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PROGRAM/放送作品
ターミネーター:ニュー・フェイト
[PG12]サラ・コナーとT-800が再タッグ!ジェームズ・キャメロンが放つ『ターミネーター2』続編
シリーズ生みの親ジェームズ・キャメロンが製作・原案を務めた『ターミネーター2』の正統な続編。リンダ・ハミルトンがサラ・コナー役でシリーズに復帰し、“審判の日”を回避したはずの人類の驚くべき運命を描く。
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COLUMN/コラム2023.03.10
『ターミネーター』恐怖と戦慄のアイコン —エンドスケルトンの創造
【1】鋼の骸骨は誰が作ったのか? 未来から送られてきた殺人ロボットとの戦いを描いた『ターミネーター』は、『タイタニック』(97)『アバター』シリーズ(09~)のジェームズ・キャメロン監督による1984年公開のSFアクション映画だ。同作は2023年の現在までに5本の続編と1本のテレビシリーズを派生させ、時間移動を活かした特異な物語と、カルチャーアイコンともいうべきヒール(悪役)を生み出した。機械の内骨格を上皮組織でおおった戦闘ヒューマノイド。そう、タイトルキャラクターの《ターミネーター》だ。その魅力は同キャラを演じた俳優アーノルド・シュワルツェネッガーの、常人離れした肉体と感情を取り払った演技に負うところが大きい。しかし、表皮が剥がれて剥き出しになった内骨格=《エンドスケルトン》の開発こそが、本作における最大の成果といえるだろう。人骨を単に金属パーツに置き換えただけではない、映画が持つ黙示録的な性質を表象する外観は、生身の俳優以上の存在感を放つ。 本作が公開されて、ほどなく40年という歳月が経つ。その間にこのシンボリックなキャラクターは、続編の展開やシチュエーションに応じたニューモデルを登場させ、それらは撮影技術の進化にも応じてアニマトロニクス(機械式レプリカ)やストップモーション・モデルアニメーション、そしてCGによる創造へと発展してきた。しかし。ここで触れる記念すべき第1作目の、ベーシックにして極まった存在に勝るものはない。 【2】伴走者スタン・ウィンストン 「私はかねてより、ロボットの決定版を映画に登場させたいと思っていたんだ」—ジェームズ・キャメロン エンドスケルトンの考案とデザイン原型は監督であるキャメロン自身によるもので、自らイメージショットを描画し、造形を特殊メイクアーティストのスタン・ウィンストン率いるスタン・ウィンストン スタジオへと依頼している。そして映画が完成へと導かれていくプロセスにおいて、あの容姿が形成されていったのだ。 ウィンストンがこの役割を共同で担うことになったのは、当時彼が映画・映像において工学的センスに満ちたヒューマノイドのデザインと、それを実際に可動させるパペット技術に長けていたからだ。それは業界内でも評価が確立されており、実際にキャメロンが特殊効果ショットに必要なエンドスケルトンの制作にあたり、『モンスター・パニック』(80)で同門ニューワールド・ピクチャーズに詰めたことのある特殊メイクアーティストのロブ・ボッティンに相談したところ、ボッティンは「ディックがメイクを、スタンはメカを作ることができる」と提言し、『ゴッドファーザー』(72)の特殊メイクで名を挙げた巨匠ディック・スミスとウィンストンの連絡先を伝えた。そこでキャメロンは先ずスミスに相談を持ちかけると、「スタンが適役だ」とウィンストンを勧められたのである。 事実、ウィンストンは1981年公開のSFコメディ『ハートビープス/恋するロボットたち』で、人間の肌をメタリックに換装させたようなリアルなロボットを数多く創造。またロックグループ、スティクスのミュージックビデオ「ミスター・ロボット」では、『ハートビープス』の発展形のような個性的なロボットを手がけており、それがキャメロンのイメージを実体化させるのに確かなサンプルとなった。 ■『ハートビープス/恋するロボットたち』予告編 ■スティクス「ミスター・ロボット」 なにより、それらがキャメロンのエンドスケルトンにおける「生物と同じ機能を有し、メカっぽく見える」というコンセプトに合致したのだ。 ウィンストンとキャメロンは自動車部品の廃棄場に足を運んで写真を撮り、それらの写真とキャメロンの図面をガイドにして、エンドスケルトンの立体化を図った。ウィンストンの他にはシェーン・マーン、トム・ウッドラフ、ブライアン・ウェイド、ジョン・ローゼングラント、リチャード・ランドン、デヴィッド・ミラー、マイケル・ミルズら7人のクルーが造形に関与し、エリス・バーマン、ボブ・ウィリアムス、アシスタントであるロン・マクレネスの面々が機械仕掛けと金属タッチの細工、それにラジコン操作を受け持った。 スケルトンの頭部はマーンが主に担当。シュワルツェネッガーの頭骨格を正確に再現したものを原型とし、ウッドラフとウェイドが頭部モックアップの彫刻を手がけた。また二人はエンドスケルトンのさまざまなボディパーツを粘土で造型し、それらの彫刻フォームからウレタンでモールドを作成。クルーがエポキシとファイバーグラスの部品を作成し、パーツに埋め込んだ. そして金属の外観を与えるために、部品は真空蒸着(金属粒子を物体に付着させる電磁プロセス)を経て最終的な形に組み立てられた(そのためフルスケールのエンドスケルトンは重量45kgにも及んでいる)。またエンドスケルトンの全身モデルはスタント用の軽量バージョンも作られ、それはレジスタンスの戦士カイル・リース(マイケル・ビーン)のパイプ爆弾で半分に切断されるショットに用いられた。 加えてクローズアップの撮影用に、クルーはオペレーターの背中に装着できる頭と胴体の半身モデルも作成。こちらはオペレーターの動きをモデルに反映させる特別なリグを備え、マーンが操作を兼任。シュワルツェネッガーやウィンストンらと一緒にボディランゲージに取り組んだ。 またエンドスケルトンのみならず、ウィンストンとクルーはシュワルツェネッガーの頭部のアニマトロニクスを作っている。ターミネーターのT−800タイプが眼を自己補修するシーンで、皮膚を切開して内部構造を露出させたり、クロームの下部構造の多くが露出する場面に応じた、複数の頭部モデルが用意された。また実物よりも寸法の大きなメカニカルアイや、真空成形で硬化させたプラスチック片と発泡ゴムの補綴物からなるメイクをシュワルツェネッガーにほどこしたり、彼の腕を複製したウレタン製の中空義手を作り、T-800が腕を切開し、骨格を露出させるシーンを操作演出するなど、エンドスケルトンの存在をプラクティカルなエフェクトで補強している。 これらと前述したパペットやアニマトロニクスを組み合わせ、映画はスタジオセットやロサンゼルス周辺のロケ地で撮影をおこない、またエンドスケルトンの全身を捉えた歩行ショットは特殊効果スタジオ「ファンタジーII」のチームによって2フィートのミニチュアモデルが作られ、ストップモーション アニメーションによって表現されたのである。 【3】エンドスケルトンの起点 以上のような形で『ターミネーター』におけるエンドスケルトン創造のプロセスを綴っていったが、その起点ともいうべきキャメロンのメカニカルセンスにも迫るべきだろう。かの悪夢的なイメージが彼の中でどのように成立していったのか、その起源に対して無関心ではいられない。 『ターミネーター』のエンドスケルトンが驚異的なのは、プロダクションの過程でデザインが試行錯誤して定まっていくのではなく、最初にキャメロンが手がけたドローイングの段階で外観が完成されていたことだ。つまりキャメロンの中でエンドスケルトンの概念が確立していたのである。 2021年に出版されたキャメロン自身の手によるコンセプトアート集「テック・ノワール」には、少年期に遡ってキャメロンのアートワークが網羅されている。本画集を参照すると、エンドスケルトンのモチーフは1982年に氏が宣伝デザインに協力したSF映画『アンドロイド ダニエル博士の異常な愛情』の図案に登場している。