ここ数年、米テレビ界では名作映画のドラマ・シリーズ化がちょっとしたブームになっている。引き金になったのは、恐らく『サイコ』(’60)の前日譚『ベイツ・モーテル』(‘13~’17)と『ファーゴ』(‘14~)辺りだろうか。『12モンキーズ』(‘15~’18)や『リーサル・ウェポン』(‘16~’19)、『スクリーム』(‘15~)もかなり評判になった。まあ、『マイノリティ・リポート』(‘15)や『ラッシュアワー』(’16)、『タイム・アフター・タイム』(’17)のように、1シーズンも続かず途中で打ち切られた失敗作も少なくないのだが。いずれにせよ、かつては基本的にローカル・ビジネスだったテレビドラマがグローバル化したことで、劇場用映画並みの予算を組めるようになったことが、こうしたブームの一因になっていると言えよう。

 振り返ると、従来のハリウッド業界においては、往年の人気テレビドラマを予算の潤沢な映画でリメイクするパターンが主流だった。特に、ハリウッド映画のネタ切れ問題が囁かれるようになった’90年代後半~’00年代にかけて、まるで枯渇するオリジナル企画の穴を埋めるかのように、懐かしのテレビドラマの映画版リメイクが次々と登場する。このにわかブームの口火を切ったのは、『スパイ大作戦』をアップデートした『ミッション:インポッシブル』(’96)シリーズであろう。『宇宙家族ロビンソン』をリメイクした『ロスト・イン・スペース』(’98)や『チャーリーズ・エンジェル』(’00)シリーズ、『スタスキー&ハッチ』(’04)も興行的に大当たりした。

 とはいえ、やはりテレビドラマの映画リメイクというのは諸刃の刃。確かにキャラクターからストーリーまでネタにできる素材は豊富に揃っているのだが、しかしオリジナル版を毎週楽しみにしていたファンにとって、長年親しんだ愛着あるキャラクターを別の俳優が演じている、場合によってはオリジナル版とだいぶテイストが違ってしまうというのは、時としてなかなか受け入れがたいものがある。

 事実、主人公のキャラ設定を中途半端に変更した『ワイルド・ワイルド・ウエスト』(’99)や『アイ・スパイ』(’02)は見事にコケてしまった。スウィンギン・ロンドン時代のお洒落な英国カルチャーが魅力だった『おしゃれ(秘)探偵』をリメイクした『アベンジャーズ』(’98)も、オリジナル版の良さを微塵も感じさせない世界観で無残にも大失敗。生みの親であるマイケル・マン監督がリメイクに挑んだ『マイアミ・バイス』(’06)ですら苦戦を強いられている。まさに玉石混合。ぶっちゃけ、成功作よりも失敗作の方が多い。そんなテレビドラマ・リメイク・ブームの真っただ中で公開されたのが、’70年代のカルトな警察ドラマ『特別狙撃隊S.W.A.T.』(‘75~’76)を映画化したクライム・アクション『S.W.A.T.』(’03)だ。

原点『特別狙撃隊S.W.A.T.』を振り返る

 まずはオリジナル版を振り返ってみよう。’75年2月17日(月)より、それまで視聴率の苦戦していたアメフト中継番組の代打として、全米ネットワーク局ABCで放送が始まった『特別狙撃隊S.W.A.T.』。当時、月曜夜のゴールデンタイムは、共に視聴率25%を超える国民的シットコム『Maude』(‘72~’78・日本未放送)と『Rhoda』(‘74~’78・日本未放送)が人気を独占しており、ABCはそれに対抗できるドラマシリーズで巻き返しを図ったのだ。

 それがなぜ『特別狙撃隊S.W.A.T.』だったのかというと、本作がABCの人気番組のひとつである警察ドラマ『命がけの青春/ザ・ルーキーズ』(‘72~’76)のスピンオフだから。しかも、製作は当時すでにテレビ界のヒットメーカーとしての地位を築きつつあったアーロン・スペリング(『モッズ特捜隊』『刑事スタスキー&ハッチ』『チャーリーズ・エンジェル』『ダイナスティ』『ビバリーヒルズ高校白書』etc)である。おのずと、ネットワークからの期待が大きかったことは想像に難くない。

 主人公はロサンゼルス市警の特殊武装戦術部隊、通称S.W.A.T.に属する警察官たち。ベテランの厳格な隊長ホンドー(スティーヴ・フォレスト)をリーダーに、その頼れる右腕のディーコン(ロッド・ペリー)、優秀なスナイパーのT.J.マッケイブ(ジェームズ・S・コールマン)、ムードメーカー的な二枚目ドミニク・ルカ(マーク・シェラ)、そして熱血漢の若手ジム・ストリート(ロバート・ユーリック)という、選りすぐりの精鋭たちが揃う。物語は任務中に相棒を殺されたパトロール警官ジムが、新設されたばかりのS.W.A.T.チームへ加わるところから始まり、主人公たちが大都会ロサンゼルスで日々発生する凶悪犯罪に立ち向かう姿が、毎回1話完結のスタイルで描かれていく。

