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PROGRAM/放送作品
トータル・リコール(1990) 【4Kレストア版】
[R15+]『ターミネーター2』と並ぶ90年代A・シュワルツェネッガーの代表的SFアクション
『ブレードランナー』の原作者として知られるSF作家フィリップ・K・ディックの短編小説を基に、記憶を作り替えられた男が辿る火星植民地への冒険行をヴァーホーヴェン監督、シュワルツェネッガー主演で描く。
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COLUMN/コラム2023.03.10
『ターミネーター』恐怖と戦慄のアイコン —エンドスケルトンの創造
【1】鋼の骸骨は誰が作ったのか? 未来から送られてきた殺人ロボットとの戦いを描いた『ターミネーター』は、『タイタニック』(97)『アバター』シリーズ(09~)のジェームズ・キャメロン監督による1984年公開のSFアクション映画だ。同作は2023年の現在までに5本の続編と1本のテレビシリーズを派生させ、時間移動を活かした特異な物語と、カルチャーアイコンともいうべきヒール(悪役)を生み出した。機械の内骨格を上皮組織でおおった戦闘ヒューマノイド。そう、タイトルキャラクターの《ターミネーター》だ。その魅力は同キャラを演じた俳優アーノルド・シュワルツェネッガーの、常人離れした肉体と感情を取り払った演技に負うところが大きい。しかし、表皮が剥がれて剥き出しになった内骨格=《エンドスケルトン》の開発こそが、本作における最大の成果といえるだろう。人骨を単に金属パーツに置き換えただけではない、映画が持つ黙示録的な性質を表象する外観は、生身の俳優以上の存在感を放つ。 本作が公開されて、ほどなく40年という歳月が経つ。その間にこのシンボリックなキャラクターは、続編の展開やシチュエーションに応じたニューモデルを登場させ、それらは撮影技術の進化にも応じてアニマトロニクス(機械式レプリカ)やストップモーション・モデルアニメーション、そしてCGによる創造へと発展してきた。しかし。ここで触れる記念すべき第1作目の、ベーシックにして極まった存在に勝るものはない。 【2】伴走者スタン・ウィンストン 「私はかねてより、ロボットの決定版を映画に登場させたいと思っていたんだ」—ジェームズ・キャメロン エンドスケルトンの考案とデザイン原型は監督であるキャメロン自身によるもので、自らイメージショットを描画し、造形を特殊メイクアーティストのスタン・ウィンストン率いるスタン・ウィンストン スタジオへと依頼している。そして映画が完成へと導かれていくプロセスにおいて、あの容姿が形成されていったのだ。 ウィンストンがこの役割を共同で担うことになったのは、当時彼が映画・映像において工学的センスに満ちたヒューマノイドのデザインと、それを実際に可動させるパペット技術に長けていたからだ。それは業界内でも評価が確立されており、実際にキャメロンが特殊効果ショットに必要なエンドスケルトンの制作にあたり、『モンスター・パニック』(80)で同門ニューワールド・ピクチャーズに詰めたことのある特殊メイクアーティストのロブ・ボッティンに相談したところ、ボッティンは「ディックがメイクを、スタンはメカを作ることができる」と提言し、『ゴッドファーザー』(72)の特殊メイクで名を挙げた巨匠ディック・スミスとウィンストンの連絡先を伝えた。そこでキャメロンは先ずスミスに相談を持ちかけると、「スタンが適役だ」とウィンストンを勧められたのである。 事実、ウィンストンは1981年公開のSFコメディ『ハートビープス/恋するロボットたち』で、人間の肌をメタリックに換装させたようなリアルなロボットを数多く創造。またロックグループ、スティクスのミュージックビデオ「ミスター・ロボット」では、『ハートビープス』の発展形のような個性的なロボットを手がけており、それがキャメロンのイメージを実体化させるのに確かなサンプルとなった。 ■『ハートビープス/恋するロボットたち』予告編 ■スティクス「ミスター・ロボット」 なにより、それらがキャメロンのエンドスケルトンにおける「生物と同じ機能を有し、メカっぽく見える」というコンセプトに合致したのだ。 ウィンストンとキャメロンは自動車部品の廃棄場に足を運んで写真を撮り、それらの写真とキャメロンの図面をガイドにして、エンドスケルトンの立体化を図った。ウィンストンの他にはシェーン・マーン、トム・ウッドラフ、ブライアン・ウェイド、ジョン・ローゼングラント、リチャード・ランドン、デヴィッド・ミラー、マイケル・ミルズら7人のクルーが造形に関与し、エリス・バーマン、ボブ・ウィリアムス、アシスタントであるロン・マクレネスの面々が機械仕掛けと金属タッチの細工、それにラジコン操作を受け持った。 