同作にてキャメロンは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」を引用したレイアウトに、人体の左半身がエンドスケルトンに似たデザインの機械体を描き込んでいる。筋組織をシリンダーやスチールサポートに置き換えたメカ構造など、ほぼ同一のものといっていい。 さらに元を辿れば、こうした意匠に基づくメカモチーフは自身が35mmフィルム撮影で手がけた習作『Xenogenesis』(78)に見ることができる(「テック・ノワール」には同作のイメージイラストが掲載されている)。 ■Xenogenesis 加えて画集の中でキャメロンは、自身のドローイング技術の習得やメカニック描写のルーツについて言及しており興味深い。特に後者に関してキャメロンは、「キング」と呼ばれてアメリカンコミックのジャンルに君臨した、ジャック・カービーからの影響が濃いと語っている。例えばカービーの描いた『ファンタスティック・フォー』のシルバーサーファーの金属的なイメージは、『ターミネーター2』(91)の液体金属で構成されたT-1000に通じるものがあると自認している。 ■「That Old Jack Magic」ジャック・カービーのデザイン性についての論考 https://kirbymuseum.org/blogs/effect/jackmagic/ 同アート集の出版にあたり、キャメロンはジェフ・スプライの独占取材に応じ、自身の絵のタッチがファンタジーアートからくるものであり、フランク・フラゼッタやケリー・フリース、リチャード・コーベンといったイラストレーターの描画スタイルから影響を受けていることを明かしている。ネットのない時代、ファンタジーアートとの接触の機会は少なく、それらに確実に接することができたのはSF文庫の扉絵や挿絵だったこと。そして限られたものからあらゆるものを学んだのだとキャメロンは述懐する。 「SF映画やテレビがまだ石器時代のようなデザイン表現だったとき、コミックブックは絵を学ぶのに最適な存在だった。初期の『スパイダーマン』のコミックを描いていたスティーヴ・ディッコは、美しい彫刻のような素晴らしい手を描いていたんだ。他にもジェスチャー的な動きなど、さまざまなことに特化したアーティストがいたのさ。私はほとんどの場合、マーベルのアーティストが面白いことをやっていると感じたよ」 昨年、MCUに対して手厳しい批判をしたキャメロンだが、自身のドローイングの起点がマーベルにあり、そこからエンドスケルトンのデザインへと発展したことを思うと、そこに『ターミネーター』のタイムパラドックスを地でいくような相関性を覚えなくもない。■
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PROGRAM/放送作品
タイタニック(1997)
タイタニック号沈没事故で散った若き男女の恋…アカデミー賞11部門に輝いた大ヒット・スペクタクルロマン
1912年のタイタニック号沈没事故を題材にした悲劇の恋を、ジェームズ・キャメロン監督が実物大の客船セットや最新CG技術を駆使したスペクタクル映像で織りなす。作品賞、監督賞ほかアカデミー賞11部門受賞。
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COLUMN/コラム2020.12.04
ジェームズ・キャメロン幻のデビュー作は、正しく“ジョーズもの”『殺人魚フライングキラー』
