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PROGRAM/放送作品
ボーイフレンド【町山智浩撰】
町山智浩推薦。ミニスカートの女王・ツイッギーが女優として主演。戦前の豪華絢爛なミュージカル映画が甦る
町山智浩セレクトのレア映画を町山解説付きでお届け。戦前の“人間幾何学群舞”ミュージカル映画をケン・ラッセル監督が数十年ぶりに甦らせる。女優業に進出したミニの女王・モデルのツイッギーが主演し、歌い踊る。
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COLUMN/コラム2020.01.31
20年代のイギリスを舞台に、歌と踊りを満喫させてくれるケン・ラッセル監督の異色ミュージカル!
今回の映画は1971年の『ボーイフレンド』。主演はツィッギー。1966年にミニスカートを大ブームにしたイギリスのファッション・モデルです。“ツィッギー”とは“小枝のような”という意味で、木の枝のように痩せてがりがりなんです。そして髪の毛はショートカットでボーイッシュ。中性的な容姿が画期的でした。ツィッギーはモデルを経て女優に転身し、その主演作として作られたのがこの『ボーイフレンド』です。 監督はケン・ラッセル。僕の世代には「変態ケンちゃん」と呼ばれていました(笑)。たとえば『肉体の悪魔』(71年)は17世紀フランスで修道女たちが集団で悪魔に憑かれた事件の映画化ですが、尼さんたちがオナニーしたり浣腸されたり、ムチャクチャな内容だったり、『リストマニア』(75年)も実在のピアニスト、フランツ・リストの伝記映画なんですが、巨大なペニスがダーン! と出てくるので、日本では公開できなかったり。それで、ラ ッセル自身が、世間からあまりにも変態だと思われてるから、そうじゃないところも見せようとしてミュージカル・ラブ・コメディの『ボーイフレンド』を撮ったそうです。だけどやっぱり……変態的な映画なんですよ(笑)! まず、作りがメチャクチャ複雑。もともと『ボーイフレンド』は、1953年にロンドンの舞台で上演されて、ジュリー・アンドリュースをスターにした同名のミュージカルの映画化です。そして、そのオリジナルの舞台の「ボーイフレンド」は、1926年の「ガー ルフレンド」というミュージカルのパロディなんです。その1953年の「ボーイフレンド」を1971年に映画化するにあたって、ケン・ラッセルは、1920年代を舞台にして「ボーイフレンド」を上演する劇団の話にしたんですよ。ややこしいでしょ? ツィッギーの役は、最初はアシスタントですが、グレンダ・ジャクソン扮する主演女優が足を怪我したので、彼女の代役を任されます。そして芝居の中で彼女と相手役をする俳優と恋に落ちてしまいます。さらに、ヒロイン以外の登場人物の想像や妄想も次々に映像化され、はっきり言って何が何だかわからない映画になっています。 それに1920年代当時の舞台では、照明は天井からではなく、足もとからライムライト(石灰灯)で照らしていたんですが、ケン・ラッセルはリアリズムにこだわって、その照明を使っています。でも、顔を下から懐中電灯で照らしたら、どんな顔になるかわかりますよね? みんな怖い顔になっちゃってます。とはいえ、製作はハリウッド・ミュージカルの老舗、MGMです。それでラッセルは、1930年代のMGMミュージカルの伝説的振付師だったバズビー・バークレーの手法を再現しました。シンクロナイズされたダンサーの動きを俯瞰で撮影して、万華鏡のような豪華絢爛の映像を作るんです。これは見ものですよ!■ (談/町山智浩) MORE★INFO. ●舞台の映画化権は1957年にMGMがすでに取得しており、当初の案ではドロシー・キングスリーとジョージ・ウェルズの脚本でデビー・レイノルズ主演、相手役にはデビッド・ニーブン、ドナルド・オコナーなどが検討されたが映画化には至らなかった。 ●監督のラッセルは映画化に当たって、有名なミュージカル監督バスビー・バークレーのスタイルを取り入れた。 ●映画デビューとなったツイッギーは、ポリー役を演じるため歌やタップを、ほぼ一から約9カ月にわたって練習したという。 ●1971年のロンドンでの初公開時には110分のカット版だったが、1987年の再公開時に135分の復元完全版に戻された。 © Warner Bros. Entertainment Inc.
