これぞプロのセールスマン!『ドア・トゥ・ドア/バッグに愛とまごころを・・・』
1932年にアメリカで生まれたビル・ポーターは、先天性の脳性麻痺障害者。父親は、かつて業界で有名なセールスマンだった。その優秀な血を受け継いだ彼の訪問セールスの才能は素晴らしく、後に伝説的な一流セールスマンとなる。
『ドア・トゥ・ドア/バッグに愛とまごころを 』は、訪問セールスを生き甲斐にした彼の半生を綴ったストーリー。
大手ワトキンズ社のトップ・セールスマンとして功績を認められるまでは、決してたやすい道じゃなかった。けど彼が働く喜びをいつも忘れないところが素晴らしい。心からやりがいを感じ、楽しそうに働くビルの姿こそ、『ドア・トゥ・ドア』の見所だ。
例えば、彼にとって悪天候は人一倍つらく、普段以上に身体の自由が利かなくなってしまう環境。それでも歩き続けるのは、多くの人が家で暇を持て余している雨天時が、訪問セールスマンにとって絶好のチャンスだからだ。
自分の身体なんて二の次にして、雨の日こそ!って気持ちで、後ろを振り返らずに歩き続ける姿は、とても頼もしい。
ストーリー前半の様子からも感じる部分はあるのだが、ビルは少し頑固な性格の持ち主。仕事に対しての誇りや自分へのプライドも持っているし、自立意識も高い。
性格には、彼の個性はもちろん、時代背景が関係している部分も大きいかと思う。
私には、ビルと同世代の祖父がいる。私の祖父は限りなく全盲に近い半盲で、障害者手帳も持っているのだが、この二人、性格や人の接し方でよく似ているなあと思う。
祖父も日常生活の中でほとんど周りの人に甘えない、自立意識の高い人だ。
家族が手助けしようとしたって「いやいや、自分でできる」っていうのが口癖だけど、実は口ほどに精神的強さを持っている訳じゃない強がり屋。
だってたまに「わしはこの目のせいで家族に迷惑しかかけてない」と悲しそうにこぼすこともあるのだ。
人に優しく自分に厳しいタイプは、人から信頼を置かれることも多いけど、ちょっと難しい人とも思われてしまう。
二人が少年だった1930〜40年は、世界中で戦争が勃発し、誰しもが自らの力で生き抜こうとした時代。そんな時代を生きた彼らには、おのずと自立意識が身についたのではないか。
周りに甘えず、弱音を吐くことも少ない祖父の身近にいた私は、『ドア・トゥ・ドア/バッグに愛とまごころを 』を見て、祖父やビルの性格は、この世代のリアルな人間像なのだと気づいた。
ビルを演じたウィリアム・H・メイシーは、屈強に見えるビルの心境表現がとても上手い。彼は、ビルの喜びや、時には怒りや、疑問や、悲しみなどを、表情だけで感じ取らせてくれる。
そのハマり具合は誰もがわかるだろうし、彼の巧みな演技に目が離せなくなるだろう。三枚目役者のイメージがあるメイシーだが、そんな彼があえて主演に立っている点に注目して観てほしい。
演じるとなると役者に技術が要求されるビル・ポーターという役柄を、最近になって、日本でしっかり演じ切った役者が、嵐の二宮和也さんだ。
今年3月末、日本人向けにリメイクしたスペシャルドラマとして『ドア・トゥ・ドア』は放送され、兼ねてから演技評価の高い二宮さんが、嫌味のないビルの人柄を繊細に演じた。
この日本版のドラマで素晴らしかった点は、たとえ国境を越えて設定が変わろうと、本来のストーリーが持つメッセージが変わることはなく、日本の視聴者にしっかりと伝わったこと。さぞかし多くの人の感動を呼んだのではないだろうか。
世界中の誰もが興味をそそられる魅力的な人物、ビル。
『ドア・トゥ・ドア/バッグに愛とまごころを 』の中で彼を知れば、皆がビルのことを好きになるだろう。くしゃくしゃっとした笑顔に愛嬌があって、人に楽しい話をするのが上手で、誠実で、優しい。
多くのお客さん達にとって、ビルは、いつしか友達のような存在となり、ドアのノックが聞こえたなら笑顔で迎え入れるようになっていた。
私も、ビルに家のドアをノックしてもらえたらなあ。
だって、彼の笑顔を見ながら話を聞く時間は、楽しいに違いないんだもの。
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(ライター 韓 奈侑)
【5月放送日】 17日