本作『殺人魚フライングキラー』(1981)は、正しく“ジョーズもの”というジャンルに分類されるべき作品である。 何だ“ジョーズもの”って!?…などと声が飛んできそうだが、映画史に於いては、いわゆるメガヒット作を軸にして、度々こうしたジャンルが生まれてきた。“エクソシストもの”“マッドマックスもの”“エイリアンもの”“ランボーもの”“ターミネーターもの”“ジュラシック・パークもの”…。ああキリがない。 もちろん“オカルト映画”“SF映画”“戦争映画”などと、正統的なジャンル分けの区分もある。しかし敢えて“エクソシストもの” “ランボーもの”といった呼称を使いたくなるのは、メガヒット作に雲霞の如く群がり、そうした真っ当なジャンル分けを無効化してしまうほど、バッタもん、パチもん度が強い映画群である。 “ジョーズもの”に、話を戻そう。スティーヴン・スピルバーグ監督の出世作で、人喰いザメと人間の対決を描いた『ジョーズ』(75)は、『ポセイドン・アドベンチャー』(72)『タワーリング・インフェルノ』(74)『大地震』(74)『エアポート』シリーズ(70~79)等々、1970年代を席捲した“パニック映画(ディザスター・フィルム)”ブームの中に連なりながらも、新たに“動物パニック映画”というジャンルを確立した作品である。 そして大量の、“ジョーズもの”が世に送り出された。…と言うか、公開から45年経った今も、送り出され続けている。 ストレートに人喰いザメが登場する作品も多々あるが、その他の水棲生物を主役とする、バッタものも枚挙に暇がない。シャチ、タコ、イカ、ワニ、ピラニア…。シャチのように元々堂々たる体躯の持ち主は別にして、その他は何らかの理由で、“巨大化”や“凶暴化”している場合が多い。 ちょっと、前置きが長くなった。本題の『殺人魚フライングキラー』が、なぜ「正しく“ジョーズもの”なのか」を、ストーリーを紹介した上で、解説していきたい。 カリブ海に浮かぶ、リゾートアイランド。スキューバダイビングも、大きな観光資源となっており、沖に眠る沈没船は、格好のスポットとなっていた。 ある夜、ダイビングに勤しむカップルが、“水中セックス”とシャレ込む。ところがそこに現れた魚群によって、2人の身体は見る影もなく、切り裂かれてしまう…。 海洋生物学者のアニーは、ダイビングのインストラクターで、生計を立てる1人。島の保安官である夫スティーブとうまくいっておらず、一人息子のクリスと、雇用主のホテルの一室に住み込ませてもらっていた。 ダイビングツアーの客の中に、アニーの指示に従わず、立ち入り禁止の沈没船内に勝手に入る者が居た。アニーが探すと、その客は、メタメタに喰いちぎられた死体となって発見される。 殺人魚の正体を調べるべく、アニーは、自分に言い寄る男タイラーを連れ、犠牲者の死体が収容された安置所に忍び込む。傷口などの写真を撮って、ホテルに戻ったアニーは、その夜タイラーと結ばれる。 一方で安置所の死体からは、急に殺人魚が飛び出して、その場に居た看護師が犠牲となる。殺人魚はそのまま空を飛び、逃げ去るのだった。 殺人魚の正体は、アメリカ軍がベトナム戦争用に開発した、陸で産卵するグルニオンとトビウオをかけあわせた、生物兵器だった。運搬の際のミスで、その卵が海底に沈み、やがて孵ると、沈没船を根城にしたのだった。そしてタイラーの正体は、殺人魚の開発に関わった1人だった。 ヨット遊びを楽しむ者などが、次々と殺人魚の犠牲になっていく。そんな中でリゾートホテルの最大の売り物イベントである、グルニオンの産卵を見て楽しむ、ガーデンパーティの夕べが迫る。 アニーはホテルの支配人に、イベントを中止するように説得を行うが、儲け優先の支配人は、聞き入れない。それどころか、アニーをクビにしてしまう。 やって来たイベントの夜、海岸などで産卵シーンを待ち受けていた観光客たちに向かって、殺人魚の大群が飛来。海水は血で、真っ赤に染まる。息子を殺人魚に殺され、復讐に燃えていた漁師のギャビーも、犠牲者の一人となった。 意を決したアニーは、殺人魚の巣となっている沈没船を、ダイナマイトで吹き飛ばす作戦に乗り出す。彼女はタイラーや夫のスティーブの協力を得て、海へと潜っていくが…。 冒頭の“水中セックス”のシーン。早々に「死亡フラグ」が立つバカップルに、主観カメラが迫っていくシーンから、『ジョーズ』のオープニングを劣化コピーした、正しく“ジョーズもの”の展開となる。 主人公が“殺人魚”の脅威を訴えるのを無視して、犠牲者を増やしてしまうのは、わからず屋で強欲な人間。