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PROGRAM/放送作品
ドラゴンハート
SFXを駆使したリアルなドラゴンと騎士道の掟を守る騎士との友情を描いた冒険ファンタジー
『ワイルド・スピード』のロブ・コーエン監督が、『ジュラシック・パーク』の特殊視覚効果を手がけたSFX界屈指のILMと描く、ドラゴンと騎士の冒険ファンタジー。ショーン・コネリーのドラゴンの声も魅力的!
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COLUMN/コラム2019.08.30
ドラゴン・クリーチャー映画の技術史『ドラゴンハート』
■フルスケールモデルが主流だったドラゴンの創造 本稿では1996年にロブ・コーエン監督が手がけたファンタジー映画『ドラゴンハート』にちなみ、西洋を代表する空想の怪物「ドラゴン」が実写作品の中でどのように可視化されてきたのかを振り返り、その技術的手法と本作とを文脈づけていく。 映画におけるドラゴンの初登場は諸説あるが、代表的なものとして名匠フリッツ・ラングが手がけた独サイレント映画『ニーベルンゲン』(24)が挙げられるだろう。北欧神話とゲルマン民族説話をブレンドさせ、二部構成で映画化した本作において、英雄ジークフリートとドラゴンとの戦いが描写されている。その表現はフルスケールの着ぐるみに複数の役者が入り、可動部を内部で操作していくスタイルだが、ドイツの一大製作会社ウーファの当時の資本力を象徴する、大がかりでスペクタキュラーな画作りには誰もが瞠目させられるだろう。またロシアの英雄イリア・ムウロメツの活躍を描いた同国作品『豪勇イリヤ 巨竜と魔王征服』(56)に出てくる三つ首のドラゴンもフルスケールモデルで作られ、火炎放射器で火を吐くギミックが仕込まれている。他にもB級モンスター映画を量産したバート・I・ゴードンの『魔法の剣』(61)にもフルスケールのドラゴンが登場。あまり満足とはいえない動きを見せるが、本作のドラゴンも大型クリーチャーならではの醍醐味を堪能させてくれる。 こうしたフルスケールモデルはドラゴン描写の常道であるかのように受け継がれ、『未来世紀ブラジル』(85)『12モンキーズ』(96)の鬼才テリー・ギリアムが監督した中世コメディ『ジャバーウォッキー』(77)のドラゴンや、ミヒャエル・エンデ原作の児童ファンタジー『ネバーエンディング・ストーリー』(84)の白毛におおわれたファルコンなど、80年代初頭くらいまで比較的多く見ることができた。その後こうしたフルスケール効果は、体の一部をメカニカルパペットとして造形するなどパーツ的な活用へと縮小され、徐々に主流を外れていく。 またフルスケールモデルと並行してドラゴン描写を支えたのが、人形を一コマずつ動かして撮影するストップモーション・アニメーションである。同手法の第一人者であるレイ・ハリーハウゼンが手がけた『シンバッド七回目の航海』(58)に登場する無翼のドラゴンや、3台のカメラで撮影した映像を三面スクリーンに投影する「シネラマ」方式の劇映画『不思議な世界の物語』(62)においても、特撮の神様と謳われたジョージ・パル製作・監督のもと、ジム・ダンフォースら優れたモデルアニメーション作家たちが個性的なドラゴンをクリエイトしている。 ストップモーション・アニメーションはフルスケールでは難しい飛行描写や四足歩行の人間型でない動きを表現できるなど、この手法ならではの利点もある。しかし生物的リアリティという観点からは、どちらもやや画竜点睛を欠く印象は否めなかった。だが1981年、このストップモーション・アニメの手法を拡張させ、ドラゴンの描写に革命をおよぼす作品が登場する。それが『ドラゴンスレイヤー』である。 生贄の悪習を終わらせるべく、魔法使いとその弟子がドラゴン討伐をするこの映画には、生物学的な法則にのっとったリアルな動きのドラゴン「ヴァーミスラックス」が登場する。可動のミニチュアモデルを使用するところまでは従来どおりだが、モデルにロッド(支持棒)を取り付け、コマ撮りではなくモーション・コントロール・システムで動かすことで、モーションブラー(動きのぶれ)を発現させて動きを自然にしているのである。ストップモーション特有のカクカクした視覚現象を取り払ったその技法は「ゴーモーション」と名付けられ、架空の怪物に恐ろしいまでの現実感を付与させたのである。 