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                                                      COLUMN/コラム2014.04.25 2014年5月のシネマ・ソムリエ ■5月11日『天国の日々』 『地獄の逃避行』に続くT・マリックの監督第2作。第一次世界大戦が始まった頃、恋人と妹を伴ってテキサスの農場に流れ着いた青年の数奇な運命を描く人間ドラマだ。 アカデミー撮影賞を得た詩的なビジュアルを手がけたのはネストール・アルメンドロス。マジックアワーと呼ばれる日没時の淡い光を生かした映像は神秘的ですらある。 のちのマリック作品にも通じる生命や自然、人間の業といった根源的なテーマを追求。ドラマの語り手も務める子役リンダ・マンズのみずみずしい存在感も見逃せない。 ■5月18日『ナック』 スウィンギング・ロンドンと呼ばれた1960年代の英国の空気を伝える青春コメディ。ビートルズ映画で名高いR・レスター監督のカンヌ映画祭パルムドール受賞作だ。 モテ男に憧れる内気な青年と田舎娘の恋物語が、全編即興で撮ったかのような自由奔放な作風で展開。ジョン・バリーの音楽に彩られたモノクロ映像は、今観ても新鮮! 愛らしい顔立ちの個性派女優R・トゥシンハムの魅力が全開。スター女優シャーロット・ランプリング、ジェーン・バーキンらが無名時代に端役で出演した作品でもある ■5月25日『ピープル vs ジョージ・ルーカス』 世界中のクリエイターに影響を与え、多くの観客の人生を変えた『スター・ウォーズ』。その作者G・ルーカスに対するファンの複雑な心理に迫ったドキュメンタリーだ。 オリジナル版を軽んじた「特別篇」への猛批判など、ファンの毒舌コメントが炸裂。『?ファントム・メナス』の不人気キャラ、ジャー・ジャー・ビンクスも血祭りに! 世界各国の熱狂的なファンが作ったプロ顔負けのパロディ映像も満載。G・ルーカスを憎みながらも『SW』への愛着を捨てられない人々の生態がユーモラスに描かれる。 『天国の日々』Copyright © 2014 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 『ナック』KNACK, AND HOW TO GET IT, THE © 1965 WOODFALL FILM PRODUCTIONS LIMITED. All Rights Reserved 『ピープルvsジョージ・ルーカス』© 2010,Exhibit A Pictures,LLC, All Rights Reserved 
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                                                      COLUMN/コラム2014.03.31 映画の中のパリガイド ■『パリの恋人』 パリでファッションモデルになった女性の恋物語をオードリー・ヘプバーン主演で描くミュージカルロマンス。カルーゼル凱旋門、ルーブル美術館など名所を紹介するシーンは、当時のパリの雰囲気が味わえます。そして、ジバンシィの衣装に身を包んだオードリーが美しい!パリという舞台が、彼女の魅力をさらに引き出しています。また、パリの北・シャンティイ近くにあるシャトー・レーヌ・ブランシュをバックに、アステアとヘプバーンがダンスナンバー”He Loves and She Loves”を踊るシーンは、要チェックです。 ※『パリの恋人』ルーブル美術館でのワンシーン ※ルーブル美術館の夜景 ■『麗しのサブリナ』 大富豪の兄弟と美しく変身した女性が繰り広げるオードリー・ヘプバーン主演のラブロマンス。ヘプバーン演じる主人公のサブリナは失恋のキズを癒すため、パリの有名な料理学校へ留学します。その舞台となったのが、100年以上にわたりフランス料理の伝統と技術を世界中に伝えている料理学校「ル・コルドン・ブルー」です。この留学を終え、洗練された女性に成長したヘプバーンの姿は、思わず見とれてしまいますのでご注意を! ■『赤い風車』 パリのキャバレーで夜ごと踊り子たちを描き続ける画家アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレックの過酷な運命を描いた伝記映画。舞台となったギャバレー「ムーラン・ルージュ」は、フランス語で「赤い風車」という意味で、赤い風車が印象的な実在するお店です。このキャバレーはパリで万国博覧会が開かれ、パリが世界の文化の中心となった1889年にモンマルトルで誕生しました。創業から100年以上たった今も営業を続けています。夜な夜な繰り広げられているフレンチ・カンカンなどの華麗なショーを、映画を通して是非お楽しみください! ※『赤い風車』ムーランルージュでのショーシーン ※『ムーラン・ルージュ』の赤い風車 ■『死刑台のエレベーター』 完全犯罪をくわだてた不倫関係にあるカップルが、欲望の果てに運命を狂わせていくサスペンス映画。