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PROGRAM/放送作品
レジェンド/光と闇の伝説
若き日のトム・クルーズのロマンティック美青年ぶりが輝く、異色の耽美系ファンタジー
リドリー・スコット監督×若き日のトム・クルーズのコンビによるファンタジー。劇中、自然の情景まで全てセットを作って撮影されており、絵本のようにメルヘンチックな独特の映像に仕上がっている。
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COLUMN/コラム2023.01.31
テレビ版の魅力を継承しつつ進化させた映画版の見どころをチェック!『チャーリーズ・エンジェル(2000)』
‘90年代後半から流行したテレビシリーズの映画版リメイク ‘90年代後半から’00年代にかけて、ハリウッドでは名作テレビドラマの映画版リメイクが流行った。それ以前にも、ブライアン・デ・パルマ監督の『アンタッチャブル』(’87)やトム・ハンクスとダン・エイクロイド主演の『ドラグネット 正義一直線』(’87)、ハリソン・フォード主演の『逃亡者』(’93)などのリメイク映画が存在したものの、大きなきっかけになったのはそのデ・パルマが手掛けた『スパイ大作戦』(‘66~’73)の映画版リメイク『ミッション:インポッシブル』(’96)であろう。シリーズ化もされた同作の大成功に倣って、『セイント』(’97)や『ロスト・イン・スペース』(’98)、『アベンジャーズ』(’98)、『ワイルド・ワイルド・ウエスト』(’99)、『アイ・スパイ』(’02)、『S.W.A.T.』(’03)、『スタスキー&ハッチ』(’04)、『奥さまは魔女』(’05)などなど、数多くの名作テレビドラマが劇場用映画として甦った。 それゆえ、当時「ハリウッドはネタが尽きた」などとメディアでも揶揄されたものだが、恐らく実際そうだったのだろう。ヒット・ポテンシャルの高い企画を常に求めている各映画会社にとって、既に知名度がある往年の名作テレビドラマの映画化は、一からストーリーやキャラクターを作る必要もないため、手軽に稼げる美味しいネタと考えられたのかもしれない。ただ、映画ファンならばご存知の通り、当時雨後の筍のごとく作られたそれらのリメイク映画の大半は、興行的にも批評的にも決して満足のいく成果を上げたとは言えなかった なにしろ、テレビドラマというのは登場人物とそれを演じるスターの魅力が命。だからこそ、視聴者は毎週の放送を楽しみにして待ってくれる。しかし、当然ながら映画版リメイクでは別のスターが演じることになるわけで、そうなると作品のイメージそのものが変わってしまう。オリジナルの知名度が高ければ高いほど、ファンの期待を裏切ってしまうリスクは高い。『ミッション:インポッシブル』の成功だって、あれはトム・クルーズという希代のスターの存在があってこそだ。そうした中にあって、その『ミッション:インポッシブル』に次ぐ大成功を収めたテレビドラマの映画版リメイクが、同じくシリーズ化もされた『チャーリーズ・エンジェル』(’00)だった。 ‘70年代だからこそ生まれたテレビ版『チャーリーズ・エンジェル』 オリジナルはもちろん、’70年代に世界中で一大旋風を巻き起こした大ヒット・ドラマ『地上最強の美女たち!チャーリーズ・エンジェル』(‘76~’81)。警察学校を卒業した元婦人警官ジル・モンロー(ファラ・フォーセット)にサブリナ・ダンカン(ケイト・ジャクソン)、ケリー・ギャレット(ジャクリン・スミス)の美女3人が、声だけで姿を一切見せない謎多き大富豪チャーリー・タウンセンド(ジョン・フォーサイス)の経営する探偵事務所に雇われ、ちょっとトボケたオジサン上司ボスレー(ジョン・ドイル)の指示のもと、依頼人から相談された様々な事件や謎を究明するべく潜入捜査を試みる。さながら女性トリオ版ジェームズ・ボンドである。 全盛期の平均視聴率25.8%と驚異的な数字を叩き出し、着せ替え人形からノベライズ本まで様々な関連グッズが売れまくったという本作。その最大の理由は、間違いなく主人公のエンジェルたちであった。