こんにちは。
突然ですが、みなさんがアクション映画に期待するシーンは何ですか?
銃撃、剣戟、爆発、モンスター、格闘…心躍るアクションシーンのことを思い出してみてください。
アクション映画は頭を空っぽにして鑑賞できる人気ジャンルで、あまり小難しいことを考えずに済むと思っている方も多いはず。今回は、ミステリーとしての印象が強い物語を、見事に娯楽作品へと翻案してみせた映画『シャーロック・ホームズ』シリーズについて深掘りする。探偵小説の代表とも言える世界的な名作がどのようにエンタメ作品へと変容したか、そのキモとなるアクションシーンに着目してひも解いていきましょう!
【シャーロック・ホームズ(2009)】

『シャーロック・ホームズ(2009)』(C) 2009 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
英国貴族の血も引く破天荒&バイオレントな男ガイ・リッチーが監督。カルト教団の連続生贄殺人事件を解決したホームズとワトソン君は、教祖ブラックウッド卿を絞首台に送り、事件は解決したかに見えたが…。
【監督】ガイ・リッチー
【出演】ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス、マーク・ストロングほか
【シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム】

『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(C) 2021 Warner Bros. Ent. All rights reserved.
前作に顔を隠して登場した黒幕、最強の敵モリアーティ教授との最終対決。同時に、飄々としたロバート・ダウニー・Jrが見せる、珍変装と女装、深まるワトソン君とのブロマンス関係など、コメディ色もますます快調。
【監督】ガイ・リッチー
【出演】ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ、ノオミ・ラパス、 ジャレッド・ハリスほか
まず、シャーロック・ホームズの物語ということで、ミステリーや探偵ものを期待して身構えてしまうかもしれませんが、さすがはガイ・リッチー監督。いつも通りのスタイリッシュな映像や軽妙な会話劇がてんこもりで、事前知識は必要ないくらいに物語も明快なので気軽に楽しめる。もちろん多くの登場人物は原作に準拠しているし、原作から踏襲している設定も多々あるので、ぜひシャーロキアンにも観てもらいたい映画に仕上がっている。
また、映画版のホームズが頭脳だけでなくフィジカルも強いのは、原作でもバリツという格闘技を習得しているため、これまた突飛な設定ではない。アクションシーンの派手さが目を引くものの、あくまでも難事件の解決がメインテーマでもあるので、アクション映画ファンにもミステリー映画ファンにもやさしいシリーズと言える。
さて、アクションシーンについて語ると言ってみたはいいものの、まずは概念としてのアクションについて語ってみたい。
冒頭の質問に戻りますが、みなさんの好きなアクションシーンは何でしょうか?私は最近ようやく自分の基準が分かるようになってきて、「アクションシーンの中に既存の格闘技のフォーマットが組み込まれている」作品が好きだなと分かりました。
例えば『マトリックス』では、物理法則を無視できるSFの世界とカンフーを掛け合わせた。『リローデッド』のスミス軍団との乱闘シーンはまるで集団行動で、一糸乱れぬ踊りのような大立ち回りだ。無数の相手を捌ききれなくなったネオが棒術に切り替えるのも、『燃えよドラゴン』へのリスペクトを感じさせる。
あるいは『犯罪都市』。1作目はくんずほぐれつの大味なアクションという感じだったのが、シリーズを重ねるごとに制作陣も主役のマ・ソクト刑事も「この映画は”拳”である」ことに気づいていく。いつの間にか「ボクシングアクション」とも形容されるようになり、パンチのみならず身のこなし方そのものまでボクシングっぽくなっている。
『マトリックス』ではカンフー、『犯罪都市』ではボクシング、といった具合に、「馴染みのある動き」をまるでフォーマットのように取り込んでいる作品が好きなんです。邦画でも『ベイビーわるきゅーれ』が新世代のアクションと評価されるヒットを記録したのも、CQC(近接格闘術)などのフォーマットを取り入れた戦い方が斬新で面白いからだと思っています。
そして、「動き」ではなく「思考」をフォーマット化することはできないか、という難題に挑み、見事に作品に落とし込んでみせたのが『シャーロック・ホームズ』なんです。ホームズが「バリツ」の動きを取り込んだ格闘を得意とするのは確かにそうですが、わたしはここで新たなアクションのフォーマットを提唱したい。この映画の醍醐味として、そしてその後に公開されたとある人気映画にもしっかりと組み込まれているものだ。その名も「推理型アクション」!
