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PROGRAM/放送作品
インファナル・アフェア【4Kレストア版】
警察とマフィアに潜入した男たちの壮絶な死闘と哀しき“無間地獄”──香港ノワール3部作の第1章
アジアで大ヒットを記録し、『ディパーテッド』としてハリウッド・リメイクもされた傑作香港ノワール。アンディ・ラウ&トニー・レオンの香港2大スターが、“無間地獄”にもがく男の苦悩を圧倒的な存在感で演じる。
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COLUMN/コラム2020.07.29
巨匠チャン・イーモウが、この時撮らなければならなかった、“武侠映画”第2弾!『LOVERS』
アメリカの西部劇や日本の時代劇と同じように、中華圏の映画には“武侠もの”という、伝統的なジャンルがある。それは、1920年代に中国で初めて製作され、60年代後半から70年代前半にかけては、イギリス統治下の香港で隆盛を極めた。 中国を舞台に、剣の達人たちが超能力のようなパワーを発揮し、宙を舞ってチャンバラを繰り広げる。伝統のワイヤー・アクションに、近年はCGやVFXも駆使されて、中国大陸では、“武侠もの”のTVドラマ大作シリーズの製作も、盛んに行われている。 そんな“武侠もの”を、中国映画界の巨匠チャン・イーモウ監督が初めて手掛けたのが、『HERO』(2002)。それに続く、イーモウの“武侠もの”第2弾が本作、2004年に公開された、『LOVERS』である。 本作が、『HERO』の興行的な成功を受けて成立した企画というのはもちろんだが、それだけではない。様々な側面から見て、イーモウにとっては、このタイミングに撮らなければならなかった。そしてこのタイミングでなければ、撮ることが出来なかった作品のように思える。 西暦859年。唐の大中13年― 凡庸な皇帝と、政治の腐敗で各地に反対勢力が台頭。 その最大勢力「飛刀門」は貧者救済で支持を集めた。 朝廷は飛刀門の撲滅を命じ、県の捕吏と飛刀門の死闘が続いていた…。 捕吏のリウ(演:アンディ・ラウ)とジン(演:金城武)が目を付けたのは、遊郭の踊り子である、シャオメイ(演:チャン・ツィイー)。生まれつき盲目ながら、見事な舞いを見せる彼女は、「飛刀門」の前頭目の娘と思われた。 「飛刀門」の本拠地を探るため、リウとジンは、シャオメイを罠に掛ける。リウが捕えたシャオメイを、無頼の徒を装ったジンが、救出。2人は、逃亡の道行きとなる。 リウは2人の後をつけて、道々でジンと連絡を取り合う。その際にリウは、「シャオメイに、本気になるなよ」と、ジンに何度も釘を刺すのであった。 しかしこの逃亡劇には、幾重もの謀が張り巡らされていた。ジンの正体を知らない、朝廷からの追っ手も掛かり、絶体絶命の窮地に陥る中で、ジンとリウ、そしてシャオメイ、2人の男と1人の女の運命は? 「北京電影学院」での学友チェン・カイコー監督の『黄色い大地』(84)『大閲兵』(85)などで撮影を担当したのが、中国映画界に於ける、チャン・イーモウのキャリアのスタートだった。その後、『古井戸』(86)に主演。俳優としての演技も経験してからの1987年、初監督作の『紅いコーリャン』を発表した。 この処女作から、自らが見出した女優コン・リーをヒロインに、中国の近代から現代までを舞台にした様々な“人間ドラマ”を手掛ける。そしてイーモウは、「ベルリン」「ヴェネチア」「カンヌ」などの、国際映画祭を席捲する存在となっていった。 妻子持ちのイーモウにとって、不倫の関係であった、コン・リーとの二人三脚は、『活きる』(94)で一旦解消となる。その後の作品も含めて、90年代までのイーモウ作品には、“アクション”のイメージはほとんどない。それ故に21世紀を迎えて、“武侠もの”である『HERO』を手掛けた際は、大きな驚きを持って迎えられた。 『HERO』は紀元前の中国、戦国時代を舞台に、英語タイトル通りに、ジェット・リーが演じる男性剣士を主人公とした物語。彼は、“義”に生きて“義”に死んでいく…。 一方『LOVERS』の主要登場人物3人は、“義”よりも“愛”に生きる。そして、“愛”に流されて“愛”に滅ぼされていく…。 『恋する惑星』(94)『天使の涙』(95)といったウォン・カーウァイ監督作品でスターになった金城武は、ちょうど30代に突入した頃。