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PROGRAM/放送作品
明日に処刑を…
マーティン・スコセッシの記念すべき長編デビュー作!名匠の片鱗が見える性と暴力の強盗ロードムービー
ロジャー・コーマン製作の低予算映画でマーティン・スコセッシ監督の長編デビュー作。バイオレンスとエロスを売りにした典型的なB級犯罪劇の随所に、後年の名作群につながるスコセッシの作家性が伺えて興味深い。
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COLUMN/コラム2023.12.29
鮮やかに遂げた、ストリート・レース映画の復権 —『ワイルド・スピード』
◆誰もが知るミッション遂行シリーズの“起点” 米秘密機関の特命を受け、国益をおびやかす組織や治安を乱す敵の行動を、車を駆使して阻止するアクション映画シリーズ『ワイルド・スピード』。共にミッションを遂行する仲間を「ファミリー」と称し、なによりチューンドカーによる物理的法則を無視したアクション描写など、マイルドヤンキーをたぎらせる要素に満ちたこのフランチャイズは、2024年の現在までに10本のシリーズ正編と1本のスピンオフ作品を生み、世界じゅうのファンに支持されている。 ハリウッド映画の数ある長寿シリーズの中で、もっとも理屈を必要としないパッショナブルな臭気を放ち、また死闘を繰り広げた相手が味方となって参入したり、次回作へと続くドラマの引きの強さなど、いずれも我が国の「少年マンガ」を思わす属性に鼻腔をくすぐられる人も少なくないだろう。 とりわけこのシリーズが持つ、少年マンガのテイストに近い要素は、ゆったりと大きな路線変更のカーブを描きながら、現在のスタイルを形成している点ではないだろうか。柔道マンガが野球マンガになった『ドカベン』や、コメディがシリアス格闘ものへと変遷していった『キン肉マン』など、長期にわたり人気を博したコミックスに同様のケースが見られる。『ワイスピ』(『ワイルド・スピード』の略称にして愛称)もそれらと同じく、2001年公開の1作目は現在と異なるジャンルに足場を置いていたのだ。 ◆道を切り拓いたロジャー・コーマンへのリスペクト 段取り的だが、ここで本作のストーリーを概説しておきたい。高額な積荷を狙い、ロサンゼルスでチューンドカーを使ったトラック・ジャックが頻発。一連の犯行にはストリート・レース界のキング、ドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)が関与していると睨んだLAPDのブライアン・オコナー(ポール・ウォーカー)は、ドミニクとの接触を図るためにレーシングクルーとして潜入捜査に踏み込む。だがレースを経て彼との仲間意識を強めたブライアンは、自分の忠誠心がどこにあるかというアイデンティティ崩壊へと追い詰められていく。 こうしたストーリーからも明らかなように、本作はもともと公道で違法にレースをおこなう「ストリート・レース」というアウトロー文化を描いた作品だ。映画と同レースとの関係は古いもので、1947年に公開された『The Devil on Wheels』(日本未公開)を起点に40年代後半から70年代のハリウッドで量産され、メジャーなところではジェームズ・ディーン出演による『理由なき反抗』(1955)あたりを連想する人は多いだろう。 特にこのジャンルに関し、独自の嗅覚でもって量産展開を果たしたのは、B級映画の帝王と呼ばれた映画監督/プロデューサーのロジャー・コーマンだ。彼は若者の反抗心がエクスプロイテーション・シネマ(搾取映画)の題材として興行的価値を有すると判断し、ストリート・レースの血統を持つ『速き者、激しき者』(1954)や『T-Bird Gang』(1959/日本未公開)、そして『デス・レース2000年』(1975)といったカーアクション映画を製作。カーレース映画というジャンルの広義な拡張と啓蒙を担ってきた。 『ワイルド・スピード』は、そんなコーマンプロデュースの『速き者、激しき者』から原題“The Fast and the Furious”を、そして『T-Bird Gang』からストーリー設定を一部借りることで、本作が置かれるべきジャンルの位置付けと、先導者であるコーマンに対する敬意をあらわしている。ちなみに後者のストーリーは、白いサンダーバードの強盗団に父を殺された息子が、警察から送り込まれた囮として連中に接近し、復讐を果たすというものだ。 