『運命の女』 なぜ女は不倫で輝くのか? あるいは不倫映画を男はどう見るべきなのかについて。
ちょっと乱暴だけれど、『運命の女』はサスペンス好き、あるいは不倫モノ好きの方には、ぜひ観ていただきたい映画である。サスペンスも不倫(実生活で不倫しているかどうかはともかく)も両方好きであれば、もちろん言うことはない。
『運命の女』の主な登場人物は3人。
絵に描いたような良い夫・エドワード(リチャード・ギア)、夫婦生活になんの不満もなく、優しい夫とカワイイ子供に囲まれる幸せな妻・コニー(ダイアン・レイン)、その妻とイイ関係になってしまうセクシーな男・ポール(オリヴィエ・マルティネス)である。
登場人物の紹介だけで、カンのいい人はある程度想像つくと思うけれど、正直なところ『運命の女』は中盤まで、わりとよくある不倫映画である。
良い夫と子供に恵まれ、何不自由ない生活を送る妻。しかし、とあるきっかけでセクシー男に出逢ってしまったことから、妻は泥沼の不倫街道をまっしぐら。ダメとはわかっていながらも、気持ちはどんどん盛り上がっていく。
そして妻の異変に気づいた夫は事実を確かめるべく行動する、という展開。
ごくありきたりな不倫モノの場合、この後、物語がたどるべき道は二つしかない。
出逢った男こそ「運命の男」だと信じて、女性が新しい愛へと旅立つ"真実の愛を追いかけて"ケース。
もう一つは、「やっぱりダメダメ! 私には素晴しい夫と可愛い子供がいるわ!」と思いとどまり、ある日の昼下がり、庭で犬と一緒に遊ぶ我が子をキッチンの窓から眺めながら、ふと男との情事を回想する"ひと夏の美しい思い出"ケース。
ところが『運命の女』はどちらにも当てはまらない。
僕も途中までは、まあこういうのってわりとあるよなと、少々タカをくくって観ていたのだけど、後半はたんなる不倫モノからスリリングなサスペンスへとシフトして、あれよあれよと映画に引き込まれてしまった。
不倫モノとサスペンスの割合はちょうど半々ぐらい。だから不倫モノを期待しても裏切られないし、サスペンス好きも裏切られない。守備範囲が広いのだ。
ただ今回は、というより僕としては『運命の女』は「不倫モノ」であることにスポットをあてたい。
古今東西・老若男女問わず、この手の映画は夫か妻か、男か女か、子供がいるか、いないかによって、まったく感じ方が違う。たとえば僕は独身男性。それだけにコニーはもちろんのこと、良い夫でありながら妻に裏切られたエドワードにも、どうも感情移入しにくい。そんなワケで、僕は映画の後半でヒドイ目に遭うポールが、自業自得だとは知りながらも、可哀相だと思ってしまった。
では既婚女性、つまりコニー的立場の人はどうか?
もちろん、世の中には「コニーが悪い! こんなにイイ夫がいたら、不倫なんてありえない!」と断言する女性もいるとは思うけれど、たぶん、おそらく、少なくない割合で、ちょっと羨ましい、私も一生に一度くらいはこういうのがあってもいいかも・・・と憧れのようなものを抱く人もいると思う。
普段の生活が平和で、穏やかであればあるほど、ちょっとした火遊びをしたくなる気持ちは理解できる。これといった不満のない環境のなか、必要とされるものがあるとしたら、それは刺激以外の何ものでもない。
一方、結婚して奥さんにも優しくしている、平和な家庭を築いていると自負する夫は、不倫モノをどう感じるのか? こんな妻はケシカランと感じるのか、あるいはさらに想像力(妄想力)を働かせて、自分が美しい女性と不倫しちゃったらと想像するのだろうか?
独身男としては、興味津々なのだ。
それにしても、不倫映画で魅力的なのは、きまって女性である。
『マディソン郡の橋』のメリル・ストリープしかり、『イングリッシュ・ペイシェント』のジュリエット・ビノシュしかり、どれも男性より女性のほうが、生き生きと美しく描写されていて、それは本作にもあてはまる。
たとえば本作におけるコニーとポールの情事シーンはまあ、単刀直入に申し上げて、相当にエロい。エドワードとの夫婦ベッドシーンもあるにはあるのだけど、それはまあセクシーな程度。
ところがポールとの情事になった途端、吐息は絶え絶え、視線はトロっと、コニーはエロモード全開。ベッドやソファ、階段に至るまで、場所を選ばずコトに及んじゃうのである。
今作出演時、コニーを演じたダイアン・レインは30代半ばで、内から滲み出るような色気がムンムン。妖艶で、紫色な空気(僕の想像)がダイアン・レインを包んでいる。こういうエロさは、いくら美人でも20代のオネーチャンではとても出せない。
エイドリアン・ライン監督による『フラッシュダンス』で、ジェニファー・ビールスが食事するシーンも相当に色っぽかったけど、今作はダイアン・レインの功績もあって、それをはるかに凌ぐエロさです。
それにしてもこの手の映画での妙な色っぽさは、不倫(禁断の恋)に憧れている女性が多い・・・という意味なのだろうか? 既婚だろうが、独身だろうが恋愛に対する姿勢やのめりこみ具合が、それほど変わらない男に対して、女性は、”禁断の恋”という要素が加わることで、気分的にぐぐっと盛り上がる傾向があるのかもしれない。
まあ、あくまで個人的な意見ですが 。
そのあたりも考えながら、見ていただくと、『運命の女』はさらに楽しめること間違いなしな作品です。
© 2002 "Unfaithful" Filmproduktion GmbH & Co. KG and Twentieth Century Fox Film Corporation.
(映画ライター 奥田高大)