殺人を犯した後にエレベーターに閉じ込められてしまった彼を探して、夜のシャンゼリゼ通りをジャンヌ・モロー演じる人妻・フロランスがさまよい歩きます。凱旋門からコンコルド広場へとのびる大通りとして美しい景観で有名ですが、そんなシャンゼリゼ通りの華やかさと対照的なフロランスの姿は、彼女の心の内を浮かび上がらせた名シーンです。 ※ジャンヌ・モロー演じる人妻・フロランス ※シャンゼリゼ通り ■『フレンチ・キス』 フランス美人と恋仲になってしまった婚約者を奪い返すべく、パリを訪れたアメリカ人女性を描いた、メグ・ライアン主演のロマンティック・コメディ。パリに着いた主人公が婚約者に会うために訪れたのが、シャンゼリゼ通りにある「ホテル・ジョルジュ・サンク」。この名の由来は、1928年の創業当時、フランスと良好な関係にあったイギリスの国王・ジョージ5世からとったそうです。現在は「フォーシーズンズホテル・ジョルジュ・サンク・パリ」と名前を変え、パリを訪れる誰もが一度は訪れたい憧れの豪華ホテルのひとつです。映画を通して、この豪華ホテルを訪れてみては? ※『フレンチ・キス』ホテルで途方に暮れるメグ・ライアン 『パリの恋人』TM & COPYRIGHT © 2014 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.『麗しのサブリナ』TM & Copyright © 2014 by Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.『赤い風車』©ITV plc (Granada International)『死刑台のエレベーター』© 1958 Nouvelles Editions de Films『フレンチ・キス』FRENCH KISS ©1995 ORION PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved 
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                                                      COLUMN/コラム2014.03.30 2014年4月のシネマ・ソムリエ ■4月5日『ダウンタウン物語』 登場するすべてのキャラクターを、平均12歳の子役たちが演じたミュージカル風のギャング・コメディ。名匠A・パーカーの軽妙な語り口が光る劇場デビュー作である。 禁酒法時代のニューヨークの雰囲気を本格的なセットで再現。才人、ポール・ウィリアムズ作曲による歌とダンス、パイ弾を放つマシンガンなどの小道具も楽しい! キャストで圧倒的な存在感を放ったのは撮影時13歳のJ・フォスター。にぎやかな抗争劇のさなか、主人公バグジー・マローンが出入りする酒場の歌姫を妖艶に演じた。 ■4月12日『バンテッドQ』 鬼才テリー・ギリアムのイマジネーションが炸裂するファンタジー。孤独な11歳の英国人少年が自宅の寝室に突如現れた6人の小人に導かれ、時空を超えた冒険に旅立つ。 ナポレオン、海坊主、悪魔らのキャラクターが次々と登場し、奇想天外な逸話が脈絡なく展開。その理屈を超越した馬力とスラップスティックなギャグに引き込まれる。 英国流のブラックな味わいの作風は、ハリウッド製ファンタジーとは異質の面白さ!アガメムノン王ともうひと役を演じるS・コネリーの出演シーンもお見逃しなく。 ■4月19日『サン★ロレンツォの夜』 ドイツ軍占領下のトスカーナ地方を舞台にした戦争ドラマ。イタリアのタヴィアーニ兄弟が幼少期の体験を基に撮った、カンヌ国際映画祭・審査員特別賞受賞作である。 物語の背景となるのは、1944年にサン・ミニアートの大聖堂で起こった虐殺事件の史実。ドイツ軍が街を爆破して撤退を図るなか、危険を感じた市民の脱出劇が展開する。 幼い純真な少女の視点をとり入れた映像世界には、素朴なユーモアや魅惑的な詩情が漂う。戦時下の痛切な悲劇を寓話へと結実させ、胸に染み入る感動を呼ぶ一作だ。 ■4月26日『バーティ』 鳥をこよなく愛し、空を飛ぶことに憧れる風変わりな青年バーディとその親友アル。共にベトナム戦争で心身に傷を負って帰還した若者たちの友情を描く感動作である。 1970?80年代に量産された“ベトナム後遺症”ものの1本だが、青春映画としてのみずみずしさは絶品。デビュー間もない主演俳優2人のナイーブな演技も好感度高し! 多彩なジャンルの傑作を放ったA・パーカー監督が鮮烈なイメージを創出。裸のバーディを“籠の中の鳥”に重ねた場面や、鳥の眼差しを表現した空撮シーンが印象深い。 『ダウンタウン物語』© National Film Trustee Co Ltd 1976 『バンデットQ』© Handmade Film Partnership 1981 『サン★ロレンツォの夜』©1983 RAIUNO/Ager Cinematografica Srl. Licensed by SACIS-Rome-Itary.All Right Reserves 『バーディ』© 1984 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved. 
