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PROGRAM/放送作品
アトラクション 制圧
巨大宇宙船の墜落、異星人との三角関係…予想外のパニック劇を最新VFXで描くロシア製スペクタクルSF
『第9地区』『エリジウム』のVFXスタッフが参加し、巨大宇宙船の墜落やパワードスーツを装着した異星人のアクションをリアルに描写。人間の少女と異星人との間に芽生えるロマンスなどヒューマンドラマも濃密。
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COLUMN/コラム2020.09.07
ロシア産SF映画史上最大のヒットを記録したSFパニック大作『アトラクション 制圧』
ソビエト時代から連綿と受け継がれるSF映画の伝統近年、ロシア産のSF映画が徐々に注目を集めつつある。今年だけでも『ワールドエンド』(’19)に『アンチグラビティ』(’19)、そして『アトラクション 制圧』(’17)の続編である『アトラクション/侵略』(’20)などが相次いで日本へ上陸。かつては、ロシアのSF映画というとアンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』(’72)や『ストーカー』(’79)くらいしか思い浮かばない日本人も多かったと思うが、それももはや「今は昔の話」と呼ぶべきだろう。 こうしたロシア産SF映画のムーブメントは、恐らくティムール・ベクマンベトフ監督による『ナイト・ウォッチ』(’04)と『デイ・ウォッチ』(’06)の世界的なヒットがきっかけだったように思う。どちらもジャンル的にはファンタジーに分類される作品だが、しかしロシアでもハリウッドのようにVFXを多用したエンターテインメント映画が成立することを証明したことの意義は大きく、これ以降ロシアでも『プリズナー・オブ・パワー 囚われの惑星』(’08~’09)や『タイム・ジャンパー』(’08)とその続編『タイムソルジャー』(’10)、露米合作『ダーケストアワー 消滅』(’11)など、ハリウッド路線のSF映画が続々と作られるようになる。 ただ、振り返ればソビエト時代からロシアにはSF映画の長い伝統と歴史がある。その原点がフリッツ・ラングの『メトロポリス』(’27)や『月世界の女』(’29)を先駆けたSF映画の古典『アエリータ』(’24)。世界で初めて宇宙旅行をリアルに描いたとされる『宇宙飛行』(’35)も忘れてはならない。アレクサンドル・コズィリ&ミカイル・カリューコフ監督の『大宇宙基地』(’59)やパーヴェル・クルチャンツェフ監督の『火を噴く惑星』(’61)は、アメリカのB級映画製作者ロジャー・コーマンが追加撮影と再編集を施し、複数の全く違う映画へ変えてしまったことで有名だ。 また、ティーンエージャーたちが宇宙船に乗って銀河系へ冒険の旅に出る「モスクワ=カシオペア」(’74・日本未公開)とその続編「宇宙の十代たち」(’75・日本未公開)は、西側の特撮SFアドベンチャー映画を知らないソビエトの青少年にとって、いわば『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』みたいなものだったとも言えよう。他にも、エイリアンと人類のファースト・コンタクトを抒情的に描く『エバンズ博士の沈黙』(’74)は大人向けの優れたSF映画だったし、独特のシュールな世界観が強烈な印象を残す『不思議惑星キン・ザ・ザ』(’86)は日本でも大ヒットした。このように、かつてのロシアではタルコフスキー作品以外にもSF映画の製作が盛んだったのである。 しかし、ソビエト連邦の解体によってロシア経済が低迷した’90年代、制作コストのかかるSF映画は敬遠されるようになってしまう。いわば空白の時代だ。それだけに、’00年代半ば以降のロシア製SF映画の復権と台頭は素直に喜ばしいし、なにより伝統あるロシア映画界がいよいよハリウッドばりのSF大作映画を作るようになったことに感慨深いものがある。まあ、あくまでもまだ発展途上にあることは否めないため、どうしても大ヒットしたハリウッド映画のパクリみたいな作品は少なくないし、技術的に洗練されているとは言い難い部分も見受けられるが、しかしそこは実績を重ねるうちに成熟していくはずだ。そういう意味において、ロシアのSF映画史上最大の興行収入を稼いだ本作『アトラクション 制圧』は、ひとつのターニングポイントになった作品とも言えるだろう。あくまでもロシア的なものにこだわったストーリーと世界観舞台は現代のロシア。