1/27(金)公開『スノーデン』。アメリカを激怒させたエドワード・スノーデンとは何者なのか?史上最大の内部告発を行った若者の実像に迫る社会派サスペンス

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ハリウッドきっての社会派監督、オリバー・ストーンの最新作『スノーデン』が2017年1月27(金)に公開されます。

これまでアメリカ政府や政治の腐敗、欺瞞、矛盾を痛烈に批判し、アカデミー賞監督賞を2度受賞している巨匠が新たに題材にしたのは、元CIA職員のエドワード・スノーデン。過去に『JFK』『ニクソン』『ブッシュ』と、アメリカ合衆国大統領をテーマにした映画を3本撮ってきたストーンが、いま映画で最も伝えたかった人物”スノーデン”とは一体何者なのか。

公開に先駆けて、映画ライター・高橋諭治さんによるコラムをご紹介いたします。また、本作の劇場鑑賞券プレゼントも実施中です。ご応募はこちらから

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アメリカを激怒させたエドワード・スノーデンとは何者なのか?

史上最大の内部告発を行った若者の実像に迫る社会派サスペンス


                                        文/映画ライター 高橋諭治 






 もはやエドワード・スノーデンの名前を聞いたことのない人は、ほとんどいないだろう。2013年6月にアメリカ政府による国際的な監視プログラムの存在を暴露した元NSA(米国国家安全保障局)職員。NSAやCIAが対テロ捜査の名のもとに、同盟国の要人や自国の一般市民を含むあらゆるケータイの通話、メール、SNSなどの情報を違法に大量収集していた実態を、世界中に知らしめた張本人だ。

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 この“史上最大の内部告発”とも呼ばれる大事件においてもうひとつ特筆すべき点は、“ミスターX”のような匿名で行われる通常のケースとは違い、本人の強い希望により顔出し付きの実名で堂々と告発が行われたことだ。メガネをかけた青白い顔、ひょろっとした体型。それに何より見た目の若さ、普通っぽさに驚かされる。スパイ映画を見慣れた者にとっては、この手の重大な機密情報を握るキャラクターはいかにも老練で険しい顔つきのベテラン俳優が演じるのが常だからだ。

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 NSAとCIAで極秘機密へのアクセス権を与えられていたスノーデンは、さぞかし高給取りだっただろう。将来のさらなる出世を約束されていた若者は、なぜそれを捨てて告発に走ったのか。捨てたのはカネだけではない。こんな告発をすれば外国に無事亡命できたとしても、国際的なお尋ね者となって二度と祖国の地を踏めなくなってしまうことはわかりきっている。繰り返しになるが、アメリカ政府を敵に回した“事の重大さ”と、スノーデンの“見た目の若さ、普通っぽさ”とのギャップがとてつもなく大きな事件なのだ。



 いささか前置きが長くなったが、『プラトーン』『JFK』『ワールド・トレード・センター』などでアメリカ現代史を描いてきたオリバー・ストーン監督の最新作『スノーデン』は、上記のさまざまな疑問や謎を解き明かしてくれる実録サスペンスである。すでにスノーデンに関してはアカデミー賞にも輝いた『シチズン・フォー/スノーデンの暴露』という極めて優れたドキュメンタリー映画が作られているが、そちらは2013年6月、香港の高級ホテルの一室を舞台に、スノーデンとジャーナリストによる“告発の始まり”を記録したもの。それに対して『スノーデン』は、告発を決意するに至るまでのスノーデンの約10年間の軌跡を描いている。いわゆる実話に基づいたフィクション=劇映画だ。若き実力派俳優のジョゼフ・ゴードン=レヴィットが入念な役作りを行い、スノーデンの外見はもちろん、仕種やしゃべり方までほぼ完全コピー。ルービックキューブを手にした彼が初めてスクリーンに姿を現すオープニングから、あまりの違和感のなさに逆にびっくりさせられ、一気に映画に引き込まれる。

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 先述した2013年6月、告発を決意したスノーデンが香港でジャーナリストと初めて会うシーンで幕を開ける物語は、そこから2004年へとさかのぼる。9.11同時多発テロ後のアメリカ社会に役立ちたいと考えていたスノーデンは、この年、大怪我を負って軍を除隊。2006年には持ち前のコンピュータの知識が生かせるCIAに合格するのだが、この頃に運命の女性リンゼイ・ミルズとめぐり合う。ふたりを結びつけたのは“Geek Mate Com.”なるオタクたちが集う交流サイト。劇中、ほんの数秒だけ映るサイトの画面には「『ゴースト・イン・ザ・シェル』が好き!」などというチャットのテキストが表示されている。スノーデンは日本のサブカル愛好家でもあるのだ。そんな国を愛し、シャイでオタク気質の青年と、リベラルな思想の持ち主で趣味がポールダンスという奔放なくらいアクティブなリンゼイは、性格も物の考え方も正反対だったが、その後のCIAやNSAにおけるスノーデンの転勤に合わせ、スイスや日本での海外生活を共にすることになる。

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 こうした“私”の部分のエピソードが観る者の親近感を誘う一方、“公”のスノーデンは政府による諜報活動のダークサイドを垣間見て、不安や疑念に駆られていく。自分が構築した画期的なコンピュータ・システムが、まったく意図せぬ一般人への大量情報収集プログラムに使われていたことを知らされたときの衝撃。守秘義務ゆえにリンゼイに相談することさえできず、その苦悩を内に溜め込んだスノーデンの危うい二重生活のバランスは激しく揺らぎ出す。さらに厳格なCIA上官からの脅迫めいたプレッシャーが追い打ちをかけ、映画はサイコロジカル・スリラー、すなわち異常心理劇の様相を呈していく。

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 ここで興味深いのは“極限の危機”に陥ったスノーデンにも、まだその悪夢のような状況から脱出しうるふたつの道が残されていたことだ。ひとつは情報機関を退職し、守秘義務に則りながら別世界で穏やかに生きること。もうひとつは国家や組織の論理に染まって、違法行為だろうと何だろうと仕事として受け入れること。スノーデンはどちらも選択しなかった。最も過酷で険しい3つめの道、“告発”へと突き進んでいったのだ。


 およそ6:4の割合でスノーデンの公私両面の歩みをたどった本作は、極めて複雑怪奇な題材を取っつきやすく、わかりやすい社会派エンターテインメントとして見せていく。同時にスノーデンの“心の旅”を映画の中心軸にすえることで、現代のサイバー諜報活動の非情さや薄汚さと、それを黙って見過ごすことができなかったひとりのナイーヴな若者の高潔さとのコントラストを鮮やかに浮かび上がらせてみせた。

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 ちなみに本作の宣伝キャッチコピーは「世界を信じた、純粋な裏切り者」というものだが、ラスト・シーンにおけるスノーデンのスピーチを聞けば言い得て妙と感じるほかはない。たったひとりの普通の若者が、なぜアメリカを激怒させ、世界を震撼させるほどの告発を行ったのか。この文章の始めのほうにも記したそのギャップが埋まったとき、多くの観客がスノーデンが発する“純粋な”メッセージに心揺さぶられるに違いない。



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スノーデン


監督:オリバー・ストーン  

脚本:オリバー・ストーン、キーラン・フィッツジェラルド 
原作:「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」著 ルーク・ハーディング (日経BP社)


出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリー、メリッサ・レオ、ザカリー・クイント、

トム・ウィルキンソン、リス・エヴァンス、ニコラス・ケイジ


2016年/アメリカ・ドイツ・フランス/原題:SNOWDEN  
配給:ショウゲート

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1月27日(金)TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー!

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