中でも、ジル・モンロー役のファラ・フォーセットは’70年代を象徴する国民的なセックス・シンボルとなり、アメリカ中の女性がライオンのたてがみのような彼女のヘアスタイルを真似たとも言われる。番組とは直接関係がないものの、彼女の水着ポスターも600万枚以上を売り上げた。また、明るくて天然ボケ気味のカリフォルニア娘ジルに、気が強くてお転婆な良家の令嬢サブリナ、モデルのようにエレガントでフェミニンなケリーと、三者三様のユニークな個性もバランスが良かった。番組では定期的にメンバー交代が行われたものの、ジルの妹クリス・モンロー役のシェリル・ラッド、ティファニー・ウェルズ役のシェリー・ハック、ジュリー・ロジャーズ役のタニア・ロバーツと、交代メンバーたちもいずれ劣らぬ魅力の美女揃い。その全員が、当番組を機にハリウッドのスターダムを駆け上がった。それもまた稀有な現象だったと言えよう。 そんな美しきヒロインたちが、任務のために毎回様々なコスチュームを披露してくれるのも番組名物。特に、半ばお約束となったビキニの水着シーンを目当てに、番組を楽しんだ男性ファンも多かったようだ。ほかにも、露出度の高い大胆なパーティ・ドレスや、時には色っぽい着替えシーンまで登場することもあった。ご存知の通り、アメリカのテレビは性描写に対して非常に保守的であるため、おのずと当番組も少なからぬ批判を受けたそうだが、なにしろ当時はリベラルなフリーセックスの時代である。そんなアメリカ社会の自由な空気が、本作の人気を後押しした面も恐らくあっただろう。 時代と言えば、男性の助けを借りずに悪者と戦うことの出来る、強くてパワフルで聡明なヒロイン像を打ち立てたという点でも、本作はウーマンリブの波が押し寄せた’70年代に生まれるべくして生まれた番組だった。それ以前にも、例えばアン・フランシスがセクシーな黒のレザースーツで活躍する探偵ドラマ『ハニーにおまかせ』(‘65~’66)やステファニー・パワーズがキュートな女性エージェントを演じるスパイ・ドラマ『0022アンクルの女』(‘66~’67)、アンジー・ディッキンソンがタフでセクシーな女性警部ペッパー・アンダーソンを演じた犯罪ドラマ『女刑事ペッパー』(‘74~’78)など、自立した強いヒロインが活躍するアクション・ドラマは幾つか存在したものの、しかしいずれもピンチの際に彼女たちを助ける男性パートナーの存在があった。一応、この『チャリエン』でも男性上司ボスレーのバックアップはあるものの、しかし現場で頼りになるのは自分たちだけ。決して強い男性に頼ることはない。そういう意味でも本作は画期的だった。 映画版はオリジナルと地続きの続編だった!? かくして、’70年代の社会ムーブメントすらも体現した金字塔的ドラマを映画として復活させたのが、’00年公開の『チャーリーズ・エンジェル』。本作が数多のテレビドラマに比べてリメイク向きだったのは、登場人物やキャストが変わってもあまり違和感がないことだろう。つまり、謎の大富豪チャーリー・タウンセンドの探偵事務所に雇われた3人の美女が活躍する…という基本設定さえ押さえておけば、そのメンバーが入れ替わっても大して問題ないのだ。実際、テレビ版もメンバー交代を繰り返しながらシーズンを重ねたわけだし、シリーズの終了から20年近くも経っているわけだから、エンジェルたちも世代交代していると考えた方がむしろ自然である。幸い、このリメイク版ではチャーリー役にオリジナルのジョン・フォーサイスが再登板。なおさら、時代が変わって世代交代が進んだことに説得力が増す。ビル・マーレ―のボスレーはコードネームと理解すればよろしかろう(笑)。なので、これはテレビドラマの映画版リメイクというよりも、テレビドラマから地続きの映画版続編と捉えた方が正しいかもしれない。 そんな新世代のエンジェルたちが、キャメロン・ディアス演じるナタリー・クックにドリュー・バリモア演じるディラン・サンダース、そしてルーシー・リュー演じるアレックス・マンデイの3人だ。笑顔のキュートな天然ボケ気味のカリフォルニア娘ナタリー、反骨精神旺盛なおてんば娘のディラン、エレガントな女王様タイプのアレックスと、各人がテレビ版のジル、サブリナ、ケリーのイメージをそれとなく継承しつつ、一方で演じる女優たちの個性を存分に際立たせた独自のヒロイン像を打ち出している。’