これも“ジョーズもの”には、欠かせない要素と言える。 極めつけは、メインのキャラクター配置。保安官のスティーブに、海洋生物学者のアニー、漁師のギャビー。これは正に『ジョーズ』の、ブロディ警察署長、海洋生物学者のマット・フーパ―、サメ捕り漁師のクイントの陣形を模したものである。ただ本家のように、3人で船に乗り込んで、激闘を繰り広げるわけではない。『フライングキラー』の3人の動きはバラバラで、しかも漁師は陸上で、噛み殺されてしまうのだが。 忘れてならないのは、アニーの浮気である。実は『ジョーズ』の原作には、ブロディ署長の奥さんとマット・フーパ―が不倫をする描写がある。天才スピルバーグが「タルい」と判断して、映画からはぶった切ってしまったその要素を、『フライングキラー』では、わざわざ再現している。正にバッタもんの面目躍如だ。 さて“ジョーズもの”に限らず、こうしたバッタもん映画の代表的な作り手と言えば、偉大なる“B級映画の帝王”ロジャー・コーマンの名が挙がる。そして製作国で言えば、やっぱりイタリアだ。マカロニウエスタンを代表に、あらゆるジャンルのバッタもんを世に送り出してきた実績がある。『殺人魚フライングキラー』は、原題に“Piranha II”と入ることでもわかる通り、本作の3年前にロジャー・コーマンが製作総指揮を務めた、『ピラニア』(78)の続編である。そして本作は、前作でもプロデューサーを務めたコーマン門下のチャコ・ヴァン・リューエンこと筑波久子が、今度は主にイタリア資本で製作した作品なのである。 そんなこんなで、『フライングキラー』がいかに正しく“ジョーズもの”であるかは、おわかりいただけたかと思う。しかしもう一つ、絶対忘れてはならないことがある。それは本作が、あのジェームズ・キャメロンの商業映画監督としてのデビュー作であるということだ。 若き日のキャメロンは、機械工やトラック運転手などをしながら、大学で物理学を学んだ後、初めて監督した35mmの短編映画が認められて、ロジャー・コーマンの門下となった。そこで映画に関する技術全般を、実地で学んだのである。『フライングキラー』は、当初はやはりコーマン門下の別の者が監督を務めていた。ところがその者がクビになったため、急遽キャメロンに、白羽の矢が立てられたのである。 キャメロンにとって、この処女作がどんな位置にあるかについては、彼と交友が深い、小峯隆生氏の著書に詳しい。 キャメロンが、監督作『アビス』(89)のキャンペーンで来日した際に、小峯氏は初対面で彼と意気投合し、他の者も交えて新宿に飲みに行った、その際のエピソードだ。 ~友達がこの映画のファンだと告げたら、ジムは「もう一回、見てみろ。エンド・タイトルロールから俺の名前は消えている」と。その瞬間、この人の前でこの映画の話は禁句だと気づいた~ 急遽監督に雇われたキャメロンが、ロケ地のジャマイカを訪れると、現場は英語が通じない上に、やる気もないイタリア人スタッフばかり。しかも超低予算のため、衣装代が出ず、出演者たちは私服を着て、撮影に臨んでいた。 また撮影に使う“殺人魚”は1体しか出来ておらず、しかも造形が酷かったため、キャメロンは自ら徹夜して、あと3体作ることになった。その際には保安官のスティーブ役で、キャメロンの友人だったランス・ヘンリクセンが手伝ったと言われる。 そんな苦労をして、本編を粗方撮り終えると、「もういいや」と、キャメロンは監督をクビになった。彼が現場を仕切ったのは、僅か5日間とも2週間とも言われている。 頭にきたキャメロンは、クレジットから名を外すように、イタリア側に申し入れる。しかしアメリカ市場向けには、アメリカ人らしい名前の監督が必要という理由で、断られてしまう。 キャメロンは本作を、蛇蝎の如く嫌っており、実質的に己のフィルモグラフィーから消し去っている。それには、十分な理由があったのだ。 とは言え、やはり監督第1作ということもあって、本作には後のキャメロン作品に登場する要素が、散見される。