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PROGRAM/放送作品
ハロウィン KILLS
[R15+]殺人鬼ブギーマンは生きていた!ホラー映画の金字塔『ハロウィン』の正統な続編シリーズ第2作
ジョン・カーペンター監督のスラッシャーホラー『ハロウィン』の40年後を描いた2018年版の続編。1978年版の主役ジェイミー・リー・カーティスが三たび出演し、宿敵ブギーマンと壮絶な死闘を繰り広げる。
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COLUMN/コラム2023.12.25
霧の中から現れる怨霊の恐怖!巨匠J・カーペンターによるゴシック・ホラーの隠れた名作『ザ・フォッグ』
モダン・ホラー全盛の時代に登場したクラシカルな正統派ホラー 来るべき’80年代スラッシャー映画ブームの原点にして、’70年代モダン・ホラー映画の金字塔『ハロウィン』(’78)。僅か30万ドル強という低予算のインディペンデント映画だった同作は、しかし興行収入およそ7000万ドルという驚異的な数字を叩き出し、演出・脚本・音楽を手掛けたジョン・カーペンター監督は一躍ハリウッドの注目の的となる。 ’70年代は『悪魔のいけにえ』(’74)や『ゾンビ』(’78)など、従来ならドライブイン・シアターやグラインドハウスで上映されたようなインディーズ系ホラー映画が、メジャー級のメガヒットを飛ばすようになった時代。加えて、『エクソシスト』(’73)や『キャリー』(’76)など、現代社会の日常に潜む不条理な恐怖を描くモダン・ホラーが人気を博した時代でもあった。アメリカのどこにでもある平和な田舎町で、連続殺人鬼マイケル・マイヤーズが繰り広げる無差別な殺戮を描き、劇場公開時に米インディペンデント映画史上最高の興行成績を記録した『ハロウィン』は、そうした時代のトレンドを象徴するような作品だったと言えよう。この歴史的な偉業を成し遂げたカーペンター監督が、今度は一転して古式ゆかしいゴシック・ホラーの世界に挑んだ映画。それが本作『ザ・フォッグ』(’80)だった。 舞台はカリフォルニア北部の沿岸にある小さな田舎町アントニオ・ベイ。深夜の海岸では町の長老マッケン氏(ジョン・ハウスマン)が、焚火を囲んで子供たちに怪談話を聞かせている。あと5分で日付は1980年4月21日へと変わり、アントニオ・ベイは創立100周年を迎える。実はこの町には昔から不思議な言い伝えがあった。それはまさに今から100年前のこと。沖へ近づいた大型帆船エリザベス・デイン号は、海岸の焚火を灯台の光と間違えて難破し、乗組員は全員死亡してしまった。それ以来、アントニオ・ベイの沖合に濃い霧が立ち込めるたび、幽霊船となったエリザベス・デイン号が霧の中から姿を現すというのだ。 時間は午前1時。人々が寝静まった深夜のアントニオ・ベイで、建物が揺れたり自動車が勝手にクラクションを鳴らしたりなどの怪現象が一斉に発生。ちょうどその頃、ひとりで酒を飲んでいた地元教会のマローン神父(ハル・ホルブルック)は、壁の中に隠されていた一冊の本を発見する。それは亡き祖父が書き残した100年前の日記帳だった。そこに記されていたのはエリザベス・デイン号難破事件の真相。実は、船に乗っていたのはハンセン病を患った大富豪ブレイク氏と患者仲間たちで、彼らは当時まだ小さな集落に過ぎなかったアントニオ・ベイの近くにハンセン病患者の居留地を作ろうとしていたのだ。しかし、これに反対したマローン神父の祖父ら6名の集落代表は、わざと焚火を灯台の光と間違えて船が難破するよう仕向けてブレイク氏らを殺害。それがまさに100年前の4月21日、午前1時のことだったのだ。しかも、彼らは船に積まれた大量の金を盗み出し、それを元にしてアントニオ・ベイの町を創立したという。忌まわしい過去の歴史を初めて知ったマローン神父は思わず戦慄する。 その同じ時刻、灯台の上から番組を放送しているローカル・ラジオ局の女性DJ、スティーヴィ・ウェイン(エイドリアン・バーボー)は、いつも天気情報を提供してくれる気象台員ダン・オバノン(チャールズ・サイファーズ)から沖合に濃霧が発生したとの報告を受ける。なるほど、海岸へ向けて移動している霧峰が灯台からも確認できる。しかも、これが不思議なことに光って見えるのだ。いずれにしても、沖合の漁船に警戒を促さなくてはいけない。