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PROGRAM/放送作品
ロキシー 美しき復讐者
[R15+]運命の恋に落ちた女性が“美しき復讐者”となる!バイオレンス描写満載の衝撃クライムロマンス
ギャングに追われる身で、ある悲劇を経て復讐を決意する女性をゾーイ・クラヴィッツが熱演。壮絶なバイオレンス描写とThe xxら旬のアーティストの楽曲が、ヒロインのロマンスと復讐劇を盛り上げる。
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COLUMN/コラム2020.01.10
2010年代ハリウッドアクションを席捲した“Wバーグ”の出発点! 『ローン・サバイバー』
アクション映画に於ける、監督と俳優の名コンビと問えば、どんな名前が挙がるだろうか? ジョン・フォードとジョン・ウェイン、黒澤明と三船敏郎、セルジオ・レオーネ或いはドン・シーゲルとクリント・イーストウッド、ジョン・ウーとチョウ・ユンファ…。いずれも複数の作品でタッグを組み、伝説的なアクション映画を世に送り出している。 ちょっと曲球にはなるが、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005)『イースタン・プロミス』(07)などのデヴィッド・クロネンバーグとヴィゴ・モーテンセンの組み合わせも、アクション映画の名コンビと言えるだろうか。男女の組み合わせでは、ポール・W・S・アンダーソンとミラ・ジョヴォヴィッチの『バイオハザード』夫婦の名を挙げる者もいるかも知れない。 映画好きが集まれば、喧々諤々のやり取りになることが必至な、この話題。殊2010年代で考えれば、監督:ピーター・バーグと主演:マーク・ウォールバーグの“Wバーグ”を外してはなるまい。アフガン戦争を舞台にした本作『ローン・サバイバー』(13)をはじめ、海洋油田の爆発事故を巡るパニック映画『バーニング・オーシャン』(16)、ボストンマラソン爆弾テロ事件の犯人追跡劇『パトリオット・デイ』(16)、秘密諜報機関の壮絶な戦いを描いた『マイル22』(18)…。僅か5~6年の間にこのコンビは、4本の骨太なアクション映画を世に送り出している。 元はエージェントが同じだったことから、紹介されて仕事を共にするようになったという2人。1964年生まれのピーター・バーグは元は俳優で、TVシリーズ「シカゴ・ホープ」(1995~99)で注目を集めた。シリーズ終盤には、演出も担当。映画監督としてのデビューは、ジョン・ファヴロー、キャメロン・ディアズ主演の『ベリー・バッド・ウェディング』(98)という、ブラックコメディだった。 一方マーク・ウォールバーグは、1971年生まれ。10代の頃は札付きの不良で、幾度も警察の世話になった。ミュージシャンとしてブレイク後、俳優デビュー。ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ブギーナイツ』(97)でブレイクし、その後は数々のヒット作・話題作に出演している。 思えばピーター・バーグに関しては、ウォールバーグとの二人三脚が始まる以前には、信用が置けるアクション映画監督とは、言い難かった。特に『ローン…』直前には、『バトルシップ』(12)で、観た者の口をあんぐりとさせてしまっている。アメリカ海軍と日本の海上自衛隊が、宇宙人とハワイ真珠湾沖で戦う内容のこの作品、ユニバーサル映画が100周年を記念して2億㌦以上の製作費を投じた超大作であり、我らが浅野忠信が準主役級で出演しているものの、超ド級の“バカ映画”という他はなかったのである。 アメリカでの興行収入は、製作費の3分の1にも達しない、6,500万ドル。批評が惨憺たる有り様だったのも、むべなるかな。 因みに『バトルシップ』の主演は、本作『ローン…』にも出演していて、ピーター・バーグ組とも言えるテイラー・キッチュ。『バトルシップ』のアメリカ公開=2013年 5月に先立っては、3月にもう1本の主演作『ジョン・カーター』が公開されている。 『ジョン…』は、ウォルト・ディズニー生誕110周年記念と銘打った、火星を舞台にした、製作費2億5,000万㌦の超大作。しかしこちらの興行もまた、大惨敗を喫している。