例えば水中シーンには、『アビス』や『タイタニック』(97)に通じるものが感じられるし、沈没船の中で“殺人魚”から逃れようと、アニーとタイラーが狭いダクトの中を進むシーンは、もろに『エイリアン2』(86)である。 更に言えば、実は本作に関わらなければ、キャメロンの出世作は生まれなかったかも知れないというエピソードがある。こちらも件の小峯氏の著書より引用する。 ~イタリアでクビになり、ホテルで、ふてくされて寝ていたら、赤い目をした銀色のピラニアがどこまでも追いかけてくる悪夢を見た話を聞いた。すぐに閃いたアイディアが、ターミネーターの元になったんだ、と。~ キャメロンが『ターミネーター』(84)の製作に取り掛かった際、当初悪役のターミネーター=殺人アンドロイド役は、ランス・ヘンリクセンで、シュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガーは、ターミネーターと戦う、正義の戦士カイル・リース役の候補だった。しかしこの件で、キャメロンとシュワルツェネッガーがランチをした際に、役を変えて、シュワちゃんがターミネーターを演じるという、発想の転換が行われたのである。 実はこの時、キャメロンは一文無し。出演交渉で会ったのにも拘わらず、その場の勘定は、シュワちゃん持ちだったという。しかしそんな出会いが、シュワちゃんに生涯の当たり役をもたらし、彼をスーパースターの座に押し上げた。そしてキャメロンも、世界一のメガヒット監督への第一歩を踏み出すこととなった。 それもこれも、『殺人魚フライングキラー』の屈辱があってのことと知れば、本作の鑑賞もまた、趣深いものとなるであろう。■
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PROGRAM/放送作品
(吹)タイタニック(1997)
タイタニック号沈没事故で散った若き男女の恋…アカデミー賞11部門に輝いた大ヒット・スペクタクルロマン
1912年のタイタニック号沈没事故を題材にした悲劇の恋を、ジェームズ・キャメロン監督が実物大の客船セットや最新CG技術を駆使したスペクタクル映像で織りなす。作品賞、監督賞ほかアカデミー賞11部門受賞。
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COLUMN/コラム2020.01.01
—ジャンル融合による新ヴァンパイア映画の誕生— 『ニア・ダーク/月夜の出来事』
■RVカーで放浪する現代の吸血鬼 アリゾナ州フェニックスにある町で、美しい女性・メイと出会ったカウボーイのケイレブ・コルトンは、自分が恐ろしい運命に巻き込まれるとは思いもよらなかった。彼はキスを要求してきたメイに首を咬まれ、そして明けの陽光に当たると、いきなり体が燃え始めたのだ。 そんなケイレブを、とつぜん猛進してきたRVカーが引きずりこむ。中にはメイと行動を共にする、強面のリーダーであるジェシーと男勝りなダイヤモンドバック、そして気性の荒いセヴェレンと、大人びた少年ホーマーがいた。彼らは全員が生きるために人間の生き血を必要とする、ヴァンパイアの一団だったのだ——。 イラク戦争における爆弾処理兵の苦悩を描いた『ハート・ロッカー』(08)で、女性初となる米アカデミー賞監督賞を手中にした監督キャサリン・ビグロー。受賞後の発表作『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)では、オサマ・ビンラディン暗殺計画の全容に迫り、また直近の作品となる『デトロイト』(17)においては、1967年にミシガン州デトロイトで発生した米史上最大の暴動と、その拡大の中で起こった白人警官による黒人の虐待殺人「アルジェ・モーテル事件」を克明に再現。観る者を人種差別の凄惨な現場へと導いている。 このように、今や社会派の巨匠となった感のあるビグローだが、キャリア初期はファンタジックな秀作を意欲的に手がけ、近年からは想像もつかないような作品展開でコアなファンを獲得している。1987年製作の『ニア・ダーク/月夜の出来事』は、そんな彼女の単独監督としての第1作目にあたる。 