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憎さあまって可愛さ100倍、『マトリックス』

 前回書きかけた、『マトリックス』が大っっっっっっっっキライだった、ということの続きを、今回は書きます。

 

 まずワタクシ、基本、エンターテイメントが好きなんです。好きっつーか、スゴいと思う。心から感心する。感動すらする。

 

 より多くの人たちに、より満足度の高い娯楽を供給する、っつーミッション・インポッシブルを、商売柄、ワタクシも日々課せられてますんで、常にそれにチャレンジしつづけてる(で、ちゃんと結果だしてる)ハリウッドを、ワタクシ、心底リスペクトしてるんですわ。

 

 100人いたら100人全員を楽しませるってことが、実は一番ムズかしい。

 

 逆に、100人全員を楽しませなくていいんだ、って開き直っちゃったような映画、「ミーの高尚なアートがユーに理解できるザマすか?」的な芸術映画だとか、「解るヤツだけオレ様についてこい!ついてこれん落伍者は容赦なく置き去りにするぞ!」的な難解オレ様映画だとかに、まるっきし興味ないです。エゴだよそれは(byアムロ)

 

 そんなワケでして、実はワタクシ、『マトリックス』、好きじゃなかったんです…。

 

 公開時にリアルタイムで見てんですが、1は確かに面白かった! 1はまごうかたなきエンターテイメント映画でしたから。お客さんに楽しんでもらって、喜んで映画館から帰ってもらおう、っつう、まっとうな商売人としての低姿勢さが、ちゃ~んと感じられた。

 

 2で、つまらなくなった。ってか、監督兄弟が本当にやりたかったのは、エンターテイメントじゃなかったんだ、“オレ様映画”がやりたかったんだ、ってことが、2で分かっちゃった。

 

 2公開時、「ストーリー、意味わかんない。でも、最終作の3で全てのナゾが解けるんでしょ?」、的な、むなしい期待論もささやかれてました。でも、そりゃありえないって!とワタクシ思ったもんですわ。もはや明らかに2で方向転換してるじゃんか、「解るヤツだけオレ様についてこい」路線に。

 

 で、3公開。ワタクシは期待せずに見に行ったワケですが、案の定、ますますワケわからない状態で、シリーズは終わっちゃった。こうなる未来は2の時すでにワタクシにゃ見えてたのだよ。オラクルのようにね!

 

 とまぁ、ここまでは、ワタクシ個人の感想と思い出です。ただ、世間一般的にも、この、「1面白い、2つまらない」という感想は、皆様がかなり共通に抱いたようでして、2がワケわからなすぎて3見る気が失せちゃって、結局、3見ず終い、っつう人が、ワタクシの回りじゃけっこう多かった。ネットで調べてもそういう声は多いようです。

 

 今回のザ・シネマでの放送では、そういう人が多いっつう仮説にのっとり、かつて2まで見てやめちゃった人や、今回初めて『マトリックス』を見るんだけど、やっぱり2で見るのやめちゃうであろう人たちを、いかにして3までつなげるか、という点を、実はウチら的には課題としてたんです。

 

マトリ3.jpg
 とにかく問題となるのは、2がワケわからなすぎる、っつーこと。特に終盤ですよね。アーキテクトっつうナゾの白髪翁(マトリックスを作ったヤツ?)が出てきますが、そいつとネオとの、TVモニターがいっぱいある変な部屋(ソース?なにソースって)でのやりとりが、まるで禅問答みたいでMAX意味不明。さらに中盤での、予言者とネオの会話も、かなりワケわかりません。

 

 そこらへんが分かって、2で何が描かれ、何が語られたかぜんぶ分かって、はじめて、3を見る気が起こる。3も、見終わった後に意味不明感や消化不良感が残るようじゃ、「面白かった!」っつう評価にはならんだろ、ここは疑問を残させないぐらいの解説が必要だ!っつう結論に達したんですわ。

 

 そこでまず、シリーズ3本一挙にやる!ことにしました。これ、民放なんかでバラバラに放送されたりしてましたが、ただでさえ難解なものが、それをやっちゃあ致命的に分からなくなる。イッキ見は最低限マストでしょう!!

 

 さらに、ウチでは特番つくりました。本編後にはストーリーのおさらいも付けました。あれらは全て、主に、そういう意図にもとづいて作られてたんです。

 

 実は、特番などを作るに際し、ワタクシ、『マトリックス』シリーズを通しで8回見ました!1回見ただけじゃ意味分からない。2回目にやっと「そっか!これって、もしかしてこういう意味!?」みたいな発見があり、その漠然とした発見を補強するために、さらに立て続けに見返して、8回目にしてようやく、悟りの境地に達したのであります。

 

 後日、番組制作のための打ち合わせの席で、ディレクターの解釈とワタクシの解釈では、かなり喰い違う部分が出てきた。で、そっから議論が勃発!トータルで10時間以上は激論を戦わせましたねぇ。

 

 この時から、『マトリックス』はワタクシにとって、映画史上もっとも面白いSF映画となったのです!