本作の監督を担当したロブ・コーエンによると、ニューヨークのクイーンズ地区でおこなわれたストリート・レースの記事を読んだことが企画の発展につながったという。そして「実際の現場を見て圧倒された」と語り、その迫真性は映画の中で不足なく描写されている。 加えてこの映画の成立に寄与したのは、当時の最新技術だ。中でも俳優の運転映像を可能にするため、時速120kmでチューンドカーの実物大レプリカを牽引することができる特殊リグを導入したり、またデジタルツールがプラクティカルなカーショットを補強するなど、シリーズの礎となるメイキングプロセスを本作で構築している。 ただコーエンはストリート・レースの違法性をいたずらに正当化することなく、非合法な娯楽に興じる者をトラック・ジャックをはたらく犯罪集団という設定にリンクさせており、そこに監督の道徳感が顕在している。ゆえに現在まで続くシリーズでの正義行動は、ドミニクの贖罪が発露だと考えると符号が合う。悪の道はたやすく、正義の道は果てしなく困難であることを示すかのように。 ◆当時の車事情と、新録吹き替え版の意義に思う そんな大きな軌道変更の末にミッション遂行路線を邁進している『ワイスピ』だが、現在にいたるも維持している制作姿勢がある。それはいかに大きなアクションシークエンスであろうと、メインとなる車だけはプラクティカルでの撮影が主とされている点だ。 筆者はシリーズ8作目『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017)のワークプリントを、配給元である東宝東和の会議室で観た経験を持つ。これは未完成のバージョンだが、逆に言えば劇中のどの要素がデジタルで、どの要素が実物なのかを視認できる絶好の機会を与えてくれる。たとえばクライマックスにおける原子力潜水艦は全てがCGによるもので、そこに絡むドミニクらファミリーたちの車は、いかにアクロバティックな走りをしていようが、ほぼライブアクションでの撮影が徹底されているのだ。当然のポリシーといえばそうだろうが、。ヴァーチャル・プロダクションの進化によって、全ての要素がデジタル由来のものといえるような状況下にありながら、そこには最初の『ワイルド・スピード』の創作精神が今も脈づいていることを実感できる。 製作からじき四半世紀が立とうとし、立派なクラシックとなった感のある本作。こうして改めて観直すと、時代なりの車事情をそこに感じることができる。それぞれの登場人物のキャラクターに応じた車種の選択はもとより、ストリート・レースにおいては安価でチューニングベースとして扱いやすいという事情もあり、日本車の存在感が際立つ。またクライマックスでのブライアンとドミニクの直接対決レースでは、前者のスープラが後者のダッチ・チャージャーと互角の勝負を見せるなど、シェアを拡げる日本車とアメリカンカーとの代理戦争を見るかのようだ。 このたひザ・シネマでは、本作『ワイルド・スピード』の新録吹き替えを実施し、シリーズに統一感を与える独自の試みに挑んでいる。時代に応じたクラシックの吹き替えは海外古典文学の「新訳」に等しく、非常に生産性の高い行為だと筆者は実感している。ただそれを肯定するいっぽう、個人的には初期作をヴォイスキャストで一貫させることに、1作目の独立性が目減りしてしまうような寂しさを覚えなくもない。それだけ今と性質の異なる『ワイスピ』として、本作固有の価値と存在意義はとてつもなく大きいのだ。■ 『ワイルド・スピード』© 2001 Universal Studios. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
血まみれギャングママ
[R15相当]極悪ママが息子たちを引き連れて犯罪を繰り返す!実在の強盗一家を基に描く異色アクション
低予算映画の帝王ロジャー・コーマンの演出が冴えるアメリカン・ニューシネマ。実在の強盗一家をモデルに女ボスで母親ケイト・バーカーの狂気を、アカデミー助演女優賞に2度輝いたシェリー・ウィンタースが怪演。
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COLUMN/コラム2018.09.05
ロジャー・コーマン製作の『ジョーズ』亜流映画はバカの連鎖によって大惨事が引き起こされる痛快(?)ブラック・コメディ『ピラニア』
