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9.11後に観る『ピースメーカー』

 当時、監督がどんな思いで『ピースメーカー』を作ったのか知る由もないが、今作は2001年9月11日まで、ごく普通に面白いサスペンス・アクションの一つだった。

 

 ジョージ・クルーニーとニコール・キッドマンの豪華組み合わせに加えて、見応えあるカーチェイス。「核を奪ったテロリストを追いかける」というストーリーはそれほど斬新でないにせよ、観客を楽しませるツボをしっかりと押さえた一級の娯楽作品。

 

 ところが9.11後の今になって観ると、妙なリアリティを持って迫ってくる。

 

 旧ソ連の核弾頭10基を解体のために運搬していた列車が事故に遭い、そのうちの1基が爆発。

 

ピースメーカー.jpg
 そこでアメリカ政府は、核物理科学者のケリー(ニコール・キッドマン)をはじめとする専門家を招集して事故の究明にあたる。

 そして調査チームにロシア事情に詳しいデヴォー大佐(ジョージ・クルーニー)が加わったことから、事故はテロリストが仕組んだものであったことが判明。ケリーとデヴォーはテロリスト達を追い詰めてゆく。

 

 そうして苦労の末、盗まれた核弾頭の回収に成功するのだが、見つけた核弾頭は8基。残り一つはテロリストにすでに運び去られたあとだったのである。

 

 その核を運び出した人物というのが、ユーゴスラビア紛争で「ピースメーカー」を自負するアメリカに故郷を破壊されたデューサンという男。


 デヴォーとケリーはデューサンを見つけ、核を奪い返すことができるのだろうか・・・というのが本作のあらすじ。

 

 『ピースメーカー』に登場するテロリストの動機は、巨額の金でもなければ、ムショにいる仲間の解放でもなく、「アメリカの正義」に対する怒りだ。

 

 動機そのものは新しいものではない。

 

 けれど、『ピースメーカー』がほかと大きく異なる点は、テロリストの描き方にある。

 

 この手の映画の多くが、テロリストを同情の余地ない対象として描くのに対して、本作では「おまえ達の言い分もわかるよ」とテロリストに感情移入したくなるほど、犯人の心理がきちんと描かれている。

 

 アメリカの攻撃によってデューサンが故郷や家族を失い、そのために受けた悲しみにとうてい癒されるものではなく、怒りのやり場をどこかへ向けることも仕方ない。

 

 ふつうなら、嫌な存在でしかないはずのテロリストに対して、『ピースメーカー』ではふとそんな風に考えてしまう。決して許される方法ではないものの、それはある種の正義によって行われた行為なのだ。

 

 とくにアメリカ同時多発テロ事件後の今となっては、その思いがより複雑なものになる。

 

蛇足のエンディング.jpg
 ただ、そんな具合にそこらのサスペンス・アクションとは違うだけに、ラストシーンには一言もの申したい。今作ではジョージ・クルーニーとニコール・キッドマンによる愛だの恋だのが(すごく出てきそうなのに!)まったくといっていいほど描かれないのだが、最後の最後でそれを微妙に匂わせるシーンがある。

 

 『ピースメーカー』は娯楽映画の体裁をとりつつ、きっちりメッセージも込めているところが長所(?)の一つだと僕は思っていたのだけど、最後にそんなシーンがあると、「え?! スターを二人も起用したから、なんだかんだ言っても最後はそうなっちゃうワケ?」と、ちょっとガッカリする。

 

 雨の日も風の日も、休むことなく新聞配達を頑張っている女の子が、いかにも軽そうな男とデートしているのを見かけてしまったような気分になる。

 

 いえ、べつに愛だの恋だのがあってもいいんだけどね・・・。ちょっと中途半端すぎやしませんか!?

 

 と、こちらも最後の最後で辛口になってしまいましたが、未見の方はもちろん、9.11以前に観たことのある人も、ぜひもう一度『ピースメーカー』をご覧下さい。きっと以前とは違った思いを抱くはずです。

 

(映画ライター 奥田高大)

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【1月放送日】 3日(吹き替え)10日13日23日  

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