一方80年代後半より“四大天王(香港四天王)”と言われ、TOPスターとして走ってきたアンディ・ラウは、21世紀を迎えて、『インファナル・アフェア』シリーズ(02~03)が大ヒットとなった直後であった。それぞれにとって『LOVERS』は、キャリアのピークに近い頃の出演作と言える。 しかし本作の眼目は、やはりチャン・ツィイーにある!コン・リーがイーモウの元を去った後、『初恋の来た道』(99)のヒロインとして、イーモウに発掘された彼女にとって『LOVERS』は、『HERO』に続く、イーモウ作品3本目の出演。この頃のツィイーは、正にイーモウ監督のミューズと言える存在だった。 ここで注目すべきは、『初恋の来た道』の直後に、ツィイーが出演した作品である。それはアン・リーが監督した“武侠もの”『グリーン・ディスティニー』(00)。 この作品はアメリカをはじめ、各国で大ヒットとなった。そして中国語作品でありながら、本家「アカデミー賞」では、作品賞はじめ10部門でノミネート。その内、撮影賞、美術賞、作曲賞、そして外国語映画賞の4部門で、見事に受賞を果した。 台湾出身のアン・リーによる“武侠もの”が、世界的な大評判となったことが、イーモウのハートに火を付けたことは、想像に難くない。“武侠もの”を手掛けることはイーモウ本人が言う通りに、以前からの「念願」であったのかも知れない。しかしそれ以上に、中国を代表する監督として、アン・リーに後れを取ったままではいかないという、強烈な意識があったかと思われる。 イーモウの自負心の源は、氏育ちと関係あるだろう。彼の父親は、蒋介石率いる「国民党」の軍人だった。「国民党」は国共内戦に敗れ、台湾へと逃避したわけだが、イーモウの父は、中国に残った。そのため「中華人民共和国」成立後、「中国共産党」支配の下でイーモウの一家は、“最下層”の生活を余儀なくされた。 評論家の川本三郎氏のインタビューに応え、映画を志した理由を、イーモウは次のように語っている。 ~率直にいって映画が好きだったから北京電影学院に行ったわけではありません。私にとって、国民党の軍人の子どもという境遇から抜け出すことが大事だったんです。だから体育大学でもよかった…~ ~よくインタビューで「いつから映画に惹かれたか」と聞かれるんですが、答えようがないんですよ。映画でも体育でも美術でも、自分の境遇を変えられるものだったらなんでもよかったんですから。たまたま、それが映画になっただけなんです。~ ~映画が私の人生を変えたのではなく、私は生きのびるために人生を変えていったんです。それが最終的に映画監督という道につながったんです~ 一瞬、映画へのこだわりが、実は薄かったのかと、勘違いさせかねない物言いだ。いや、そんなことはないだろう。“映画”の才能こそを最大の武器にして、成功者となったわけである。“映画”こそ、イーモウの生きる術に他ならない! 近年のイーモウが、2008年の「北京オリンピック」開会式の演出を手掛けたり、“南京大虐殺”を取り上げた『金陵十三釵』(11/日本未公開)を撮ったことなどを指して、“国策監督”と揶揄する向きも少なくない。それを否定する気は毛頭ないが、彼が生半可な道を歩んで、ここまでのし上がってきたわけでないことは、覚えておいた方が良い。 建国の父・毛沢東の誤った政策であり、イーモウ自らも青春期に悲惨な目に遭った、「文革=文化大革命」の時代を取り上げた監督作品である『活きる』が、中国国内では「上映禁止」の憂き目に遭ったこともある。それにも拘わらず、「文革」の時代に振り回される庶民の物語を、『初恋のきた道』『サンザシの樹の下で』(10)『妻への家路』(14)と、折に触れては繰り返し映画化する辺り、たとえ“国策監督”であっても、凡庸ならざる存在である。 アン・リーの『グリーン・ディスティニー』は、「中国を代表する監督」という、イーモウの自負心を刺激しただけには、止まらなかったと、私は見る。自らが手塩に掛けたチャン・ツィイーの、“アクション女優”としての魅力を、先に引き出されてしまったことも、彼を“武侠もの”の実現へと、大きく動かすことになったのであろう。 イーモウとツィイーの関係は、とかく噂になっていたが、実際に「男女の仲」だったのかどうかは、寡聞にしてわからない。だが映画監督という立場からは、ツィイーがイーモウにとっては、「俺の女」という存在であったのは、間違いなかろう。 とにかくイーモウはツィイーで、“武侠もの”を!それも、『グリーン・ディスティニー』を超える作品を、どうしても撮らなければならなかったのではないか? とはいえ『HERO』は、先にも挙げたように、ジェット・リーが主演の“英雄”の物語である。