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                                                      COLUMN/コラム2014.03.28 個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年4月】にしこ 1984年公開の大ヒット作「グレムリン」の続編です。1作目で、心優しい主人公ビリーが父親からのクリスマスプレゼントとして贈られたのが見るもかわいい新種の生物モグワイ。父親がチャイナタウンの怪しげな骨董店から連れ帰ってきたそのモグワイは、素直で愛くるしく、歌を歌ったり、人の言葉を理解したりとビリーは夢中に。「ギズモ」と名づけてかわいがります。しかし、モグワイには飼育する上で絶対に守らなければいけない鉄の掟が。【まぶしい光をあててはいけない】【水をかけてはいけない】【12時過ぎたらどんなにほしがっても食べ物を与えてはいけない】。ビリーはこのルールを破るつもりはなかったのですが、アクシデントでギズモに水がかかってしまい、ギズモから派生した兄弟モグワイたちが大暴れする・・・というのが前作のストーリーですが、この続編では、前作で別れ別れになったビリーとギズモが再会し、2人で再びNYの街に現れた凶悪グレムリンたち退治に乗り出します!!1作目で、テレビの面白さを覚えたギズモはすっかりテレビっ子に。テレビで見た『ランボー』の真似をするシーンが!!もうかわいい!!のひとこと!!ぜひともギズモのかわいい勇士を放送でお楽しみ下さい!!4月のシネマでは『グレムリン』と本作『グレムリン2/新・種・誕・生』をシリーズ一挙放送!!そして、ギズモのヒーロー(!)である、ランボーの最後の戦いを描いた『ランボー 最後の戦場』も放送します!!この奇遇を見逃す手はありません!! © Warner Bros. Entertainment Inc 
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                                                      COLUMN/コラム2014.03.28 個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年4月】うず潮 ジェニファー・ビールスの出世作。プロのダンサーになることを夢見る女性が夢に向かって生きていく姿を描いたダンス・ムービー!プロのダンサーになることを目指し、昼は鉄工所、夜はフロアダンサーとして働くアレックス。憧れのバレエ団に応募しようとするが、他の応募者の経歴にビビッて、帰ってしまう。が、夢を目指して頑張る仲間たちの姿や恋人の後押しを受けアレックスは、もう一度オーディションを受ける決意をする。仕事でへこんだ方は、これを見ればきっと明日から元気に働けるはず! COPYRIGHT © 2014 BY PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED. 
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                                                      COLUMN/コラム2014.02.26 個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年3月】にしこ 23歳のアンは失業中の夫と2人の娘と、母親の家の庭のトレーラーハウスで暮らしている。ある日、体調の異変を感じて行った病院で、余命2、3ヶ月を宣告される。17歳で初めてキスした相手の子供を生んだ。お酒も飲まない、タバコはもちろんドラッグもやらない。夢もあったけれど、生活があった。叫びだしたいほどの理不尽を飲み込み、受け止めながら、病気の事は誰にも言わないと決める。そしてあるリストを作る。「死ぬまでにしておきたいこと」リスト。「娘たちに毎日愛していると言う」「娘たちが18歳になるまで誕生日のメッセージを贈る」「好きなだけお酒とタバコを楽しむ」「思っていることを話す」「夫以外の人と付き合ってみる」「爪とヘアスタイルを変える」など。幸せだったけれど、いろいろな事を諦めて生きてきた彼女が命の期限を宣告された時、覗かせる女性としての顔。現実に追われて向き合う事を忘れていた「本当の自分」。淡々と生々しさを一切排除して進む物語の中で、死の近づきと彼女の生き生きとした表情が反比例しているのが印象的です。3月のザ・シネマでは様々な切り口で「人生」を切り取った特集「最高の人生!」をお送りします!こちらもあわせてお楽しみください!! ©2002 El Deseo D.A.S.L.U.& Milestone Productions Inc. 