スティーヴィの濃霧注意報を聴いて周囲を確認する漁船シー・グラス号の乗組員たち。すると霧の中から幽霊船エリザベス・デイン号が出現し、ブレイク氏らの怨霊によって乗組員3人は皆殺しにされる。 やがて朝が訪れ、町では創立100周年を祝う記念行事の準備が進められる。イベントの主催を任された不動産業者キャシー(ジャネット・リー)は、秘書サンディ(ナンシー・ルーミス)を伴って町中を駆け回っている。一方、漁に出たまま戻らないシー・グラス号を心配した地元住民ニック・キャッスル(トム・アトキンス)は、仲良くなったヒッチハイカー女性エリザベス(ジェイミー・リー・カーティス)と一緒に捜索に乗り出す。ほどなくして海上を漂流するシー・グラス号の中から乗組員の遺体を発見。不可解なことに検視結果は溺死だった。それも1週間以上は経っているような状態だという。その頃、幼い息子アンディが海岸で拾った木の板を手にしたスティーヴィは、それが100年前に難破したエリザベス・デイン号の一部であることに気付く。板に浮かび上がる「6人に死を」という文字にショックを受けるスティーヴィ。いつしか夜の帳が下り、祝賀行事で盛り上がるアントニオ・ベイの町。そこへ不気味に光る濃霧が沖合より立ち込め、霧の中から現れた怨霊たちが町の人々を殺し始める…。 これはアメリカ版の『八つ墓村』!? これぞまさしくアメリカン・ゴシック!先祖の犯した忌まわしい罪に対する呪いが、100年後の子孫に降りかかる…という設定は、マリオ・バーヴァ監督の傑作『血ぬられた墓標』(’60)を例に出すまでもなく、古典的な怪談物語の王道と呼ぶべきものであろう。筆者は高校時代に都内の名画座で本作を初めて見たのだが、当時の感想は「なにこれ、『八つ墓村』じゃん!」だった(笑)。まあ、さすがに『八つ墓村』には怨霊など出てこないものの、しかし基本的なプロットはかなり似ているものがあるし、本作に登場する怨霊たちも『八つ墓村』で村人に殺された落ち武者のイメージを想起させる。この手の恐怖譚が大衆に好まれるのは、恐らく古今東西を問わないのだろう。そんな普遍性の高い「呪い」と「復讐」のゴースト・ストーリーを、古き良きアメリカの伝統を今に残す風光明媚な海辺の田舎町を舞台に描くことで、本作はエドガー・アラン・ポーやH・P・ラヴクラフトにも相通じるアメリカン・ゴシックの世界を作り上げているのだ。 脚本を手掛けたのはジョン・カーペンター監督と、彼の公私に渡るパートナーだったプロデューサーのデブラ・ヒル。2人は’77年に『ジョン・カーペンターの要塞警察』(’76)のプロモーションでイギリスを訪れた際、ストーンヘンジの周辺が濃い霧に包まれる様子を目の当たりにしたことから、「霧の中から何か恐ろしいものが現れる」という設定を思いついたのだという。スティーブン・キング原作の『ミスト』(’07)を彷彿とさせるアイディアだが、もちろん本作が元ネタというわけでは全くない。なにしろ、キングの原作小説が発表されたのは本作の劇場公開と同じ’80年である。そもそも、本作のはるか以前にも「霧の中から何か恐ろしいものが現れる」映画は存在した。それが「霧の中から巨大な目玉のお化けが現れる」という英国産ホラー『巨大目玉の怪獣~トロレンバーグの恐怖』(’58)。実際、カーペンター監督は『ザ・フォッグ』を作るにあたって同作を参考にしたと語っている。 ほかにも、ヴァル・リュートンが製作した『私はゾンビと歩いた!』(’43)や『吸血鬼ボボラカ』(’45)などのRKOホラーを筆頭に、2人が敬愛するクラシック・ホラーの数々からインスピレーションを得たというカーペンターとヒル。また、’50年代に人気を博したECコミックの恐怖漫画からも多大な影響を受けている。『ハロウィン』と一線を画すムード重視のゴシック・スタイルは、やはり初めから意図したものだったようだ。ただ、こうした古典回帰路線を意識し過ぎたせいで、実は最初に完成したラフカット版は怖くもなんともない退屈な仕上がりだったらしい。折しも、当時は特殊メイクを駆使した刺激的なスプラッター映画が台頭し始めていた時期。ホラー映画ファンはゴア(残酷描写)を求めていた。そこでカーペンターとヒルの2人は、改めて予算を増やして追加撮影を決行。怨霊たちが犠牲者を殺害する場面の直接的な残酷描写や、冒頭の焚火を囲んだプロローグなど、最終的に完成した本編の約3分の1が追加撮影シーンだという。 