スケルトンの頭部はマーンが主に担当。シュワルツェネッガーの頭骨格を正確に再現したものを原型とし、ウッドラフとウェイドが頭部モックアップの彫刻を手がけた。また二人はエンドスケルトンのさまざまなボディパーツを粘土で造型し、それらの彫刻フォームからウレタンでモールドを作成。クルーがエポキシとファイバーグラスの部品を作成し、パーツに埋め込んだ. そして金属の外観を与えるために、部品は真空蒸着(金属粒子を物体に付着させる電磁プロセス)を経て最終的な形に組み立てられた(そのためフルスケールのエンドスケルトンは重量45kgにも及んでいる)。またエンドスケルトンの全身モデルはスタント用の軽量バージョンも作られ、それはレジスタンスの戦士カイル・リース(マイケル・ビーン)のパイプ爆弾で半分に切断されるショットに用いられた。 加えてクローズアップの撮影用に、クルーはオペレーターの背中に装着できる頭と胴体の半身モデルも作成。こちらはオペレーターの動きをモデルに反映させる特別なリグを備え、マーンが操作を兼任。シュワルツェネッガーやウィンストンらと一緒にボディランゲージに取り組んだ。 またエンドスケルトンのみならず、ウィンストンとクルーはシュワルツェネッガーの頭部のアニマトロニクスを作っている。ターミネーターのT−800タイプが眼を自己補修するシーンで、皮膚を切開して内部構造を露出させたり、クロームの下部構造の多くが露出する場面に応じた、複数の頭部モデルが用意された。また実物よりも寸法の大きなメカニカルアイや、真空成形で硬化させたプラスチック片と発泡ゴムの補綴物からなるメイクをシュワルツェネッガーにほどこしたり、彼の腕を複製したウレタン製の中空義手を作り、T-800が腕を切開し、骨格を露出させるシーンを操作演出するなど、エンドスケルトンの存在をプラクティカルなエフェクトで補強している。 これらと前述したパペットやアニマトロニクスを組み合わせ、映画はスタジオセットやロサンゼルス周辺のロケ地で撮影をおこない、またエンドスケルトンの全身を捉えた歩行ショットは特殊効果スタジオ「ファンタジーII」のチームによって2フィートのミニチュアモデルが作られ、ストップモーション アニメーションによって表現されたのである。 【3】エンドスケルトンの起点 以上のような形で『ターミネーター』におけるエンドスケルトン創造のプロセスを綴っていったが、その起点ともいうべきキャメロンのメカニカルセンスにも迫るべきだろう。かの悪夢的なイメージが彼の中でどのように成立していったのか、その起源に対して無関心ではいられない。 『ターミネーター』のエンドスケルトンが驚異的なのは、プロダクションの過程でデザインが試行錯誤して定まっていくのではなく、最初にキャメロンが手がけたドローイングの段階で外観が完成されていたことだ。つまりキャメロンの中でエンドスケルトンの概念が確立していたのである。 2021年に出版されたキャメロン自身の手によるコンセプトアート集「テック・ノワール」には、少年期に遡ってキャメロンのアートワークが網羅されている。本画集を参照すると、エンドスケルトンのモチーフは1982年に氏が宣伝デザインに協力したSF映画『アンドロイド ダニエル博士の異常な愛情』の図案に登場している。同作にてキャメロンは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」を引用したレイアウトに、人体の左半身がエンドスケルトンに似たデザインの機械体を描き込んでいる。筋組織をシリンダーやスチールサポートに置き換えたメカ構造など、ほぼ同一のものといっていい。 さらに元を辿れば、こうした意匠に基づくメカモチーフは自身が35mmフィルム撮影で手がけた習作『Xenogenesis』(78)に見ることができる(「テック・ノワール」には同作のイメージイラストが掲載されている)。 ■Xenogenesis 加えて画集の中でキャメロンは、自身のドローイング技術の習得やメカニック描写のルーツについて言及しており興味深い。特に後者に関してキャメロンは、「キング」と呼ばれてアメリカンコミックのジャンルに君臨した、ジャック・カービーからの影響が濃いと語っている。例えばカービーの描いた『ファンタスティック・フォー』のシルバーサーファーの金属的なイメージは、『ターミネーター2』(91)の液体金属で構成されたT-1000に通じるものがあると自認している。 ■「That Old Jack Magic」ジャック・カービーのデザイン性についての論考 https://kirbymuseum.org/blogs/effect/jackmagic/ 同アート集の出版にあたり、キャメロンはジェフ・スプライの独占取材に応じ、自身の絵のタッチがファンタジーアートからくるものであり、フランク・フラゼッタやケリー・フリース、リチャード・コーベンといったイラストレーターの描画スタイルから影響を受けていることを明かしている。ネットのない時代、ファンタジーアートとの接触の機会は少なく、それらに確実に接することができたのはSF文庫の扉絵や挿絵だったこと。そして限られたものからあらゆるものを学んだのだとキャメロンは述懐する。 「SF映画やテレビがまだ石器時代のようなデザイン表現だったとき、コミックブックは絵を学ぶのに最適な存在だった。初期の『スパイダーマン』のコミックを描いていたスティーヴ・ディッコは、美しい彫刻のような素晴らしい手を描いていたんだ。他にもジェスチャー的な動きなど、さまざまなことに特化したアーティストがいたのさ。私はほとんどの場合、マーベルのアーティストが面白いことをやっていると感じたよ」 昨年、MCUに対して手厳しい批判をしたキャメロンだが、自身のドローイングの起点がマーベルにあり、そこからエンドスケルトンのデザインへと発展したことを思うと、そこに『ターミネーター』のタイムパラドックスを地でいくような相関性を覚えなくもない。■
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PROGRAM/放送作品
エクスペンダブルズ2
[PG12]シュワ、ブルース本格参戦!さらにチャック・ノリスも!80’sアクション・スター大進撃
前作で豪華競演した新旧アクション・スターが再集結し、さらに悪役としてジャン=クロード・ヴァン・ダムが新参戦。前作では顔見せ程度だったブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツェネッガーが大活躍する。
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COLUMN/コラム2019.02.03
ハリウッド版ヒロイック・ファンタジーの金字塔が映画界に与えた影響とは!? 『コナン・ザ・グレート』
ボディビル界の伝説的スーパースター、アーノルド・シュワルツェネッガーを、一躍ハリウッド映画界のトップスターへと押し上げたジョン・ミリアス監督のアクション映画『コナン・ザ・グレート』(’82)。欧米では古くから「Sword and Sorcery(剣と魔術)」と呼ばれて親しまれたヒロイック・ファンタジーのジャンルを復活させ、超人的なマッスル・ボディを持つ新たなアクション俳優像を打ち立てた本作の制作秘話と、当時の映画界に与えた知られざる影響を振り返ってみたい。 ご存知の方も多いとは思うが、『コナン・ザ・グレート』の原作は、アメリカのパルプ・フィクション作家ロバート・E・ハワードが書いたヒロイック・ファンタジー小説『英雄コナン』シリーズである。そもそも、「Sword and Sorcery」という言葉自体が、『英雄コナン』シリーズに代表されるハワード作品群を形容するために生まれたものだ。魔法や怪物が存在した古代ハイボリア時代を舞台に、筋骨隆々の大男コナンが世界を股にかけた大冒険を繰り広げる。’32年に有名なパルプ雑誌「ウィアード・テールズ」に掲載された1作目が大評判となり、以降『英雄コナン』シリーズは全18作を数える人気小説となった。 ’36年に30歳の若さでハワードは死去したものの、その後に出版された未発表作や番外編、ハワードの遺したシノプシスを基に他者が仕上げた作品などを含めると、オフィシャルなシリーズは合計で28作に及ぶ。また、H・P・ラヴクラフトの「クトゥフル神話」よろしく、ハワードに影響を受けた他の作家による非公式シリーズ作も多数存在する。それらをひっくるめて、これまでに数多くのコナン作品集が編纂されてきたが、中でも’60年代末から’70年代にかけて出版されたランサー社およびエース社のペーパーバック版では、人気ファンタジー画家フランク・フラゼッタの描いた表紙イラストが話題を呼び、超人的に筋肉の発達した屈強なバーバリアン(野蛮人)、コナンのイメージを決定づけた。そして、このフラゼッタによるイラストこそが、映画『コナン・ザ・グレート』の原点となったのだ。 ‘76年のある日、友人エドワード・サマーと一緒に映画『鋼鉄の男(パンピング・アイアン)』(’77)のラフカット版試写へ招かれたプロデューサーのエドワード・R・プレスマンは、スクリーンに映ったボディビルダー、アーノルド・シュワルツェネッガーの存在感にスターの可能性を直感し、「彼で映画を撮るならどんな役がいいだろう?」