ディズニー、ユニバーサルというハリウッドの伝統的なメジャーブランドのメモリアル勝負作、製作費合わせて4億5,000万㌦也の2本で、正に“スーパースター”の地位にのし上がるかとも思われたテイラー・キッチュだったが、そんな期待は瞬く間に、雲散霧消してしまった…。 些か余談が過ぎたが、そんなこともあって、「『バトルシップ』の監督かよ」と、初見の際は期待値が著しく低かった、『ローン・サバイバー』。いざ鑑賞すると、嬉しい裏切りに遭うこととなった。 2005年6月、アフガニスタンでタリバンとの激しい戦いが続く中、アメリカ海軍特殊部隊“ネイビー・シールズ”の一部隊に、作戦決行の指令が下る。目的は、アメリカ海兵隊員への攻撃を指揮する、タリバン指導者の捕捉と殺害。大尉のマイケル(演;テイラー・キッチュ)をリーダーに、マーカス(演;マーク・ウォールバーグ)、ダニー(演;エミール・ハーシュ)、マシュー(演;ベン・フォスター)の4人が、山岳地帯へと向かった。 首尾良くターゲットを発見し、後は決行を待つのみとなったが、そこに現地の山羊使い3人が通り掛かる。やむなく拘束し、司令部の指示を仰ごうとするも、無線が通じない。 作戦を無事に遂行するためには、山羊使いたちを殺すしかない。一行は逡巡するも、戦闘に無関係な民間人殺害の咎は避けて、3人を解放。作戦を中止する道を選んだ。 基地に連絡を取って、一行は帰還を目論む。しかし無線も衛星電話もなかなか繋がらない内に、山羊使いから連絡を受けた、タリバンの追っ手が迫って来る。 そして逃走を図る4人のシールズvsそれを追う200人のタリバンの、絶望的な戦いが始まった…。 本作は、アフガニスタン紛争で実際に起こった、“レッド・ウィング作戦”の悲劇的な顛末を描いている。その原作「アフガン、たった一人の帰還」は、映画化作品ではマーク・ウォールバーグが演じた、元ネイビー・シールズ隊員のマーカス・ラトレルが、パトリック・ロビンソンと共同で執筆したもの。 2007年の出版と同時にベストセラーとなり、マーカスの元には映画化の申し入れが殺到した。そしてその中の1人が、ピーター・バーグだった。当時ウィル・スミス主演の『ハンコック』(08)の製作中だったバーグは、原作を読み始めるや否や心を奪われたという。 数多あるオファーの内から、マーカスがバーグ監督を選んだのは、その過去作『キングダム/見えざる敵』(07)を観たことがポイントになったという。サウジアラビアの外国人居住区爆破事件をきっかけにした、FBI捜査官の戦いを描くこの作品はフィクションであるが、実際にサウジで起きた爆破事件を参考にして製作されている。マーカスは、バーグがリサーチに時間を掛けて、細部を正しく描こうとしている点を高く評価したという。 そしてマーカスは、バーグ邸に1カ月滞在し、アフガンでの“作戦”実施の際に起こったことを、バーグに確実に理解させるよう努めた。またバーグは本作のリサーチとして、殺害された“シールズ”隊員の家族たちと会っては、未だに癒えない、深い悲しみと心の痛手に触れていった。 バーグは、『ローン・サバイバー』の権利を渡してもらえた場合の、マーカスとの約束も守った。それは“ネイビー・シールズ”の現役の隊員たちと、多くの時間を過ごすこと。バーグはイラクに渡って1ヶ月半、シールズの一隊と時間を共にした。 こうした経験が積み重なったからこそ、バーグは本作に必要なディティールやニュアンスを掴み取ったと言える。 配役に関してバーグは企画段階から、「君がきっとやりたいと思う映画だ」と、ウォールバーグに話していたという。ウォールバーグは敢えて原作に触れることなく、バーグの書いた脚本を待ち、そして熱狂的に受け入れた。最終的にはバーグのパートナーとして、「この映画の資金集めを手助けしてくれて、おまけに他の役者の面倒をみてくれた」という。 ウォールバーグはじめ主要キャストが約1カ月半、原作者の指導による軍事訓練を受けた後、ニューメキシコ州の山岳地帯で『ローン…』の撮影がスタートした。スタッフ&キャスト共に、毎朝4時にヘリコプターで山頂に向かう際は、各人がポケットに昼食用の卵サンドイッチを詰め、手には照明を抱えていたという。 山頂に着いたら、機材を運ぶのを手伝い、トイレに行きたければ、茂みにいくしかない。そんな中でウォールバーグは、“映画スター”的に振舞うことは一切なく、その“一員”になっていた。 