「わたしたち、家を売ったから」

 

 看護士として働くバツイチのモーラはある日突然、両親からそう告げられる。老人用コンドミニアムに入居することにした両親にとって、それは単なる断捨離。でもモーラにとっては少女時代の想い出すべてを失うことだった。しかもモーラは、姉のケイトにもそれを伝えてほしいと頼まれてしまうのだった。

 美容師のケイトは、腕は確かだが性格が難ありで、職場を転々としているトラブルメイカー。モーラは、その彼女に再会すると開口一番、こんなことを言われてしまう。

「わたし、実家に戻ろうと思うんだ」

いま真実を告げたらトンデモないことになる。モーラは本当のことは言わないまま。ケイトと実家の片付けへと向かうのだが……。

 『シスターズ』(2015年)を観て、主演のふたりが本当の姉妹のように感じる映画ファンは多いはず。ルックスは決して似てはいないのだけど、以心伝心で繋がっている様子が伝わってくるからだ。それもそのはず、ケイト役のティナ・フェイとモーラ役のエイミー・ポーラーはこの時点で20年以上もの友情を育んでいたのだ。

 ティナとエイミーが出会ったのは1993年、シカゴを本拠地に置く即興劇団セカンド・シティでのことだった。お笑い芸人の育成機関としては全米ナンバーワンのこの劇団で、ふたりは笑いのセンスに共通したものを感じ取って大親友になった。

1997年、ティナは老舗お笑い番組「サタデー・ナイト・ライブ」のライターに採用されてニューヨークへ。2000年にはニュース・コーナー「ウィークエンド・アップデート」にキャスターとして出演するようになった。

 一方、エイミーは自ら率いるお笑いクルー「アップライト・シチズン・ブリゲイド」とともにやはりニューヨークに進出。ティナを追うように2001年に「サタデー・ナイト・ライブ」のキャストに抜擢されると、3年後にはティナと共同で「ウィークエンド・アップデート」のキャスターも務めるようになった。ふたりの名コンビぶりは全米で知られるようになったのだ。

 このためふたりが番組を卒業した後、ティナが製作兼主演を務めた『30 ROCK/サーティー・ロック』(2006〜13年)で、エイミーが主演ドラマ『Parks and Recreation』(2009〜15年)でそれぞれピンのスターになっても、ふたりのリユニオンを望む声は消えることはなかった。こうした要望に応えたのが、共演作『ベイビーママ』(2008年)であり、2013年から3年連続で続いたゴールデン・グローブ賞の共同司会だった。

 『シスターズ』もこうした流れに位置する作品である。でもそれだけではない。本作の監督ポーラ・ペルや共演のレイチェル・ドラッチやマーヤ・ルドルフもふたりと同時期に「サタデー・ナイト・ライブ」に関わっていたメンツ。本作は同窓会の機能も果たしているのだ。そして同窓会はこれっきりではなかった。2018年中にNetflixで公開予定のエイミーの監督デビュー作でもある『ワイン・カントリー』には、いま名前を挙げたメンバー全員が出演しているのだから。

 エイミー・ポーラーは同期との友情だけでなく、後輩の育成にも熱心である。彼女は「アップライト・シチズン・ブリゲイド」をセカンド・シティのようなお笑い育成機関に模様替えし、ニューヨークとロサンゼルスの劇場で定期公演まで行なっている。

 その「アップライト・シチズン・ブリゲイド」からスターになったのが、2004年に二十歳で入団したオーブリー・プラザだった。ジャド・アパトー監督の『素敵な人生の終り方』(2009年)でセス・ローゲンの相手役を演じて注目された彼女は、同年に『Parks and Recreation』のメインキャスト、エイプリル役にも選ばれた(ちなみに彼女と結婚するアンディを演じたのが、今をときめくクリス・プラット)。そう、彼女はエイミーの愛弟子と言っても過言でない存在なのだ。

但しオーブリーの芸風は、デッドパン(無表情)と下ネタウェルカムのギャグセンスのコンビネーションもあって、師匠より遥かにアグレッシブ。

 

 そんな彼女の芸風を十分に味わえるのが、『ライフ・アフター・べス』(2014年)だ。タイトル通り、最愛のベスが突然死んだ後の人生を生きる男ザック(演じるはデイン・デハーン)を描いたコメディなのだが、冒頭にちょっとしたサプライズが訪れる。

ベスの両親を慰めようと彼女の実家を訪問したザックは、ベスが墓の中から這い出してきて帰宅していたことを知るのだ。「ベスは死んでいなかった」と喜ぶザックは、人目を避けてベスとデートを楽しむのだが、彼女は太陽の光に極端に弱く、キレると車を破壊するほどの怪力を発揮する。要はゾンビになっていたのだ。

 コメディというジャンルの性格上、ベスは決して可哀想に見えてはいけないので、とても難しい役なのだけど、そういう意味でもオーブリー・プラザの演技は百点満点。縛り付けられていたはずのキッチン・オーブンを背負ったままハイキングに出かけたり、スムーズ・ジャズの帝王ケニーGを聴いて恍惚とするシーンでは、笑う以外の選択肢は残されていないはずだ。

ちなみに劇中、ザックが「ベスはもう死んだんだし、一度会ってみたらどう?あたしの親友の娘さんなの」と母親から散々お見合いデートを勧められる女子役で終盤に特別出演するのはアナ・ケンドリック。ふたりは『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010年)で共演して以来の親友同士で、『ウェディング・フィーバー ゲスな男女のハワイ旅行』(2016年)でも共演している。

加えてオーブリーは、本作の監督ジェフ・バナと両親役を演じていたジョン・C・ライリーとモリー・シャノンと、プロデューサーも務めた『天使たちのビッチ・ナイト』(2018年)でリユニオン。どうやら師匠のエイミーに負けず、オーブリーも仲間との関係を大事にしているようだ。だからオーブリーもエイミーのように、いつか才能溢れる後輩を見出すにちがいないのである。■

 

『シスターズ』© 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.  『ライフ・アフター・ベス』©2014 LIFE AFTER BETH, LLC All Rights Reserved.