生誕100年レトロスペクティブ:エリック・ロメール 生誕100年レトロスペクティブ:エリック・ロメール

ロメールと出会う9作品

Spring / Summer 2020

男女の恋模様をウィットに富んだ会話と、鮮やかな色彩で描き続けた映画作家、エリック・ロメール。
自然光を多用した少人数のロケという一貫したスタイルで、軽やかな人間ドラマを撮り続けた彼の作品群には、
春から夏の季節が良く似合う。
何も特別なことは起きないのに、何故だかキラキラしていて瑞々しい、不思議な“ロメール風味”を味わおう。

エリック・ロメール9作品は、
「ザ・シネマメンバーズ」で2020年4月より順次配信します。
「ザ・シネマメンバーズ」は、ミニシアター・単館系作品を中心に、
大手配信サービスでは見られない作品を“映画が本当に好きな人”へお届けする配信サービスです。
詳しくは下記リンク先をご覧ください。

作品情報

4月配信スタート

飛行士の妻(1980)

飛行士の妻(1980)

ヌーベルバーグの名匠エリック・ロメールが1980年代に放った〈喜劇と格言劇〉シリーズの幕開けを飾る快作。
エリック・ロメール監督が若い女性たちの恋と人生を軽やかに綴った〈喜劇と格言劇〉の第1作。片思いに胸を焦がす青年と恋多き年上の女性の関係を軸に、理想の愛を求めて迷走する男女の滑稽さを生き生きと映し出す。
1981年サン・セバスチャン映画祭 批評家大賞受賞

美しき結婚(1981)

美しき結婚(1981)

“結婚”という妄想に囚われた女子学生の奮闘劇。ユーモアと痛烈な皮肉たっぷりに紡がれる恋の行方やいかに!?
誇大妄想すれすれの激しい思い込みに駆られ、“結婚”へと突き進もうとする若い女性の姿を痛々しくも微笑ましく描出。性懲りもないオチまでエリック・ロメール監督が大いに笑わせ、考えさせる〈喜劇と格言劇〉第2作。
1983年セザール賞 脚本賞ノミネート

海辺のポーリーヌ(1983)

海辺のポーリーヌ(1983)

異なる恋愛観を持つ男女の、コミカルでほろ苦いひと夏の駆け引きを描いた〈喜劇と格言劇〉シリーズ第3作。
多感な少女が経験するひと夏のアバンチュールを映像化。少女を取り巻く大人たちの恋の駆け引き、名手ネストール・アルメンドロスのカメラが捉えたノルマンディー地方の避暑地の風景も魅力的なバカンスムービーだ。
1983年ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)および国際映画批評家連盟賞受賞
1983年フランス映画批評家協会賞 作品賞受賞
1983年ボストン映画批評家協会賞 脚本賞受賞

5月配信スタート

満月の夜

満月の夜(1984)

傲慢なまでに自由な恋愛を追い求めてパリをさまよう女性。眠れぬ“満月の夜”の先に、彼女が行き着く場所は?
エリック・ロメール監督の〈喜劇と格言劇〉第4作は、都会的な装飾に彩られた一作。冬のパリと郊外を行き来しながら自由恋愛を実践するヒロインの満たされない日々を、眠れない“満月の夜”の逸話を絡めて辛辣に描く。
1984年フランス映画批評家協会賞 作品賞受賞
1984年ヴェネツィア国際映画祭 女優賞(パスカル・オジェ)受賞
1985年セザール賞 作品賞、監督賞、脚本賞ノミネート

緑の光線

緑の光線(1985)

恋に恋する孤独な女性のバカンスに、幸せの“光”が舞い降りるヴェネチア国際映画祭グランプリ受賞作。
〈喜劇と格言劇〉第5作。わずか3人のスタッフを率いて複数の避暑地をめぐったエリック・ロメール監督が、ネガティブ思考に陥って恋におじけづく女性の孤独な旅を綴る。ささやかな奇跡が訪れるラストの幸福感!
1986年ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞および国際映画批評家連盟賞受賞

友だちの恋人

友だちの恋人(1987)

爽やかな初夏、サバービアンの学園都市を舞台に、名匠ロメールの恋の魔法がきらめく〈喜劇と格言劇〉最終作。
エリック・ロメール監督が若い男女4人の恋愛模様を軽やかに描出。登場人物たちのもつれた関係が、手品のように解きほぐされる結末には誰もが脱帽。舞台となるパリ郊外セルジー=ポントワーズ地区の風景も美しい。
1988年セザール賞 脚本賞および有望若手女優賞(ソフィー・ルノワール)ノミネート

6月配信スタート

レネットとミラベル/四つの冒険

レネットとミラベル/四つの冒険(1986)

外見も性格も対照的な2人の女の子。その出会いと友情、そして冒険の日々を、眩しいほどしなやかに描く。
エリック・ロメール監督が傑作「緑の光線」に続いて撮ったオムニバス。道ばたで偶然出会った2人の女の子が、田舎と都会で経験する4つの出来事を映像化。ロメール流の少女賛歌というべき若々しい語り口に魅了される。

木と市長と文化会館

木と市長と文化会館(1992)

緑豊かなパリ郊外を舞台に繰り広げられる政治論争コメディ。はたして文化センターの建設は実現するのか!?
郊外で巻き起こった文化施設の建設をめぐる論争をシニカルに描くコメディ。鋭い政治風刺劇だが、自然光と即興演出で見せるロメール節は軽快で、あっけないオチにもニヤリ。
1993年モントリオール世界映画祭 国際映画批評家連盟賞受賞