脇を固める、トニー・レオン、マギー・チャン、ドニー・イェンら中華圏の大スター達と、ツィイーも同格の活躍を見せるものの、彼女がヒロインというわけではない。 この作品を経て、本作『LOVERS』へと行き着くわけだが、先に述べた通り、主要な登場人物たちの方向性は、『HERO』とは180度転換。“義”よりも“愛”を選ぶ者たちとしたのは、正にヒロインとしての“ツィイー”の魅力を、最大限に引き出すための仕掛けと言えるだろう。 またツィイー演じるシャオメイは、遊郭の踊り子として登場するわけだが、これもまさに、彼女のための設定。8歳から舞踏を始めたツィイーは、11歳から「北京舞踊大学附属中学」でダンスを学び、14歳の時には「全国桃李杯舞踏コンクール」で演技賞を受賞している。そんな彼女の実力と魅力を存分に見せる舞いが、本作序盤の大きな見せ場となっているのである。 それにしてもイーモウの、『グリーン・ディスティニー』への対抗意識の激しさたるや!ジンとシャオメイを狙って、朝廷の兵士たちが“竹林”の上方から攻撃を仕掛けるシーンがある。これはキン・フ―監督の『侠女』(71)という、伝説的な“武侠もの”へのオマージュであるのだが、『グリーン・ディスティニー』にも同様に、『侠女』へのオマージュとして、“竹林”での戦いのシーンがある。イーモウ監督は、「アン・リーよりも凄いシーンを見せてやる」とばかりに、敢えて“竹林”を舞台に、物量を以って驚くべき戦闘シーンを作り出している。 さて結果的に『LOVERS』は、『グリーン・ディスティニー』を超えることが出来たのか?本作でのツィイーは、アン・リー作品よりも魅力的に映っているのか?それに関しては、世評や興行の結果はさて置いて、観る者の判断に委ねたいと思う。 いすれにせよ最初に記した通り、イーモウにとって本作は、このタイミングに撮らなければならなかった。そしてこのタイミングでなければ、撮ることが出来なかった作品だったのである。 『LOVERS』は今のところ、イーモウがチャン・ツィイーと組んだ、最後の作品となっている。それから14年経って、イーモウが久々に手掛けた“武侠もの”第3弾『SHADOW/影武者』(18)の出演陣に、ツィイーの顔はない。 『LOVERS』は唯一無二のタイミングで、イーモウが渾身の力を振り絞って、自らのミューズの輝きを、最大限に引き出さんとした試みだったのだ。■ 『LOVERS』(C)2004 Elite Group(2003)Enterprises Inc.
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インファナル・アフェアIII 終極無間【4Kレストア版】
13年間にわたって繰り広げられた、血塗られた“無間地獄”がついに完結!香港ノワール3部作の最終章
シリーズ第1作の前後に時間軸を置き、潜入捜査官ヤンの素顔など新たな真実を描きながら3部作を終結。善人になりたいと願うほど“無間地獄”に陥っていく潜入マフィアを、アンディ・ラウが哀愁たっぷりに演じる。
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COLUMN/コラム2020.01.05
本気で泣ける少林寺映画、『新少林寺/SHAOLIN』
“少林寺”といえば、ジェット・リー(当時はリー・リンチェイ)主演の映画。1970年代生まれのぼく世代にとっては、映画『少林寺』(82年)はそれだけのインパクトを持った映画だった。 まずは予告編からして、朝日をバックにリズムカルな「ハッ!ハッ!ハッ!ハハッ!」という掛け声とともに修行を積む少林僧たち、そして「天に竹林寺、地には少林寺」という唐突すぎて意味不明なキャッチコピー、「知られざること2000年…初めてカメラが撮らえた…世界の武術のルーツ少林寺」「全中国武術大会チャンピオン総出演」「中国縦断ロケ2万キロ」といったモンド映画のように観客の好奇心をそそるコピーが連打される、東宝東和ハッタリ演出の総力を結集したかのような最高の出来で、この予告編を観た全国の小中学生は劇場に殺到。それまで少林寺と言えば日本の武道である少林寺拳法(実は少林寺拳法も本作の製作・プロモーションなどをフルサポートしている)しか知らなかった少年少女たちは、ブルース・リーやジャッキー・チェンとも違う本作のカンフーに喝采を送り、日本では16億円を超えるメガヒットを記録したのだった。 