ボストン。心を持ったクマのぬいぐるみテッドは、親友ジョン(マーク・ウォルバーグ)と恋人ロリー(ミラ・キュニス)のカップルを追うように、職場の同僚タミ(一応言っておくと人間の女性である)と結婚式を挙げた。でも当日ジョンは浮かない顔。というのも、ロリーとはすれ違い続きで離婚してしまったのだ。

それから1年後、テッドはジョンの分まで幸せになった……かと思いきや、タミとは毎日喧嘩ばかり。ふたりは夫婦生活を立て直すために子ども持つことを決意する。でもぬいぐるみには子どもは作れない。考えた末、テッドは友人でもある『フラッシュ・ゴードン』の俳優サム・ジョーンズや憧れのアメフト選手トム・ブレイディに精子ドナーになってもらおうとするがいずれも失敗。見かねたジョンが精子提供を申し出たものの、過去のドラッグ濫用によってタミが不妊症になっていたことが発覚する。

めげないテッドは養子を迎えようと紹介所に向かったが、これがトラブルを巻き起こす原因となった。審査の過程で、ぬいぐるみのテッドが人間同様の暮らしを送っていることが州から問題視され、職場からは解雇され、銀行口座を失い、タミとの結婚まで無効になってしまったのだ。

困惑したテッドとジョンは、新米女性弁護士サマンサ(アマンダ・セイフライド)と組んで、マサチューセッツ州を相手にテッドに人格があることを認めてもらおうと訴訟を起こすが、サマンサの健闘虚しく敗北してしまう。三人は最後の希望をかけて高名な人権派弁護士パトリック・ミーガン(モーガン・フリーマン)に助けを求めようと、ニューヨークへと旅するのだが……。

鬼才セス・マクファーレンが製作、監督、脚本、ついでにテッドの声の四役を務めて世界中でメガヒットを記録した『テッド』の続編『テッド2』は、前作同様下ネタという名の弾丸が猛烈な勢いで連射される過激なコメデイに仕上がった。

精子バンクの保管室で棚にぶつかったジョンは精子まみれになるし、テッドが吸うマリファナ吸引パイプはペニス型。もちろんラストには“下ネタ界の真打ち”ウンコ絡みのギャグもある。

過激なのは下ネタだけではない。今作の悪役は、前作の敵ドニー(ジョヴァンニ・リビシ)に、彼が清掃夫として働く大企業「ハズプロ」の副社長トム(ジョン・キャロル・リンチ)が加わった布陣。テッドの訴訟を知ったトムは、腕利き弁護士ジョン(ジョン・スラッテリー)を使って、テッドを敗訴させた上で分解して大量生産しようと企む。えっ、悪役ならそのくらいのことは企むだろうって? 実はハズプロはアメリカで売り上げ第二位を誇る実在のおもちゃメーカーなのだ(しかも本社は本当にボストン郊外にあるので、設定もおかしくない)。

そんな失礼な描写をしているにもかかわらず、ハズプロの主力商品トランスフォーマーが画面に堂々と登場するのだからビックリしてしまう。普通ならハズプロから名誉毀損で訴えられてもおかしくないのに、逆に協力を取り付けてしまうマクファーレンの交渉力には感嘆するほかない。

こうしたマクファーレンの交渉力は、豪華なカメオ出演陣にも活かされている。

バーのトイレの中で待ち伏せしている変態はアメリカを代表する司会者ジェイ・レノだし、テッドの裁判を肴にジョークを言うのは夜の帯番組「ジミー・キンメル・ライブ!」で人気のジミー・キンメル。また公開当時、老舗お笑い番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」のレギュラー出演者だったボビー・モイニハン、タラン・キラム、ケイト・マッキノンが「SNL」内のスケッチという設定でテッドを茶化したコントを披露してくれる。

なかでも最大級のインパクトを提供しているのが、テッドが働くスーパーマーケットに何故か子ども用シリアルを買いにくるリーアム・ニーソンだ。「大人なのに子ども向けを買っても問題ないか?」とテッドに大真面目に質問した上で、尾行を恐れながら去っていくそのキャラは明らかに『96時間』(2008年)をはじめとする一連のアクション映画を踏まえたもの。これにはもう笑うしかないという感じだ。

『スタートレック』やジョン・ヒューズ作品、そしてゴジラまで至るポップ・カルチャーのパロディ尽くしの中で、フランク・シナトラを敬愛していることで知られるマクファーレンのオールド・ハリウッド趣味がしっかり反映されていることにも注目したい。テッドが踊るオープニング・シーンは『四十二番街』や『ゴールド・ディガース』(いずれも1933年)におけるバスビー・バークレーの振り付けを下敷きにしているし、テッドたちがニューヨークに到着すると同時に『百万長者と結婚する方法』(1953年)の挿入曲「ニューヨーク」が流れる。

こうしたノスタルジックな嗜好が、単なる知識を通り越して血肉化しているのがマクファーレンの凄いところだ。その象徴が、劇中でサマンサがギターの弾き語りで歌う「Mean Ol' Moon」。1950年代にヒットしたスタンダード・ナンバーにしか聞こえないこの曲、実はマクファーレンと音楽担当のウォルター・マーフィが作った新曲だったりする。ミラ・キュニスの妊娠によってヒロインを演じることになったアマンダ・セイフライドだけど、このシーンでは『マンマ・ミーア!』(2008年)や『レ・ミゼラブル』(2012年)といったミュージカル映画で披露した自慢の喉を十二分に発揮している。

そんな下品で過激でノスタルジックなコメディ『テッド2』には、ちょっぴりシリアスなテーマも忍ばされている。裁判の中で、テッドは「人間(person)」なのか「所有物(peoperty)」なのかが延々と議論されるのだが、これにはモデルになった裁判が存在するのだ。

それこそが1857年に連邦最高裁で争われた「ドレッド・スコット対サンフォード事件」。南部で奴隷として生まれながら北部の自由州に引っ越したアフリカ系男性ドレッド・スコットが自らの解放を求めたこの裁判では、自由州においてスコットが人間なのか他人の所有物なのかが激しく論じられた。

最終的にドレッドの訴えは退けられてしまったのだが、その理由が「南部の州が奴隷制をおこなう自由を、北部の州が侵害するおそれがある」というあまりに非人道的なもっただったため、心ある人々は激怒。結果的にこれが南北戦争および奴隷解放に繋がっていったとされている。マクファーレンはテッドをドレッド・スコットになぞらえることで、アメリカにおける自由と平等の尊さをうたいあげてみせたのだ。

奇しくも『テッド2』が全米で公開された2015年6月26日に、合衆国最高裁判所はアメリカが自由と平等の国であることを証明する判決を出した。法の下の平等を定めた合衆国憲法修正第14条にもとづき、すべての州における同性結婚を合憲としたのだ。これによってアメリカにおける同性カップルは異性のカップルと同じ権利を手にすることになった。初のアフリカ系大統領バラク・オバマがもたらした偉業のひとつといえるだろう。

しかしそれからたった三年しか経っていないのに、現在のアメリカではドナルド・トランプ大統領のもとで自由と平等を否定するかのような反動の嵐が吹き荒れている。まるで南北戦争の結果、南部が勝利して奴隷制度が存続することになった平行世界に生きているみたいだ。そんなことを考えながら『テッド2』を観てみるのもいいかもしれない……基本的には精子とペニスとウンコのギャグがあくまでメインの映画ではあるけれど。■


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