カーペンター・ファミリーで固められたスタッフ&キャスト陣 ヒロインのラジオDJ、スティーヴィ役に起用されたのは、当時カーペンター監督と新婚ホヤホヤだった女優エイドリアン・バーボー。もともとテレビの人気シットコム『Maude』(‘72~’78)のレギュラーとして注目された彼女は、『ハロウィン』よりも前に撮影されていたカーペンター監督のテレビ映画『姿なき脅迫』(’78)に出演。当時カーペンターはデブラ・ヒルと付き合っていたが、しかしこれがきっかけでバーボーと急接近し、『ハロウィン』の完成後にヒルと破局することになった。ハリウッド・ヒルのカーペンター宅で、彼とヒルの2人から別離を知らされたジェイミー・リー・カーティスは、ショックのあまりその場で号泣したそうだ。ただ、本人たちは十分に納得したうえでの結論だったらしく、実際にカーペンターとヒルは本作以降もビジネス・パートナーとして仕事を続けることになる。 そのジェイミー・リー・カーティスは、『ハロウィン』に続いてのカーペンター作品出演だ。先述した通り、記録的な大ヒットとなった『ハロウィン』。主演女優であるカーティスは「これで映画の仕事が次々舞い込む」と期待したそうだが、しかし実際はその反対だったらしい。要するに、『ハロウィン』以前と変わらず全く仕事が来なかったのだ。辛うじて、テレビドラマのゲスト出演で食いつなぐ日々。それを気の毒に思ったカーペンターが、彼女のためにヒッチハイカーのエリザベスという役柄を用意してくれたのだという。そのうえ母親のジャネット・リーまで起用。カーペンターとヒルのことを「私にとっては映画界の父親と母親」と呼ぶカーティスだが、文字通り家族ぐるみの親しい付き合いだったのだろう。 そもそもカーペンター監督は映画界の友人や仲間をとても大切にする人物。本作のキャストやスタッフも、その多くがカーペンター・ファミリーと呼ぶべき常連組で固められている。例えば、気象台員ダン役のチャールズ・サイファーズは『ハロウィン』のブラケット保安官役でお馴染み。『ジョン・カーペンターの要塞警察』で演じた死刑囚を護送する刑事役も印象深い。そういえば、『ハロウィン』の続編『ブギーマン』(’81)と『ハロウィンKILLS』(’21)でもブラケット保安官を演じていたっけ。不動産屋秘書サンディ役のナンシー・ルーミスも、『ハロウィン』のブラケット保安官の娘アニー役や『ジョン・カーペンターの要塞警察』の警察署の女性職員役で知られ、『ブギーマン』と『ハロウィン3』(’83)にも顔を出していた。ニック役のトム・アトキンスと漁師トミー役のジョージ・バック・フラワーは、本作をきっかけにカーペンター映画の常連となる。また、撮影監督のディーン・カンディも『ハロウィン』から『ゴーストハンターズ』(’86)に至るまで、カーペンター映画に欠かせないカメラマンだった。 さらに本作が興味深いのは、登場人物の役名にまで友人の名前が使われていること。トム・アトキンス演じるニック・キャッスルはカーペンターの学生時代からの大親友で、『ハロウィン』の初代マイケル・マイヤーズを演じたことでも有名な脚本家が元ネタだし、気象台員ダン・オバノンはカーペンターの処女作『ダーク・スター』(’74)や『エイリアン』(’79)でお馴染み脚本家、家政婦コービッツさんはテレビ映画『姿なき脅迫』で世話になった製作者リチャード・コービッツへのオマージュだ。また、漁師トミー・ウォーレスは数々のカーペンター作品で美術や編集などを手掛けた、幼馴染の映画監督トミー・リー・ウォーレスのこと。本作でも美術と編集を担当したウォーレスは、さらにブレイク氏の怨霊役を特殊メイク担当のロブ・ボッティンと2人で演じ分けている。ちなみに、女優ナンシー・ルーミスとウォーレスは当時夫婦で、劇中に出てくるサンディの家は2人が住んでいた自宅だという。 なお、『ジョン・カーペンターの要塞警察』の死刑囚ナポレオン・ウィルソン役で強烈な印象を残す俳優ダーウィン・ジョストンが、ドクター・ファイブスという名前の検視医役で登場するのだが、この役名はカルト映画『怪人ドクター・ファイブス』(’71)でヴィンセント・プライスが演じたマッド・ドクターのこと。伝説の映画製作者にしてオスカー俳優のジョン・ハウスマンが冒頭で演じるマッケン氏は、H・P・ラヴクラフトやスティーブン・キングにも影響を与えた怪奇小説家アーサー・マッケンから引用されている。また、ジョン・カーペンター自身も教会の用務員ベネット・トレイマー役でカメオ出演。