少林寺映画は続編『少林寺2』(83年)『阿羅漢』(86年)という“リンチェイ少林3部作”の大ヒットが決定打となり、完全に世界各国で市民権を獲得。中国では映画を観た少年たちが次々と家出をして少林寺を目指すという社会現象が起き、日本でも『少林寺三十六房』(77年)のような過去作も次々と公開される一大ブームを巻き起こすこととなる。 ところで読者の皆さんは、少林寺はどのような場所なのかご存じであろうか。 少林寺は正式には嵩山少林寺といい、中国河南省にある寺院である。禅宗の開祖である達磨大師がインドから中国に渡り、嵩山で壁に向かって9年間座禅を続け(面壁)悟りを開いたことに始まるとされており、所説はあるが達磨によって少林武術が創始され、僧兵集団を形成していくことになる。隋末には、隋を滅ぼした王世充による攻撃もあったが、これを討伐する太宗・李世民の軍に僧兵を援兵し、国家の庇護を受けた少林寺は発展していくことになる(この時代が『少林寺』で描かれる時代となる)。 その後も少林寺では多様な武術が発展していくのだが、清代末期には武術組織と新興宗教を母体とした義和団の乱が勃発。諸外国の連合軍によって義和団の乱が鎮圧されると、国際的な監視下で中国全土で武術の禁止が発令され、少林拳も強く規制されることになる。さらに袁世凱死去後の軍閥時代末期となる1928年には、軍閥の抗争に巻き込まれる形で寺院の建物や所蔵物が焼失してしまう事態が発生。現在はいくつかの建造物は復興されているが、完全復興には至っていない状態は続いている。しかし少林寺は何回かの存亡の危機に瀕しながらも、そのたびに不死鳥のように蘇ってきた歴史があり、中国の市場経済化以降は、現方丈の釈永信の下で商標ビジネスや物販、少林武術ショーを積極的に行い、巨大な利権を生み出す観光化を推し進めている。 そんな少林寺を舞台にした映画は、中国・香港・台湾の各映画界において何度も何度も作品が作成されてきた。隋代末期の物語をベースとする少林寺モノのブームが沈静化したのちは、かつて福建省に存在していたとされていた福建少林寺の南派少林寺系の武侠や英雄の物語が繰り返し映画化されている(『ドランクモンキー酔拳』(78年)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズ(91年~)のウォン・フェイフォンなど)。 そして1997年の香港の中国返還後は、多くの香港映画人が中国に渡って少林寺映画を製作。中でも『少林寺』の監督チャン・シン・イェンと『マトリックス』(99年)のユエン・ウーピンが共同監督し、ウー・ジンが主演した『新・少林寺』シリーズ(99年~)と『少林武王』シリーズ(01年~)は中国本土でも大ヒットとなった。さらに香港の喜劇王チャウ・シンチーが監督・主演した『少林サッカー』(01年)は、少林寺(カンフー)+α映画の新地平を切り開き、2013年には本家嵩山少林寺が少林拳とサッカーを組み合わせたサッカースクール開校を発表するなど、映画の影響は大きく広がっていくことになる。ちなみに日本では少し遅れて少林寺映画ブームが到着し、『踊る大捜査線』シリーズの本広克行+亀山千広が制作し、柴崎コウが出演した『少林少女』(08年)、バラエティでも一時人気者となったチャン・チュワン君が主演した『カンフーくん』(07年)、『ガキ使』の浅見千代子が主演する『少林老女』(08年)などが制作されている。 そんな少林寺ブームも一段落した2010年代、新たな少林寺映画のマスターピースが登場することになる。『新少林寺/SHAOLIN』(11年)である。 中華民国の初期は、軍閥同士が血で血を洗う抗争を繰り返す動乱の時代であった。そんな時代の少林寺は、戦乱で家や家族を失った者、傷つき病に倒れる者を救う救済所となっていた。1912年のある日、少林寺に負傷した登封城の将軍・霍龍(チェン・チーフイ)が逃げ込んでくるが、悪逆非道を尽くす軍閥の長である侯杰(アンディ・ラウ)と副官の曹蛮(ニコラス・ツェー)が霍龍を追って少林寺に侵入。霍龍を殺害し、少林寺を侮辱して去っていく。霍龍亡き後の登封城の扱いをめぐって侯杰は妻の顔夕(ファン・ビンビン)の実兄である宋虎将軍(シー・シャオホン)と対立し、その暗殺をもくろむ。しかし腹心の曹蛮の裏切りに会い、侯杰は命からがら脱出するが、愛娘の勝男(嶋田瑠那)が重傷を負ってしまう。切羽詰まった侯杰は少林寺に飛び込むが、少林僧たちの懸命の救護活動の甲斐なく勝男は死んでしまう。