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                                                      COLUMN/コラム2014.02.26 個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年3月】うず潮 エディ・マーフィを一躍スターダムへと押し上げた出世作!さらに『ジョー・ブラックをよろしく』などを手掛けたマーティン・ブレスト監督、製作は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジェリー・ブラッカイマーと、今ではなかなかないと豪華なスタッフ陣!そして、エディ・マーフィのその場を圧倒するマシンガントークは、何度見ても引き込まれます!さらにエディ・マーフィに感化され、次第に大胆になっていくビバリーヒルズの刑事二人も変化も見どころのひとつ。何度も見ても面白いこのシリーズをザ・シネマでは、シリーズ全3作品を一挙に放送します!お楽しみに! Copyright © 2014 by PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED. 
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                                                      COLUMN/コラム2014.02.23 2014年3月のシネマ・ソムリエ ■3月1日『死ぬまでにしたい10のこと』 カナダ人女優S・ポーリーが、スペインのI・コイシェ監督と組んだヒューマン・ドラマ。ガンで余命2、3ヵ月と宣告された23歳の女性の生の輝きを見つめていく。 妻であり母親でもあるヒロインは、誰にも病のことを告げず“死ぬまでにしたいこと”を実行していく。劇場公開時には、その10の秘密のリストの内容が物議を醸した。 脇役も含めたユニークな人物描写、小道具や音楽へのこだわりが感じられるディテールが魅力的。お涙頂戴の“余命もの”とは異なる視点で人生の哀歓を綴った秀作だ。 ■3月8日『第七の封印[HDデジタルリマスター版]』 十字軍の遠征からスウェーデンに帰還した騎士が、疫病や魔女狩りで荒廃した祖国の現実を目の当たりにする。そんな騎士の行く手には不気味な死神が現れるのだった。 中世ヨーロッパに死神を出現させ、信仰や人生の意味といった根源的なテーマを問いかける異色作。I・ベルイマン監督のファンに熱狂的に支持されている寓話である。 幻想的なイメージと哲学的な思索に富んだ映像世界は、巨匠のフィルモグラフィの中でも異彩を放つ。“死神とのチェス”や“死の舞踏”などの名場面も鮮烈な印象を残す。 ■3月22日『狩人と犬、最期の旅』 妻や愛犬とともにロッキー山脈の大自然のまっただ中で暮らす実在の猟師ノーマン・ウィンター。彼の一年間の生活ぶりを密着取材したドキュメンタリー・ドラマだ。 昔ながらの狩猟法を実践し、厳しい自然と共生する男の生き様を記録。とりわけ犬たちとの絆を育み、凍てつく湖上や山道をソリで走るエピソードが驚きと感動を呼ぶ。 ブリザードが吹き荒れる雪原やオーロラなどの雄大にして幻想的な風景も観る者を圧倒。著名な冒険家で、自然の魅力を熟知したN・ヴァニエ監督ならではの逸品である。 ■3月29日『コレラの時代の愛』 ラテンアメリカを代表するノーベル文学賞作家G・ガルシア=マルケスの同名小説を映画化。19世紀末から20世紀にかけてのコロンビアを舞台にした純愛映画である。 貧しい郵便局員の青年が裕福な商人の娘にひと目惚れ。身分違いゆえに離ればなれになりながらも、初恋の女性を50年以上も想い続ける主人公の数奇な人生を映し出す。 主演は『ノーカントリー』、『007 スカイフォール』のH・バルデム。一途な愛を貫く一方で多くの女性と関係を持つ男の悲哀や滑稽さを、老けメイクを施して体現する。 『死ぬまでにしたい10のこと』©2002 El Deseo D.A.S.L.U.& Milestone Productions Inc. 『第七の封印[HDデジタルリマスター版]』© 1957 AB Svensk Filmindustri 『あなたになら言える秘密のこと』©2005 El Deseo M-24952-2005 『狩人と犬、最後の旅』©2004 MC4 /TF1 International / National Film Board of Canada / Pandora / JMH / Mikado 『コレラの時代の愛』©Copyright 2007 Cholera Love Productions,LLC ALL RIGHTS RESERVED. 