本作以降、ドラゴンの基本的な容姿や動きの法則は、本作のヴァーミスラックスに準じたものと言っても大げさではない。例えばピーター・ジャクソン監督が手がけた『ホビット』三部作(12〜14)において、原作では細身の四つ足だった巨竜スマウグが二足型に改変されたのも、また最近の例として『ゴジラ/キング・オブ・モンスターズ』(19)に登場するキングギドラのクロールスタイルの動きも、全てが『ドラゴンスレイヤー』にその影響を感じることができる。 ■映画初となるCGドラゴンの登場 『ドラゴンハート』に登場するドラゴン「ドレイコ」は、そんな『ドラゴンスレイヤー』のクリエイターたちが生み出したドラゴンの進化系だ。先の『ドラゴンスレイヤー』でヴァーミスラックスの原型制作を担当したモデルアニメーターのフィル・ティペットがプロジェクトへと招かれ、よりリアリティを突き詰めるべく制作に乗り出したのである。 なによりドレイコは、CGによって創造された初のドラゴンとして特筆に値する。恐竜映画『ジュラシック・パーク』(93)が無機的な表現にとどまっていったCGアニメーションを生物表現へと発展させ、約6分間におよぶデジタル恐竜のショット群を作り出した。しかし『ドラゴンハート』はその4倍となる182ショット、約23分間に及ぶ登場場面を生み出し、しかもその製作費用だけで2200万ドルが費やされ、その額はドレイコの声を担当したショーン・コネリーの出演料をも凌駕する。 この『ドラゴンハート』の誕生によって、映画に登場するドラゴン映画は技術的な死角を克服し、神話的なモンスターがリアリティを伴って観客の眼前に迫るのを難しいものとはしなくなった。そして本作以降、ドラゴン・クリーチャー映画はその製作本数を大幅に増やすこととなる。しかもただ出てくるだけでなく、劇中における役割にも変化をもたらし、今となってはドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』(11〜19)のような、作品テーマの根幹に関わってくるような扱いにまで発展しているのだ。 ■技術の劣化を感じさせない物語 とはいえ、今の成熟したデジタル技術に目慣れた視点から見れば、ドレイコはテクスチャー(質感)の甘さや カメラムーブにマッチしきれていない合成処理におぼつかなさを覚えるだろう。全体的なルックは実写とアニメーションの中点に留まっており、現実にそこに存在するというリアリティはまだ完全には追いきれていない。 しかし『ドラゴンハート』は、CGキャラクターの生成に飛躍的な成果をもたらした作品として、ドラゴンという枠のみならず映画の歴史にそのタイトルを刻んでいる。技術の画期性は経年とともに薄れてきているが、それを1990年代に創り出すのは容易なことでなかったし、現在の観点や価値基準に照らし合わせて当時の技術や演出スタイルを批判するのはフェアではない。このコラムの冒頭で詳述した『ニーベルンゲン』のように、ベーシックではあるが表現の歩み出しとして圧倒的なインパクトを放っている。 なにより本作は、こうした経年とは関係なく、観る者を魅了するドラマがある。人間の王子を蘇らせるために、自らの心臓(ドラゴンハート)を与えたドレイコ。だが彼の心を共有した王子は残酷な暴君へと変貌し、ドレイコは人間への不信をつのらせていく。映画は彼がデニス・クエイド演じるドラゴンスレイヤーとの接触を経て、人間との関係を修復させ、そして未来に希望を託すのである。ドラゴンが人語を解し、会話するというユニークな設定。そしてその設定を活かしたドラマの妙。誰もその魅力を否定することはできない。 ちなみに監督のロブ・コーエンと、筆者は『ステルス』(05)の取材で会っている。そのとき彼に自分が『ドラゴンハート』のファンだと伝えると、 「あの映画のドレイコの飛翔シーンや、彼が吐く火球がもたらす爆発効果は、本作や『デイライト』そして『トリプルX』などに活かされている。なによりも自分がVFXを多用する作品のきっかけとなった映画だから、とても嬉しいよ」 と、取材時間がつきそうになるとメールアドレスを筆者に渡し「聞き足りないことがあればメールくれ」とまで言ってフォローしてくれた。そんな監督の思慮深さが、この作品を観ると併せて思い出されるのだ。■
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PROGRAM/放送作品
ブラス!