そうして完成した『ローン…』は、オープニングは、実際の“ネイビー・シールズ”の、過酷な選抜訓練のドキュメンタリー映像で幕を開け、エンディングは、登場人物のモデルになった人々の、遺された写真や映像で〆る。そこに挟まった形で展開する本編もまた、手持ちカメラなどを多用したドキュメンタリー的な撮り方となっている。事実をベースにしているということもあるが、主人公たちが戦闘中に負う“傷”や“痛み”を、観客に体感させるような演出である。 私個人は、アメリカ軍が他国に渡って行っていることの正当性や、タリバンの描き方などに対して、色々と思うところはある。しかし、命懸けで戦った“ネイビー・シールズ”隊員たちの経験を通じて、そこに何らかの教訓を見出すことには、必ずや意義はあろう。そうした点に関してバーグ監督が、「私は自分の仕事に誇りを持っているよ」と語るのは、至極納得がいく。 さて本作の成功を受けて、監督ピーターと主演マークの“Wバーグ”は、次々とコンビ作を製作していくことになる。共に2016年に公開された『バーニング・オーシャン』と『パトリオット・デイ』は、『ローン…』と同じく、実話ベースの作品。海洋事故とアメリカ本土でのテロと、扱う題材は違えども、アクチュアルなテーマをドキュメンタリータッチで描き、観客をその“現場”へと導くことに、抜群の冴えを見せる。 コンビ4作目の『マイル22』は、実話ベースの“制約”を外して、ウォールバーグ曰く、「自分たちがやりたいように撮れる作品を作りたかった…」という。キャラクター中心の「単なるアクション映画」を目指したわけだ。 しかしそうは言っても、やはりバーグの監督作品だ。実在する特殊部隊や諜報組織のリサーチを綿密に行い、その筋の者たちを、作品のコンサルタントに招いている。そうした意味では『マイル22』の“Wバーグ”は、アクチュアルなテーマをドキュメンタリータッチで描く手法は変えずに、物語的な飛躍を目指したと言えよう。 バーグ監督曰くウォールバーグは、「兄弟みたいな存在…」で「信頼関係があるので一緒に仕事をすると楽しい…」。ウォールバーグはバーグについて、「役者上がりだから、最高の演技ができるような環境を作りだすのがうまい…」「役に没頭するタイプの僕は、ピート(バーグのこと)のリアルなテイストが性に合っている…」と語っている。 2020年代に突入しても、ピーター・バーグとマーク・ウォールバーグ=“Wバーグ”には、ハリウッドのアクション映画シーンを是非リードしてもらいたい!■
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PROGRAM/放送作品
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
[PG12]クエンティン・タランティーノが古き良きハリウッドに愛を捧げる!郷愁を誘う長編グラフィティ
1969年に起きたシャロン・テート殺害事件を背景に、クエンティン・タランティーノ監督が60年代ハリウッドを独自の視点でノスタルジックに活写。アカデミー助演男優賞(ブラッド・ピット)と美術賞を受賞。
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COLUMN/コラム2019.02.07
長い黒髪に白い乳房!名もなき美女の全裸死体に隠された忌まわしい秘密とは?今宵、想像を絶する恐怖があなたを襲う!〜『ジェーン・ドウの解剖』〜
バージニア州の小さな町。とある平凡な一軒家で、住人全員が無残な遺体で発見される。警察が現場を検証したところ、外から誰かが侵入したような形跡はなく、むしろ被害者たちは家からの脱出を試みていたようだ。困惑する保安官。すると、家の地下室から土に半分埋まった美しい女性の死体が見つかる。女性の身元も住人との関係も不明だが、なぜか彼女だけ目立った外傷がない。事件の謎を解明するためにも、この女性の死因を特定することが急務だ。そこで保安官は、20年来の付き合いがある「ティルデン遺体安置&火葬場」へ女性の死体を持ち込み、明日の朝までに検死結果を報告するよう依頼する…。 ジェーン・ドウとは女性の身元不明死体のこと。英語圏では古くから、身元の分からない男性の死体を「ジョン・ドウ」と呼ぶ習慣がある。