検索結果
-
PROGRAM/放送作品
ポセイドン・アドベンチャー
70年代パニック映画ブームはここから始まった!極限下の人間ドラマも白熱するスペクタクル大作
巨大客船ポセイドン号が海上で転覆して巻き起こる一大パニックを、当時としては大規模な特殊効果撮影で再現。生き残りに挑む人々の熱い群像ドラマも密度が高い。アカデミー歌曲賞・特別業績賞(視覚効果)を受賞。
-
COLUMN/コラム2024.04.01
‘70年代パニック映画ブームの起爆剤となった不朽の名作!『ポセイドン・アドベンチャー』
映画の草創期からみんなパニック大作が大好きだった! ‘70年代のハリウッドを席巻したパニック映画ブーム。その原点は『エアポート』シリーズ第1弾の『大空港』(’70)とされているが、しかしブームの起爆剤となったのは間違いなく『ポセイドン・アドベンチャー』(’72)であろう。アメリカでは「ディザスター映画」と呼ばれる一連のパニック映画群。その名の通り天災や事故、パンデミックなどの大規模な災害(ディザスター)パニックを題材に、そこへ運悪く巻き込まれてしまった人々による決死のサバイバルを描く。そもそも、映画業界の草創期から非常にポピュラーなジャンルのひとつだ。古くは大地震を題材にした『桑港』(’36)に『シカゴ』(’37)、南の島に巨大台風が襲来する『ハリケーン』(’37)、地球と惑星の衝突を描いた『地球最後の日』(’51)、旅客機が太平洋横断中にエンジン故障に見舞われる『紅の翼』(’54)などが有名だが、しかしなんといってもディザスター映画の王道といえば豪華客船の沈没であろう。 なにしろ、世界で最初のディザスター映画と呼ばれるのが、タイタニック号の沈没を描いたドイツ映画『In Nacht und Eis(夜と氷の中で)』(’12)である。以降も巨匠E・A・デュポンの『アトランチック』(’29)にジーン・ネグレスコの『タイタニックの最期』(’53)、ロイ・ウォード・ベイカーの『SOSタイタニック/忘れえぬ夜』(’58)などなど、主にタイタニック号事件を直接的ないし間接的な元ネタとしたスペクタクルな海洋パニック映画が数多く作られてきた。この『ポセイドン・アドベンチャー』については、ポール・ギャリコの原作小説も含めてタイタニック号事件との関連性は全くないものの、しかしこうしたジャンルの伝統と系譜をしっかりと受け継いだ正統派のディザスター映画であることは間違いない。 まずはあらすじをザックリと紹介しよう。ある年の大晦日のこと。ニューヨークからアテネへ向けて航海中の豪華客船ポセイドン号では、ベテランのハリソン船長(レスリー・ニールセン)と船主代理人ライナーコス(フレッド・サドフ)が激しく対立していた。というのも、船体が老朽化していることもあって転覆の危険性があるため、安全第一を考えるハリソン船長は速度を落として慎重に航行していたのだが、しかしコスト最優先のライナーコスは3日間の遅れが出ていることを問題視し、全速力で船を走らせるよう要求していたのだ。それでも頑として譲ろうとしないハリソン船長。しかし、最終的な決定権を持つライナーコスに逆らいきれず、不本意ながらも部下へ全速前進を指示するのだった。 一方、それぞれに事情を抱えた乗客たちは、新年パーティへ出席するための準備をしている。「神は自ら努力する者だけを救う」と主張するスコット牧師(ジーン・ハックマン)は、その弱者を切り捨てるような主張が教会から非難され、左遷先のアフリカ大陸へ向かう途中だった。ユダヤ人の金物屋マニー(ジャック・アルバートソン)とベル(シェリー・ウィンタース)のローゼン夫妻は、孫に会うためギリシャ経由でイスラエルへ向かうところ。彼らは一人旅をする親切な独身中年男性マーティン(レッド・バトンズ)を何かと気にかけていた。17歳のスーザン(パメラ・スー・マーティン)と12歳のロビン(エリック・シーア)のシェルビー姉弟は、目的地のアテネで両親と落ち合う予定。ニューヨーク市警のマイク・ロゴ警部補(アーネスト・ボーグナイン)は、元売春婦の妻リンダ(ステラ・スティーヴンス)と新婚旅行でイタリアへ向かう途中なのだが、しかし昔の客と遭遇することを恐れるリンダは客室から出ようとせず、それが夫婦喧嘩の原因になっていた。 