本作で無類の強さを誇る名探偵シャーロック・ホームズだが、その強さの秘訣は強靭な肉体のみならず、まさに頭脳にある。自分の置かれた状況を瞬時に観察・判断し、まるで勝ち筋を推理するかのように脳内で戦闘シミュレーションを組み立てる。その様子はスローモーションで描写され、すぐさま等倍スピードでホームズが実演してみせる、という推理と実践が入り混じったアクションだ。これは、名探偵の脳内推理という目に見えないプロセスを、「頭のいいやつはこうやって戦うんだ」と観客が直感的に楽しめる映像の型=フォーマットとして落とし込んだ、いわば映画手法の発明なのです。
『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』では宿敵・モリアーティ教授との対決が描かれるが、頭脳も戦闘力もお互いに譲らない2人の最終決戦は見ものだ。勝敗の行方と結末はここでは言及しないけれども、2人がお互いをどう殴り倒すかの脳内推理対決が繰り広げられる。これはまったく斬新な戦いで、その後の予想外の結末も含めてよくできてるな~と感心してしまった。
「推理型アクション」という新たなアクション映画の楽しみ方を見せてくれた映画『シャーロック・ホームズ』。本当にフォーマット化しているのか‥?と疑問に思われたそこの方。いるんです!ホームズと同じように、推理型アクションで敵を倒す主人公が!
2014年に公開され大ヒットした『イコライザー』。ご覧になった方はお気づきかと思いますが、主人公・マッコールの戦闘スタイルが映画版ホームズとそっくりなのだ。マッコールもまた、まずは状況を観察し、武器として使えそうなものを見定める。そして敵をぶっ倒す最短ルートを計算し、タイムアタックのように相手を次々と成敗していく。まさに置かれた状況から勝利までを推理するかのような戦いぶりで、まるでホームズの戦い方を「型」として習得したみたいに似ている。
例えば『グリーン・ホーネット(2011)』のカトーのように並外れた身体能力やガジェットによる予知めいた戦闘をするキャラもいなくはないが、自前の推理力で戦況を有利に運ぶというのは、シャーロック・ホームズかロバート・マッコールくらいだろう。ほかにも知っている方がいればぜひ教えてください!
『シャーロック・ホームズ』で実装された推理型アクションは、『イコライザー』でしっかりとその面白さが証明された。ひとつのシーケンスに異なる再生スピードが入り乱れる手法は、スピードランピングというちゃんとした表現技法らしい。目にも留まらぬハイスピードアクションの種明かしをスローモーションで見せるという、知性をもって悪をくじくヒーローの戦闘シーンにはぴったりだ。
最後に、ザ・シネマでは、9月に「ミステリーチャンネル」とのコラボ編成を実施します。 ザ・シネマでは映画版の『シャーロック・ホームズ』シリーズを、ミステリーチャンネルでは『シャーロック・ホームズの冒険』を放送。まったく違う2人のホームズを堪能できる貴重な機会、お見逃しなく!
【ザ・シネマ 放送情報】
▮ 9/19(土)<バットマンvsホームズ 世紀の探偵対決>
・バットマン ビギンズ 午前9:00~
・ダークナイト 午前11:35~
・ダークナイト ライジング 午後2:20~
・THE BATMAN-ザ・バットマン- 夕方5:20~
・シャーロック・ホームズ(2009) 夜8:30~
・シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム 夜10:50~
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【ミステリーチャンネル 放送情報】
★姉妹ch「ミステリーチャンネル」では、シルバーウィーク(9/24-25)に『シャーロック・ホームズの冒険』(全41話)を一挙OA!
>>詳しくはこちら
※ミステリーチャンネルのHPに遷移します。
映画版のアクションシーンを楽しめたミステリー好きのあなたは、ぜひ身の回りのもので敵をどう倒すか、脳内で推理してみてはいかがでしょうか。