学生時代に映画を観ることが好きになったのだが、趣味が偏り過ぎていて、長らく洋画ばかり観ていた。ようやく邦画も観るようになったけれど、たとえば川島雄三にハマったらとりあえず観れるだけの川島作品だけを次々観ていく、というやり方をしてしまうので、守備範囲の枠がなかなか広がっていかない。
しかしそれでも少しずつ、色々な作品を観るようになり、ここ数年でやっと中国、韓国、香港、台湾などのアジアの映画も観るようになった。
そうしたら当たり前だがまあものすごく面白い作品がたんまりある。世間ではすでに言わずと知れた名作も自分にとってはこれから初めて体験する未知の作品なので、その大きな山をこれから少しずつ、まだまだ先長く楽しんでいけると思えば、いままで趣味の偏りのために一定のジャンルをまったく手つかずにしておいたこともわるくないなと思える。
話題の映画を、話題になっているうちに観ることがめったにない自分だけれど、周回遅れ(しかも何十周もの周回遅れ)でも、映画はいつでも待ってくれている。
というわけで今年の年明けに今まで未開拓だったウォン・カーウァイ映画をやっと観た。ザ・シネマメンバーズで配信されている4作品を古いものから順に観たらすっかりハマって、更に手をのばして他のウォン・カーウァイ作品や他の香港映画も芋づる式にザクザクと観るというお決まりのパターンとなった。
そしてやっぱりというか例に漏れずというか、まんまとトニー・レオンにハマった。何十周の周回遅れだということは重々承知のうえで、昔から好きな人にとっては今さら何をと思われることも重々承知のうえで、それでも言いたい。なんでそんなにかっこいいんだ、トニー・レオン。
配信作品である「恋する惑星」「天使の涙」「ブエノスアイレス」「花様年華」の4本のうちトニー・レオンは3本に出演している。その他の出演作品も色々と観た。真骨頂は「花様年華」だと思うが「ブエノスアイレス」のトニー・レオンが今は一番好きかもしれない。自分ではどうしようもできない、ままならないものに抵抗しながらも翻弄され、傷つき、一番生々しくて人間くさくて。どんな役でも(たとえばヤクザに潜入捜査しているハードボイルドな刑事役だったとしても)いつもどこか上品さや人の良さや薄皮一枚まとっている感じを思わせるトニー・レオンだが、この役ではむき出しな感じがした。
そんなふうに、20年以上前のウォン・カーウァイ作品やトニー・レオンに大いにハマり、部屋で一人ひたすら映画を観ながらとても楽しい時間を過ごしていたここ最近だった。
「今さら」とか「やっと」とか「ようやく観た」と書いたが、本当はそんなふうに言う必要は全然ない。映画は観たくなったときに、観ずにいられなくなったときに、もしくはひょんな機会に、観たいものを観ればいい。映画は私を、あなたを、いつでも待ってくれている。
しかしそれでも少しずつ、色々な作品を観るようになり、ここ数年でやっと中国、韓国、香港、台湾などのアジアの映画も観るようになった。
そうしたら当たり前だがまあものすごく面白い作品がたんまりある。世間ではすでに言わずと知れた名作も自分にとってはこれから初めて体験する未知の作品なので、その大きな山をこれから少しずつ、まだまだ先長く楽しんでいけると思えば、いままで趣味の偏りのために一定のジャンルをまったく手つかずにしておいたこともわるくないなと思える。
話題の映画を、話題になっているうちに観ることがめったにない自分だけれど、周回遅れ(しかも何十周もの周回遅れ)でも、映画はいつでも待ってくれている。
というわけで今年の年明けに今まで未開拓だったウォン・カーウァイ映画をやっと観た。ザ・シネマメンバーズで配信されている4作品を古いものから順に観たらすっかりハマって、更に手をのばして他のウォン・カーウァイ作品や他の香港映画も芋づる式にザクザクと観るというお決まりのパターンとなった。
そしてやっぱりというか例に漏れずというか、まんまとトニー・レオンにハマった。何十周の周回遅れだということは重々承知のうえで、昔から好きな人にとっては今さら何をと思われることも重々承知のうえで、それでも言いたい。なんでそんなにかっこいいんだ、トニー・レオン。