やがて夜になると大食堂ホールで盛大な新年パーティが始まり、カウントダウンへ向けて乗客たちも大いに盛り上がる。ところがその頃、操縦室では重大な問題が起きていた。クレタ島の北西部で大規模な地震が発生したとの連絡が入ったのだ。慌てて遭難信号を送信したうえで、来るべき津波を警戒するハリソン船長と乗組員たち。ところが、それは彼らの想像を遥かに超えた大きさで、あっという間にポセイドン号は津波に飲み込まれてしまう。新年を迎えて祝賀ムードに沸き立つ大食堂ホールも、一転して阿鼻叫喚の地獄絵図へと変貌。転覆した船体は180度ひっくり返り、乗客たちは次々と天井へ真っ逆さまに落ちていく。 ほどなくして意識を取り戻した生存者たち。責任者のパーサーは「このまま救助隊が来るまでじっと待つべきだ」と指示し、生存者たちの大半が従うことにするのだが、しかしスコット牧師はこれに強く反発する。今やここが船底だ。いつ来るか分からない救助隊を待っていても、それまでに浸水してしまう危険性が高い。ならばイチかバチかでも上へあがって、すぐに助けてもらえるような場所へ移動するべきじゃないか!というわけだ。このスコット牧師の主張に賛同したのは、ローゼン夫妻にロゴ警部補夫妻、シェルビー姉弟にマーティン氏、そしてパーティ・バンドの歌手ノリー(キャロル・リンレイ)にボーイのエイカーズ(ロディ・マクドウォール)と僅か9名だけ。巨大クリスマスツリーを伝って上へ登った彼らだが、その直後に船内で爆発が起きて大食堂ホールへ海水がなだれ込む。断末魔の悲鳴を上げながら沈んでいく大勢の人々。その光景を目の当たりにして茫然とするスコット牧師だったが、それでも生き残りを賭けて9名の生存者たちの先頭に立っていく。彼らの行く手に次々と立ちはだかる試練と難関。果たして、全員が無事に生きて脱出することは出来るのか…? 原作者の実体験から生まれた作品だった! 『ポセイドン・アドベンチャー』の生みの親はプロデューサーのアーウィン・アレン。本作に続いて『タワーリング・インフェルノ』(’74)や『スウォーム』(’78)、『世界崩壊の序曲』(’80)などを世に送り出し、「ディザスター映画の王様」の異名を取ったアレンだが、もともとはテレビ・ドラマの出身だった。当時の彼が得意としていたのは『原子力潜水艦シービュー号』(‘64~’68)に『宇宙家族ロビンソン』(‘65~’68)、『タイムトンネル』(‘66~’67)などなど、劇場用映画ばりのスケール感で大ヒットした特撮アドベンチャー物。これらの成功に手応えを感じていたアレンは、おのずとテレビから映画への進出を目論むようになり、当時ちょうど出版されたばかりだったポール・ギャリコの同名小説の映画化企画を、専属契約を結んでいた20世紀フォックスに提案したのである。 1969年に出版されたポール・ギャリコの小説「ポセイドン・アドベンチャー」。ギャリコといえば「ハリスおばさん」シリーズや「七つの人形の恋物語」などが日本でも人気の高い作家だ。ポセイドン号のモデルになったのは、実在した有名な豪華客船クィーン・メリー号。1936年から’67年まで北大西洋を横断する定期便として運行したクィーン・メリー号は、乗客2020名に乗員1200名を収容することが出来るという超大型客船で、同時期に活躍したクィーン・エリザベス号に匹敵するほどの人気を誇った。作者のギャリコも’37年に乗船。ところが、船は2日間に渡って荒波に揉まれ、ギャリコが一等客専用の食堂で昼食を取っていたところ、急な高波に襲われて船全体が激しく傾いたことがあった。大事には至らなかったものの、それでも食堂は大変なパニックに陥ったという。その時の恐怖体験を基にして書き上げた小説が「ポセイドン・アドベンチャー」だったというわけだ。 ところが…である。20世紀フォックスはアレンの企画提案をにべもなく却下してしまう。なにしろ、当時のフォックスは『ドリトル先生不思議な旅』(’67)に『スター!』(’68)、『ハロー・ドーリー』(’69)と多額の予算を投じた大作映画が立て続けに興行的惨敗を喫しており、そのせいで会社の経営自体が傾いていた。明らかに予算のかかるディザスター映画を作っている余裕などなかったのである。加えて、当時はアメリカン・ニューシネマの全盛期。