B級映画の帝王ロジャー・コーマンが弟ジーンと共に、'70年に設立したインディペンデント系映画会社ニューワールド・ピクチャーズ。'83年にコーマンがハリウッドの大物弁護士3人の合弁会社へ売却するまでの間、実に100本以上の低予算エンターテインメント映画を製作・配給した同社だが、その中でも興行的に最大のヒットを記録した作品がジョー・ダンテ監督の『ピラニア』('78)だった。 ニューワールド・ピクチャーズの基本方針といえば、言うまでもなく徹底したコストの削減である。人件費を浮かせるため撮影期間は最小限に抑えられ、キャストもギャラの安い無名の若手新人か落ちぶれたベテラン勢で固め、セットや衣装、大道具・小道具などは別の映画でも使い回しされた。時にはフィルムそのものを使い回すことも。さらに、リスクを取ることなく確実に当てるため、映画界のトレンドやブームには積極的に便乗。最初期の代表作『危ない看護婦』('72)シリーズは折からのソフトポルノ人気に着目しての企画だったし、ヨーロッパ産の女囚映画が当たり始めるとすかさず『残酷女刑務所』('71)や『残虐全裸女収容所』('72)などの女囚物をバンバン連発した。さらに、『バニシングIN 60”』('74)が大ヒットすれば『デスレース2000年』('75)や『バニシングIN TURBO』('76)を、『スター・ウォーズ』('77)がブームになれば『宇宙の七人』('80)や『スペース・レイダース』('83)を、『エイリアン』('79)が当たれば『ギャラクシー・オブ・テラー/恐怖の惑星』('81)や『禁断の惑星エグザビア』('82)をといった具合に、時流のジャンルや大ヒット映画を臆面もなくパクるのがコーマン流の成功術だったわけだ。 なので、当時のロジャー・コーマンが折からの『ジョーズ』ブームに目を付けたのも当然と言えよう。'75年の6月に全米公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』('75)は、900万ドルの予算に対して4億7000万ドル以上を売り上げ、各映画会社が夏休みシーズンに目玉映画を公開するサマー・ブロックバスターの恒例行事を初めて確立し、自然界の生き物が人間を襲うという動物パニック映画のブームを巻き起こした。自然公園に出現したクマが人間を襲う『グリズリー』('76)、可愛い犬たちが集団で人間を襲撃する『ドッグ』('76)、さらにはオゾン層の破壊の影響で様々な動物が凶暴化する『アニマル大戦争』('77)などなど。ただ、『シャークジョーズ/人喰い鮫の逆襲』('76・旧テレビタイトル)と『オルカ』('77)、そしてイタリア産の巨大タコ映画『テンタクルズ』('78)の例外を除くと、『ジョーズ』の直接的な亜流に当たる水中生物系のパニック映画が量産されるようになるまでには少し時間がかかった。 そもそも、この『ピラニア』だって『ジョーズ』のヒットから3年も経って劇場公開されている。そのほか、鮫だけでなくワニやカマスや海洋モンスターなど、手を変え品を変えた一連の『ジョーズ』パクり映画群も、だいたい'78~'81年頃に集中して作られている。その理由の一つとして考えられるのは、陸上に比べると水中撮影は時間もコストもかかることであろう。また、『ジョーズ』のように撮影用の巨大な生物メカを製作するとなると、さらに費用がかかってしまう。懐に余裕のない独立系映画会社にとっては負担が大きい。しかし、多くのプロデューサーが『ジョーズ』の亜流映画製作に慎重となった最大の理由は、本家製作元のユニバーサルから訴えられることを恐れたためではないかと思われる。実際、あまりにもストーリーが『ジョーズ』と酷似したイタリア産の『ジョーズ・リターンズ』('81)は、案の定ユニバーサルから訴訟を起こされ、全米公開からたったの1か月で上映を差し止められている。それでも1800万ドルの興行収入を稼いだというのだから立派なものなのだが。 そういうわけで、巨大な鮫に対して小さいピラニアだったら、仮に訴えられても言い訳できるだろうと考えたロジャー・コーマン。ところが、当時『ジョーズ2』('78)を劇場公開したばかりだったユニバーサルは、著作権侵害を理由に『ピラニア』の公開差し止めを求めようと動いていた。うちの客を奪われちゃかなわん!ってことなのだろう。それを思いとどまらせたのが、なんとほかでもない本家『ジョーズ』の生みの親スピルバーグ監督だったと言われている。事前に『ピラニア』本編の完成版を見て気に入ったスピルバーグは、ジョー・ダンテ監督の腕前を高く評価していたらしいのだ。