モスクワ郊外の北チェルタノヴォ地区では、人々が珍しい隕石雨の観測を心待ちにして大空を眺めている。ところが、その隕石雨の中には故障した宇宙船が紛れ込んでおり、そのことに気付いたロシア軍の迎撃機がミサイルを命中させたところ、宇宙船は住宅街に墜落して200人以上の住人が犠牲となってしまう。宇宙船から降り立ったのは未知のエイリアン。果たして、地球へ何をしにやって来たのか?エイリアンと対峙したロシア非常事態省のレベデフ大佐(オレグ・メンシコフ)は、少なくとも相手に攻撃する意思がないことから、無用の争いを避けるためにも戒厳令を敷いて事態を静観することを政府に進言する。 しかし、これに不満を隠せないのがレベデフ大佐の一人娘ユリア(イリーナ・スタルシェンバウム)。親友スヴェタを墜落事故で亡くした彼女は、その原因を作ったのがロシア軍側にあることも知らず、エイリアンが地球を侵略しに来たものと決めつけ復讐を決意する。恋人チョーマ(アレクサンドル・ペトロフ)とそのチンピラ仲間たちを集め、封鎖された事故現場へと忍び込んだユリアは、そこでエイリアンとばったり遭遇。驚いて転落しそうになった彼女をエイリアンが助けるものの、そうとは知らないチョーマたちは身代わりに転落したエイリアンの強化スーツを奪い去っていく。 一方、自分を助けるために重傷を負ったエイリアンを救出するユリア。ヘイコン(リナル・ムハメトフ)と名乗るエイリアンは人間とソックリで、しかも流暢なロシア語を話す。彼はたまたま事故で地球へ飛来しただけで、47光年先にある故郷の惑星へ戻ることを望んでいた。だが、そのためには現場からロシア軍が持ち去ったシルクという物体が必要だ。そこで、シルクを取り戻すべく力を貸すことにしたユリアは、やがて純粋で心優しいヘイコンと深く愛し合うようになる。だが、それを知って嫉妬の炎を燃やすチョーマは、一般大衆のエイリアンに対する恐怖心や復讐心を煽って自警団を組織し、宇宙船を破壊してヘイコンを亡き者にしようとする…というわけだ。ある日突然、空から巨大な宇宙船が地球へ飛来し、人類がパニックに陥るという侵略型SFのパターンを踏襲しつつ、実は友好的だったエイリアンの存在を通して、有史以来争いや殺し合いに明け暮れる人類の野蛮な愚かさが炙り出されていく。そうしたプロット自体は『地球が静止する日』(’51)の昔から使い古されてきたものだが、しかしそこへ未知なる他者へ対する不寛容や憎悪に煽られる大衆心理、盲目的な愛国心の危うさなど、昨今の国際情勢を取り巻く不穏な要素を散りばめることで、極めて現代的なSFドラマとして仕上げられていると言えよう。 基本的に原作物が多いロシア産SF映画にあって、本作は近年増えつつあるオリジナル・ストーリー物なのだが、それでも実は元ネタになった出来事がある。それが、’13年10月にモスクワ南部で起きた「ビリュリョーヴォ地区の騒乱」だ。工業地帯であるビリュリョーヴォ地区に暮らす25歳の若者が刺殺され、目撃された犯人が中央アジア系の移民であったことから、増加する一方の不法移民やそれを黙認する当局に対する地元住民の不満が爆発。大規模なデモは近隣都市へと飛び火し、ロシア人の若者と移民の間で暴力的な衝突まで発生した。フョードル・ボンダルチュク監督は本国公開時のインタビューで、「これは我々ロシア人全員に関係する問題を描いているからこそ、私の手で映画化しなくてはならないと思った」と語っているが、本作では現代ロシアに蔓延する深刻な民族対立を憂慮し、多様性のある成熟した社会の実現を願う意図があることは間違いないだろう。そういう意味で、現代的であると同時に非常に“ロシア的”なテーマを扱った映画でもある。 エイリアンの宇宙船や強化スーツの洗練された独特なデザインを含め、ロシア産SF映画がたびたびハリウッド映画の物真似と揶揄されがちだからこそ、なるべく“ロシア的”であることにこだわったというボンダルチュク監督。ソビエト時代の国民的な俳優・監督だったセルゲイ・ボンダルチュクを父親に持つ彼は、ロシアを代表するSF作家ストルガツキー兄弟の小説を映画化したSF超大作『プリズナー・オブ・パワー 囚われの惑星』も手掛けているが、恐らく本作においては従来のハリウッド的なるものと決別した、よりロシア映画らしいSFエンターテインメントの世界を模索したのかもしれない。先述したように、本国では歴史的な大ヒットを記録した金字塔的な映画だが、ここからロシア産SF映画がどのように発展していくのか要注目だ。 ちなみに、ロシア映画ファンにとって興味深いのは、チョーマ役のアレクサンドル・ペトロフとレベデフ大佐役のオレグ・メンシコフの顔合わせであろう。人気の伝奇ホラー・ファンタジー『魔界探偵ゴーゴリ』(’17~’18)シリーズで、それぞれ若き日の文豪ニコライ・ゴーゴリとその相棒グロー捜査官を演じた名コンビ。ペトロフは現在ロシアで最も売れている若手俳優のひとりで、リュック・ベッソン監督の『ANNA/アナ』(’19)ではヒロインのダメ亭主を演じていた。一方のメンシニコフは巨匠ニキータ・ミハルコフの作品に欠かせない名優で、中でも『太陽に灼かれて』(’94)に始まる「ナージャ三部作」のKGB幹部ドミートリ役で有名だ。■『アトラクション 制圧』(C) Art Pictures Studio