映画界のトレンドは『真夜中のカーボーイ』(’69)や『イージー・ライダー』(’69)などの小規模なアート映画だった。本作のような、いかにもハリウッド的な大作映画は客の入る見込みが低かったため、どうやらスタジオは二の足を踏んだようだ。 その後、’71年に帝王ダリル・F・ザナックが財政不振の責任を取って社長の座を降り、新社長ゴードン・T・スタルバーグのもとで経営再建に舵を切った20世紀フォックス。ここへきてようやく、『ポセイドン・アドベンチャー』の企画にもゴーサインが出る。とはいえ、与えられた予算はたったの500万ドル。『大空港』の1000万ドル、『タワーリング・インフェルノ』の1400万ドルと比べると、いかに低予算だったのかお分かりいただけるだろう。しかも、途中で会社側が金を出し渋り始めたため、最終的にプロデューサーのアレンが予算の半分250万ドルを、友人・知人からかき集めて調達することとなったそうだ。 キャスティングにも予算を抑えるカラクリが!? やはり最大の見どころは、上下逆さまとなった豪華客船内で繰り広げられる決死のサバイバル・アドベンチャー。中でも、実物大のセットを本当に丸ごとひっくり返したという津波パニック・シーンは今見ても圧巻である。特撮の演出を担当したのはアーウィン・アレン。よくこれだけ大掛かりな見せ場を用意しながら、500万ドルの予算内にきちんと収めたもんだと感心するが、そこはやはり長いことテレビ・シリーズを手掛けてきた人だけあって、少ない予算でいかに見栄えを良くするのか熟知していたのであろう。一方、作品全体の演出は『ミス・ブロディの青春』(’69)で高い評価を得たイギリス出身のロナルド・ニーム監督が担当。もともと巨匠デヴィッド・リーンの脚本家だっただけあって、登場人物それぞれの人生背景を丁寧に織り込んだ濃密な人間ドラマに冴えを見せる。この手のパニック大作は人間描写がおろそかになりがちだが、本作に限っては手抜かりが全くない。 また、’70年代パニック大作映画の定番であるオールスター・キャストにも、実は予算を抑えるためのカラクリが隠されている。どういうことかというと、当時旬の大物スターはスコット牧師を演じるジーン・ハックマンひとりだけ。それ以外は、既に全盛期を過ぎた過去のスターたちで固めているのだ。何故なら、旬のスターはギャラも高くついてしまうが、しかし過去のスターであれば知名度の割にギャラは安く済むから。なので、アーネスト・ボーグナインにシェリー・ウィンタース、ジャック・アルバートソンと3名のオスカー俳優が含まれながら、実はキャストの出演料はそれほどかかっていないのだ。なお、主演のハックマンは本作の撮影中に『フレンチ・コネクション』(’71)でオスカーに輝いている。 ちなみに、劇中の新年祝賀パーティで演奏される主題歌「モーニング・アフター」も忘れてはならないだろう。地獄のような一夜を経て訪れる、希望の朝の安堵感を歌った爽やかなソフトロック・ナンバー。アカデミー賞では見事にオリジナル歌曲賞を獲得し、その直後からラジオ局へのリクエストが殺到したそうで、最終的にビルボードのシングル・チャートでナンバーワンを獲得、’73年の年間シングル・チャートでも28位をマークした。これがレコード・デビューとなった歌手モーリーン・マクガヴァーン(劇中の歌声はセッション歌手のレネー・ア-マンド)は、その後も『タワーリング・インフェルノ』やロジャー・ムーア主演作『ゴールド』(’74)などにも参加し、映画やドラマの主題歌シンガーとして引っ張りだこになる。 かくして、1972年12月12日にロサンゼルスのエジプシャン・シアターでプレミア上映され、なんと予算の25倍に当たる1億2500万ドルもの興行収入を稼ぎ出す大ヒットとなった『ポセイドン・アドベンチャー』。アカデミー賞ではオリジナル歌曲賞と特別賞(特撮チーム)に輝き、’73年の年間興行収入ランキングでは堂々の第1位をマークした。この大成功を機にディザスター映画ブームが本格的に到来し、ハリウッド業界は徐々に大作主義の時代へと向かっていくことになる。■ 『ポセイドン・アドベンチャー』© 1972 Twentieth Century Fox Film Corporation.