とサマーに訊ねたところ、すぐさま「そりゃもちろんコナンだよ」との答えが返ってきた。当時『英雄コナン』シリーズを知らなかったプレスマンは、サマーから作品の説明を受けながらフラゼッタのイラストを見せてもらい、なるほど、確かにイメージにピッタリ合うと納得。これをきっかけにプレスマンは『英雄コナン』の映画化権を購入し、シュワルツェネッガーにも出演依頼を打診したものの、実際に撮影へ漕ぎ着けるまでには長い時間がかかってしまった。 当初の脚本を書いたのは、企画の立役者サマーとマーベル・コミックのライターだったロイ・トーマス。マーベルは『英雄コナン』シリーズのコミック版を出していたからだ。しかし、大作映画に相応しい有名脚本家を求めるスタジオの要請を汲んで、当時『ミッドナイト・エクスプレス』(’78)でオスカーに輝いたオリヴァー・ストーンが加わり、最終的にストーンの書いた脚本が採用される。しかし、4~5万ものミュータントの大群が戦う彼の脚本は、そのまま映画化することは現実的に不可能だった。さらに、肝心の監督探しも難航。アラン・パーカーやリドリー・スコットに次々と断られて途方に暮れていたところ、プレスマンと共同製作することになったイタリアの大物製作者ディノ・デ・ラウレンティスがジョン・ミリアスに白羽の矢を立てる。当時、ミリアスはラウレンティスと監督契約を結んでいたのだが、なによりも脚本家出身のミリアスなら演出だけでなく脚本のリライトも任せられることが決め手だった。まさに一石二鳥ですな(笑)。 『ダーティ・ハリー』(’71)シリーズの脚本で名を成し、「映画監督よりも将軍になりたかった」と公言する映画界の武闘派ミリアスと、ボディビルやボクシングにのめり込んだマッチョな小説家ロバート・E・ハワードによるヒロイック・ファンタジーは、ある意味で理想の組み合わせだったとも言えよう。ただし、ミリアスは原作者ハワードとはちょっと違ったアプローチを試みる。ストーリーからファンタジーの要素をなるべく排除し、セットや衣装のデザインに正確な時代考証に基づいた古代文明の要素を盛り込むことで、あたかもコナンが太古の世界に実在した人物であるかのような、歴史絵巻的なアクション大作として仕上げたのである。 舞台はアトランティス大陸が沈んでからアーリア人が勃興するまでの間の時代。ということは、少なくとも紀元前2千年紀(日本で言うと縄文時代後期)よりも以前の話ということか。幼少期に両親を殺され奴隷となったキンメリア人コナン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、長じて筋骨隆々の最強グラディエーターへと成長し、冒険の旅の途中で知り合った仲間と共に、親の仇である邪教の王タルサ(ジェームズ・アール・ジョーンズ)に立ち向かう。 この邪教というのが蛇を崇拝する古代宗教で、その神殿ではモンスターのように巨大な蛇に生贄を捧げ、タルサ大王自身も蛇に変身することが出来る。旅の途中では美しくも妖艶な魔女とも遭遇。『狼男アメリカン』(’81)の特殊メイクを模倣したタルサ大王の変身シーンや、実物大のメカニカルモデルを使用した大蛇との格闘シーンなど、ファンタジー的な見せ場も用意されているが、しかしあくまでもメインは、ミリアス監督が大好きな黒澤明監督作品などの日本映画に影響を受けた(「耳なし芳一」にインスパイアされたシーンもある)チャンバラ合戦的な肉弾アクションだ。1500人のエキストラを動員した巨大寺院シーンのスペクタクルも壮観である。 かくして、1982年2月にヒューストンで行われたスニーク・プレビューを皮切りに、世界中で封切られて興行収入7000万ドル近くの爆発的な大ヒットを記録した『コナン・ザ・グレート』。その半年後にはドン・コスカレリ監督の『ミラクルマスター/7つの大冒険』が公開されてヒットし、にわかにヒロイック・ファンタジー映画のブームが到来する。このトレンドを見逃さなかったのが、B級映画の帝王として名高い製作者ロジャー・コーマンである。 スニーク・プレビューの翌日に、新聞で『コナン・ザ・グレート』の批評記事を読んだコーマンはヒットを確信し、すぐさま便乗するべく当時宣伝部スタッフだったジム・ウィノスキーに1週間で脚本を執筆するよう指示。ジャック・ヒルに監督を任せ、3月にはメキシコで撮影を行い、なんと5月には全米公開してしまう。それが、両親を殺された古代の双子美女が宿敵である邪教の魔術師に復讐する映画『Sorceress』(’82・日本未公開)だ。空飛ぶライオンとお岩さんみたいな顔した邪教女神の生首が空中バトルを繰り広げるという、世にもけったいだが最高にいかしたB級映画で、こちらもまたスマッシュヒットを記録。