この役名も実はカーペンターの学生時代の友人である同名脚本家から取られており、『ハロウィン』にもベン・トレイマーというキャラクターが出てくる。 かくして、本来は’79年のクリスマスシーズンに全米公開を目指していたものの、大幅な撮り直しをせねばならなくなったため、’80年1月に封切時期がずれ込んだ『ザ・フォッグ』。興行成績は前作『ハロウィン』に遠く及ばなかったとはいえ、それでも110万ドルの予算(+広告費300万ドル)に対して2000万ドル強の売り上げは十分に健闘したと言えよう。ただし、批評家からの評価は決して良いとは言えなかった。カーペンター監督自身も最近でこそ本作を「ちょっとした古典」と呼んでいるが、しかし公開当時はその出来栄えにかなり不満があったそうだし、ジェイミー・リー・カーティスも仕事のない時期にオファーしてくれたカーペンター監督に感謝しつつ、「個人的に好きな映画ではない」とハッキリ断言している。そんな殺生な…『ブギーマン』は良い映画だ、過小評価されていると言ってたのに!?と愚痴りたくなるってもんだが(笑)、まあ、確かに地味な映画ではある。しかし、あからさまなショック演出やスプラッターに頼ることなく、夜霧に包まれた田舎町の禍々しいムードを煽りながら、じわじわと恐怖を盛り上げていくカーペンターの演出は、それこそジャック・ターナーやロバート・シオドマク、マーク・ロブソンといったクラシック・ホラーの名匠たちにも引けを取らないだろう。もっと評価されて然るべき隠れた名作だと思う。■ 『ザ・フォッグ』© 1979 STUDIOCANAL
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PROGRAM/放送作品
(吹)ハロウィン KILLS
[R15+]殺人鬼ブギーマンは生きていた!ホラー映画の金字塔『ハロウィン』の正統な続編シリーズ第2作
ジョン・カーペンター監督のスラッシャーホラー『ハロウィン』の40年後を描いた2018年版の続編。1978年版の主役ジェイミー・リー・カーティスが三たび出演し、宿敵ブギーマンと壮絶な死闘を繰り広げる。
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COLUMN/コラム2022.11.30
ジョン・カーペンターが西部劇にオマージュを捧げたヴァンパイア・アクション!『ヴァンパイア/最期の聖戦』
大の西部劇ファンだったカーペンター 『ハロウィン』(’78)や『遊星からの物体X』(’82)などで知られるホラー&SF映画の巨匠ジョン・カーペンター。幼少期に映画館で見たSFホラー『遊星よりの物体X』(’51)に強い衝撃を受け、自分もああいう映画を作ってみたい!と感化されて映画監督を目指したという彼は、しかしその一方でサスペンスからコメディまで幅広いジャンルの映画をどん欲に吸収して育ったシネフィルでもあり、中でも「映画監督になった本当の理由は西部劇を撮ること」と発言したこともあるほど大の西部劇映画ファンだった。 実際、例えば『ジョン・カーペンターの要塞警察』(’76)がハワード・ホークス監督作『リオ・ブラボー』(’59)へのオマージュであることは有名な逸話だし、『ニューヨーク1997』(’81)や『ゴースト・ハンターズ』(’86)などでも西部劇映画からの影響が随所に散見される。ただ、本人が「誰も自分に西部劇を撮らせてくれない」とぼやいて(?)いたように、ホラー映画やSF映画のエキスパートというイメージが災いしたせいか、カーペンターに西部劇を撮らせようと考えるプロデューサーがついぞ現れなかったのである。もちろん、彼が頭角を現した’70年代末~’80年代の当時、既に西部劇というジャンル自体が衰退の一途を辿っていたという事情もあろう。そんな西部劇マニアのカーペンター監督が、十八番であるホラー映画に西部劇テイストを融合させてしまった作品。それがこの『ヴァンパイア/最後の聖戦』(’98)だった。 舞台はアメリカ南部のニューメキシコ州。とある寂れた田舎のあばら屋に、武器を手にした屈強な男たちが集まってくる。彼らの正体は吸血鬼ハンターの傭兵部隊。両親を吸血鬼に殺されたリーダーのジャック・クロウ(ジェームズ・ウッズ)は、バチカンが秘かに支援する吸血鬼ハンター組織スレイヤーズのメンバーとなり、部下を率いて全米各地の吸血鬼を討伐していたのである。あばら屋に潜んでいた吸血鬼集団を全滅させたスレイヤーズ。