 昨今のテレビドラマに比べると、ストーリーは極めてシンプル。エピソードを跨ぐようなプロットはほとんどないため、主人公たちのキャラを掘り下げて描くこともない。古き良き犯罪ドラマ・シリーズといった感じだ。ただ、本物の元S.W.A.T.隊員をコンサルタントに招き、実際にロサンゼルスの街中でロケーションを行い、限りなく実物に近い武器を使った本格的なアクションは、『サンフランシスコ捜査線』(‘72~’77)や『ポリス・ストーリー』(‘73~’78)など、当時流行っていたリアリズム志向のハードな犯罪ドラマの路線を踏襲している。そういう意味で、しっかりとトレンドを意識した番組だったと言えよう。

 また、作曲家バリー・デ・ヴォーゾンによるファンキーでキャッチーなテーマ曲(日本では『川口浩探検隊』シリーズのBGMでもお馴染み)もインパクト強烈で、人気ファンク・バンド、リズム・ヘリテージによるディスコ風カバー・バージョンは全米チャートでナンバー1に輝いた。そのおかげもあってなのだろう、シーズン1はニールセンの年間視聴率ランキングで16位をマークする大ヒットに。これに気を良くしたABCは、放送日を土曜日に変更してシーズン2の継続を決定する。というのも、土曜日の夜は裏番組が視聴率ランキング上位の常連組『The Mary Tyler Moore Show』(‘70~’77・日本未放送)に『The Bob Newhart Show』(‘72~’78・日本未放送)という超激戦区。『特別狙撃隊S.W.A.T.』なら勝算ありと踏んだのだろう。だが、結果的に残念ながら太刀打ちできず。ABCはシーズン2を以て番組のキャンセルを発表。その後継番組として始まったのが『刑事スタスキー&ハッチ』だった。

リメイク映画版『S.W.A.T.』の勝因とは!?

 というわけで、ネットワークの勇み足的な戦略ミスが原因で短命に終わった『特別狙撃隊S.W.A.T.』だが、その人気は放送終了後も根強いものがあり、いつしかカルト番組として語り継がれるようになった。映画版リメイクの企画が持ち上がったのも、当然と言えば当然の成り行きであろう。監督はウルトラ・ハードなリアリズム路線の犯罪ドラマ『ホミサイド/殺人捜査課』(‘93~’99)と『ザ・シールド~ルール無用の警察バッジ』(‘02~’08)の演出で高く評価された俳優出身のクラーク・ジョンソン。脚本には『トレーニングデイ』(’01)や『ワイルド・スピード』(’01)のデヴィッド・エアー、『アメリカン・ヒストリーX』(’98)のデヴィッド・マッケンナという布陣が揃い、なかなか完成度の高い骨太なクライム・アクションに仕上がっている。

 相棒ギャンブル(ジェレミー・レナー)の不祥事が原因で、ロス市警のS.W.A.T.チームを外された血気盛んな若手隊員ジム・ストリート(コリン・ファレル)。武器庫係に左遷されてくすぶっていたところ、3年ぶりに復帰した伝説のS.W.A.T.隊員ホンドー巡査部長(サミュエル・L・ジャクソン)が率いる新チームへと誘われ、過酷なトレーニングと実務試験を経て現場へ返り咲く。そんな折、秘かにアメリカへ入国していたフランスの麻薬王アレックス(オリヴィエ・マルティネス)が当局に逮捕され、ホンドーのS.W.A.T.チームが彼を刑務所まで護送することとなる。ところが、アレックスがテレビの報道カメラに向かって「俺を逃がしてくれた奴に1億ドルを支払う」と宣言したことから、L.A.中のマフィアや犯罪組織が報酬目当てで護送車を狙うという異常事態に。その中には、ジムの元相棒ギャンブルの姿も含まれていた…。

 全米興行収入ランキングで1位を獲得し、最終的に世界興収2億ドルを突破する大ヒットとなった映画『S.W.A.T.』。最大の勝因は、大御所サミュエル・L・ジャクソンと旬の若手コリン・ファレルというビッグネームの顔合わせ、その彼らの個性にあえてキャラを寄せた改変&アップデートにあると言えよう。オリジナル版のホンドーはタフで頑固で真面目な白人男性だったが、映画版ではルールに縛られない反骨精神旺盛な黒人男性へと変更され、人間味豊かでユーモラスな味付けもなされている。まさにサミュエル・L・ジャクソンのイメージそのものだ。また、オリジナル版ではホンドーの右腕的存在だったディーコンを若手の新人隊員(L・L・クール・J)に設定を変え、ジム・ストリートとのバディ的な関係性を持たせたこと、時代の変化に合わせて新しく女性メンバー、クリス(ミシェル・ロドリゲス)を加えたことなども、チーム内の人間ドラマに奥行きを与える上で効果的だったと思う。

