8月20日(土)21:00~
再放送:8月21日(日)21:00~/8月27日(土)18:15~
前2作のクリス・コロンバスから監督を引き継いだアルフォンソ・キュアロン。原作を大胆に省略したことでも話題になった。
「よりコンパクトな作品にしたかった。『アズカバンの囚人』のテーマを考えた時、それはハリーがアイデンティティを探す旅であると思った。ならば、脚本はそこを追求すべきだと思ったから、テーマから離れたエピソードについては削っていくことにしたんだ。もちろん映画は物語を伝えること、しかもスムーズに伝えることが大事だからね。だから原作にある言葉を追うことはやめて、流れというか、ノリを大切にした映画作りを目指したんだ」
『天国の口、終りの楽園』(01)や『大いなる遺産』(98)など個性的な作品で知られる監督。その自分自身のテイストも、本作に反映されている。
「もちろん、無理に自分の色を出そうとは思わなかった。すでに、前2作で“ハリー・ポッターの世界”は確立されているからね。その世界観を僕の目を通して見た時にどうなるか? それが『アズカバンの囚人』だと思うんだ。意図的にしたわけではないけど、結果的には映画全体のトーンにボクらしさが出てると思う」
前2作には登場しなかった新キャラクターをクリエイトするというチャレンジもあり、その具現化は原作ファンにも評判がよかった。
「黒いフードを被った“ディメンター”のようなキャラクターは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでピーター・ジャクソンが作り上げてしまっていた。となると、僕たちはどうしたらいい? どうやって“ディメンター”を作り上げたらいいんだ? 悩んだよ(笑)。
そこで、肉体的な面ではなく、理念や概念からアプローチしようということになった。原作によれば、“ディメンター”は、人間が抱えている慢性的な憂鬱の塊であり、内面的なくらい心だというじゃないか。具体的な映像としては、“ディメンター”のパペット人形を作ることから始めた。できた人形を水中で動かして、撮影してみて…。それはすごくいい出来だったんだが、実用的ではなくてね。そこでジョージ・ルーカスのILMに『このイメージで作ってほしい』と頼んだんだ」
取材・文/金子裕子
2011年7月13日発行「別冊シネコンウォーカーvol.2 角川ムックNo.39」より抜粋
アルフォンソ・キュアロン
1961年生まれ、メキシコ出身。『最も危険な愛し方』(91)で長編映画監督としてデビュー。『トゥモロー・ワールド』(06)の監督や『パンズ・ラビリンス』の製作などを経て、『ゼロ・グラビティ』(13)で第86回アカデミー賞監督賞を受賞。
『ハリー・ポッターと賢者の石』™ & © 2001 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』™ & © 2002 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』™ & © 2004 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』™ & © 2005 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.