70年代のエンジェルたちがセクシーでグラマラスならば、’00年代のエンジェルたちはワイルドでクレイジー。当たり前のことだが、求められる理想の女性像も変わったのだ。 その点は、監督のMcG(マックジー)も十分に意識していたはずだ。「一般的なアクション映画における男女の役割を逆転させた」と監督が語っている通り、あらゆる場面で主導権を握るのはあくまでもエンジェルたち、つまり女性である。一応、ナタリーとアレックスにはボーイフレンドがいるものの、ハッキリ言って単なる添え物にしか過ぎない。もちろん、プロデューサーに名を連ねたドリュー・バリモアの意向もあっただろう。そもそも、本作の企画を最初に立ち上げたフラワー・フィルムズは、ドリュー・バリモアと親友ナンシー・ジュヴォネンが創設した製作会社。恐らく、女性へのエンパワメントという意図もあったに違いない。その方向性は、同じくフラワー・フィルムズが製作した3作目『チャーリーズ・エンジェル』(’19)でより明確なものとなる。 また、本作は香港映画でもお馴染みのワイヤー・アクションをふんだんに取り入れた点でも印象的だった。ちょうど当時のハリウッドは、ジャッキー・チェンやチョウ・ユンファ、ジョン・ウー監督ら香港映画の才能が次々と進出していた時期である。恐らくハリウッド映画で最初に香港のワイヤー・アクションを導入したのは『マトリックス』(’99)だと思うが、しかし王道的なアクション映画で本格的に取り入れたのは本作が初めてだったかもしれない。ジョン・ウー作品など香港映画のファンを自認するMcG監督は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ天地黎明』(’91)などで有名な武術監督ユエン・チョンヤンを香港から招へい。メインキャストたちは1日8時間、週5日間のカンフー・ブートキャンプを3カ月間みっちり続けたという。その甲斐あって、エンジェルたちのアクロバティックなアクションは実に見事な仕上がりだ。 一方、ストーリーは実にシンプルで単純明快である。新興ハイテク企業の創立者で天才エンジニアのエリック・ノックス(サム・ロックウェル)が誘拐され、共同経営者ヴィヴィアン(ケリー・リンチ)の依頼でエンジェルたちは捜査を開始。ライバル企業の社長コーウィン(ティム・カリー)とその手下の殺し屋・ヤセ男(クリスピン・グローヴァー)を怪しいと睨むも、実は全てエンジェルたちに近づくためノックスが仕組んだ狂言だった。その目的は、探偵事務所のボスであるチャーリーへの復讐。亡き父親がチャーリーのせいで殺されたと信じている彼は、謎に包まれたチャーリーの居場所を突き止めて抹殺するつもりだったのだ…! 実は、テレビ版にも似たようなストーリーのエピソードがある。それがシーズン1第5話「標的にされたエンジェル達」と、シーズン4第12話「チャーリー出動!孤島のエンジェル狩り」。どちらもチャーリーに恨みを持つ犯罪者がエンジェルたちの命を狙い、その住所すら誰も知らないチャーリーをおびき出して殺そうとする。具体的な設定や展開はだいぶ違うので、映画版がこれらのエピソードを下敷きにしたというわけではないが、もしかするとヒントくらいにはなったのではないかとも思う。 ちなみに、テレビ版「標的にされたエンジェル達」にはチャーリーの屋敷が出てくるのだが、これがまるでヒュー・ヘフナーのプレイボーイマンションみたい(笑)。そういえば、番組では声だけで後ろ姿しか登場しないチャーリーだが、いつも周囲にセクシーな若い美女をはべらせていたっけ。しかし、それから20年近く経った映画版のチャーリー宅は上品で落ち着いた雰囲気。やはり後ろ姿しか出てこない本人も、ひとりでのんびりとビーチを散歩している。年を取ってすっかり丸くなったようだ。 なお、本作にはテレビ版へ直接オマージュを捧げたシーンも存在する。それが、タイトルクレジットで登場する、囚人服を着たエンジェルたちが手錠に繋がれて逃亡するシーンだ。これはMcG監督が大好きだというシーズン1第4話「潜入!戦慄の女囚刑務所」からの引用。裏で人身売買を行っている刑務所にエンジェルたちが潜入するという、まるで’70年代にロジャー・コーマンが製作したB級女囚映画のようなお話だ。