-
PROGRAM/放送作品
コンボイ
“バイオレンスの鬼”サム・ペキンパー監督が描く、アメリカ版トラック野郎と悪徳保安官の戦い!
『ワイルドバンチ』など数々の傑作を世に生み出した“バイオレンスの鬼”ことサム・ペキンパー監督。お得意の男臭さ全開で、古き良き西部のDNAを継承する漢たちを描く、トラック・アクション・ムービー!
-
COLUMN/コラム2020.02.04
11人の名監督は“NY同時多発テロの悲劇”をどう描いたか?『11’09’’01/セプテンバー11』
●「11分9秒1コマ」で描かれる11のエピソード 『11'09''01/セプテンバー11』は、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件をモチーフにした短編映画を、11人の映画監督が競作したオムニバスだ。 参加したのは、イギリスからケン・ローチ、フランスからクロード・ルルーシュ、メキシコはアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、アメリカはショーン・ペン、日本からは今は亡き今村昌平ら、そうそうたる顔ぶれ。彼らに課せられたルールは、9・11をテーマにすること、そして11分9秒1コマぴったりに収めること。「11.09.01(2001年9月11日)」の日付にちなんで決められた時間である。 同じルールの上で創作上の自由を与えられた11人の監督たちは、それぞれの立場や作家性を明確に打ち出すことで、世界を震撼さえた大事件に対して11人11様の見方があることを提示してみせた。 短編オムニバスは、参加した映画作家の力量が横並びで陳列されるため、どうしてもクオリティやテイストのバラツキが目立ち、散漫になることが多い。だが『セプテンバー11』は、企画の意図がはっきりしていること、11分強という縛りによって観る側が退屈する前に次のエピソードに切り替わっていくこと、ほとんどの監督が11分でできることにフォーカスして創意工夫を懲らしていることなどから、企画物の短編オムニバスとしてかなりの水準にある。 ここで11作すべてについて解説すると、再現なく文字数を消費してしまうのでやめておく。代わりに、あくまでも筆者の個人的な基準から、特筆すべきだと思う作品をいくつか紹介しておきたい。 ●テロ事件からわずか1年の間に制作された意義と意味 冒頭を飾るのはイランの国民的映画監督モフセン・マフマルバフの長女で、20歳の時に『ブラックボード 背負う人』でカンヌ映画祭審査員特別賞に輝いたサミラ・マフマルバフ。舞台はアフガニスタンとイランの国境近く。アフガニスタンからの難民たちが、米軍の攻撃に供えてシェルターを作ろうと煉瓦を焼いている。そこに学校の先生が現れて、子供たちに呼びかける。「NYで悲惨な事件が起きました、犠牲者に黙祷しましょう」と。しかし外の世界のことを何一つ知らない子供たちには一切響かないのだ。 イギリスきっての社会派として知られる巨匠、ケン・ローチのエッジの立たせ方も凄まじい。ローチは1970年代にチリからロンドンに逃げてきた政治難民の男性(本物)を登場させて、1973年の9月11日にチリで起きたクーデターについて語らせる。ローチが『レディバード・レディバード』でも主演として起用したこと、ミュージシャンのウラジミール・ヴェガである(ヴェガは脚本と音楽も担当している)。 チリでは1970年に国民投票でサルバドール・アジェンデが大統領に選ばれたが、社会主義的な新政権を嫌ったアメリカの後押しを受けて軍部がクーデター起こした。大統領は死に、国中に左派弾圧の嵐が吹き荒れて3万人ものチリ国民が殺されたことを、ヴェガは悲しみを湛えながら静かに語るのだ。ヴェガとローチは、「9・11は決してアメリカだけの“悲劇の日”ではない」という現実を突きつけているのである。 アメリカ代表の監督として参加したショーン・ペンの作品は風変わりで切ないファンタジーだ。アーネスト・ボーグナイン演じる孤独な老人を主人公に、NYの片隅の日常を一種の映像詩に仕上げている。