これに味をしめたコーマンは、『勇者ストーカー』(’84)や『野獣女戦士アマゾネス・クイーン』(’85)を矢継ぎ早にヒットさせ、それぞれシリーズ化してガッツリと稼ぎまくる。 ほかにもアルバート・ピュン監督の『マジック・クエスト/魔法の剣』(’82)や、黒澤明の『用心棒』を下敷きにしたデヴィッド・キャラダイン主演の『SFカインの剣』(’84)などが登場。本家『コナン』シリーズも続編『キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2』(’84)や番外編『レッドソニア』(’85)が公開された。面白いのは、ブームに便乗した類似作品が、いずれも本家シリーズとは違って史劇要素よりファンタジー要素が強いこと。フランク・フラゼッタのイラストをパクったウルトラマッチョなヒーロー&ヒロインや巨大モンスターを描いたポスターデザイン、実際に蓋を開けてみると似ても似つかぬ体形の俳優やチンケな怪物が出てくるところなんかも一緒だ(笑)。そりゃそうだろう、シュワちゃん並みの筋肉俳優なんかそうそういるわけもないし、低予算のB級映画で本家『コナン』クラスの特殊効果は不可能である。 しかし、さらに興味深いのは、この『コナン・ザ・グレート』の時ならぬ大ヒットが、当時既に途絶えて久しかったイタリア産ヒロイック・ファンタジー映画のジャンルを復活させたことだろう。もともと、ハリウッドにおける「Sword and Sorcery」映画とは、どちらかというと中世ヨーロッパの「アーサー王伝説」をルーツにした剣劇アクションの色合いが強く、『コナン』シリーズのような古代世界を舞台に、半裸のマッチョヒーローが暴れまわるような作品は皆無に等しかった。最も近いのは『類人猿ターザン』シリーズだが、ご存知の通りターザンは剣とも魔術とも全く関係がない。むしろ、このジャンルの映画的な先駆者は、『ヘラクレス』(’58)を筆頭とするイタリア産ヒロイック・ファンタジーだったと言えよう。 もともとサイレント映画の時代から古代ローマを舞台にしたスペクタクル史劇がお家芸だったイタリア映画界では、当時から筋骨隆々の英雄マチステが大活躍する映画シリーズが大人気だった。やがて戦後の’50年代、スタジオシステムの崩壊に伴う人件費の削減で、ハリウッドの映画会社が『聖衣』(’53)や『トロイのヘレン』(’56)、『スパルタカス』(’60)などの史劇大作をローマのチネチッタ・スタジオで撮影するようになる。これで活気づいたイタリア映画界は、本家本元の意地を見せるかの如く『ユリシーズ』(’54)や『ロード島の要塞』(’61)といった国産スペクタクル史劇を次々と量産。そうしたブームの中から誕生したのが、神と人間との間に生まれた古代神話の英雄ヘラクレスを主人公にしたヒロイック・ファンタジー映画『ヘラクレス』だったのだ。 翌年公開されたアメリカでは、あのハリウッド超大作『ベン・ハー』(’59)にも匹敵する興行収入を記録した『ヘラクレス』。たちまち、イタリア映画界は古代のマッチョヒーローが大暴れするファンタジー映画で溢れかえる。旧約聖書の英雄ゴライアスがドラゴンや巨大コウモリと戦う『豪勇ゴライアス』(’60)、ヘラクレスが美しき姫を救い出すため魔界の妖怪やゾンビと戦うマリオ・バーヴァ監督の『ヘラクレス 魔界の死闘』(’62)、カルロ・ランバルディが実物大のドラゴンや妖怪メドゥーサの特殊効果を手掛けた『豪勇ペルシウス大反撃』(’63)などなど、’60年代半ばにマカロニ西部劇に人気を奪われるまで、数えきれないほどのヒロイック・ファンタジー映画がイタリアで作られたのである。 また、『ヘラクレス』で特筆すべきは主演のアメリカ人俳優スティーヴ・リーヴスだ。もともと、ミスター・アメリカやミスター・ユニバースなどのタイトルに輝く伝説的なボディビル・チャンピオンだったリーヴス。そう、彼こそがシュワルツェネッガーの大先輩に当たる、ボディビルダー出身映画スターの元祖なのだ。ハリウッド俳優としては鳴かず飛ばずだったリーヴスだが、イタリアへ招かれた『ヘラクレス』でたちまち国際的なトップスターに。すぐさま第二のスティーヴ・リーヴスを狙って、レグ・パークやマーク・フォレスト、ゴードン・ミッチェル、ミッキー・ハージティなどのアメリカ人ボディビルダーがイタリア映画界へ殺到したのである。ただ、リーヴスとミッチェル以外は筋肉だけが取り柄の大根役者だったため、マカロニ西部劇ブームが到来すると一斉にスクリーンから消え去ってしまった。 そして’80年代。『コナン・ザ・グレート』が世界中で大ヒットすると、イタリア産ヒロイック・ファンタジーの元祖ヘラクレスも華麗なる復活を遂げる。それが、ルー・フェリグノ主演の『超人ヘラクレス』(’83)だ。