しかも、ゲストにはロジャー・コーマン映画の常連でもあったカルト女優メアリー・ウォロノフやクリスティナ・ハート、無名時代のキム・ベイシンガーも出ている。筆者もお気に入りのエピソードだ。その終盤で3人のエンジェルが手錠に繋がれたまま脱走を試みるのだが、映画版ではそのワンシーンを再現しているのだ。 ほかにも、『E.T.』(’82)や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(’85)、『フェリスはある朝突然に』(’86)など、大の映画マニアでもあるMcG監督が大好きな作品へのオマージュがそこかしこに盛りだくさん。ノックスが住んでいる近未来的なデザインの家はブライアン・デ・パルマ監督作『ボディ・ダブル』(’84)の再現だし、キャメロン・ディアスが華麗に舞い踊るドリーム・シークエンスはMGMミュージカルにインスパイアされたという。赤や青やグリーンの原色を大胆に使った色彩は、テレビ版シリーズのオープニング・シーンを彷彿とさせるが、同時に昔懐かしいテクニカラーへのオマージュでもある。「華やかで弾けていてカラフルで愉快な映画」を目指したというMcG監督だが、実際に目論見通りの理屈抜きで楽しい娯楽映画に仕上がった。この天衣無縫さが本作の最大の魅力かもしれない。■ 『チャーリーズ・エンジェル (2000) 』© 2000 Global Entertainment Productions GmbH & Co. Movie KG. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
チャーリーズ・エンジェル(2000)
とびきり美しくてタフな女探偵“エンジェル”たちが蘇る!伝説の人気TVシリーズを映画化
1976年に放送開始し日本でも人気を博したTVシリーズをCMや音楽ビデオの演出で鳴らしたマックGが初監督を務めて映画化。ワイヤーを駆使した華麗なバトルや、女探偵エンジェルたちのキュートな変装が楽しい。
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COLUMN/コラム2021.08.10
ジャンルを先行しすぎた不運のファンタジー『レジェンド/光と闇の伝説』
「この映画には石から引き抜いた剣も、火を吐くドラゴンも、ケルトの黄昏も存在しない。『レジェンド/光と闇の伝説』は「指輪物語」のような壮大なスケールのファンタジーではない。ニール・ジョーダンの『狼の血族』(84)のように、性欲を掻き立てるような作品だ」 ――リドリー・スコット ■ジャン・コクトーを目指す——リドリー・スコット版『美女と野獣』 人類が遭遇したことのない残酷異星生物の恐怖を描いたSFホラー『エイリアン』(79)や、退廃的な未来都市像でSF映画のイメージを一新させた『ブレードランナー』(82)など、今や古典として後世に影響を与えつづけている名編を、キャリア初期に手がけた監督リドリー・スコット。そんな彼が上記に次ぐ新作として臨んだのは、作り物ではない写実的なファンタジーへの着手だった。 「すべてのクエストファンタジーは、武器や超大国を手に入れるために、物語の主目的から逸脱するサイドクエストを持っており、それが複雑になりすぎる傾向がある」 こう監督が言及するように、長編映画4作目となる『レジェンド/光と闇の伝説』(以下:『レジェンド』)のストーリーは極めてシンプルなものだ。主人公の青年ジャック・オー・ザ・グリーンが、世界を闇で覆い尽くそうとしている帝王ダークネスのもとから、囚われの身となっている姫君リリーを救い出す冒険に出る。ドワーフやエルフ、そして妖精ら森の仲間たちと一緒に。 同作を創造するにあたり、スコットはこのベーシックな神話ロマンスを外殻としながら、当時主流だった『バンデットQ』(81)や『ダーク・クリスタル』(83)のようなポップクエストではない、バロック様式の装飾やゴシック的イメージを持つ重厚なものを目指した。これに適合するのは、監督自身が心酔していたジャン・コクトーの『美女と野獣』(46)で、スコットはコクトーのように、自ら美術や物語を総コントロールできる立場に置こうとしたのだ。そしてジャンルの代表作を目指すのではなく、おとぎ話に内在される寓話のように、ファンタジーに秘められた寓意を拡張させ、“その先にあるもの”の視覚化を標榜したのである。 