ネタバレを避けるために詳細は書かないが、テロそのものを描くことはせず、非常にパーソナルな物語を通じて社会から見捨てられた底辺の階層に目を向けている。ペンは演技の天才というだけでなく映画作家としても非常に才能のある人物であり、この短編ではあふれる才気と美しい詩情がみごとに融合している。 もしかすると、ショーン・ペンが真正面から9・11を描くことをから逃げたと考える人がいるかも知れない。しかし『セプテンバー11』が発表されたのは2002年の9月11日。つまりニューヨークのツインタワーが倒壊したあの衝撃からわずか一年しか経っておらず、記憶も極めて生々しい時期だった。ペンがあえて視線を市井の一市民に向けたことは、逆説的な意味で非常に政治的だったとも言える。つまりショーン・ペンは、アメリカが9・11の復讐をお題目にしてアフガンに侵攻している最中に、外に敵を求めることよりも、国内の格差社会の歪みを描くことを選択したと考えられるのだ(実際、アメリカがアフガンに続いてイラクに侵攻した際に、ペンほど正面から米政府を非難したハリウッドスターもいない)。 ●アメリカ以外の視点から9・11を相対化 同様に『セプテンバー11』が「ニューヨーク同時多発テロから一年以内に作られた」事実を改めて考えると、前述のケン・ローチやサミラ・マフマルバフらを含む監督陣が、いかに9・11を相対化しようとしていたかが伺い知れる。9・11の同時多発テロが「世界を震撼させた未曾有の悲劇」であったことは間違いない。だが彼らはあくまでも、自分たちの立っている位置から9・11がどう見えるかにこだわったのだ。 その結果、イスラエルのアモス・ギタイも(旧)、ボスニア・ヘルツェゴビナのダニス・タノヴィッチも、ブルキナファソのイドリッサ・ウエドラオゴも、9・11を特別視しようとはせずに、自分たちの抱えている問題と並列させている。同時多発ゼロ事件の直後にアンチ・アメリカ中心主義なアプローチを選択した覚悟と勇気は、20年近く経った今だからこそより冷静に理解できることができるはずだ。 そして11本のどれもがある種の問題作である中で、最大の問題作と呼ぶべきなのは今村昌平が手がけた日本編である。というのも、今回の企画意図を最も拡大解釈したのが今村昌平だったからだ。今村が描いたのは、太平洋戦争で両腕を失った元兵士と、彼を取り巻く家族や村人たちのいびつなブラックコメディであり、9・11と絡めることすらしていないのである。 “日本編”の評価は、観る者によって大きく分かれるだろう。映画作家・今村昌平の自分を押し通すアクの強さに戸惑う人もいるだろうし、逆に日本の歴史と風土を追求することによって普遍性を獲得したという批評も成り立つ。興味深いのは、製作陣が“日本編”を11本の最後に持ってきたこと。この野心的なプロジェクトのトリを務めるのが相応しいと判断されたからか、それとも全体からあまりにも逸脱していて最後に持ってくるしか選択肢がなかったのか。ぜひ本作を観て、それぞれに答えを出してみていただきたい。■ 参考:【筆者の極私的『セプテンバー11』ランキング】 1位 アメリカ(ショーン・ペン監督)上映順:⑩ 2位 イギリス(ケン・ローチ監督)上映順:⑥ 3位 イラン(サミラ・マフマルバフ監督)上映順:① 4位 イスラエル(アモス・ギタイ監督)上映順:⑧ 5位 インド(ミーラー・ナーイル監督)上映順:⑨ 6位 ブルキナファソ(イドリッサ・ウエドラオゴ監督)上映順:⑤ 7位 フランス(クロード・ルルーシュ監督)上映順:② 8位 ボスニア・ヘルツェゴビナ(ダニス・タノヴィッチ監督)上映順:④ 9位 エジプト(ユーセフ・シャヒーン監督)上映順:③ 10位 日本(今村昌平監督)上映順:⑪ 11位 メキシコ(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督)上映順:⑦ 『11’09”01/セプテンバー11』© 2002 STUDIO CANAL FRANCE -ALL RIGHTS RESERVED.