炭坑夫たちの生きる喜びと誇り、それは音楽!実在するブラスバンドの奇跡を基に描いた感動ドラマ
閉鎖へと追い込まれた炭坑街の希望となった実在の炭坑夫バンド“グライムソープ・コリアリー・バンド”がモデル。不況にあえぐ90年代イギリス社会をリアルに綴り、その苦難を乗り越える音楽の素晴らしさを伝える。
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COLUMN/コラム2013.12.01
2013年12月のシネマ・ソムリエ
■12月7日『インファナル・アフェア』 ハリウッド映画『ディパーテッド』元ネタとなった香港ノワールの傑作。警察からマフィアへ、マフィアから警察へ送り込まれた潜入者2人がたどる壮絶な運命を描く。 麻薬捜査のさなかにモールス信号や携帯を用いたスパイ戦の息づまる緊迫感! 濃密な心理サスペンスと重層的な人間ドラマを融合した映像世界は極めて完成度が高い。 現題の「無間道」とは“終わりなき地獄”の意味で、複数の主要人物が意外な形で死亡する展開が衝撃的。その根底に流れる東洋的な死生観が深い余韻を生み出している。 ■12月14日『ドーベルマン』 ドーベルマン”の異名を持つ凶悪犯罪者、ヤン率いる武装グループがパリに出現。彼らに翻弄された警察は、血も涙もない極悪警視クリスチーニに一味の撲滅を委ねる。 数々のCMや音楽クリップを手がけてきたオランダ出身のヤン・クーネン監督が放ったバイオレンス映画。イカれた悪と悪の抗争劇が疾風怒濤の勢いで展開していく。 日本製アニメを愛する気鋭監督がコミック調の映像とテクノ音楽を融合。観る者の好き嫌いが極端に分かれる怪作だが、その猥雑でアンモラルな世界は一見の価値あり。 ■12月21日『ブラス!』 炭鉱閉鎖問題に揺れる英国ヨークシャー州の町を舞台にしたヒューマン・ドラマ。英国映画ブームさなかの1997年に日本公開され、多くの観客の涙を誘った感動作である。 生活苦にあえぎながらも、頑固な指揮者のもとで活動を続けるブラスバンド団員たちの心意気を描出。痛烈な社会風刺とともに、人間臭いユーモアが映画を活気づける。 実在のグライムソープ・コリアリー・バンドが、「ダニー・ボーイ」などの挿入曲の演奏を担当。2011年に他界したP・ポスルスウェイトの名演技も観る者の胸を打つ ■12月28日『ロスト・アイズ』 ギジェルモ・デル・トロが製作を務めた恐怖映画。視覚障害を患う女性が姉の自殺の真相を探るうちに、自らも危機に陥っていく過程をミステリー仕立てで描き出す。 『永遠のこどもたち』の女優B・ルエダが徐々に視力を失っていく主人公フリアを熱演。その周辺に謎の人影を暗躍させ、観る者の不安を増幅させる演出が実に巧妙だ。 主人公の限られた視界を表現した映像も秀逸で、スペイン製スリラーのレベルの高さを再認識させられる。『裏窓』などの古典映画への目配せも盛り込まれた一作だ。 『インファナル・アフェア』© 2002 Media Asia Films (BVI) Ltd.All Right Reserved. 『ドーベルマン』©1997 Noe Peoductions - La Chauve - Souris - France 3 Cinema. 『ブラス!』©Channel Four Television Corporation and Miramax Film Corp.1996 All Rights Reserved. 『ロスト・アイズ』© Rodar y Rodar Cine y Television, S.L / A3 Films, 2010
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COLUMN/コラム2013.11.29
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年12月】招きネコ
今年亡くなったサッチャー首相が推進した痛みを伴う経済再生政策が行われた後の1990年代初頭のイギリスの炭鉱町のお話。今まで社会を支えてきた衰退産業である炭鉱は閉鎖に追い込まれ、炭鉱労働者たちは職を失おうとしている。すっかり活気を失った町で、彼らは誇りと生きる希望を取り戻すために炭鉱労働者の伝統あるブラスバンドで全英選手権優勝を目指す!どうにもならない現実の中で彼らを支える音楽の力と、仲間との友情に胸が熱くなる感動作です。実在の炭鉱バンド、グライムソープ・コリアリー・バンドをモデルにした実話の映画化ですが、この映画が描く世相や気分、そして人々の置かれた状況などは、雇用や市民の生活を激変させた経済改革、リーマンショック後の不況、そして3.11後の社会不安を経てきた今の日本とダブります。私がこの作品を見た97年は、まだまだ一億総中流と言われた幻想が生きていた時代。感動した大好きな映画ですが、それは遠いイギリスのお話でした。今、当時とは比べものにならないくらい切実にこの映画は胸に迫ります。どんな中でも希望を持つことの大切さ、人と人とのつながりの暖かさを描く映画は、今こそ見て欲しい作品です。 ©Channel Four Television Corporation and Miramax Film Corp.1996 All Rights Reserved.