吸血鬼の巣窟に必ずいるはずのボスが不在なのは気になったものの、ひと仕事を終えた彼らはモーテルに娼婦たちを呼んで祝杯をあげる。 ところが、そこへ吸血鬼のボス、ヴァレック(トーマス・イアン・ハンター)が乱入。これまで見たこともないほど強力なパワーを持つヴァレクは、予期せぬ敵の来襲に混乱するスレイヤーズと娼婦たちを片っ端から皆殺しにしてしまう。辛うじて生き残ったのは、ジャックとその右腕トニー(ダニエル・ボールドウィン)、そしてヴァレックに血を吸われた娼婦カトリーナ(シェリル・リー)の3人だけだ。血を吸われた人間と吸血鬼はテレパシーでお互いに繋がる。仲間を殺された復讐に燃えるジャックは、ヴァレックをおびき寄せるエサとしてカトリーナを連れて脱出するのだった。 バチカン側の窓口であるアルバ枢機卿(マクシミリアン・シェル)と合流したジャックたち。そこで彼らは、スレイヤーズのヨーロッパ支部が全滅したことを知らされる。犯人はヴァレック。14世紀にプラハで生まれた彼は全ての吸血鬼のルーツ、つまり史上最初にして最強のヴァンパイアだったのだ。その彼がなぜ今、アメリカに出現したのか。カトリーナにヴァレックの動向を透視させたジャックは、彼がバチカンによって隠された伝説の十字架を探し求めていることを知る。アルバ枢機卿にチームの監視役を任されたアダム神父(ティム・ギニー)によると、その十字架を儀式に用いることで、明るい昼間でも吸血鬼が外を歩けるようになるらしい。そうなれば、ヴァレックは文字通り無敵となってしまう。なんとしてでも阻止せねばならない。すぐさま敵の行方を追うジャックだったが、しかし時すでに遅く、ヴァレックは十字架の隠し場所を突き止めていた…。 あのフランク・ダラボン監督もカメオ出演!? 原作はジョン・スティークレイの小説「ヴァンパイア・バスターズ」。トビー・フーパー監督の『スペースバンパイア』(’85)や『スペースインベーダー』(’86)で知られ、カーペンターがプロデュースした『フィラデルフィア・エクスペリメント』(’84)の原案にも参加したドン・ジャコビーが脚本を手掛けているが、主人公ジャックのキャラや基本設定のほかはだいぶ脚色されている。もともと本作は『ハイランダー 悪魔の戦士』(’86)のラッセル・マルケイ監督が演出する予定で、ドルフ・ラングレンも主演に決まっていたが、製作会社との対立でマルケイがプロジェクトを降板したことから、ジョン・カーペンターに白羽の矢が立ったという。ちなみに、マルケイ監督とラングレンは本作の代わりに『スナイパー/狙撃』(’96)でタッグを組んでいる。 当時のカーペンターは興行的な失敗が続いて、本人も引退を考えるほどキャリアに行き詰まっていた時期。起死回生として挑んだ『ニューヨーク1997』の続編『エスケープ・フロム・L.A.』(’96)も、莫大な予算をかけたにも関わらず結果はパッとしなかった。ただ、予てから西部劇とホラーの融合に興味を持っていた彼は、舞台がアメリカ南部で主人公は殺し屋という、まるで西部劇みたいな本作の設定に創作意欲を掻き立てられたようだ。結果的にこの目論見は大当たり。具体的な世界興収の数字は不明だが、本作はカーペンター監督にとって久々のヒット作となる。 あばら屋の前にスレイヤーズが集結する冒頭シーンの、ジャックとあばら屋の扉を交互に接写していく演出は、クローズアップ・ショットがトレードマークだったセルジオ・レオーネ監督作品へのオマージュ。口より先に手が出る粗暴なタフガイ・ヒーロー、ジャックのキャラクターは、ハワード・ホークス作品におけるジョン・ウェインをイメージしたという。主人公たちの別れを描いたクライマックスは、ホークス監督×ウェイン主演の名作『赤い河』(’48)にインスパイアされたそうだ。さらに、カーペンター監督自身の手掛けた音楽スコアは、いかにもアメリカ南部らしいカントリー&ウェスタンやブルースを基調としつつ、一部では『リオ・ブラボー』のディミトリ・ティオムキンの音楽も参考にしている。 ただし、映画全体としてはサム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』(’69)からの影響が濃厚。赤褐色を基調としたカラートーンやスタイリッシュなカメラワーク、ハードなバイオレンス描写はもちろんのこと、モーテルでのスレイヤーズ虐殺シーンをあえてスローモーションで見せるあたりなども『ワイルド・バンチ』っぽい。