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PROGRAM/放送作品
アトラクション 侵略
異星人がついに本格的に地球を侵略!前作からさらにスケールを増したロシア発SFアクション大作の続編
2017年にロシアでSF映画史上最大のヒットを記録した『アトラクション 制圧』の続編。異星人の侵略によって巻き起こる、スケール満点のディザスター描写に息を呑む。前作の主要キャストが続投している。
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COLUMN/コラム2017.10.05
「ロシアSFアクション大作」を開拓した記念碑的作品『プリズナー・オブ・パワー 囚われの惑星』〜10月10日(火)ほか
■ロシア映画史上最大規模のSFファンタジー ロシアのSF映画で即座に思い浮かぶ作品というと、未だにアンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』(72)や『ストーカー』(80)あたりが、日本人の一般的認識として幅を利かせているような気がしてならない。もちろん、これらが歴史的名作であることは言を俟たないが、我が国におけるロシア映画の市場が先細りしている影響もあって、最近の作品があまり視野に入ってこないのも事実だ。 しかし2000年代を境に、ロシアではハリウッドスタイルのスケールの大きな映画が興隆を成し、SFジャンルも観念的でアート志向なものばかりではなく、エンタテインメントに徹した作品が量産されている。 こうしたロシアの映画事情の様変わりは、2004年製作のダークファンタジー『ナイト・ウォッチ』に端を発する。同作を手がけた監督ティムール・ベクマンベトフが、当時小さく散らばっていたロシア国内の特殊効果スタジオをひとつにまとめ、大型の作品にも対応できる製作体制を整えた。これはジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』(77)を手がけ、視覚効果スタジオの大手であるILM(インダストリアル・ライト&マジック)設立をうながし、後のSPFX映画のムーブメントを発生させたのと同じ流れである。つまり映画技術のインフラ整理によって、ロシアは「エンタテインメント大作」としてのSF映画の開発に勢いをつけたのだ。(『ナイト・ウォッチ』『デイ・ウォッチ』に関しては、今冬の「シネマ解放区」にて解説の予定) この『プリズナー・オブ・パワー』も、日本円にして約37億という、当時のロシア映画史上最高額の製作費をかけた大作SFとして公開され、国内で20億円という興行成績を記録している。「それ、赤字じゃないのか?」と思われるだろうが、本作は全世界展開を視野に入れた作りをほどこし、さらに21億円という外貨を稼いでいるのである。1シークエンスにつき1セットという豪華なセット撮影や、完成度の高いCGに支えられたVFXショットの数々。バルクールを取り入れた肉体アクションはハリウッドにも劣らぬものとして観る者の目を奪い、また音楽も当初は『ダークナイト』『パイレーツ・カリビアン』シリーズなどハリウッドアクションスコアの巨匠ハンス・ジマーが担当する予定だったというから、世界市場に打って出ようとする、その本気の度合いがうかがえるだろう。 なにより専制君主の強大な権力を打ち負かそうとする自由な主人公は、ハリウッド映画のヒーローキャラクターを彷彿とさせるものだ。この明快さこそが、本作を「ロシアSFアクション大作」たらしめる牽引力といっていい。 ■ストルガツキー兄弟の小説に最も忠実な映画化作品 しかし意外にも、この『プリズナー・オブ・パワー』、物語に関してはロシアらしいメンタリティを強く放っている。原作は同国を代表するSF文学の大家・アルカージー&ボリス・ストルガツキーの手による長編小説『収容所惑星』。