これはなにも死体だけに限らず、身元不明男性全般や実名を明かしたくない場合の匿名、もしくは「どこにでもいる平凡な男」の意味としても使われるので、さしずめ日本で言う「名無しの権兵衛」みたいなものだろうか。その女性版がジェーン・ドウというわけだ。最近では、’16年にアメリカで「13歳の時ドナルド・トランプ大統領にレイプされた」と訴え出た女性が、身バレを恐れてジェーン・ドウの匿名を使用していたことも記憶に新しいだろう。 さて、一家全員が謎の死を遂げた不可解な殺人事件。その家の地下室から無傷で発見された身元不明の女性「ジェーン・ドウ」の死体。運び込まれた民間の古い遺体安置所で、ベテラン検死官トミー・ティルトン(ブライアン・コックス)とその息子で助手のオースティン(エミール・ハーシュ)による死因の究明が始まる。 一見したところ目立った外傷はなし。年齢は20代半ばから後半といったところか。眼球はグレーに濁っている。ということは、死後数日は経っているはずだが、しかし死後硬直はまだ見られない。しかも、骨格の大きさに対してヒップが細すぎる。手首や足首が折れているのもおかしい。爪から採取された土は、この近辺にはない泥灰だ。なによりも2人が衝撃を受けたのは、口を開けてみると舌がちぎり取られていたこと。外見上から判断すると人身売買の被害者と似ているが、それにしてもおかしなことが多すぎる。この死体はいったい「何」なのか?その疑問を解明するべく、2人はさらにジェーン・ドウの体にメスを入れ、その中身を調べ始めるのだが、謎はより一層のこと深まっていく。 と、ここまで予備知識のないまま見てきた観客は、もしかするとテレビドラマ『BONES』のような科学捜査をテーマにした犯罪ミステリーを期待するかもしれない。だとすると、この後の展開にはいろいろな意味で驚かされることだろう。科学的に説明のつかない臓器の状態、そこから発見される思いがけないもの、そして、まるで解剖の邪魔をするかのように次々と起きていく不気味な怪現象。そう、これは身元不明の美しき女性の死体を巡って、予想だにしなかった超自然の恐怖が頭をもたげる、紛れもないオカルト・ホラーなのだ。 ユニークなのは、ほぼ全編を通して物語が遺体安置所の中だけで進行することだ。これはなかなか珍しい。確かに、遺体安置所というセッティングはホラー映画に欠かせない要素のひとつであり、例えばホルヘ・グラウ監督のスパニッシュ・ホラー『悪魔の墓場』(’74)やルチオ・フルチ監督の怪作『ビヨンド』(’81)などでも効果的な使われ方をしていた。女性検死官が主人公の『炎のいけにえ』(’74)なんていう隠れた名作もあるし、病院の遺体安置室が重要な役割を果たした『ZOMBIO/死霊のしたたり』(’85)を想起するホラー映画ファンも多いことだろう。 また、マイナーなところでは、遺体安置所がカルト教団の巣窟だったビル・パクストン出演の『モーチュアリー』(’83)も印象的だ。そうそう、病院の研修生たちが解剖実験用の死体に呪われるという『屍体』(’06)なんて映画もあった。これなどは設定的に本作と近いものがある。とはいえ、遺体安置所という限定された空間内でほぼ展開する作品となると、病院の遺体安置室で3人の若者が人気女優の死体をレイプしたところ蘇生してしまう『レイプ・オブ・アナ・フリッツ』(’15)と本作ぐらいしかパッとは思い浮かばない。しかも、『レイプ・オブ・アナ・フリッツ』はホラーではなく犯罪スリラーだ。 監督を手掛けたのは、ドキュメンタリー映画を撮影中の学生たちが北欧伝説の巨大な妖精トロールに遭遇するという、モキュメンタリー形式のダークファンタジー映画『トロール・ハンター』(’10)で話題を呼んだノルウェー出身のアンドレ・ウーヴレダル。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(’99)から『死霊高校』(’15)まで、はたまた『チュパカブラ・プロジェクト』(’00)から『クローバーフィールド/HAKAISHA』(’08)に至るまで、散々やり尽くされてきた感のあるモキュメンタリーのジャンルに「モンスター・ハント」という要素を持ち込んだアイディア、低予算ながらもユーモアを交えて工夫を凝らした演出は特筆すべきものだったが、しかしウーヴレダル監督本人にとってこの作品で注目されたことは、多少なりとも不本意な部分があったようだ。 