MGMの配給で世界公開されたこの作品は、批評家から大酷評されつつも興行的にはスマッシュヒットを記録して続編も登場。さらに、ヒロイック・ファンタジーにSFを融合させたジョー・ダマート監督の『世紀末戦士アトー/炎の聖剣』(’83)も、シリーズ通算4本が作られるほどのヒットとなった。そのほか、スペインとの合作『ハンドラ』(’83)やルチオ・フルチ監督の『SFコンクエスト/魔界の制圧』(’83)、アメリカの有名なボディビルダー兄弟バーバリアン・ブラザーズを主演に迎えた『グレート・バーバリアン』(’87)などなど、イタリア産のなんちゃって『コナン』映画が雨後の筍のごとく作られたというわけだ。 そんなわけで、ハリウッド映画における古代文明系ヒロイック・ファンタジーのジャンルを本格的に確立させ、とことんまでパンプアップした筋肉美が求められる現在のアクション映画スターの素地を作り、ついでにイタリア産マッチョ史劇映画の伝統まで一時的にせよ復活させた『コナン・ザ・グレート』。これがなければ、もしかすると『スコーピオン・キング』(’02)シリーズも作られなかったかもしれない…!?■ © 1981 Dino DeLaurentiis Corp. 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PROGRAM/放送作品
(吹)ターミネーター:ニュー・フェイト
[PG12]サラ・コナーとT-800が再タッグ!ジェームズ・キャメロンが放つ『ターミネーター2』続編
シリーズ生みの親ジェームズ・キャメロンが製作・原案を務めた『ターミネーター2』の正統な続編。リンダ・ハミルトンがサラ・コナー役でシリーズに復帰し、“審判の日”を回避したはずの人類の驚くべき運命を描く。
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COLUMN/コラム2018.05.10
『ターミネーター:新起動/ジェニシス』 6/2 (土) 字幕、3 (日) 吹き替え
最初に、あらすじから。 近未来。人類は機械軍に滅ぼされかけたが、英雄ジョン・コナーが現れ反撃に転じ機械軍を逆に壊滅寸前に追い詰めた。機械軍は、タイムマシンでジョン・コナー誕生前にさかのぼりその母サラ・コナーを殺せば歴史改変で一発逆転できると、暗殺用アンドロイド「ターミネーター」を84年に送り込む(ここまで『ターミネーター』第1作目と全く同じ展開)。 (ここからが怒涛の新展開)だが84年に現れた途端ターミネーターは、もともとその時代で待ち構えていた同型ターミネーターと、屈強な女戦士サラ・コナーに襲撃される!! 一方、未来のジョン・コナー司令官は母親が84年に殺される事態を阻止するため、腹心の部下カイル・リースをその時代にボディガードとしてタイムマシンで送り込むが、そこでカイル・リースも、姿を変えられる液体金属型ターミネーターT-1000の待ち伏せ攻撃を受ける。 一体全体、何がどうなっているのか!? このように、しょっぱなから構成の妙で魅せる本作。懐かしの第1作をなぞる冒頭パートで若い頃のシュワが出てきて、思わず目を疑う。どうやって撮った!? しかも若いシュワvs年取ったシュワの格闘シーンまであるのだが(本当にどうやって撮った!!!!!)、若いシュワは実はフルCGなのだ。『ターミネーター4』(2009)でも終盤で若いシュワが出てきて刮目したが、あれはボディビルダーの身体に若いシュワの顔だけデジタル合成したもの。それでも大したものだったが、本作はフルCG(下画像)。これが、CGだと意識して見ていても全く見分けがつかない超絶クオリティ(本当に下画像↓はCGなんです!)。特撮会社ムービング・ピクチャー・カンパニー公式垢がYouTubeに上げている動画を見ると、何も無い空間にCGで若いシュワがマッピングされていくプロセスをつぶさに確かめることができ、恐い!このテクノロジーがあれば、ある人物が実際にはやっていない犯罪的行為をやっている映像だって余裕で捏造できるのでは…?これってスカイネット級にヤバくないか…?『コングレス未来学会議』(2013)の世界はもうすぐそこだ。 本作は2015年の映画で、2017年という“超近未来”が後半の舞台。タイトルにもなっている「ジェニシス」とは架空の商品名で、その2017年に発表されるという設定の、スマホ・タブレット・コンピュータ共通のAI型OSみたいなもの。カーナビにも軍のネットワークにも、ありとあらゆる物にIoT的にインストールされている。こいつが、人類を滅ぼす! Genesisとは旧約聖書のド頭、「はじめに神は天と地とを創造された」から始まる、日本語だと「創世記」のことだ。