なお、通常の映画フィルムが毎秒24コマで再生されるのに対し、スローモーションは60コマとか72コマあたりが一般的なのだが、本作は34~36コマというイレギュラーなフレーム数を採用。この微妙なサジ加減が、大殺戮のパニックとアクションを際立たせている。ちなみに、娼婦役のエキストラにはロケ地ニューメキシコでスカウトしたストリッパーたちが混じっているそうだ。 吸血鬼ハンターと最強吸血鬼のバトルを軸としたプロットは非常にシンプル。残念ながら十字架もニンニクも全く効果なし、吸血鬼を殺すならば太陽のもとへ晒さねばならない、なので陽が沈んだ夜は非常に危険!という基本設定も単純明快で、古き良きB級西部劇映画のごとくアクションとガンプレイにフォーカスしたカーペンター監督の演出が活きている。ホラー映画ならではの血しぶき描写は控えめであるものの、ここぞという場面ではしっかりと人体破壊スプラッターも披露。吸血鬼がウィルス感染するという設定については、リチャード・マシスンの小説「アイ・アム・レジェンド」を元ネタにしたそうだ。カーペンター作品としては、全盛期だった80年代のような冴えこそ影を潜めているものの、それでも理屈抜きに楽しめるアクション・エンターテインメントに仕上がっている。 主人公ジャック・クロウを演じているのは、予てよりアクション映画のヒーローをやってみたかったというジェームズ・ウッズ。相棒トニーには当初アレック・ボールドウィンが指名されていたが、諸事情で出演が叶わなかったことから、本人から弟ダニエルを推薦されたらしい。ヒロインの娼婦カトリーナにはテレビ『ツイン・ピークス』のシェリル・リー。次第に吸血鬼へと変貌していく過程で、徐々に野獣本能に目覚めていく芝居がとても巧い。アルバ枢機卿にはオスカー俳優マクシミリアン・シェル。最強吸血鬼ヴァレック役のトーマス・イアン・グリフィスのロングヘア―はエクステンションだったそうだ。モーテルで殺されるスレイヤーズの中には、日系人俳優ケリー・ヒロユキ・タガワも含まれている。 ちなみに、モーテルを脱出したジャックたちは、たまたま通りがかったキャデラックを奪って逃走を続けるわけだが、このキャデラックのドライバー役で顔を出しているのがフランク・ダラボン。そう、『ショーシャンクの空に』(’94)や『グリーンマイル』(’99)の監督である。もともとホラー映画畑出身のダラボン監督はカーペンター監督とも親しく、どうしても本作に出演したいと懇願されたのだそうだ。■ 『ヴァンパイア/最期の聖戦』© 1998 LARGO ENTERTAINMENT., INC. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
ザ・フォッグ(1980) 【4Kレストア版】
不穏な霧に覆われた町で惨劇が起きる…鬼才ジョン・カーペンター監督がミステリアスな恐怖を紡ぐホラー
ジョン・カーペンター監督が『ハロウィン』で成功した後に手がけたホラー。猟奇殺人鬼が恐怖を生む『ハロウィン』とは一転し、一面を覆う霧で不気味なムードを盛り上げる。2005年にはリメイク版が製作された。
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COLUMN/コラム2020.02.01
—絶対悪を原子理論で立証する— 『パラダイム』
■暗黒の王子が“神に反するもの”を召喚する終末ホラー ルーミス司祭(ドナルド・プレザンス)は、ハワード・バイラック教授(ビクター・ウォン)と大学院生のグループに、廃墟となった聖ゴダード教会の地下にある謎の円柱の調査を依頼する。円柱の内側には緑色の液体が渦を巻き、それは日が経つにつれ、内部で拡がる活発的な動きを見せていた。しかも分析と同時に院生たちは、就寝中に悪夢に取り憑かれ、加えて教会の外ではホームレスの群衆が増大し、得体の知れない誘引力によって組織化していく——。 ジョン・カーペンター監督が1987年に発表した『パラダイム』は、同時代のロサンゼルスを舞台にしたバッドテイストな終末ホラーだ。監督のキャリア的には未知の地球外生命体による地球侵略を描いた『遊星からの物体X』(88)を嚆矢とし、クトゥルフ神話をベースとした怪異譚『マウス・オブ・マッドネス』(94)へと続く「黙示録3部作」の中間作品として、カルトな支持を得ている重要作である。 