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PROGRAM/放送作品
ニューヨーカーの青い鳥
ロバート・アルトマン監督が、一風変わったカップルとセラピストが巻き起こす騒動を描くコメディ
群像劇の名手ロバート・アルトマン監督が描く一風変わったドタバタ・ラブコメディ。ジュリー・ハガティ、ジェフ・ゴールドブラムふたりの個性派俳優がみせる掛け合いが見もの。
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COLUMN/コラム2013.05.26
2013年6月のシネマ・ソムリエ
■6月1日『不良少女モニカ』 I・ベルイマン監督の初期作品の中で最も広く知られた青春映画。みずみずしさと冷徹さが共存するその演出は、のちの仏ヌーベルバーグの作家たちにも影響を与えた。内気な若者ハリーと奔放な少女モニカが恋に落ち、着の身着のままの旅に出る。やがて厳しい現実的問題に直面した2人の選択が、残酷なコントラストを成していく。 ベルイマンに見出されたH・アンデルセンが、野性味あふれるモニカを圧倒的な存在感で体現。北欧の夏の空気感をシャープに取り込んだモノクロ映像も、実に魅惑的だ。 ■6月8日『冬の光』 田舎町の牧師トマスは4年前に妻を亡くして気力を失い、愛人の女性教師との関係にも煩わしさを感じている。そんなある日、信者のひとりが自殺したとの知らせが届く。I・ベルイマンが『鏡の中にある如く』と『沈黙』の間に発表した“神の沈黙”3部作の第2作。信仰心が揺らいだ牧師の苦悩を、恐ろしいほど深く静かに見すえていく。窓辺の“光”を印象的に捉えたカメラは名手S・ニクヴィスト。I・チューリンらの名優が脇を固め、神の不在という主題の解釈を観る者に委ねる結末も重い余韻を残す。 ■6月15日『青春群像』 フェデリコ・フェリーニが生まれ故郷の港町リミニを舞台に撮り上げた自伝的な青春映画。イタリアン・ネオリアリスモ的なテイストが色濃く残る初期の秀作である。 結婚後も浮気性が治らない駄目男ファウストを中心に、あてどない日々を過ごす若者5人の姿を描出。いつの時代も変わらぬ青春期の高揚感と鬱屈が観る者の郷愁を誘う。カーニバルの狂騒、浜辺に漂う寂寥感など、フェリーニらしいバイタリティや詩情に満ちた場面が随所に見られる。物語&映像と見事に融合した音楽はニーノ・ロータ。 ■6月22日『ニューヨーカーの青い鳥』 ニューヨークを舞台にした摩訶不思議な恋愛喜劇。雑誌の恋人募集広告が縁でめぐり合った男女と、彼らのかかりつけのセラピストたちが珍妙な騒動を繰り広げていく。原作&共同脚本は、不条理な作風で名高い劇作家クリストファー・デュラング。登場人物は変人だらけで、会話もまったく噛み合わない。唖然とするような怪作である。唐突なオープニングから大団円のラストまで、まさにR・アルトマン監督の独壇場。巨匠の作品中ではマイナーな1本だが、予測不可能な驚きを生む演出力はさすが。 ■6月29日『ネイキッド・タンゴ』 『蜘蛛女のキス』『太陽を盗んだ男』などで知られる脚本家L・シュレイダーの監督作品。1920年代アルゼンチンのタンゴ・バーを舞台に、男女の壮絶な愛憎模様を描く。 裕福な人妻から酒場の娼婦へと堕ちていくヒロイン役のM・メイが艶やかな魅力を披露。タンゴしか愛せない殺し屋に扮した怪優V・ドノフリオとの共演が見ものだ。ギャング映画の様式に則った映像世界の中に、派手な原色の照明に彩られたタンゴ・シーンを挿入。“血”の赤に染まった破滅的な結末まで濃厚な仕上がりの一作である。 『不良少女モニカ』©1953 AB Svensk Filmindustri Stills Photographer: Louis Huch 『冬の光』©1963 AB Svensk Filmindustri 『青春群像』RIZZOLI 1953 『ニューヨーカーの青い鳥』©1996 Lakeshore International Corp. All Rights Reserved. 『ネイキッド・タンゴ』©TOHO-TOWA