配信作品である「恋する惑星」「天使の涙」「ブエノスアイレス」「花様年華」の4本のうちトニー・レオンは3本に出演している。その他の出演作品も色々と観た。真骨頂は「花様年華」だと思うが「ブエノスアイレス」のトニー・レオンが今は一番好きかもしれない。自分ではどうしようもできない、ままならないものに抵抗しながらも翻弄され、傷つき、一番生々しくて人間くさくて。どんな役でも(たとえばヤクザに潜入捜査しているハードボイルドな刑事役だったとしても)いつもどこか上品さや人の良さや薄皮一枚まとっている感じを思わせるトニー・レオンだが、この役ではむき出しな感じがした。
そんなふうに、20年以上前のウォン・カーウァイ作品やトニー・レオンに大いにハマり、部屋で一人ひたすら映画を観ながらとても楽しい時間を過ごしていたここ最近だった。
「今さら」とか「やっと」とか「ようやく観た」と書いたが、本当はそんなふうに言う必要は全然ない。映画は観たくなったときに、観ずにいられなくなったときに、もしくはひょんな機会に、観たいものを観ればいい。映画は私を、あなたを、いつでも待ってくれている。
さて、2020年8月から始まったこの「マイルームシネマ」、今回が最終回です。
エリック・ロメールの「満月の夜」が大好きでそれをテーマに2015年にイラストの個展をして、時を経てその際の作品をザ・シネマの担当のEさんが見つけてくださり連載が始まった。当初の予定を越えて20回も続けることができ、20回の中でロメール作品は5回も描くことができた。
イラストを描くことは本業なのでともかく、文章の連載は初めてだったのでいつも苦労して、今も読み返すと恥ずかしくなるところが多々あるけれど、とにかく自分が思ったことを素直にそのまんま、おもしろい映画を一人で観たあとに仲の良い友だちに話しをするようなつもりで書いた。毎回作品選びも含めて本当に自由に書かせてくださったEさんに、この場を借りてあらためてお礼申し上げます。
そして今まで「マイルームシネマ」を読んでくださった皆さまに心より感謝いたします。時々思わぬところで「あの映画の連載読んでます」と言っていただく機会があり、そんなときはいつも言い表しようがないほどうれしい気持ちになり、とても励みになった。
「マイルームシネマ」というのは初回でも書いたとおり連載タイトルを考案中にふと思いついたものだけど、いいのが浮かんでくれたなと思って我ながら気に入っている。
映画は一人で観るものだと思っている。でも観た感想を誰かと語り合えるのは楽しく幸せなことだ。映画館でも、自分の部屋でも、これからも一人で映画を観て、心の部屋に大事にストックしていきたいと思う。
連載でとりあげた作品はどれも心底好きな映画なので、気になったものがあればぜひ観てみていただければ幸いです。皆さまよき映画ライフを。ありがとうございました。
エリック・ロメールの「満月の夜」が大好きでそれをテーマに2015年にイラストの個展をして、時を経てその際の作品をザ・シネマの担当のEさんが見つけてくださり連載が始まった。当初の予定を越えて20回も続けることができ、20回の中でロメール作品は5回も描くことができた。
イラストを描くことは本業なのでともかく、文章の連載は初めてだったのでいつも苦労して、今も読み返すと恥ずかしくなるところが多々あるけれど、とにかく自分が思ったことを素直にそのまんま、おもしろい映画を一人で観たあとに仲の良い友だちに話しをするようなつもりで書いた。毎回作品選びも含めて本当に自由に書かせてくださったEさんに、この場を借りてあらためてお礼申し上げます。
そして今まで「マイルームシネマ」を読んでくださった皆さまに心より感謝いたします。時々思わぬところで「あの映画の連載読んでます」と言っていただく機会があり、そんなときはいつも言い表しようがないほどうれしい気持ちになり、とても励みになった。
「マイルームシネマ」というのは初回でも書いたとおり連載タイトルを考案中にふと思いついたものだけど、いいのが浮かんでくれたなと思って我ながら気に入っている。
映画は一人で観るものだと思っている。でも観た感想を誰かと語り合えるのは楽しく幸せなことだ。映画館でも、自分の部屋でも、これからも一人で映画を観て、心の部屋に大事にストックしていきたいと思う。
連載でとりあげた作品はどれも心底好きな映画なので、気になったものがあればぜひ観てみていただければ幸いです。皆さまよき映画ライフを。ありがとうございました。