ラジオ局で働くブラッド(ウィル・フェレル)は、ディランとメーガンというふたりの子を持つサラ(リンダ・カーデリーニ)と結婚することによって、父親になる夢を叶えて大喜び(彼はある手術の後遺症で子どもが作れない体質になっていたのだ)。生真面目な性格とダサいルックスが災いして子どもたちからは未だに父親とは認めてもらえていなかったものの、それなりに充実した日々を送っていた。

 だがそんなところに音信不通となっていた子どもたちの実父ダスティ(マーク・ウォールバーグ)が大型バイクに乗って颯爽と登場。「国のために極秘で戦っている」と語るクールな彼に、子どもたちはもちろん職場の上司(トーマス・ヘイデンチャーチ)までもがハートを掴まれてしまう。ついでにあれほどダスティを嫌っていたサラの態度までもがなんだかおかしい……。信じがたい光景を目の当たりにしたブラッドは、周囲のリスペクトを取り戻そうと(いや、元々ないんだけど)ダスティに不毛な勝負を挑むのだが……。

 『パパVS新しいパパ』(2015年)は、そんなプロットだけで、すでに面白さが保証されているファミリー・コメディだ。主演はウィル・フェレルとマーク・ウォールバーグ。すでに『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(2010年)で共演しているけれど、あのときはふたりとも窓際部署の刑事で親友同士という役柄だった。でも今回のキャラクターで正反対。ふたりはライバルとして子どもの愛を巡ってバトルを繰り広げるのだ。

 ウォールバーグは『テッド』(2012年)をはじめとするコメディ映画でも煌めきを見せている人ではあるけど、本作では敢えて『ザ・シューター/極大射程』(2007年)や『ローン・サバイバー』(2014年)といったシリアス・アクション映画に出演しているときの雰囲気でダスティ役を演じている。つまり彼は自分をセルフ・パロディしているわけだ。そんなシリアス・ムードのウォールバーグに次々と戦いを仕掛けて案の定、無様に敗北を積み重ねていくフェレルが最高におかしい。木の上に巨大なツリーハウスを作り、入手困難なNBAの試合のチケットを調達してくるダスティに対して、ガールスカウトの隊長や教会のボランティアなどで必死にポイントを稼ごうブラッドの姿には笑うしかない。

 観客は思うはず。「ブラッドがダスティに勝てるわけないじゃないか!」だって彼が継父ならともかく実の父親でもあるのだから。しかしブラッドはある出来事をきっかけに、子育てへの情熱で劣勢を挽回していく。そう、父親とは血縁がある男でも器用な男のことでもない。「いかなる時でも子どもを学校や水泳教室に送り届ける責任感を持っている男」のことを呼ぶのだ。こうしたメッセージは、離婚率も再婚率も日本より随分高いアメリカ社会を反映したものだけど、アメリカの観客が納得するこうした結論まで、ストーリーを持っていく手際は鮮やかというしかない。

 ふたりに挟まれる女性サラを演じるリンダ・カーデリーニについても触れておきたい。『アベンジャーズ』シリーズのホークアイの妻ローラ役やネットフリックス製作のドラマ『BLOODLINE ブラッドライン』(2015〜2018年)で顔を知っている映画ファンは多いだろう彼女だけど、実はちょっとしたコメディ・レジェンドでもある。というのも、カーデリーニこそがジャド・アパトーが製作総指揮、ポール・フェイグがクリエイター、ジェイク・カスダンらが監督を務め、セス・ローゲン、ジェームズ・フランコ、ジェイソン・シーゲル、ビジー・フィリップス、リジー・キャプラン、そして現在は俳優としてよりも『モンスター上司』(2011年)や『お!バカんす家族』(2015年)、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)の脚本家として活躍しているジョン・フランシス・デイリーといった才能を輩出した伝説のテレビコメディ番組『フリークス学園』(1999〜2000年)で主人公リンジーを演じていた女優だからだ。

 こうしたコメディのエリート養成学校のような環境で世に出ながら、カーデリーニはコメディから一歩距離を置いて『ER緊急救命室』(2003〜2009年)や『ブロークバック・マウンテン』(2005年、劇中で故ヒース・レジャーといっとき交際する人生に倦んだ女性役は絶品)など専らシリアス路線でキャリアを構築してきたのだが、今作では『スクービー・ドゥー』二部作(2002〜2004年、)以来の本格的なコメディ演技を披露。このジャンルに必要な間の取り方、タイム感覚はやはり絶妙なものがある。

『スクービー・ドゥー』二部作の脚本家だったショーン・ガンが、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ(2014年〜)を手がける前に監督したカルト作『スーパー!』(2010年)にも友情出演していることを考えると決してお笑いの世界に興味がないわけはないはず。ガンとのコンビでマーベル以外の世界でコメディ映画を作って欲しいと思わずにはいられない。

 なお監督兼脚本のショーン・アンダーズは、インディで製作した『Never Been Thawed』(2005年)をきっかけに学園コメディ『セックス・ドライブ』(2008年)でメジャー・デビューを果たした人物。ジョン・キューザックが主演した80年代へのオマージュ溢れる『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』(2010年)とアパトー・ギャングの一員ジェイ・バルチェルが主演した『ある日モテ期がやってきた』(2010年、『デッドプール』シリーズでおなじみのT.J.ミラーの若き日も楽しめる)の脚本家として注目され、『なんちゃって家族』(2013年)の大ヒットによってコメディ界のVIPライターになった男だ。

 しかも動物コメディ『空飛ぶペンギン』(2011年)で仕事をしたジム・キャリーの誘いで、彼の出世作の待望の続編『帰ってきた Mr.ダマー バカ MAX!』(2014年)の脚本に参加し、アダム・サンドラーがアンディ・サムバーグと共演した『俺のムスコ』(2012年)では監督を任されるなど、コメディ界の巨人たちにも認められている実力派でもある。

 ジェイソン・ベイトマン、ジェイソン・セダイキス、チャーリー・デイの三人がジェニファー・アニストンらからパワハラを喰らいまくる大ヒット作の続編『モンスター上司2』(2014年)では監督兼脚本家として同作をヒットに導いており、その直後に手がけたのが本作となる。ブラッドが働いているラジオ局がアメリカではダサい音楽の象徴とされるスムーズ・ジャズ専門のラジオ局(しかも名前がザ・パンダ・ラジオ!)だったりするあたり、ファミリー・コメディの範疇を完全に超えたセンスを発揮。実はここがこのジャンルにとって重要。子連れで見に行く映画館のチケットを買うのは親の方だからだ。

 そんなわけで笑いにうるさい大人も納得するギャグが散りばめられた『パパVS新しいパパ』は、北米だけで1億5000万ドルの興行収入を記録。これは『アザー・ガイズ』を上回るどころかウィル・フェレルの歴代主演作でも第二位の記録である(ちなみに首位は2003年の『エルフ 〜サンタの国からやってきた〜』)

 本作のメガヒットを受けて、2017年の年末には『パパVS新しいパパ 2』が本国で公開。同作では友人同士になったブラッドとダスティが共同でクリスマス・パーティを開こうとしているところに、それぞれの父親(演じているのはジョン・リスゴーとメル・ギブソン!)がやってきて一家が大混乱に陥るというストーリーが展開されている。■

 

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