 正直なところ、ストーリー自体はどこかで見たような展開が多いものの、実在するロス市警S.W.A.T.チームの過酷な任務や生き様を虚実織り交ぜながら極力リアルに描く、ド派手なスタント・アクションの畳みかけで観客を飽きさせないという点で、しっかりとオリジナル版のスピリットを継承している点も好感が持てる。そうそう、オリジナル版はロサンゼルスの街そのものがもうひとつの主役だったが、この映画版でもホンドーとジムがメンバーをスカウトするため市内各所を巡る過程で、大都会ロサンゼルスの猥雑な日常風景が生々しく活写されていく。黒人のチンピラを逮捕したディーコンにヤジを飛ばすオバサン役で、無名時代のオクタヴィア・スペンサーが出ているのも要注目。また、ディーコンの父親としてオリジナル版のディーコン役ロッド・ペリーが、ラストでS.W.A.T.の装甲車を運転するドライバーとしてオリジナル版のホンドー役スティーヴ・フォレストが顔を出している。

リブート版シリーズも大ヒット放送中!

 そして、オリジナル版『特別狙撃隊S.W.A.T.』の放送から40年以上を経た’17年、ABCのライバル局CBSにて新たなリブート版シリーズがスタートすることとなった。それが、映画『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リン監督が製作を手掛けた『S.W.A.T.』(‘17~)である。基本プロットはオリジナル版および映画リメイク版と一緒。ロサンゼルス市警のS.W.A.T.チームが、様々な凶悪犯罪に日々立ち向かっていく様が描かれる。

 興味深いのは、このリブート版が’70年代のオリジナル版ではなく、あくまでも映画リメイク版をベースにしているという点であろう。なので、主人公ホンドー(シェマー・ムーア)は映画版と同じく黒人男性。ただし、キャラ設定そのものはどちらかというとオリジナル版寄りで、ルールの順守とチームワークを何よりも重んじる厳格なリーダーだ。一方、ジム・ストリート(アレックス・ラッセル)はパトロール警官からS.W.A.T.へ転じた新人メンバーで、才能には恵まれているけれど人間的には欠点の多いトラブルメーカー。こちらはオリジナル版と映画版の設定を下敷きにしつつ、新たな性格付けがなされている。それによって、未熟なジムをあえて厳しく教育するホンドー、そんな彼に強く反発しつつも成長していくジムという、さながら疑似親子のような師弟関係が、番組全体を通した人間ドラマの主軸となっているのだ。

 また、チームの紅一点クリス(リナ・エスコ)の存在も映画版から引き継がれている。ヒスパニック系のタフでクールな女性という設定も一緒。しかし、映画版ではジムの相棒だったディーコン(ジェイ・ハリントン)が、こちらのリブート版ではオリジナルと同様、ホンドーの右腕的なベテラン隊員として登場し、映画版では別キャラに差し替えられたドミニク・ルカ(ケニー・ジョンソン)が復活している。なんだろう、映画版とオリジナル版のいいとこ取りといったところか。さらに、中国系の隊員タン(デヴィッド・リム)や、ホンドーと職場恋愛する女性指揮官ジェシカ(ステファニー・シグマン)という新キャラを加えることで、21世紀のアメリカに相応しいダイバーシティを尊重した顔ぶれとなっている。

 ストーリー的にも、大都会ロサンゼルスの人種問題や貧困問題、さらには市民と警察の軋轢といった社会的なテーマを背景に織り交ぜ、単なる警察ドラマとは一線を画する仕上がりだ。もちろん、実際にL.A.市内でロケーションを行ったストリート感、大量の武器や弾薬を使った迫力あるアクション&スタントなど、オリジナル版以来の伝統もきっちりと踏襲している。中でも、劇場用映画ばりにスケールの大きなアクションや命がけの危険なスタントは、さすが現代のテレビドラマならではの醍醐味と言えるだろう。実際に空を飛ぶヘリコプターの中で撮影されたという、シーズン2第1話の空中格闘シーンなんかビックリ。また、S.W.A.Tチームとギャング集団が全面対決するモブ・シーンでは、本物のストリート・ギャングたちがエキストラとして集められたそうで、その殺気立ったリアリズムにも痺れる。こちらは現在、スーパー!ドラマTVにてシーズン2が放送中なので、ザ・シネマの映画リメイク版と併せてチェックしてみて欲しい。■

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