いながらコメント。

 さらにロザリオ・ドーソンとのラブシーンについて質問が及び、ドーソンが「ウィルはあのときすごく神経質になってたの。意外だったわ」と暴露するも、

「ラブシーンってのぎこちないものさ。だって、僕がいまここで、翻訳の女性といきなりラブシーンを始めたらびっくりするでしょう? でも撮影現場ではやるんだよ、そりゃ戸惑うでしょう? それに僕はおばあちゃんから、女性には敬意を払うようにと教え込まれた。だからあのときいは神経質だったんじゃなくて、敬意を払ってたんだよ」

 と、なかなかインテリジェントな応対。

 とくに面白かったのは、通訳の人が彼のコメントを通訳していると、どこからともなく、ドゥーワップ的サウンドが聞こえてきたとき。

 一瞬、映画のサントラでも流しているのかと思ったら、よくよく聞くとウィル・スミスがマイクを使って、BGMを作っていたのだ。これには通訳の方も大ウケ。

 さらにフォトセッションが始まる前には、自分の名前が書かれたネームプレートにサインして、ホテルマンにプレゼントして、「これ、eBayで売るといいよ」と親切(?)なアドバイス。

 と、こんな具合で会見は楽しく進んだのだが、『7つの贈り物』はどちらかというと地味な映画ではある。もちろん、ウィル・スミスの出演作であれば、「地味」という言葉もそれほど説得力がないのだけれど、それでもやはり「地味」な映画である。

 本人もその辺をちゃんと意識していて、会見の最後をこんな言葉で締めくくった。

「エイリアンも出てこない、爆発もない、特殊効果にも頼らない映画に出ることは、僕にとってすごく怖い体験だった。でもそのかわりに、僕らは素晴らしい役者達と心を動かす演技を差し出したんだよ」

 んー、気の利いた台詞。やりますね。

 それにしても、なぜウィル・スミスはこうもハリウッドで成功したのか?

 黒人俳優といえば、シドニー・ポワチエにはじまり、モーガン・フリーマンやデンゼル・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、ジェイミー・フォックス、ローレンス・フィッシュバーンなど、多くの名優・人気俳優が並ぶのだが、シリアスとコメディの両方を、しかも主役級で演じられる人物というとぐっと少なくなる。

 たとえばモーガン・フリーマンなんかが、脇を固めると物語がピッと締まる。どことなくフワフワとした、今ひとつリアリティに欠ける映画であっても、彼が出てくると、それだけで映画に深みがでる。

 ただ、モーガン・フリーマンやデンゼル・ワシントンが主演となると、どうしてもシリアスものの気配がしてしまうし(もちろん、シリアス作以外にもでてるのだけど)、"スター"というよりは、"演技派"といった言葉がしっくりくる。

 ところがウィル・スミスの場合、SFからポップなもの、シリアスまで、どうにでも物語を振れるのと、華やかさという点でもヒケをとらないのが、ここまで売れっ子になった理由だと思う。

 でもウィル・スミス人気はそれだけではない、というのを今回の記者会見で確信した。

 とにかく、ウィル・スミスは人を惹きつける術を知り尽くした、エンターテイナーなのである。だからきっと、「あー、ここんとこ気むずかしい大物役者と一緒にやったけど、気疲れしたし、しかも収入はコケてスポンサーと映画会社から怒られるし。今度はハズレのない役者と撮りてえなあ」とプロデューサーや監督が思ったときに、彼らが選ぶのはウィル・スミスなのだ。

 そうそう、『7つの贈り物』のなかで、ベンが「MIT(マサチューセッツ工科大学出身」という設定が出てくるのだが、実際のウィル・スミスもMITの推薦を得ていたのに、それを蹴って音楽デビューを果たしたという、すごい経歴を持っている。MITといえば、毎年タケノコのようにノーベル賞受賞者が出てくる超名門大学!

 まだまだ、「麻薬ブローカー」のように、ステレオタイプな役を黒人が演じることの多いハリウッドにあって、そういった目に見えない壁を簡単に破ってくれるウィル・スミスのような役者が増えると、ハリウッド映画はもっと面白いものになるはずである。

 次の作品も期待してますよ!
 
(映画ライター 奥田高大)

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2月21日(土)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
'08年米 123分 監督/ガブリエル・ムッチーノ 出演/ウィル・スミス、ロザリオ・ドーソン、ウディ・ハレルソンほか

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