パリのランデブー

パリのランデブー(1994)

パリのカフェ、公園、美術館をめぐりながら、3つの恋愛小話を小粋なタッチで紡ぎ上げたオムニバス映画。
エリック・ロメール監督によるパリの名所案内といった趣向のオムニバス作品。手持ちカメラでの隠し撮りショットを交え、嘘や偶然が作用する3つの恋の顛末を綴る。いくつもの公園やピカソ美術館などのロケ地が魅力的。
1995年ヨーロッパ映画祭 作品賞ノミネート

エリック・ロメール
エリック・ロメール(1920-2010)
フランスの映画監督。1942年からパリのリセで教鞭をとる傍ら、映画評論に携わる。50年代にはジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォーらヌーヴェル・ヴァーグの旗手たちとともに映画批評誌に執筆参加。『カイエ・デュ・シネマ』では編集長を務めた。
40代に入ってから映画監督として本格デビュー。63年に長編第一作『獅子座』を発表。以降、80代半ばまで精力的に長編・短編作品を発表し続ける。
カンヌ国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭はじめヨーロッパの主要な映画賞を多数受賞している。

イントロダクション

エリック・ロメールの季節がやってくる

ゴダールやトリュフォーやカラックスが好きでもロメールを観ていない人、いますよね? 男女の恋模様をウィットに富んだ会話と、鮮やかな色彩で描き続けた映画作家、エリック・ロメール。
自然光を多用した少人数のロケという一貫したスタイルで、軽やかな人間ドラマを撮り続けた彼の作品群には、春から夏の季節が良く似合う。何も特別なことは起きないのに、何故だかキラキラしていて瑞々しい、不思議な“ロメール風味”とは―。

一貫した作風

ザ・シネマメンバーズで今回、順次お届けしていく9作品は、いずれもロメールが60才を過ぎてから監督した作品であり、ヌーベル・ヴァーグというムーブメントから実に20年も経過しているにもかかわらず、ロメールは、初期のころと変わらない軽やかさで順調に次々と映画を撮っていたことに気づいて驚く。
今や60才を過ぎたロックアーティストが珍しくなくなった世の中だが、キャリアの後期におよんでも一連の作品に、ここまでエバーグリーンな輝きを持ち続けられる作家は、あまりいないのではないだろうか。
登場する女性の服装や小物まで含めた可愛らしさ、画面に周到に配置される赤の色、木洩れ日のきらめき、そしてヴァカンス!何度でも観たくなるのがロメールの魅力。

短編小説のような感覚

エリック・ロメールの作品は、よく“会話劇”と言われる。たしかに少し哲学的なニュアンスを含んだセリフが
時々あるかもしれないが、心配無用。アート系作品でたまにある、「わかったふりしてドキドキ」みたいなことにはなりません。セリフを注意深く追う必要はないし、読み解く必要もない。 ストーリーはいたってシンプルで、そこに見えていること以上の意味はない。短編小説のような味わいなのだが、ヘミングウェイの短編のように、“書いてあることは氷山の一角”ということを意識しなくていい。
他のヌーベル・ヴァーグの作家のように、「映画史」からの引用もほぼ無いといっていいから、構えたりせずに躊躇なく観よう。「そこで起きていることを写す。」ということを徹底して演出し、撮られた作品は、難しいことを考えず、カフェで、ベッドで、リビングで、ちょっと短編集を手に取って小一時間過ごすように触れてみて欲しい。ロメール作品を見る快楽は、そういうところにある。

男女の恋愛を描く名手

街中やカフェ、深夜のレストラン、海辺の別荘で過ごす複数の男女。そこで繰り広げられる、ちょっとした嫉妬や誤解から生まれるストーリーのゆるやかな起伏。それを眺めているうちに、少し滑稽にも思えてきてしまう観客の心理。あるいは、狙いすましたようにやってくる偶然によって、時に感動し、時にやるせなく見守る。
これはまるで、今どきの恋愛リアリティショーの原型のようだ。と言ったら言い過ぎだろうか。
嫌味や雑味のないリアリティで、人物や音や光、空気をそのまま切り取った、コンパクトでチャーミングなエリック・ロメールの作品群をザ・シネマメンバーズで、好きな時、好きな場所で楽しもう。

ザ・シネマ メンバーズ とは

お好きな時にお好きな場所で。
ミニシアターがあなたのそばに。
パソコン・スマホ・タブレット・テレビ(Chromecast・Fire TV/Fire TV Stick)!
月額880円(税込)で好きな時に好きな場所で楽しめる!
  • スマホ・タブレット

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  • テレビ(Chromecast・Fire TV/Fire TV Stick)

『飛行士の妻(1980)』©1981 LES FILMS DU LOSANGE. 『美しき結婚(1981)』©1982 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R. 『海辺のポーリーヌ(1983)』©1983 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R. 『満月の夜』©1984 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R. 『緑の光線』©1985 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R. 『友だちの恋人』©1986 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R. 『レネットとミラベル』©1985 LES FILMS DU LOSANGE-LA C.E.R. 『パリのランデブー』©1995 LA C.E.R. 『木と市長と文化会館』©1993 LA C.E.R.