勝男を失った悲しみを抱えた侯杰は厨房係の悟道(ジャッキー・チェン)に預けられるが、自ら頭を丸めて出家することを決意する。方丈(ユエ・ハイ)によって入山を許可され、武道と医療の修行を開始して浄覚という法名を与えられた侯杰だったが、曹蛮の悪政で村人が虐殺されそうになることを救ったために少林寺で生き延びていることがバレてしまう。曹蛮は侯杰を殺すため、少林寺に軍隊を送り込むが……。 少林寺の受難時代は隋代末、中華民国初期、文化大革命の3つのポイントとされており、少林寺映画と言えば隋代末を描くものがもっともメジャー。近代以降はどうしても銃vs.拳法という勝ち目のない勝負となってしまうため、映画として描きづらくなってしまうからだ。しかし本作は中華民国初期、少林寺の伽藍の多くが消失した事件をベースにしたオリジナルストーリーとなっている。 配役としては、1982年版『少林寺』でタン師父を演じたユエ・ハイが少林寺の方丈役を演じ、少林僧のリーダーである浄能役には『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(17年)で中国史上最高の興行収入を上げることになるウー・ジン、顔夕役には最近巨額脱税で話題となったファン・ビンビン、若き野心家・曹蛮役は『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』(06年)のニコラス・ツェー、そしてカンフーが使えない悟道役には何とジャッキー・チェンが演じており、物語を盛り上げる。監督は香港警察映画の名手ベニー・チャン、武術指導はジェット・リーの盟友でジャッキー・チェンの兄弟子のユン・ケイが担当。本作は香港では2011年の旧正月映画として公開されて大ヒットを記録し、第33回香港電影金像奨では助演男優賞、動作設計(アクション指導)などにノミネートされるなど、興行面でも評価面でも大成功を収めた映画となった。 しかし何と言っても本作の白眉は、主演のアンディ・ラウの演技。物語は残虐な侯杰が裏切られて少林寺に向かうまで、侯杰が少林寺で修業して開眼するまで、最後の大戦争をいう3部に分かれており、各章立てがちょうど1/3ずつの時間を使って構成されているのだが、第1部では残虐な冷血漢、第2部では思い悩む苦悩者、第3部では悟りを開いた高僧という、全く異なるキャラクターを見事に演じ分けている。 本作はもちろん激しいアクションが見所の作品であり、美術設計として金像奨にノミネートされた美しい少林寺の風景とクライマックスで破壊(爆破シーンが半端なく凄い!)されて瓦礫の山となるギャップの凄さもあるが、前述のアンディ・ラウとニコラス・ツェーの名演によって何よりも少林寺映画としては稀有な“泣ける少林寺映画”である所がこれまでの少林寺映画とはまったく異なる点となっている。憎しみも悲しみも乗り越えた主要登場人物たちが、最後にたどり着く境地をその目で確かめてほしい。■ © 2011 Emperor Classic Films Company Limited All Rights Reserved
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(吹)インファナル・アフェア【4Kレストア版】
警察とマフィアに潜入した男たちの壮絶な死闘と哀しき“無間地獄”──香港ノワール3部作の第1章
アジアで大ヒットを記録し、『ディパーテッド』としてハリウッド・リメイクもされた傑作香港ノワール。アンディ・ラウ&トニー・レオンの香港2大スターが、“無間地獄”にもがく男の苦悩を圧倒的な存在感で演じる。
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COLUMN/コラム2013.12.01
2013年12月のシネマ・ソムリエ