 

 ディレクターとの激論バトル、これが、何年かぶりぐらいに面白い映画体験だった! そういや学生だった頃、映画ヲタクのワタクシは、よくそんな議論をヲタク仲間どもと繰り広げたもんです。何時間も、とか、夜通し、とか、電話の子機(その時代は家電ってのがあって子機ってもんがあった)の充電が無くなるまで、とかね。

 

 映画好きの人の中には、そういう経験がある人って、少なからずいると思うんすよね。ケンケンガクガクの映画談義。いや~、今となっては遠い日の思い出っすわ。

 

 でも、社会に出て働きだして、あれやこれやで忙しくなると、そんなことしてるヒマがなくなっちゃった。

 

 いや、実は、ヒマなんていくらでもあるのかも。ただ人として萎えてきただけなのかも。

 

   「議論なんか面倒だ」
   「疲れるだけだ」
   「たかが映画じゃないか」
   「映画ごときで声を嗄らして議論するのもバカらしい」

 

 …我ながら、イヤ~な年のとり方をしちまいました。悲しいぐらいつまんねーオトナになっちゃってます…。

 

 その映画に何が描かれてるか理解するため、全神経を集中させ、頭をフル回転させて、緊張して映画と向き合う。

 何度も繰り返し見て、どうにかして理解しようと努める。

 そうやって築いた自分なりの理解も、他人のそれとは喰い違ってるかもしれない。

 その場合、双方の相違点をとことん徹底的にぶつけ合う。恐れず逃げず、議論する。

 

 エキサイティングっすよ、これって! っていうか、それがエキサイティングだったっつう遠い日の記憶を、ほんと十何年かぶりに思い出させてもらいましたわ、『マトリックス』に!

 

 100人中100人を喜ばせるエンターテインメントをリスペクトする、っつう気持ちは今も変わりません。が、知性を挑発してくるような、知的格闘を強いられるような、“手強い映画”だけが持ってる、楽しさと興奮。

 

 そうした楽しさと興奮ってのは、古びる、色褪せる、っつうことがありません。

 

 『マトリックス』はアクションも売りです。VFXも売りです。ただ残念ながら、それらにゃ賞味期限っつうもんがありますよね。特にVFXなんて日進月歩ですから、いずれは色褪せてく運命です。『マトリックス』は作られて10年ぐらいなんで、2009年現在まだ迫力は感じますが、さらに10年、20年、30年と時がたてば、『マトリックス』の特撮やアクションなんて、特に目新しさもなく、大して迫力も感じさせないものなってくことでしょう。

 

 でも、知的興奮、知的スリル、その面白さは、けっして賞味期限切れで腐ってくことはない。2020年、2030年、2040年の未来に生きる映画ファンたちも、『マトリックス』が持っている、そうした魅力に興奮させられるだろうことは、間違いないと確信しますね、ワタクシは。

 

 『マトリックス』は、まさに、知的に挑発してくる映画です。知的格闘を強いられる映画です。1度見ただけでは分からないと思います(分かったらスゴい!)。けど、2度・3度と見るごとに、どんどんと面白く感じられるようになるハズです。

 

 「もう見飽きたよ」ということに、永遠にならない、奇跡のような映画なのです。

 

 歴代SF映画のベストに、『マトリックス』を推す人ってのが、けっこういます。つまらない(2以降)という声がある一方、一部で評価が異常に高い!

 

 ちなみにアメリカの権威ある映画(などのエンタメ全般)情報誌「エンターテイメント・ウィークリー」誌が、オフィシャルサイトで2007年に選出したベストSF1位も、実は『マトリックス』だったんです。

 

 それは、以上のようなワケなんでしょうな。あの、超有名SF大作『×××・××××』も、あの、大ヒットしたSFシリーズ『××××××××』も、ランキング圏外でした。それは、映像の迫力だけに依存しすぎてて、数十年たてば色褪せてくっつーうら寂しい末路が、なんとなく予想できちゃうからなんでしょう。

 

 『マトリックス』は、誰が見ても同じ解釈にはならない映画です。それでいいんです。

 視聴者の皆々様もきっと、それぞれの解釈(ワタクシのとはまるっきし違う)をお持ちになると思います。それでいいんです。

 

 だからこそ、『マトリックス』こそ映画史上最高のSF映画だ、なんです。

 

 今日日、ネットで探せば、『マトリックス』の解釈を記してるサイトなんて、山ほど出てきます。そんなのを参考程度に読みつつ、当チャンネルで『マトリックス』シリーズをご覧になった後は、ぜひ、あなた独自の解釈ってのを、試みてみてください。

 

 できれば、あなたの解釈を、誰かを相手に、ツバを引っかけ合うような議論でぶっつけてみてください。

 

 映画見るってこんなにエキサイティングな行為だったのか!と、『マトリックス』は、あらためて思い出させてくれると思いますよ。

 

『マトリックス レボリューションズ』™ & © Warner Bros. Entertainment Inc.

(編成部 飯森盛良)

 

【『マトリックス』三部作12月一挙放送】 4日18日19日20日

【『マトリックス』三部作一挙放送特設サイト】 コチラ

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