そのことをダンテ監督自身は、後にオムニバス映画『トワイライトゾーン/異次元の体験』('83)の監督の一人として、スピルバーグから声がかかるまで全く知らなかったらしい。その後、『グレムリン』('84)や『インナースペース』('87)などでもダンテと組むことになるスピルバーグだが、この頃から既に彼の才能に着目していたのである。 そんなスピルバーグをも認めさせた映画『ピラニア』の面白さとは、一言で言うなら「開き直りのパワー」であろうか。どうせ低予算のパクり映画なんだから、思い切って好きなことやって楽しんじゃおうぜ!という若いスタッフの情熱と意気込みが、スクリーンから溢れ出ているのである。先述したように、ロジャー・コーマンは徹底して予算を抑えた映画作りをしていたわけだが、その一方で経験が豊富とは言えない若いスタッフたちに積極的にチャンスを与え、クリエイティブ面でも彼らの意見を最大限に尊重し、その才能を後押しすることを惜しまなかった。まあ、それもまたコーマン流の人件費削減術(経験の浅いスタッフはギャラも安い)なのだが、結果的に多くの優秀な映画人が彼のもとから育ったわけだから全然オッケーでしょう。実際、ニューワールド作品からも、ロン・ハワードやジョナサン・デミ、ジョナサン・カプラン、ポール・バーテルなどの監督が巣立っていった。もちろん、『ピラニア』のジョー・ダンテもその一人だ。 もともと、ニューワールド作品の予告編編集マンとして腕を磨いてきたダンテ監督。『ハリウッド・ブルバード』('76)での共同監督を経て、初めて単独で演出を任されたのが『ピラニア』だった。当時のダンテ監督は31歳。脚本のジョン・セイルズは26歳だし、そのほか編集のマーク・ゴールドブラットやクリーチャー・デザインのフィル・ティペット、特殊効果担当のクリス・ウェイラスなど、後にオスカーを賑わせる豪華なスタッフたちも、みんな当時は20~30代のチャレンジ精神旺盛な若者だった。当初オファーされていたリック・ベイカーの推薦で、特殊メイク担当の代役に起用されたロブ・ボッティンなどは、まだ18歳の少年だったというのだから驚きだ。そんな彼らの、お金も経験もないけれどアイディアでは負けないぜ!という向上心と貪欲さが、本作の屋台骨をしっかり支えていると言えよう。 オープニングはテキサスの山奥の怪しげな施設。そこへ迷い込んだ10代男女のバックパッカーが、「あ!プールあるじゃん!まじラッキー!」とばかりに素っ裸になって飛び込み、案の定というかなんというか、水中に潜む正体不明の何かに殺されてしまう。で、そんな2人の行方を捜しにやって来た家出捜索人マギー(ヘザー・メンジーズ)は、飲んだくれの自然ガイド、ポール(ブラッドフォード・ディルマン)の案内で若者たちが足を延ばしたであろう例の施設へ。プールの水を抜けば何か分かるかもしれないと考えた2人は、彼らの様子を陰でうかがっていた科学者ホーク博士(ケヴィン・マッカーシー)が必死になって止めるのも聞かず…というか、なんかヤバいオッサンが出てきた!こんな××××は問答無用で倒すべし!とばかりに、博士を殴って気絶させてプールの排水蛇口をひねってしまう。近くの川へと流れ出るプールの水。しかし、そこには米軍がベトナム戦争の生物兵器として開発した獰猛なピラニアの大群が潜んでいたのだ…! というわけで、この映画、基本的に愚かでバカな連中が愚かでバカなことをやらかし続けた挙句、そのバカの連鎖によって大惨事が引き起こされるという痛快(?)なブラック・コメディなのである。冒頭のティーン男女然り、主人公のマギーとポール然り、ピラニアを遺伝子操作したホーク博士然り、さらには隠蔽工作をする米軍大佐(ブルース・ゴードン)やその片腕のメンジャーズ博士(バーバラ・スティール)、リゾート施設の悪徳経営者ガードナー(ディック・ミラー)といった憎まれ役に至るまで、みーんな後先のことなど深く考えずに間違った選択をしてしまう。しかも、誰一人として反省しない(笑)。その究極がクライマックスの無謀としか思えないピラニア撃退作戦ですよ。結局、人類にとって最大の害悪は人類そのもの。そんな大いなる皮肉をシニカルなユーモアで描いたジョン・セイルズの脚本は実に秀逸だ。 とはいえ、やはり最大の見どころはピラニアの大群が人間を襲う阿鼻叫喚のパニック・シーン。しかも、子供たちが楽しげに水遊びをするサマー・キャンプ、大勢の観光客で賑わう川べりのリゾート施設と、2か所でピラニアたちが派手に大暴れしてくれる。ここで才能を大いに発揮するのが、フィル・ティペットやクリス・ウェイラス、ロブ・ボッティンといった、'80年代以降のハリウッド映画を引っ張っていくことになる若き天才特撮マン&天才特殊メイクマンたちだ。