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COLUMN/コラム2021.03.09
『サボテン・ブラザース』が愛される理由
日本の映画市場で長らく鬼門と言われ続けてきたジャンルの一つが、“アメリカン・コメディ”だ。たとえ本国でNo.1ヒットを飛ばした作品でも、日本公開では一部の例外を除いて、その多くが爆死を遂げてきた。公開されるのはまだマシな方で、日本のスクリーンには掛からずじまいだった作品も、少なくない。 その原因として繰り返し言及されたのが、文化的な差異による“笑い”の違い。その説明には、日本を代表する喜劇映画シリーズ『男はつらいよ』が、例として挙げられるパターンが多かった。いわく、日本的な人情風味が満載の寅さん映画を、仮に欧米で字幕付きで上映しても、ウケはしないだろうと。“アメリカン・コメディ”が日本でウケないのも、それと同じようなことだと。 何はともかく死屍累々の中、劇場公開時にヒットしたという話はきかないながらも、『¡Three Amigos!』を、「好きな作品」として挙げるケースには、よく遭遇してきた。邦題は、日本での“アメリカン・コメディ”の例外的なヒット作である『ブルース・ブラザース』(80)に因んで付けられたと思われる、『サボテン・ブラザース』(86)のことである。 監督が『ブルース…』と同じ、ジョン・ランディスなのはともかく、プロデューサーのローン・マイケルズと3人の主演陣は、アメリカのTV界を代表するコメディバラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」ゆかりの面々。チェビー・チェイスとマーティン・ショートは、「サタデー…」にレギュラー出演して人気を博した時期があり、スティーヴ・マーティンは、ホストとして度々ゲスト出演して、評判になった。そうした意味で、正に“アメリカン・コメディ”の王道的なメンバーが集結している。 こうなると、これはホントに危うい。日本では、最もウケないパターンである。例えばランディス監督の前作で、チェビー・チェイスと、やはり「サタデー…」組のダン・アイクロイドが共演した『スパイ・ライク・アス』(85)のように。 ところが先に書いた通り、本作は日本でも「愛される」1本となった。それは劇場公開時よりも、むしろその後のレンタルビデオやTV放送を通じてとは思われるが。 本作の人気が高かった理由のまず一つは、物語の構造であろう。悪党に蹂躙される村人の声に応えて、勇者たちが心意気で助けに向かうというのは、『七人の侍』(54)や、そのリメイクである西部劇『荒野の七人』(60)などでお馴染みのパターンであるが、コメディとして、そこからの捻り方が絶妙である。 主人公たちが演じる勇者を見て、「本物」と“勘違い”した村人からの願い。それを「俳優の仕事」としての依頼と“勘違い”して受けた主人公たち。真実に気付いた時は、一旦逃げ出しかかるが、最終的には勇気を振り絞って、村人たちのために戦う。 この構図は後に、『スタートレック』シリーズへのオマージュが満載の『ギャラクシー・クエスト』(99)にも、転用される。こちらでは、宇宙船のクルー役を演じた俳優たちを、「本物」と宇宙人が勘違い。助けを求められた俳優たちは、“宇宙戦争”を戦うことになる。 他に、ピクサーのCGアニメ『バグズ・ライフ』(98)など、『サボテン・ブラザース』の影響下にあると思われる作品は、少なくない。 先に挙げた、本作の熱心なファンである三谷幸喜も、このパターンを自作に取り込んでいる。役所広司主演のTVドラマ「合い言葉は勇気」(00)は、本物の弁護士と勘違いされた俳優が、不法投棄を行う産廃業者を相手取った住民訴訟を戦う。また監督作である映画『ザ・マジックアワー』(08)も、ヤクザの組織が、佐藤浩市が演じる売れない俳優をプロの殺し屋と勘違いする話であり、このバリエーションと言える。三谷の作風として、登場人物たちの勘違いに勘違いが重なって、物語があらぬ方向に暴走していく展開があるのだが、本作の骨組みは正に、「ズバリ」だったのであろう。 こうした構成の下、繰り広げられるのが、本作の主演にして、製作総指揮・脚本も兼ねたスティーヴ・マーティンが言うところの、「セックスもドラッグも4文字言葉も出ていない」コメディである。日本の観客が一番お手上げになる、英語での言葉遊びのギャグなどよりも、体を張ったギャグの方が、際立つ仕掛けである。 『サボテン・ブラザース』© 1986 ORION PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved
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COLUMN/コラム2015.05.15
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年6月】にしこ
『フェリスはある朝突然に』で観る人全てをフェリス・ビューラー気取りにさせたあのジョン・ヒューズ監督が贈る、「ここまでやりますか!」的大災難トホホのちじんわりあたたかムービーの傑作であります。『大災難P.T.A.』の「P.T.A」はあれです。「Parent Teacher Association」ではありません。原題は「PLANES, TRAINS & AUTOMOBILES」。主人公2人(主にスティーヴ・マーティン)が家までたどり着くまでに使う交通手段です。飛行機でも電車でも車でもたどり着けないほどの大災難!!その全てをあなたは目撃する!感謝祭の2日前、エリート広告代理店マンのニールはクライアントへのプレゼン終わり、シカゴの家へと飛行機で帰ろうと必死。やっとの思いでタクシーを捕まえたと思ったら、巨漢の男にタクシーを横取りされてしまう。はらわたが煮えくり返る思いでなんとか飛行機に乗ったものの、ファースト・クラスの予約は感謝祭の混雑の為キャンセルされ、「席があるだけありがたく思え」とばかりにエコノミーに送られる。さらに追い打ちをかける様に、隣のシートにはタクシーを奪った憎き巨漢の男が!この巨漢の男を演じるのが70年代から90年代までのアメリカン・コメディの象徴でもあったジョン・キャンディ。あのいかにも「気が良くて」「がさつで」「厚かましい」感じのルックス通りのキャラクター、デルをこの映画でも演じています。スティーヴ・マーチン演じるちょっと神経質なニールの神経を逆なでしまくりイラつかせまくりの90分強。そう、デルこそニールに起こった「大災難」なのです。「アメリカのコメディって日本人にはちょっと大げさすぎるっていうか…」という方も食わず嫌いをせずにぜひご覧ください。今や当代一のコメディアン、スティーヴ・マーティンはいかにも日本人好みする「やりすぎない面白さ」の達人ですし、熊の様な体躯に愛くるしい目で申し訳なさそうにスティーヴ・マーティンをみるジョン・キャンディの姿はなんともほほえましい。果たして2人は無事家にたどり着く事が出来るのか!?ちょっとした秘密と押し付けがましくない感動があなたを待っています!!ジョン・キャンディは1994年に心臓発作で急逝してしまいましたが、ご存命だったらぜひまたこの2人の珍道中が観てみたかったなぁと強く思う次第です。 TM & Copyright © 2015 by PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. All rights reserved.