円柱の近くで見つかった古文書の解読を経て、ルーミスたちはその緑色の液体が“神に反するもの”の息子=暗黒の王子(原題の“Prince of Darkness”)であり、何千年もの間、教会によって封じ込められていた存在であることを明らかにする。いっぽうでその息子は鏡を通じ、父たる邪悪な反神(アンチ・ゴッド)を現実の世界に召喚しようとたくらみ、院生たちは一人ずつ、行動を支配されていくのだ。 本作ではイエス・キリストは実は地球外に存在し、反神について人類に警告するためにやってきたと解釈がなされている。だがイエスは十字架にかけられ、彼の弟子たちがその存在を円柱に封じ込め、キリスト教の教義にはその真実が隠されている……。そんな飛躍した宗教観もまた、本作を構成する興味深い要素といえるだろう。 しかし無神論者であるカーペンター自身は信仰に大きな関心を示しているわけではなく、映画の起草は、当時彼が物理学と原子理論を研究していたときに生まれのだと監督は語っている。 「ある種の究極の悪を生み出し、そこに宗教の考えを取り入れ、それらを物質や反物質の概念と組み合わせるのは興味深いことだと思ったんだ」 カーペンターは原子を構成する陽子や中性子、電子などそれぞれの素粒子に、性質を反させた「反粒子」があることを本作のアイディアの基幹としている。劇中における、神に対しての「反神」という設定がその最たるものだ。 脚本でクレジットされているマーティン・クォーターマスはカーペンター自身のペンネームで、これはイギリスの脚本家であるナイジェル・ニールと、彼が生み出した架空のキャラクター「バーナード・クォーターマス博士」に由来するものだ。ストーリーもニールの創作に関する要素を盛り込んでおり、『パラダイム』のプロットラインは、1967年の“Quatermass and the Pit”と非常に似ている。同作ではロンドン地下鉄の工事中、地中に埋もれていた宇宙カプセルが発掘され、それは人類が悪魔として認識する、火星の邪悪な存在だったというもの。それがひいては我々の起源に関する疑問を検証していく点で、『パラダイム』の良質なオマージュといえる。 マーティン・クォーターマスに関してカーペンターはあくまで他人であることを徹底しており、『パラダイム』Blu-rayソフトのオーディオコメンタリーの中で「個人的に親しい友人だが、アルコール中毒で業界を去ったと聞いたよ」とうそぶいている。しかし『パラダイム』の脚本へと発展するこの知見に満ちたアイディアは、20世紀フォックスで手がけたアクション大作『ゴーストハンターズ』(86)の興行的失敗によってハリウッドから締め出しをくらったカーペンターの創作意欲を活性化させ、インデペンデントを主戦場とするアライブ・ピクチャーズとの自由なクリエイティブ・コントロール権の締結を経て実現するものとなった。 このように『パラダイム』は純粋な悪の存在を理詰めで解釈すると同時に「我々の森羅万象についての理解は、じつはこの世界のほんの外殻にすぎないのでは?」ということを、先人へのオマージュを含め想像力豊かに示唆している。加えて秩序に対する我々の信念は、原子レベルで解読すれば簡単に崩壊することを言及してもいる。 しかし公開時の米ニューヨークタイムズ紙のレビューにおいて本作は「セリフに科学的な参考文献を詰め込みすぎ、映画は最終的な驚きに対して禁欲的だ」と評され、またワシントンポスト紙では「カーペンターは宗教の恐ろしさや悪の根源について何かを言っていると思っているのかもしれないが、結局は安っぽいスリルを求めているだけだ」となかなかに手厳しいレビューが載った。しかし後者の締めくくりはこうだ。 「だが彼がそれを提供しているからといって、映画が安いものになるわけではない」 この結びどおり、映画の前半は総毛がざわざわと逆立つほどに面白い。自然界が世界の混乱にいち早く反応するかのように、虫の群れが触媒となって不吉な展開を盛り上げる。と同時にゾンビのようなホームレスが教会の外に集まり、そして円柱の分析と古文書の解読によって夢の意味が明らかになるにつれ、いやがうえにも映画の緊張感は高まっていく。そして円柱の封印が破られ、多くの院生たちが闇に陥り、残された院生たちは教会から脱出する方法を模索し、悪夢が明らかにした世界救済の戦いを制しなければならないのである。 なによりこうしたフォーマットはカーペンター映画の典型的な「包囲下にあるグループの戦い」で、『ジョン・カーペンターの要塞警察』(76)や『遊星からの物体X』などの秀作に通底し、最も氏が得意とするものだ。