SFファンには『スター・トレック』旧シリーズのIIとIIIで耳馴染みがある。あのシリーズにおいては「ジェネシス計画」という、月のような岩石だらけの不毛な惑星を一発で緑・水・大気が存在する居住可能惑星にテラフォーミングする秘密計画の暗号名だった。 しかし本作は、スペルが違う。正しくはGenesisだが本作はGenisysだ。本作のタイトルも当初は正しいスペルでいく予定だったが、途中でモジった「ジェニ・シス」表記に変更された。「シス」はSYSなので「システム」の「シス」だろう。「ジェニ」のGENIは、軽く調べたが確実なことは分からなかったものの、「genius(天才)」のgeniではないかとの一意見がネット上にあった。Genesisを「天才システム」とも読める間違ったモジり方でGenisysと表記したのではないだろうか。 ここからはキャスト・スタッフの話。本作でサラ・コナー役を演じるのは、「ゲーム・オブ・スローンズ」で大人気、“焼けずのデナーリス”ことエミリア・クラーク。ちなみにTVシリーズ「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ」ではサーセイことレナ・ヘディがサラ・コナー役だった。ターガリエン家とラニスター家がサラ・コナー役を取り合っている?デナーリスが歳とるとサーセイ顔になるのか?という楽しみ方もGOTファンならできるが、もちろん「ゲーム・オブ・スローンズ」を見ていない人だって、そんなこと一切気にせずとも楽しめる内容であることは言うまでもない。 本作の監督さんはTV畑の人で、まさにその「ゲーム・オブ・スローンズ」も演出している。映画は本作と『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』ぐらいしか撮っていない。TVドラマ監督ということは一般論として、独特の持ち味とか作家性を前面に出すタイプではなく、雇われ監督だけど手堅い仕事をし、エンタテインメント商品としてカッチリ仕上げて納品してくる、優れた職人さんだということ。これは「ターミネーター」シリーズがフォーマットとしてすでに完成されていることの証しだ。腕のある人になら誰に任せたとしても回していけるということ。映画だとヨーロッパ・コープ映画のような、マーベル映画のような、盤石のフォーマットだと言える。 イ・ビョンホンが液体金属型ターミネーターT-1000役でチラッと登場するが、『G.I.ジョー』(2009)以降順調にハリウッドでもキャリアを重ねていってくれていることは、人ごとながら、韓国人ほどではないかもしれないが、日本の映画ファンとしても、これはかなり嬉しい!『JSA』以来20年ぐらい日本の映画ファンもずっと注目し続けてきた俳優なので、そんな彼の国際的な活躍は、半分我が事のように嬉しい。「ハリウッドよ、気づくの遅かったね」って感じだ。 イ・ビョンホンだけでなく、カイル・リース役とジョン・コナー役(『エベレスト』のジェイソン・クラーク扮演)の2人はオージーで、シュワはオーストリア(「ラ」が無い方)出身、エミリア・クラークは英国人ということで、ちょい役JKシモンズを除く主要キャストは全員が非アメリカ人だが、にもかかわらず典型的な娯楽ハリウッド大作に見える。 それはスカイダンス・メディアというプロダクションの持ち味もあるかもしれない。スカイダンス社は「ミッション:インポッシブル」、「G.I.ジョー」、「新スタトレ」、「ジャック・リーチャー」などパラマウント社の人気娯楽アクションシリーズを製作している、That’sハリウッドなイメージのプロダクションだ。とは言えしかし、よく考えると、多国籍スタッフ・キャストが英語で娯楽映画作りすることこそが、ハリウッドの伝統そのものであり、その伝統に正統に連なる典型なのだとも言える。 来年には新作もくる。キャメロンがプロデュースで『デッドプール』の監督、シュワとリンダ・ハミルトンがまさかの再共演で、2019年公開予定とのこと。その前に本作を見ておいてほしい!■ © 2018 Paramount Pictures. 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存 保存保存
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PROGRAM/放送作品
ターミネーター2
[R-15]ターミネーター対ターミネーターの壮絶バトル!SFXアクション最高潮の第2作!
『タイタニック』『アバター』のジェームズ・キャメロン監督が放った大ヒット作!シュワルツェネッガー演じるT-800型ターミネーターが、液体金属でできた最強の敵T-1000型ターミネーターと対決する!