■12月7日『インファナル・アフェア』 ハリウッド映画『ディパーテッド』元ネタとなった香港ノワールの傑作。警察からマフィアへ、マフィアから警察へ送り込まれた潜入者2人がたどる壮絶な運命を描く。 麻薬捜査のさなかにモールス信号や携帯を用いたスパイ戦の息づまる緊迫感! 濃密な心理サスペンスと重層的な人間ドラマを融合した映像世界は極めて完成度が高い。 現題の「無間道」とは“終わりなき地獄”の意味で、複数の主要人物が意外な形で死亡する展開が衝撃的。その根底に流れる東洋的な死生観が深い余韻を生み出している。 ■12月14日『ドーベルマン』 ドーベルマン”の異名を持つ凶悪犯罪者、ヤン率いる武装グループがパリに出現。彼らに翻弄された警察は、血も涙もない極悪警視クリスチーニに一味の撲滅を委ねる。 数々のCMや音楽クリップを手がけてきたオランダ出身のヤン・クーネン監督が放ったバイオレンス映画。イカれた悪と悪の抗争劇が疾風怒濤の勢いで展開していく。 日本製アニメを愛する気鋭監督がコミック調の映像とテクノ音楽を融合。観る者の好き嫌いが極端に分かれる怪作だが、その猥雑でアンモラルな世界は一見の価値あり。 ■12月21日『ブラス!』 炭鉱閉鎖問題に揺れる英国ヨークシャー州の町を舞台にしたヒューマン・ドラマ。英国映画ブームさなかの1997年に日本公開され、多くの観客の涙を誘った感動作である。 生活苦にあえぎながらも、頑固な指揮者のもとで活動を続けるブラスバンド団員たちの心意気を描出。痛烈な社会風刺とともに、人間臭いユーモアが映画を活気づける。 実在のグライムソープ・コリアリー・バンドが、「ダニー・ボーイ」などの挿入曲の演奏を担当。2011年に他界したP・ポスルスウェイトの名演技も観る者の胸を打つ ■12月28日『ロスト・アイズ』 ギジェルモ・デル・トロが製作を務めた恐怖映画。視覚障害を患う女性が姉の自殺の真相を探るうちに、自らも危機に陥っていく過程をミステリー仕立てで描き出す。 『永遠のこどもたち』の女優B・ルエダが徐々に視力を失っていく主人公フリアを熱演。その周辺に謎の人影を暗躍させ、観る者の不安を増幅させる演出が実に巧妙だ。 主人公の限られた視界を表現した映像も秀逸で、スペイン製スリラーのレベルの高さを再認識させられる。『裏窓』などの古典映画への目配せも盛り込まれた一作だ。 『インファナル・アフェア』© 2002 Media Asia Films (BVI) Ltd.All Right Reserved. 『ドーベルマン』©1997 Noe Peoductions - La Chauve - Souris - France 3 Cinema. 『ブラス!』©Channel Four Television Corporation and Miramax Film Corp.1996 All Rights Reserved. 『ロスト・アイズ』© Rodar y Rodar Cine y Television, S.L / A3 Films, 2010
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(吹)インファナル・アフェアIII 終極無間【4Kレストア版】
13年間にわたって繰り広げられた、血塗られた“無間地獄”がついに完結!香港ノワール3部作の最終章
シリーズ第1作の前後に時間軸を置き、潜入捜査官ヤンの素顔など新たな真実を描きながら3部作を終結。善人になりたいと願うほど“無間地獄”に陥っていく潜入マフィアを、アンディ・ラウが哀愁たっぷりに演じる。
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いますぐ抱きしめたい 【4Kレストア版】
[PG12相当]ウォン・カーウァイ監督の鮮烈デビュー作!香港映画界の若きスター達による青春群像劇
ウォン・カーウァイの監督デビュー作。香港の空気を感じさせる映像からすでに才能の片鱗を感じさせている。アンディ・ラウやマギー・チャンら後に香港映画界の大スターとなるキャストの瑞々しい魅力も光る。
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PROGRAM/放送作品
七福星
シリーズ屈指の豪華キャスト!サモ・ハン・キンポー監督・主演で描くアクション・コメディシリーズ第3作
サモ・ハン・キンポー監督・主演の福星シリーズ第3作。ドタバタを巻き起こす大ボケ5人組と刑事コンビに扮するレギュラー陣以外にも、倉田保昭や若き日のアンディ・ラウにミシェル・ヨーなど豪華メンバーが集結。
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(吹)七福星 【木曜洋画劇場版】
シリーズ屈指の豪華キャスト!サモ・ハン・キンポー監督・主演で描くアクション・コメディシリーズ第3作
サモ・ハン・キンポー監督・主演の福星シリーズ第3作。ドタバタを巻き起こす大ボケ5人組と刑事コンビに扮するレギュラー陣以外にも、倉田保昭や若き日のアンディ・ラウにミシェル・ヨーなど豪華メンバーが集結。