ストルガツキー兄弟は前述したタルコフスキーの『ストーカー』や、2015年の「キネマ旬報」外国映画ベスト・テンで6位に選出されたアレクセイ・ゲルマン監督の『神々のたそがれ』(13)など、映画との関わりは深い。 ただ『ストーカー』や『神々のたそがれ』が原作と大きく異なるのに比べ、『プリズナー・オブ・パワー』は意外にも、原作にほぼ忠実な形で映画化がなされている。こうした大作ともなれば、原作は名義貸し程度であるかのごとく大幅に改変されるが、ストルガツキー原作映画の中でも、最もその世界観に肉薄したものとなっているのだ。 とはいえ、原作と異なる点もなくはない。たとえば主人公マクシム(ワシリー・ステパノフ)の容姿は、映画では青い目をしたブロンド髪だが、原作では黒い瞳のブルネットだ。そして彼の乗る宇宙船は、映画だと小惑星との衝突によって破壊されるが、原作では自動対空砲で撃墜されている。またマクシムは惑星サラクシの住人の言葉を自動翻訳機を通じて理解するが、原作では徐々に現地語を覚えていくのである。 他にもクライマックスでは、国家検察官ユニーク(フョードル・ホンダルチュク)が責任を回避するため自ら死を選ぶが、原作における彼の最後は不明のままになっているし、マクシムと影の統治者ストランニック(アレクセイ・セレブリャコフ/原作では〈遍歴者〉と呼称)との壮絶な一騎打ちも、原作だと淡白な話し合いにとどまり、過激なアクション展開は映画の中だけのことだ。もっとも、これらあくまでディテールの差異にすぎず、物語を大きく激変るようなアレンジではない。 それよりも原作に忠実であるがゆえに、映画も出版当時の社会主義を批判する内容となっているところに注目すべきだろう。マクシムが敵対する惑星サラクシは、政府が「防衛塔」と呼ぶ電波塔からコントロール波を流し、国民を従属させている全体主義国家だ。彼らの服装にはナチス・ドイツのような意匠が見られるが、根底にあるのは社会主義国時代のソ連の姿である。 ロシアNIS貿易会の機関紙「ロシアNIS調査月報」の連載ページ「シネマ見比べ隊」で、記事担当者である佐藤千登勢は、 「保守派政党である統一ロシアの党員である監督が、面と向かってロシア批判をするはずがない。なので惑星サラクシの独裁体制をナチス・ドイツ的に描くことで、反体制的なメッセージをカモフラージュしているのではないか?」 といった旨の考察をしている。確かにそのような考えも成り立つが、この映画の場合は単純に、ストランニックの「ドイツ語をしゃべる地球人」というキャラクター設定にリンクさせたり、また世界展開を視野に入れた作りのため、わかりやすい悪役像としてナチス・ドイツの意匠が用いられたのだと考えられる。 ちなみにこの『プリズナー・オブ・パワー』の監督を務めたフョードル・ホンダルチュクは、名作『戦争と平和』(66)『ネレトバの戦い』(69)で知られる俳優セルゲイ・ボンダルチュクの息子で、姉は『惑星ソラリス』でケルヴィン博士の妻を演じた女優、ナタリヤ・ボンダルチュクという芸能一家の出身である。『プリズナー~』以降は、スターリングラード攻防戦をソ連軍の視点から描いた戦争アクション『スターリングラード 史上最大の市街戦』(13)など、統一ロシア党員らしい作品を手がけたりしているが、『パシフィック・リム』(12)のキービジュアルを模したポスターであらぬ誤解を受けた戦争ファンタジー『オーガストウォーズ』(12)や、今年公開された侵略SF『アトラクション 制圧』など、ロシア映画のエンタテインメント大作化に寄与している監督だ。自身の政治的スタンスがいかにあれ、今いちばん評価が待たれる作家といっていいだろう。 ■「インターナショナル版」と「全長版」との違い ところで、この『プリズナー・オブ・パワー』には「インターナショナル版」と、ロシアで公開された「全長版」がある。日本で公開されたのは前者で、ザ・シネマで放送されるバージョンもそれに準ずる。後者は第一章『Обитаемый остров(有人島)』と第二章『Схватка(武力衝突)』の二部からなる構成なのだが、上映時間の総計は217分と「インターナショナル版」より97分も長い。 こう触れると、やはり気になるのは後者の存在だろう。なので両バージョンの相違をここで具体的に記したいのだが、とにかく当該箇所が多いので、大まかに触れるだけに留めておく。なんせ開巻、いきなりマクシムが惑星に不時着するオープニングからして縮められているし、他にも「全長版」はマクシムが牢獄で再会するゼフ(セルゲイ・ガルマッシュ)が収監される経緯や、ストランニックを筆頭とする高官のいびつな人間関係、あるいは政府軍の軍人だったガイ(ピョートル・フョードロフ)が支配の陰謀を知り、マクシムと共に戦おうとする改心のプロセスなどがスムーズに描かれている。