ジェシー率いるヴァンパイアたちはナイフと銃を武器に、廃屋やモーテルを転々とし、窓を黒く塗ったRVカーで移動する放浪者のような存在だ。ケイレブはそんな彼らの餌食になるも、メイは彼をヴァンパイア化させ、自分の血を与えて生かそうとする。いっぽうケイレブを目前でさらわれた父ロイと妹のサラは、かけがえのない身内を必死の思いで見つけ出そうとする。ケイレブはそんな父との再会を果たすとき、家族とメイとの間で絆の選択を迫られていく。 やがてフッカーたちはそんなロイや警察を相手に銃撃戦を交わし、バンガローの壁には銃弾が突き刺さり、陽光がレーザー照射のように部屋の中を切り裂いていく。そんなホラー映画史上最も特異な“吸血鬼ウエスタン”ともいうべきこの物語は、ホラーと西部劇、そしてアクションの融合作として、ビグローのスタイリッシュかつキネティックな映画制作を証明するものとなった。加えてブルーを基調とするクールな色の演出や逆光の効果的な使用など、後の作品に見られるビジュアルスタイルは、この『ニア・ダーク』によって完成されている。 ■女性監督キャスリン・ビグローの台頭 商業監督として一本立ちしたいと切望していたビグローは、『ヒッチャー』(86)の脚本家・エリック・レッドと共同して書いていた2本のスクリプトのうち『ニア・ダーク』を映画会社に送り、興味を示したプロデューサーのエドワード・S・フェルドマン(『エクスプロラーズ』(86)『ゴールデン・チャイルド』(87))と会う。ビグローが提示した映画化の条件は、「自分を監督させること」で、フェルドマンは「わたしがダメ出しすれば、途中交代もある」ことを引き換えに条件を受け入れるが、彼女の熱心な仕事ぶりと緻密な演出力に舌を巻き、完成を彼女に委ねることとなった。 こうしたジャンルの混合は当時の映画界の潮流としてあり、正統な吸血鬼ジャンルでは企画がとおりにくいという事情が横たわっている。そのため本作において「ヴァンパイア』や「吸血鬼」といった呼称は用いられず、また吸血鬼の映画に常在していたゴシック様式は取り払われ、十字架や聖水などのアイコンはこの映画には登場していない。 しかしビグローはそれらを取り除いたにもかかわらず、血が絆を結びつけるものとして「家族」を象徴的に描き、多くの点で意図的な家族への献身に形を変えて捉えている。筆者はビグローが2002年に発表した潜水艦映画『K-19』(02)のプロモーションで彼女と出会う機会に恵まれたが、同作のカメラワークが『U・ボート』(81)に似た動きをしていることを指摘すると、「この作品を(ウォルフガング・)ペーターゼンのマスターピースと比較してくれるなんて光栄なこと。でもわたしは潜水艦映画を撮ったという意識はないの。『K-19』は、男は難しい局面でどういう選択をし、どういう生きざまを見せるべきか。それを問う作品として捉えてほしい」 と、あくまでテーマ尊重の姿勢を目の当たりにしたことが思い出される。そしてこの家族に対するテーマへの 象徴的なハッピーエンドを迎えるに大きな作用をなすのである。 『ニア・ダーク』は製作元であるラウレンティス・エンタテインメント・グループ (De Laurentiis Entertainment Group) が倒産してしまったため、宣伝展開が思うようにいかず、ビグローは単独監督デビューを華々しいヒットで飾ることはできなかった。しかし評論家や観客の評価は高く、今でも本作を彼女の最高傑作と讃える者は少なくない。 ■『エイリアン2』との関係性 ビグローのホラージャンルを借りた深いテーマへの追求は、巧妙なキャスティングの試みによっても支えられている。 本作にはヴァンパイア役の主要キャストに、ランス・ヘンリクセンやジャネット・ゴールドステイン、そしてビル・パクストンといった『エイリアン2』(86)に出演した俳優が顔を揃えている。当時、ヘンリクセンとパクストンは役作りのためにブートキャンプを組んだジェームズ・キャメロン監督のアプローチを通じ、チームのような関係になっていた。