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                                                      COLUMN/コラム2014.02.07 『月刊エーカーズ』副編集長が紹介する、ハリウッドの名車たち ■72年型フォード・グラントリノ・ファストバック 昨年夏、ミシガン州デトロイト市の財政破綻が報じられた。デトロイトの周辺都市はアメリカの自動車メーカー、いわゆるビッグスリーとともに発展してきたが、自動車産業の斜陽化、製造工場の移転などにより衰退。デトロイト=モーターシティとして世界的に認識される一方で、80年代以降はダウンタウンのスラム化や犯罪率の高さなど、その治安の悪さでも広く知られるようになった。そんな“斜陽の街”と“人生の晩年”を重ね合わせたのがこの作品であり、主人公もデトロイトの華やかなりし時代を知る元フォードの従業員という設定で描かれている。そして、その主人公が大切にしている愛車として登場するのが、作品タイトルにもなっている72年型フォード・グラントリノ・ファストバックである。 作品を見ればすぐにわかることだが、ルーフからリアエンドへとなだらかな曲線を描くクーペボディこそがファストバックと呼ばれる形状である。敢えて車名の後にボディ形状を書いたのは、この72年型グラントリノにはこの他にも2ドア・ハードトップやステーションワゴンといったボディ形状が用意されていたからだが、作品中で主人公がグラントリノを眺めながら「美しい……」とつぶやくシーンは、やはりこの流麗なファストバックがそこにあってこそだと思う。 作品中、この車両の細かな仕様について描かれている部分はほとんど見当たらない。だが、街のギャングたちが羨望の眼差しで「コブラジェット」とつぶやくシーンから351cu.in.(※1)のコブラジェットV8エンジンを搭載していることだけはわかる。コブラジェットとは強制吸気システムに対するフォード固有の呼称で、簡単に言ってしまえばハイパフォーマンス・エンジンを意味する言葉。そして72年型グラントリノに用意された数種類のエンジンの中で、コブラジェット・エンジンは351が唯一だったのである。 ただ、前年の71年型グラントリノにはこれよりも断然パワーのある429cu.in.のコブラジェットV8が用意されていた。実は72年型というのは排ガス規制を先取りしてアメリカの自動車メーカーが一斉にエンジン出力を低下させ、多くのハイパフォーマンス・エンジンが内容を変えたり、その存在自体が消えたりしたモデルイヤーでもあった。429コブラジェットから351コブラジェットへと変化したのも、その影響と言っていいだろう。 60年代からビッグスリーが派手に繰り広げてきたエンジン出力競争、マッスルカーの時代が終焉を迎えたモデルイヤー。72年型の背景にあるそんな物寂しさもまた、この『グラン・トリノ』という作品に欠かせない演出に思えるのである。 ※1 cubic inches。近年はリットル表記も増えてきてはいるが、古くからアメリカ車のエンジン排気量はキュービックインチ=立方インチで表記されることが一般的。ちなみに351cu.in.は約5.7リットルで、429cu.in.は約7.0リットル。 ■67年型シェルビーGT500 伝説的な自動車泥棒を主役とした本作はリメイク作品であり、その元となった74年公開の『Gone in 60 seconds』(邦題は『バニシングIN60”』)も、以前から日本のアメリカ車ファンの間では語り草の作品だった。物語の準主役とも言えるのが最後の盗みのターゲットとなるエレノアだが、旧作ではイエローの73年型フォード・マスタング・マック1、そしてリメイクの本作では67年型シェルビーGT500となっている。 このシェルビーGT500は、ル・マン24時間などでも活躍したアメリカ人ドライバー、キャロル・シェルビー率いるシェルビー・アメリカンがフォード・マスタングをベースに製作、販売した車両。最高出力355hpを発揮する428cu.in.V8エンジンを搭載し、細部の仕様も通常のマスタングよりレーシーな内容で仕上げられている。だが、当時シェルビーは同じマスタングをベースとしながらも更にハードコアな内容のGT350もラインナップしており、それと比較するとエアコンやオートマチック・トランスミッションを選択できるなどGT500の方がよりストリートでの使用を考慮した内容となっていた。 