すなわち本作をもって、カーペンター映画の極上の味を堪能できるだろう。 ■低予算をカバーするための効率化体制 『パラダイム』はわずか48日の撮影期間を経て完成へとこぎつけた。製作費は300万ドルと低予算だったため、とにかくカーペンターは効率化とインパクトを重んじ、気心の知れたキャストやスタッフを起用。自身の母校である南カリフォルニア大学をロケ地に用いたりと、映画学科の学生だった頃の気鋭的な回帰も兼ねている。またビクター・ウォン、デニス・ダンといった『ゴーストハンターズ』で起用した俳優を引き継いでオファーし、またドナルド・プレザンス(『ハロウィン』(78)『ニューヨーク1997』(81))など、かつて一緒に働いていた俳優を自作に呼び戻す形となった。 異色のキャストとして浮浪者のリーダー役にロックミュージシャンのアリス・クーパーが扮しているが、本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めたシェップ・ゴードンが彼のマネジャーで、当初は映画の音楽を担当するようクーパーに提案している。しかしカーペンターはクーパーのアーティストとしてのカリスマ性や人柄に惹かれ、彼を役者として起用。クーパーは自身のライブで用いていた「突き刺し装置」を映画に貸与し、それを彼が院生のエッチンソン(トム・ブレイ)を殺すシーンにおいて使用するなど、本編において多大な貢献をはたしている。 ■『パラダイム』のホームレス・ゾンビ役と突き刺し場面について語るアリス・クーパー 結果的に音楽は1983年の『クリスティーン』以降、カーペンターと数多くのスコアに共同で取り組んだアラン・ハワースが担当。エレクトリック・メロディ・スタジオ収録でこのスコアに臨んでいる。同スタジオは当時としては高度なMIDIシーケンシングと自動ミキシング機能を備えたマルチトラック・レコーディングを可能とし、カーペンターの独創的な音楽スタイルをサポートするのにうってつけだった。いつものカーペンター&ハワーズ節に加え、女性合唱のデジタルサンプルをサウンドパレットに追加したテーマ曲のインパクトは、この映画の存在とともに忘れがたいものとなっている。 そう、開巻から誰の耳にも聞こえるはずだ、暗黒の王子の胎動が……。■ 『パラダイム』© 1987 STUDIOCANAL
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PROGRAM/放送作品
クリスティーン
[PG-12]意志を持った車が大暴走!スティーヴン・キング原作&ジョン・カーペンター監督の衝撃ホラー
ホラーの巨匠ジョン・カーペンター監督が、ホラーの帝王スティーヴン・キングの同名小説を映画化。オーナーの心を蝕んで破滅に導く、魂の宿った恐怖の殺人クラシックカーの暴走を描く。
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PROGRAM/放送作品
ゼイリブ【4Kレストア版】
[R15+相当]異星人の侵略はひそかに進んでいた…鬼才ジョン・カーペンターが描く社会派SFホラー
サブリミナル効果を用いた異星人の侵略を通じてジョン・カーペンター監督が現代社会を風刺。主人公に扮するプロレスラーのロディ・パイパーと友人役キース・デヴィッドが延々と繰り広げる格闘シーンが迫力満点。
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PROGRAM/放送作品
ニューヨーク1997 【4Kレストア版】
大統領の命運は“犯罪の帝王”に託された!ジョン・カーペンター&カート・ラッセルが放つSFアクション
鬼才ジョン・カーペンター監督がニューヨーク全体を監獄にするという奇抜なアイデアを具現化した近未来SF。アイパッチ姿のシニカルなアンチヒーロー“スネーク”をカート・ラッセルがニヒルに魅せる。
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PROGRAM/放送作品
ゴースト・ハンターズ
チャイナタウンの地下迷宮を大冒険!鬼才ジョン・カーペンターがカンフーとファンタジーを融合した痛快SF
ジョン・カーペンター監督がカンフーや魔術などB級映画のエッセンスを詰め込んだカルトSF。善と悪のファンタジーバトルを絶妙なユーモアでテンポよく繰り広げる。個性的なモンスターたちのSFXも秀逸。