これが映画にいい影響を与えるのではとビグローはもくろみ、ユニークなヴァンパイア一味のキャラクターを彼らで作り上げたのだ。 そのため前述のキャスティングに関し「ビグロー監督は、キャメロンから具体的な示唆が与えられたのでは?」という噂も飛び交ったという。 しかし実際のところ、パクストンらが自主的に『ニア・ダーク』の脚本を読んで出演を希望。それが『エイリアン2』チームの再結集だと気づいたビグローが急きょキャメロンに連絡をとり、承諾を得たのが事の次第である。ビグローが実際にキャメロンと会ったのは、新人女警官とサイコキラーとの壮絶な闘いを描いた『ブルー・スチール』(90)の製作中で、主演のジェイミー・リー・カーティスと次回作『トゥルー・ライズ』(94)について話し合うため、キャメロン自身がその現場を訪れたときだ。そのとき二人は互いの創作意識や、緻密なビジュアルスケッチを自分で描く共通点に意気投合。急速に仲を深め、同作の完成後に結婚することとなる(1991年に離婚)。 そんな彼らの関係を示し、『ニア・ダーク』を補足する映像資料が、ビル・パクストンがボーカルを務めるニューウェイブバンド「マティーニ・ランチ」のプロモーションビデオ"Reach"(88)だ。 売春宿の女を訪ね、荒れた小さな西部の町にやってきたバイカーが、女性ばかりの賞金稼ぎに命を狙われるこのPV。監督したのはジェームズ・キャメロンで、本作は『ニア・ダーク』とほぼ同時期に制作されている。そうした経緯もあって、劇中、女ガンマンの一人として出演しているのがキャスリン・ビグローだ。他にもランス・ヘンリクセンやジャネット・ゴールドステインが顔を出しており、また『ニア・ダーク』に見られるウエスタンの様式はパクストンの進言が大きく作用したとされているが、これを見れば明らかだろう。『ニア・ダーク』を観た後に参照していただきたい。■ 『ニア・ダーク/月夜の出来事』© 1987 Near Dark Joint Venture
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PROGRAM/放送作品
ターミネーター2
[R-15]ターミネーター対ターミネーターの壮絶バトル!SFXアクション最高潮の第2作!
『タイタニック』『アバター』のジェームズ・キャメロン監督が放った大ヒット作!シュワルツェネッガー演じるT-800型ターミネーターが、液体金属でできた最強の敵T-1000型ターミネーターと対決する!
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PROGRAM/放送作品
(吹)ターミネーター:ニュー・フェイト
[PG12]サラ・コナーとT-800が再タッグ!ジェームズ・キャメロンが放つ『ターミネーター2』続編
シリーズ生みの親ジェームズ・キャメロンが製作・原案を務めた『ターミネーター2』の正統な続編。リンダ・ハミルトンがサラ・コナー役でシリーズに復帰し、“審判の日”を回避したはずの人類の驚くべき運命を描く。
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(吹)ターミネーター2
[R-15]ターミネーター対ターミネーターの壮絶バトル!SFXアクション最高潮の第2作!
『タイタニック』『アバター』のジェームズ・キャメロン監督が放った大ヒット作!シュワルツェネッガー演じるT-800型ターミネーターが、液体金属でできた最強の敵T-1000型ターミネーターと対決する!
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PROGRAM/放送作品
ターミネーター
[PG12]不滅の大人気シリーズ!『ターミネーター』の第1作目にして、最強の傑作映画!
『アバター』が話題のジェームズ・キャメロン監督の名を一躍世に知らしめ、アーノルド・シュワルツェネッガーの代表作ともなったタイムトラベルSFアクション。シリーズの原点となった記念碑的作品!