そこで70年代に寓意に満ちた幻想小説を発表していたウィリアム・ヒョーツバーグに、監督は白羽の矢を立てた。二人は1973年に発表されたヒョーツバーグの小説“Symbiography”が、『ブレードランナー』のイメージソースのひとつとなっていることから接点を得ている。同小説は富裕層が他人の夢を見ながら人生を楽しむというディストピアをシニカルに描いたもので、ヒョーツバーグは誘惑に駆られて暗黒世界に堕ちるティーンの「純真さと汚れ」を性的アレゴリー(比喩)として転義させ、しっとりとエロティシズムを滲ませるなど、スコットの希求するオリジナル脚本を手がけた。 ■トム・クルーズを発見したコンセプト重視の配役 スコットは撮影に先立ち、脚本に忠実なキャスティングを考慮。加えて作品に現代的な動きを与えたいという理由から、フレッシュな人選を望んだ。主役のジャックには当時『卒業白書』(83)などのティーンムービーで頭角をあらわし、映画俳優としてスタート台に立ったばかりのトム・クルーズを起用。リリーには16歳のニューヨーカーである新人のミア・サラが選ばれた。監督はクルーズにフランソワ・トリュフォー監督の『野性の少年』(70)を鑑賞させ、野性的な身のこなしを会得するよう求め、彼は演技においてスコットの要望に精いっぱい応えている。 いっぽう本作の真の顔ともいえるダークネスには、イギリス人俳優のティム・カリーを起用。1975年の初公開以降、観客参加型のミュージカルとしてカルトな支持を得ている『ロッキー・ホラー・ショー』での、幻惑的かつ世界を見下すような瞳がオファーのポイントとなった。 また監督は『ブレードランナー』の特殊効果ショットに65mmフィルムを採用し、多重合成による画質の劣化を防いだように、本作では同様に大型フィルム規格のビスタビジョン(35mmフィルムを横に駆動させ、二倍の撮像を得る方式)を用い、俳優たちを任意のサイズに縮小して合成し、幻想をより現実的にする方法を考え出した。そのためダグラス・トランブル(『ブレードランナー』視覚効果監修)の嫡流でもあり、当時ビスタビジョン合成の追求者であったリチャード・エドランドにテスト撮影を依頼。残念ながら予算の都合で採用は叶わず、代わりにビリー・バーティやキーラン・シャー、アナベル・ランヨン、そして『ブリキの太鼓』(79)の印象的なドイツ人子役デビッド・ベネントといった小柄な俳優たちをアンサンブルキャストとして使う手段をとった(『レジェンド』の撮影フォーマットは35mm、上映プリントはアナモルフィックワイド)。 『レジェンド』の製作にあたって、ディズニーアニメのスタイルに影響を受けたスコットは、ディズニースタジオにプロジェクトを提出していた。撮影に巨額の予算を計上していたことと、加えてダークネスのイメージソースが『ファンタジア』(40)にあったことも要因のひとつである。だが物語のトーンが暗いという理由によってディズニーからは見送られ、プロデューサーであるアーノン・ミルチャンの尽力によって20世紀フォックスとユニバーサル・ピクチャーズの共同製作へと落ち着く。『ブレードランナー』に匹敵する製作費2450万ドルのリスクヘッジも兼ねた措置で、スコットの途方もない想像力を具現化するための頑強な下支えとなった。 この視覚アプローチへの徹底は、基本的なストーリーを伝えるために必要不可欠なものと第一義に考えられ、スコットとストーリーボード・アーティストのマーティン・アズベリーは411ページに及ぶ絵コンテを作成し、映像化可能な範囲をはるかに超える手の込んだタブローを量産した。またイギリスの挿絵画家アーサー・ラッカムの妖精絵画を参考にしたり、ファンタジー文学の古典「指輪物語」の挿絵で知られるアラン・リーをコンセプチュアル・デザイナーの要職に置いた(ノンクレジットだが、リーはいくつかのキャラクターの初期スケッチを残している)。 撮影は米カリフォルニア州のレッドウッド国立州立公園のような森林帯でのロケを検討したが、重度のコントロールフリークでもある監督は『エイリアン』のノストロモ号船内や『ブレードランナー』のロサンゼルス市街セットなどにならい、ロンドンにあるパインウッドスタジオの巨大な007ステージを撮影のメインにした。