加えて同バージョンでは、マクシムとガイの妹ラダ(ユーリヤ・スニギル)が互いに心を通わせていくところを丁寧に描き、捕虜となった彼女を救う意味がきちんと納得できる編集になっているのだが、「インターナショナル版」ではそのあたりが完全に削り取られ、唐突感の否めない構成になってしまっている。 他にも政府がテレビや新聞などメディア報道を徹底的にコントロールし、厳しい統制をおこなっている描写も広範囲にわたって削られているし、ミサイル攻撃を受けたマクシムとガイが政府の潜水艦に潜入し、軍のミュータント虐待を知る重要なシーンも「インターナショナル版」にはない。 このように列記していくと、「インターナショナル版」はドラマ部分をタイトにまとめ、アクションシーンに重点を置いたバージョンのように感じるだろう。しかし、そのアクションシーンも実のところ、かなり刈り込まれているのだ。特にカフェの出口でマキシムが暴漢に襲撃され、それを見事に返り討ちにするアクションシーンは、2009年の「ロシアMTVムービーアワード」で「ベストアクション賞」を獲た名場面でありながら、後半部がかなり短縮されているのだ。加えてクライマックスの凄絶な戦車戦も「全長版」より3分短かくされ、その編集の暴威はとどまるところをしらない。 放送に合わせたコラムなので、本来ならば「無駄な部分を削ぎ落としたぶん、すっきりして見やすい」とフォローしたいところだが、作品を深掘りしていく「シネマ解放区」の趣旨からすれば、正直「インターナショナル版」は短くなってしまったことで、かえって映画が分かりにくくなっている点を主張せねばならない。現状では権利の関係もあって「全長版」の放送は難しいようだが、いずれは朗報を伝えることができるかもしれない。ともあれ、ひとまず今回放送の「インターナショナル版」に優位性を指摘するならば、日本ではDVD(SD画質)でしかリリースされていない本作を、HDで観られる点にある。ハリウッド映画に拮抗するそのゴージャスな作りは、HDで観てこそ価値を放つ。その満足感たるや『惑星ソラリス』で時代が止まっていた人の、ロシア製SF映画に対する認識を一新させるに違いない。 ちなみに「全長版」にはないが「インターナショナル版」にある要素も存在しており、それがアヴァンタイトルを経て登場する、コミック調のオープニング・クレジットだ。擬音に日本語のカタカナ表記が使われているのと、ラダが日本のアニメやコミックに登場しそうな巨乳美少女に描かれているなど、いかにも海外市場に目配りしたかのような映像だが、そうではない。じつは本作、映画化に合わせてコミックスが刊行され、いわゆるメディアミックス的な展開が図られている。つまりあのオープニングタイトルの絵は、本作のコミック版なのである。序文を原作者のボリス・ストルガツキーが手がけ、映画以上に原作の精神を受け継いでいるとのこと。機会があれば、そのコミックス版も読んでみたいものだ。■ ©OOO “BUSSINES CONTACT”.2010
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PROGRAM/放送作品
(吹)アトラクション 侵略
異星人がついに本格的に地球を侵略!前作からさらにスケールを増したロシア発SFアクション大作の続編
2017年にロシアでSF映画史上最大のヒットを記録した『アトラクション 制圧』の続編。異星人の侵略によって巻き起こる、スケール満点のディザスター描写に息を呑む。前作の主要キャストが続投している。
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(吹)アトラクション 制圧
巨大宇宙船の墜落、異星人との三角関係…予想外のパニック劇を最新VFXで描くロシア製スペクタクルSF
『第9地区』『エリジウム』のVFXスタッフが参加し、巨大宇宙船の墜落やパワードスーツを装着した異星人のアクションをリアルに描写。人間の少女と異星人との間に芽生えるロマンスなどヒューマンドラマも濃密。
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PROGRAM/放送作品
プリズナー・オブ・パワー 囚われの惑星
映像化不可能と言われたロシアSF小説を映画化した超大作!空前のスケールに息を呑む近未来SFアクション
ストルガツキー兄弟のSF小説「収容所惑星」を映画化。映像化不可能と言われた壮大な世界観を、近未来的な独裁国家、壮絶な戦場バトルを織り交ぜて描き出す。2部作を1本に再編集したインターナショナル版で放送。