というのも、モキュメンタリーというのは単なるギミックに過ぎないという面も否定できない。本来の自分のスタイルではない、との思いが強かったみたいだ。とりあえず『トロール・ハンター』の商業的成功で、世間的に名前は認知された。次の作品では真っ当な映像作家としての腕前を実証したい。しかし、ハリウッドに招かれたのは良かったが、声をかけられたプロジェクトはひとつも実を結ばず。そんな折、ジェームズ・ワン監督の『死霊館』(’15)を見て感銘を受けたウーヴレダル監督は、「自分もこういう映画を撮りたい!」とエージェントに働きかけたところ、しばらくしてから本作の脚本が送られてきたのだという。 ハリウッドでは「ブラック・リスト」(未映画化脚本の人気投票ランキング)の上位にも名前が挙がっていたという本作。映画の前半と後半でジャンルがガラリと変わるという意外性の面白さもさることながら、描き込まれた登場人物の背景や性格が、ストーリーの上でちゃんと意味を成している点がとてもいい。 主人公は100年近く続くティルデン遺体安置&火葬場の3代目経営者トミーと、その息子オースティン。トミーは自殺した亡き妻の死に強い責任を感じており、普段は表に出さずとも罪悪感に今なお苦しんでいる。そんな重い空気に耐えかねてか、家を出て恋人と暮らすことを考えているオースティンだが、しかし父親への深い愛情ゆえになかなか決心がつかない。複雑でありながらも強く結ばれた親子の絆。どこからどう見ても共感しか生まれないこの2人に、理不尽な恐怖が襲い掛かることとなる。 さらに、2人の性格の違いが明確に描かれているところも要注目だ。「目と手で確認できること以外は気にするな」という徹底した合理主義的な立場で、ジェーン・ドウの死因を解明しようとする父親トミーと、死因だけではなくその理由にも思いを馳せることで、その正体に迫ろうとする息子オースティン。このまるで対照的な彼らの分析や推論を通して、はじめはただの「物体」に過ぎなかった死体に少しずつ人間としての個性が宿り、いつしか観客が感情移入できる「キャラクター」へと変化していくのだ。 そればかりか、やがてこの死体が持つ明らかな「意志」や「目的」までもが見えてくる。ネタバレになるので詳しくは延べないが、ジェーン・ドウには歴史の闇に埋もれた恐ろしくも哀しい由来があったのだ。おのずと少なからぬ同情を寄せていくトミーとオースティン。しかし、この心優しい親子に対する容赦のない攻撃はエスカレートし、ジェーン・ドウが疑いようもなく邪悪な存在であることが明確になっていく。相手が善人だろうが悪人だろうが、もはや復讐の塊となった彼女には関係がないのだ。これはある意味、日本の怪談にも通じる「怨念」の怖さだと言えるだろう。 不器用で口数の少ないトミー役にはシェイクスピア俳優としても評価の高いイギリス出身の名優ブライアン・コックス、繊細で感受性豊かな青年オースティン役には『イントゥ・ザ・ワイルド』(’07)と『ミルク』(’08)の演技が絶賛されたエミール・ハーシュ。ホラー映画とは馴染みの薄い正統派俳優を主演に得たことで、複雑でありながらも深くて固い親子の絆のドラマにも厚みが加わる。そんな2人の些細な感情の機微までをも汲み取り、丹念な筆致で恐怖を盛り上げていくウーヴレダル監督の演出は、まさしく古典的ホラー映画の王道だ。一歩間違えると悪趣味になりかねない解剖シーンも、医療ドキュメンタリーさながらの正確な表現を貫くことで、機能美的な芸術性すら備えている。 その功績は、ジェーン・ドウ役の女優オルウェン・ケリーに負う部分も大きいだろう。本業はファッション・モデルであるオルウェン。その訓練で培ったヨガの呼吸法を駆使して、美しき死体を完璧なまでに演じている。もともとプロデューサー陣は人間そっくりのダミーボディを使おうと考えていたらしいが、ウーヴレダル監督は絶対に生身の女優を起用すべきだとの意見を押し通したという。もちろん、メスを入れて解剖されるシーンはダミーだが、それ以外は全てオルウェン本人。監督は照明の角度やカメラの位置を工夫することで、微動だにしない死体の顔に表情を与えていく。あたかも、何かを考え意図しているかのように。これはやはり、生身の人間でなくては説得力が生まれなかったであろう。 