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COLUMN/コラム2012.12.22
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年1月】飯森盛良
蝶になった夢を見た人の疑問。「もしかしたら自分は蝶で、人間になった夢を見ているのではないか?」…いわゆる「胡蝶の夢」というこの哲学的テーマを、数々の傑作SFが取り上げてきました。本作まさにそれ。結局、夢オチなのか現実だったのか曖昧に終わりますが、実はよく見ると劇中に答えが隠されてます。たとえば本編開始15分後頃、リコール社で施術を受けるシーン。ほらほら、モニターに何が映ってます? シュワは何のコース選びました?シュワの女の趣味は?さらに、映画はどう終わりましたっけ?ハッピーエンドのキスシーンから白くフェード・アウトしていきますよね。映像のお約束では「白いフェード・アウト」の意味するところとは…?本作、ぜひ録画して確認しながらご覧ください! © 1990 STUDIOCANAL
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PROGRAM/放送作品
ターミネーター:ニュー・フェイト
[PG12]サラ・コナーとT-800が再タッグ!ジェームズ・キャメロンが放つ『ターミネーター2』続編
シリーズ生みの親ジェームズ・キャメロンが製作・原案を務めた『ターミネーター2』の正統な続編。リンダ・ハミルトンがサラ・コナー役でシリーズに復帰し、“審判の日”を回避したはずの人類の驚くべき運命を描く。
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NEWS/ニュース2012.07.02
アクションスター列伝【救出対決】結果発表!
『コマンドー』(アーノルド・シュワルツェネッガー)元特殊作戦部隊コマンドーのリーダーに扮するアーノルド・シュワルツェネッガーが誘拐された娘を救出する。 VS 『ブレイクアウト』(チャールズ・ブロンソン)腕利きパイロットに扮するチャールズ・ブロンソンがメキシコで無実の罪を着せられた実業家を救出する。華麗なアクションで救出ミッションを達成するのはどっちだ!?いざ、対決!肉体派アクション・スターと言えば、1970年代はチャールズ・ブロンソン、80年代ならアーノルド・シュワルツェネッガー。『ブレイクアウト』VS『コマンドー』の救出バトルは、世代を超えたマッチョ俳優対決となった! 『ブレイクアウト』でブロンソンふんするセスナ機パイロットは、美貌の人妻に雇われ、無実の罪でメキシコの刑務所に投獄されたその夫を救出しようとするのだが、なにぶん計画が行き当たりバッタリなもんだから、最初は失敗が続く。自分よりはるかに背の高い相棒ランディ・クエイドを女装させて、看守の目を引けるワケがないだろうに……うかつすぎるぜ、ブロンソン! それでもめげないテキサス魂、軍用ヘリを装ってムショの中庭から救出するという荒技に打って出る。こんな具合に、物語そのものはオフビート・タッチでユーモラス。ブロンソンとヒロインを務める当時の愛妻ジル・アイアランドのほのかなロマンスも盛り込まれていて、テキサス~ラテンののどかな雰囲気さえ漂わせている。 ■ 対する『コマンドー』はむしろシリアス。シュワルツェネッガーふんする元コマンドー隊員は目の中に入れても痛くない、さらわれた愛娘を中米の元独裁者から救おうとするのだから、その切実な気持ちが理解できるし、見ているコチラもアツい闘争心がわいてくる。そんな期待に応えるかのように、主人公は特殊部隊のスキルを活かして一直線に突っ走る。民間人の女性も私的な戦いに巻き込み、ショッピングモールの警備員や警察官をも蹴散らし、さらには敵陣で軍隊を軽く掃射。これをたったひとりでやってのけるなんでフツーに考えると“ありえない”としか思えないのだが、演じるのがシュワだから強引な説得力が宿るというモノ。肩に担いだロケット弾をぶっ放しても反動さえ感じさせない、頼もしすぎる安定感も妙に納得だ。 “華麗なアクションで救出ミッションを達成するのはどっちだ?”という基準からすると、死者や破壊を最小限にとどめたブロンソンの方がスマートで好感も持てる。出演当時54歳という実年齢の経験も、そんな器用な立ち回りに説得力をあたえていると言えるだろう。その点、ひとりの娘を救うにしては壊しまくり&殺しまくりのシュワ(当時38歳)は事を大きくしてしまうという点で不利と言えば不利だが、彼の力技の方がスカッとするのも事実で、悪党を容赦なく蹴散らす姿も痛快そのものだ。アクション映画にカタルシスを求めるとしたら、後者の方が断然、上だろう。というわけで、ここは『コマンドー』に軍配を上げておきたい。以上のように、【救出対決】を制したのは、「コマンドー」のアーノルド・シュワルツェネッガ明日7/3(火)の 『アクションスター列伝』 は【対テロリスト対決】!こちらもお見逃しなく!■ © 1985 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.Copyright © 1975 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.