スコットは言う、 「私は観客の誰一人として、偽物を見ていると思わせたくなかったんだ」 そのためにプロダクション・デザイナーのアシェトン・ゴートン(『欲望』(53)『フランス軍中尉の女』(82))を招き入れたことは成果として大きかった。ゴートンはサウンドステージにおける撮影の落とし穴を熟知しており、スコットは彼を『エイリアン』で起用したがっていたが、満を持してそれがかなったのだ。ゴートン以下クルーはスタジオ内に実際に流れる川や10フィートの池を備えた森を生成し、生きている木や花を備えて独自の生態系を顕現。撮影の人工感を払拭するため自然光を生み出すための緻密なライティング設計をほどこした(それが後にスタジオセットの火災を招いてしまう)。独特だったのが羽毛や綿毛の飛散する空間表現で、スコット監督は後年『キングダム・オブ・ヘブン』(05)で雪を同じように舞わせて雰囲気のある景観を作り上げているが、この意匠は本作におけるゴートンの発案がベースとなっている。 ■究極の特殊メイク映画 そしてリドリー・スコットはリアイティの観点から、マペットやメカニカル・ギミックを避け、人物に特殊メイクをほどこして様々なクリーチャーを生み出した。それを担ったのが、特殊メイクの名手ロブ・ボッティンである。 ボッティンは特殊メイクを大々的に活用した人狼ホラー『ハウリング』(81)を終えた直後、スコットが『ブレードランナー』での作業について彼に連絡し接触をはかったが、そのときすでにキャリアの代表作となる『遊星からの物体X』(82)に没頭していたボッティンは参加を断念。スコットから別のプロジェクトとして『レジェンド』の脚本を受け取ったのだ。そして特殊メイク映画のマスターピースといえる『オズの魔法使』(39)のようなメイクのキャラクターを作成するチャンスに、クリエイターとして抗うことができなかったのである(余談だが、『レジェンド』の沼地に棲む緑色の老怪物メグ(ロバート・ピカード)は、西の悪い魔女のリミックスとして『オズの魔法使』のオマージュを含んでいる)。 そしてこのテリトリーにおいてもスコットのコントロールフリークぶりは発揮され、キャラクター創造に対して非常に貪欲だったとボッティンは証言している。 「例えばダークネスの部下であるブリックス(アリス・プレイテン)は、ザ・ローリング・ストーンズのキース・リチャーズのようなイメージを想定した。するとリドリーはキースをゴブリンとしてスケッチし、それをイメージの起点として使用したんだ」 そんな彼らの精魂込めたファンタジークリーチャーの開発を抜かりないものにするよう、『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』(83)で銀河皇帝のメイクを担当したニック・ダッドマンが、キャラクターを作成するためにイギリスに研究所を設立。本作において特殊メイクは大きな位置を占めていく。 クルーズとサラを除くすべての主要な登場人物は、毎朝ボッティンが率いる専門チームのもと、メイク室で何時間も過ごした。俳優一人に最低3人のメイクアップアーティストを要し、細かなアプライエンス(肉付け用のピース)を俳優の皮膚に何十も重ねて貼り付け、筋肉の動きに連動して細かな表情などが出るよう作り上げた。そのためメイク工程には3時間もかかり、なかでもダークネス役のティム・カリーは5時間も装着と格闘せねばならず、そのため彼はサウンドステージに到達する段階で疲労をあらわにしていた。しかし自分のメイク姿にアドレナリンを刺激され、苦痛なプロセスを忘れて演技に没頭したという。とはいえ撮影後のメイクはがしで、カリーは可溶性スピリッツガム(特殊メイク用接着剤)を溶かすために1時間以上も風呂につからされ、閉所恐怖症になってしまったという。 そんな苦労が報われ、ダークネスは同作のキービジュアルを担うキャラクターとなり、延いてはファンタジーデザインのアイコンとして引用されるほど象徴的な存在となっている。 ■『レジェンド』の遺したもの 1985年12月のイギリスを皮切りに、翌年4月にアメリカで公開された『レジェンド』は、2450万ドルの製作費に対して1500万ドルの総収益しか得ることができず、興行は惨敗に終わった。