そもそもGT350はレースでの使用を前提に開発されたモデルであり、GT350/GT500ともに現在言われるマッスルカーの代表的なモデルとして認識されているが、シェルビー・アメリカンが製作したスペシャル・モデルだけにその製造台数は少なく、この67年型GT500の製造台数は2000台程度、GT350はその半分程度でしかない。そうしたことから希少性が高く、特に2000年代に入ってからその価値は急騰。現在では10万ドルオーバーは当たり前で、その2倍、3倍する個体も珍しくなく、コレクターカーとしても代表的なモデルとなっている。そんなクルマがド派手なカーチェイスを繰り広げるのだから否が応にも注目は高まる訳で、この作品のエレノアにGT500をチョイスしたのは大正解だったと思う。 ■68年型ビュイック・スカイラーク 2011年の作品ながら、舞台は1979年のオハイオ。ストーリー的に目立つアメリカ車と言えば、ヒロインであるアリスの父のクルマである68年型ビュイック・スカイラークや、物語終盤で主人公たちの力になってくれる写真屋のダニーが乗る72年型ポンテアック・カタリナなどが挙げられるが、マニア的な視線で見ていると何気ないシーンに出てくるクルマたちが妙に気になる作品でもある。 特に物語中盤で出てくる中古車店のシーンでは初代フォード・マスタングやシボレー・エルカミーノなどが並び、フロント・ウィンドウに3299ドルという価格が書かれた68年型シボレー・カマロの姿があったと思ったら、通りの向こう側には68~69年型あたりのフォード・トリノが見えたり。さらに別のシーンでは71年型のトリノが横切っていったり、先述のアリスの父親が乗るスカイラークがAMCペーサーに突っ込んでいったり…。1979年の光景を描くにあたって自動車を非常に有効的に活用しているこの作品、アメリカ車のファンなら細部のディテールまで楽しめること請け合いだ。 ■71年型プリマス・バリアント スティーブン・スピルバーグの出世作となったこの作品。いまひとつ冴えないごく普通のサラリーマンが運転するクルマが、道中で追い抜いたトレーラー(50年代~60年代のピータービルド281)に執拗に追いかけられるというストーリーだが、ことクルマに関して言うならば、主人公の乗るクルマに71年型プリマス・バリアントをチョイスした点に尽きるだろう。 プリマスはクライスラー社のブランド。71年当時のクライスラーはインペリアル、クライスラー、ダッジ、プリマスと4ブランドを抱えていたが、そのうち最も大衆的な立ち位置にあったのがプリマスだった。そして71年型プリマスのラインナップで最も安い価格帯にあったのがコンパクトカーのバリアント。つまり敢えて最も大衆的なブランドの最もチープなモデルを起用することによって、主人公の“冴えなさ”と“普通”という部分をクルマで表現しているのだ。 当時ライバルメーカーが販売していた同等のクルマを挙げればシボレー・ノバ、フォード・マーベリックあたりになるだろうが、バリアントと比較すると、どちらも洗練され過ぎていて違う気がするのである。 ■63年型キャデラック・エルドラド・ビアリッツ 『激突』の主人公を表現しているのが71年型バリアントならば、この『48時間』はヤレた63年型キャデラック・エルドラド・ビアリッツが主人公を表現。巨大なボディのコンバーチブルは見るからに安っぽい水色でリペイントがなされており、無骨で野暮ったい白人の刑事という役柄に巧くマッチしている。 アメリカ人は伝統的にコンバーチブルを好む傾向にあり、60年代から70年代にかけては多くのモデルがボディバリエーションにコンバーチブルを設定していた。だが70年代に入って衝突時や転倒事故(ロールオーバー)時の乗員保護という観点からコンバーチブルは危険という声が高まり、76年型のキャデラック・エルドラドを最後にビッグスリー全てがコンバーチブルの製造を休止した。 アメリカ車にコンバーチブルが帰ってきたのは82年型のクライスラー・ルバロンからで、キャデラックでは84年型エルドラドから復活。そしてこの作品がアメリカで公開されたのは82年末のこと。そんな時代背景を踏まえて見れば、コンバーチブルを愛する主人公がまた少し違って見えるかもしれない。 ■73年型フォード・ファルコンXB 『マッドマックス』と言えば、主人公の最終兵器として登場したインターセプターに尽きるだろう。ベースは73年型フォード・ファルコンXBだが、フォードと言ってもアメリカではなくオーストラリア・フォードのモデルなので念のため。 だがそれでも、この映画が日本の自動車ファン、特にアメリカ車のファンに与えたインパクトは絶大だった。 真っ黒なボディ、不気味なフロントマスク、エンジンフードから頭を突き出したウェイアンドのブロワー(=スーパーチャージャー)。