人間を食い殺すピラニアたちは、いずれもゴム製のパペットに長い棒を通して、手元の引き金で口をパクパクさせるだけの単純な代物だが、絶妙なカメラアングルと細かな操作によってリアルに見せているし、後に『ターミネーター』シリーズで名を上げる編集者マーク・ゴールドプラットのスピーディで細かいカット割りがアナログ技術の粗を上手いこと隠している。子供だろうが女性だろうが容赦なく血祭りにあげていく大胆さも小気味いい。まさにやりたい放題。しかも、毎日上がってくる未編集フィルムをチェックしていたロジャー・コーマンが、唯一現場に要求したのは「もっと血糊を」だったというのだから、御大もよく分かっていらっしゃる(笑)。 水面に生首が浮かぶシーンには少々ギョッとさせられるが、実はこれ、ロブ・ボッティンが自分の頭部をモデルに製作したダミーヘッドだ。そういえば、前半の軍施設に登場するストップモーション・アニメのミニ・クリーチャーは、特撮映画の神様レイ・ハリーハウゼンの『地球へ2千万マイル』('57)に出てくる怪物イーマへのオマージュだし、劇中のテレビには『大怪獣出現』('57)のワンシーンも映し出される。そうした、ダンテ監督やスタッフの映画マニアっぷりを感じさせる小ネタを含め、そこかしこにお茶目な遊びが散りばめられているところも本作の大きな魅力だ。もしかすると、スピルバーグはそういったところに感じるものがあったのかもしれない。低予算のB級エンターテインメントとして良く出来ているのは勿論のこと、とにかく全編を通してすこぶる楽しいのだ。 かくして、興行収入1600万ドルのスマッシュ・ヒットを記録した『ピラニア』。3年後にはジェームズ・キャメロン監督による続編『殺人魚フライングキラー』('81)が作られ、さらにはオリジナルの特撮シーンを流用したテレビ版リメイク『ザ・ピラニア/殺戮生命体』('95)、フランスの鬼才アレクサンドル・アジャによる新たなリメイク『ピラニア3D』('10)とその続編『ピラニア リターンズ』('12)まで生まれるという、本家『ジョーズ』も顔負けのフランチャイズと化したことは、恐らくロジャー・コーマンもジョー・ダンテも想像していなかっただろう。これに関しては、もともとコーマンのもとへ企画を持ち込んだ元日活女優・筑波久子こと、チャコ・ヴァン・リューウェンの尽力によるものと言える。しかしそれにしても、本来『ジョーズ』のパクりである本作が、さらにイタリアで『キラーフィッシュ』('79)としてパクられたのだから、映画ビジネスの世界というのは面白い。 なお、本作を足掛かりにダンテ監督は人狼映画の傑作『ハウリング』('81)を成功させ、さらに先述した通りスピルバーグとのコラボレーションを経てハリウッドの売れっ子監督に。一方のコーマン御大率いるニューワールド・ピクチャーズは、太古の巨大魚が人間を襲う『ジュラシック・ジョーズ』('79)に海洋モンスター軍団が海辺の町を襲う『モンスター・パニック』('80)を製作。さらに、ニューワールド売却後にコーマンが新設した映画会社ニューホライズンズでも、トカゲ人間がハワイのリゾート地に現れる『彼女がトカゲに喰われたら』('87)なるポンコツ映画を作っている。◾️ © 1978 THE PACIFIC TRUST D.B.A. PIRANHA PRODUCTIONS. All Rights Reserved
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PROGRAM/放送作品
モンスター・パニック
[R15相当]半魚人モンスターの大群が突如出現!ロジャー・コーマンのB級精神が冴え渡るパニックホラー
B級映画の帝王ロジャー・コーマンが製作総指揮を務めたパニックホラー。半魚人モンスターの醜悪な造形や、怪物が男性は惨殺するのに若い女性は強姦するというエログロへの徹底ぶりなど、B級テイストが濃密。
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PROGRAM/放送作品
レッド・バロン
誇り高き精神を貫く“空の英雄”が戦場にいた。B級映画の帝王ロジャー・コーマンによる本格戦争映画
娯楽精神旺盛な低予算B級映画を量産したロジャー・コーマン監督が、実機の複葉機を用いて撮影した本格的な航空戦争映画。俳優たちを乗せた複葉機を実際に飛ばして撮影した空中戦のリアルな迫力に圧倒される。