-
PROGRAM/放送作品
バイキング
中世の海の支配者バイキングの戦いと生きざまが蘇る!カーク・ダグラス主演の海洋スペクタクル大作
『トラ・トラ・トラ!』のリチャード・フライシャー監督が描く海洋スペクタクル。豪華スター競演の中でも、海賊の王子役カーク・ダグラスの野性的な存在感が強い。本物を復元したバイキング船での撮影がリアルだ。
-
COLUMN/コラム2013.01.26
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年2月】招きネコ
2012年のロンドン・オリンピックの開会式にも登場した様々な理由で史上最も有名かつ愛された伝説のプロボクサー、モハメッド・アリの自伝をまだ現役だった本人が主演(!)して映画化された1977年の作品。アリ自身のドラマティックな半生を、ドラマ部分はロバート・デュバルやアーネスト・ボーグナインと行ったバリバリのハリウッド・スターが共演して作り上げた感動映画ですが、ソニー・リストン戦、ケン・ノートン戦、伝説の試合であるザイールの首都キンシャサでのジョージ・フォアマン戦まで劇中の数々のチャンピオンとの名勝負は当時の実写フィルムで再現して迫力十分、映画とドキュメンタリーのいわばいいとこ取りです。いかにアリがすごいボクサーだったのかということ、名言「蝶のように舞い、ハチのように刺す。。。」意味が実感できます。ちなみに、アントニオ猪木のテーマ曲「猪木ボンバイエ」は、元々この作品のアリのテーマ曲で、アリは対戦した猪木にプレゼントしたもの。映画中でもこの曲がものすごい盛り上がりを見せます。「ボンバイエ」はザイール語で「やっちまえ!」という意味とか。 Copyright © 1977, renewed 2005 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
-
PROGRAM/放送作品
ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】
クライマックスの壮絶な銃撃戦は映画史の伝説に!バイオレンスの巨匠ペキンパー監督のこれぞ最高傑作!
緊張感溢れるオープニングからクライマックスの銃撃戦まで、映画史上語り継がれるアクションシーン満載の金字塔的作品。バイオレンスの名手サム・ペキンパー監督が描ききった「最後の西部劇」と言われる最高傑作。
-
COLUMN/コラム2012.11.23
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年12月】招きネコ
大恐慌の時代、仕事を求めて無賃乗車で大陸を渡り歩く季節労働者(ホーボー)たち。そんな彼らが恐れて近づかないのが、殺してでも彼らを乗せまいとする鬼車掌シャックの車両19号。だが、そんなシャックの車両に何度も乗り続け、仲間の尊敬を一心に集める無賃乗車の帝王、Aナンバーワン。 この二人のバトル、知恵比べと文字通りの肉弾戦が延々と繰り広げられる。鬼車掌VS無賃乗車男のプライドを賭けた闘いという意味不明の設定で、これで映画は成立するのかと?正直不思議だが、これがメチャメチャ面白い。走る蒸気機関車を舞台に、リー・マービンとアーネスト・ボーグナインの生身の演技を越えた迫力のアクションの連続に手に汗握り、なぜか共感できてしまう男の意地とプライドにニヤニヤしながら忘れられない1本になりました。再見して以来、もうボーグナインの鬼の形相が悪夢に出てきそうです。この映画と同じような映画は思いつかないオリジナル度300%の映画です。 © 1973 Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 2001 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
-
PROGRAM/放送作品
11’09’’01/セプテンバー11
<11分9秒01>の映像に込められた“9.11”への思いとは──世界の名匠11人が贈るオムニバス作品
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロをテーマに、世界11ヵ国の監督11人が11分9秒1フレームという共通の時間枠で短編を制作。各国の文化や視点を通じて、世界の多様性が如実に浮かび上がってくる。
-
PROGRAM/放送作品
北国の帝王
鬼車掌アーネスト・ボーグナインvs失業者リー・マーヴィン!男の意地と命を懸けた死闘を描くアクション
骨太な男の映画を得意とする名匠ロバート・アルドリッチ監督が、列車の無賃乗車をテーマに描く壮絶なアクション映画。リー・マーヴィンとアーネスト・ボーグナインが男の意地をむき出しに演じる激突に引き込まれる。