その姿に衝撃を受けて、アメリカ車に興味を持つようになったという人は想像以上に多い。 このインターセプターを実車で再現した例もオーストラリアを中心に世界各地で見られ、その影響は世界規模である。 ■67年型ポンテアックGTO 主人公の愛車として活躍するのは、いわゆる縦目4灯のフロントマスクが時代を感じさせる67年型のポンテアックGTO。年式を問わず日本での馴染みはいまひとつのGTOだが、アメリカでは現在に至るまで非常に高い人気を得ているモデルである。 このGTOがデビューしたのは64年で、安全性の問題から当時のゼネラルモーターズの規定ではミッドサイズには積めないことになっていた大排気量の高出力型エンジンを強引に搭載してデビューした。そんなことからマッスルカーの元祖的に語られることもあるが、そもそもマッスルカーという言葉自体が後の時代に生まれたもので、そこに明確な定義があるわけではなく、そのルーツも諸説あるのが実情だ。 ちなみに、このGTOの開発時にポンテアックの責任者の立場で会社に無理を押し通したのはジョン・Z・デロリアン。後の時代に独立し、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で広く知られるデロリアンことDMC12を生み出した人物である。 文/『月刊エーカーズ』副編集長 守屋明彦 『グラン・トリノ』©Matten Productions GmbH & Co. KG/『60セカンズ』©Touchstone Pictures/『SUPER 8/スーパーエイト』© 2013 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved./『マッドマックス』© Crossroads International Finance Company, N.V./『トリプルX』2002 Revolution Studios Distribution Company, LLC. All Rights Reserved. ■ ■ ■ ■ ■ アメリカン・カーライフ・マガジン 月刊エーカーズ 3月号好評発売中! 【ベールを脱いだフルサイズ・ピックアップ、フォードF150】新型エスカレード登場!!■巻頭特集/2014年モデル・オール・カタログ【トラック、バン、SUV編】 ◆第2特集/現代的なFEELで愉しむクラシックモデル/'64シェベル・マリブ&'68コロネット◆シェビー・クラシックス/'67シボレー・シェベル・コンバーチブル◆ニューカー・インプレッション/'14シボレー・シルバラード&'14フォード・フィエスタ 
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                                                      COLUMN/コラム2014.01.31 個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年2月】にしこ 原作は言わずと知れたアガサ・クリスティの代表作ですが、映画自体も原作同様、またそれ以上に有名な傑作かと思います。作品の素晴らしさはもちろんですが、なによりその「豪華さ」にうなる作品です。1974年のアカデミー賞受賞作品です。豪華。 まず、舞台のオリエント急行。ヨーロッパを横断する、あの王侯貴族や、お金持ちが利用した豪華寝台急行です。サービス、内装はもちろん超一流。豪華。そしてキャスト。まず、灰色の脳細胞・名探偵ポワロ役にアルバート・フィニー。彼のベルギーなまりの英語(という設定)のチャーミングさはこの上品な緊迫感漂うサスペンスの緩急の良い「緩」になっております。そしてアンソニー・パーキンス、ショーン・コネリー、ヴァネッサ・レッドグレイヴ!イングリッド・バーグマン、ローレン・バコール!!豪華の洪水です。ミステリーはやはり事件の核心に迫る登場人物はスターがキャストされがちですが、この豪華さ、観る前に誰が犯人なのかうっすらわかってしまうなんて心配はございません。しかし、この作品の緻密で巧妙なトリックとストーリーテリングの前では、キャスティングからのネタバレなど心配いらないのかもしれません。 未見の方は「あっ!」と驚く結末が待っている事をお約束します!名探偵ポワロが暴き出す、悲しくも美しい事件の真相。豪華列車で起こる華麗なる殺人の結末をザ・シネマで目撃して下さい!!ザ・シネマでは名探偵ポワロの活躍を描く『死海殺人事件』もご用意!!こちらも必見です!! ©2013 BY EMI FILM DISTRIBUTORS LTD. ALL RIGHTS RESERVED.