初の英語作品となった本作で、シッチェス=カタロニア国際映画祭の審査員特別賞をはじめ、数々の映画賞に輝いたウーヴレダル監督。次回作は作家アルヴィン・シュワルツのベストセラー児童文学「Scary Stories to Tell in the Dark(真夜中に語る怖い話)」の映画化で、ギレルモ・デル・トロが製作と共同脚本を手掛けている。原作は古い伝承や都市伝説を基にした怪奇譚を集めた短編集だが、映画化版では小さな田舎町で起きる様々な怪事件の謎にティーンエイジャーたちが迫っていくことになるという。全米公開は’19年8月の予定。これを機にハリウッド・メジャーへの進出と相成るか、今から楽しみである。■ ©2016 AUTOPSY DISTRIBUTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED
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(吹)ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
[PG12]クエンティン・タランティーノが古き良きハリウッドに愛を捧げる!郷愁を誘う長編グラフィティ
1969年に起きたシャロン・テート殺害事件を背景に、クエンティン・タランティーノ監督が60年代ハリウッドを独自の視点でノスタルジックに活写。アカデミー助演男優賞(ブラッド・ピット)と美術賞を受賞。
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PROGRAM/放送作品
ローン・サバイバー
[PG12]4人vs200人!ネイビー・シールズ史上最悪の悲劇を再現した、サバイバル・アクション
米軍精鋭部隊ネイビー・シールズが2005年に遂行した極秘作戦の顛末を、任務から唯一生還した兵士の回想録を基に再現。タリバンの拠点であるアフガニスタン山岳地帯での、壮絶な逃走劇や銃撃戦を生々しく描く。
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PROGRAM/放送作品
ジェーン・ドウの解剖
[R15+]身元不明の女性ジェーン・ドウの遺体がもたらす恐怖とは?禁断の解剖に鳥肌が立つ衝撃ホラー
『トロール・ハンター』のアンドレ・ウーヴレダル監督のハリウッド進出第1作。身元不明の死体を解剖する親子に迫る恐怖を、逃げ場のない遺体安置所で緊張感満点に描く。遺体解剖のリアルな特殊メイクが恐怖を煽る。
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PROGRAM/放送作品
(吹)ローン・サバイバー
[PG12]4人vs200人!ネイビー・シールズ史上最悪の悲劇を再現した、極限のサバイバル・アクション
米軍精鋭部隊ネイビー・シールズが2005年に遂行した極秘作戦の顛末を、任務から唯一生還した兵士の回想録を基に再現。タリバンの拠点であるアフガニスタン山岳地帯での、壮絶な逃走劇や銃撃戦を生々しく描く。
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PROGRAM/放送作品
(吹)スピード・レーサー
往年の日本アニメを『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟が実写化!高速の超絶カー・アクション
米国でも放送されヒットした日本アニメ「マッハGoGoGo」をウォシャウスキー兄弟監督が実写映画化。トリッキーなコースを時速650kmで疾走するカー・レースが、重力を無視した変幻自在な映像で描き出される。
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PROGRAM/放送作品
スピード・レーサー
往年の日本アニメを『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟が実写化!高速の超絶カー・アクション
米国でも放送されヒットした日本アニメ「マッハGoGoGo」をウォシャウスキー兄弟監督が実写映画化。トリッキーなコースを時速650kmで疾走するカー・レースが、重力を無視した変幻自在な映像で描き出される。