ターゲットを見誤ったテスト試写の不評を懸念し、125分から大幅な上映時間の短縮を余儀なくされたことや、米国市場に向けたバージョンは映像のルックに適合するよう、タンジェリン・ドリームによるまろやかなシンセサイザー音楽への差し替えが図られたりと、製作側の悪手が不振に拍車をかけたことは否めない(「ザ・シネマ」における放送はジェリー・ゴールドスミスが作曲を担当したヨーロッパ(オリジナル)バージョン)。 なにより最大の損失は監督の方向転換で、本作に全力を注いで成果を得られなかったスコットの落胆は大きく、以後、大がかりな視覚効果ジャンルから彼を離れさせてしまう。スコットが再びSFやファンタジーの世界に活路を見いだすのは、2012年製作のエイリアン前史『プロメテウス』まで27年もの時間を要することになる。 『レジェンド』の製作から36年。映画におけるデジタルの介入と発達は、自由なイメージの視覚化を大きく拡げ、「指輪物語」を原作とする『ロード・オブ・ザ・リング』トリロジー(01〜03)の実写映画化や、テレビドラマとして壮大なドラゴンストーリーを成立させた『ゲーム・オブ・スローンズ』(11〜19)など、ファンタジー映画興隆の一翼を担った。こうした路が開拓されるための轍を作り、またそれら以前に、アナログの製作状況下でファンタジーに挑んだ、リドリー・スコットの先進性と野心にあふれた挑戦に拍手を送りたい。 ちなみにジャックを演じたトム・クルーズは本作の撮影中、スコット監督から「弟に会ってやって欲しい。いま戦闘機の映画を準備している」と進言し、彼はその言葉にしたがい、リドリーの実弟である監督のトニー・スコットに会い、戦闘機パイロットを主人公とする青春映画への出演を快諾した。その作品こそが『トップガン』(86)であり、同作は彼を一躍トップ俳優へと押し上げた。クルーズにスター性を感じていたスコットの慧眼を示すエピソードであり、『レジェンド』の意義ある副産物としてここに付記しておきたい。■ 『レジェンド/光と闇の伝説』© 1985 Universal City Studios, Inc. All rights reserved.
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PROGRAM/放送作品
(吹)チャーリーズ・エンジェル(2000)
とびきり美しくてタフな女探偵“エンジェル”たちが蘇る!伝説の人気TVシリーズを映画化
1976年に放送開始し日本でも人気を博したTVシリーズをCMや音楽ビデオの演出で鳴らしたマックGが初監督を務めて映画化。ワイヤーを駆使した華麗なバトルや、女探偵エンジェルたちのキュートな変装が楽しい。
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PROGRAM/放送作品
(吹)レジェンド/光と闇の伝説 【日曜洋画劇場版】
若き日のトム・クルーズのロマンティック美青年ぶりが輝く、異色の耽美系ファンタジー
リドリー・スコット監督×若き日のトム・クルーズのコンビによるファンタジー。劇中、自然の情景まで全てセットを作って撮影されており、絵本のようにメルヘンチックな独特の映像に仕上がっている。
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PROGRAM/放送作品
ロッキー・ホラー・ショー
古き良きSF&怪奇映画のオマージュが満載!とびきりキッチュでゴキゲンなロック・ミュージカル
SF&怪奇映画にオマージュを捧げた人気ミュージカル舞台劇を映画化し、観客がコスプレし一緒に歌い踊る参加型ムービーとしてカルト人気を確立。若き日の名女優スーザン・サランドンのハジケっぷりも注目。
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PROGRAM/放送作品
タイムズ・スクエア
[PG12相当]音楽の力で結ばれた少女2人が自由を求めて街に飛び出す!’80年代を代表する青春映画
繊細な令嬢とミュージシャン志望のおてんば娘という自由を求める少女2人の友情と冒険が、反骨精神あふれるロックナンバーと絶妙にシンクロ。1980年当時の空気を写し取ったカルチャー描写にも注目。