洋画専門チャンネル ザ・シネマ

車!仲間!女!絶対ハマるワイルド・スピードの世界 車!仲間!女!絶対ハマるワイルド・スピードの世界

視聴方法はこちら

 いまやパラマウント屈指のドル箱シリーズとなった「ワイルド・スピード」。先ごろは第五作『ワイルド・スピードMEGA MAX』から参戦したホブス捜査官(ドウェイン・ジョンソン)と、『EURO MISSION』のラストで衝撃的に登場した凶悪な一匹狼デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)がコンビを組むスピンオフ『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』が公開されるなど、ワイスピ・ユニバースと呼ぶべき状況にまで発展を遂げている。

 ワイスピといえば、一作目では公道レースにのめり込む犯罪者ドミニク(ヴィン・ディーゼル)と潜入捜査官ブライアン(ポール・ウォーカー)の間に芽生える友情を描いていたが、次第にスケール感を増し、ドミニク率いるアウトロー集団が前述のホブスらと手を組み、世界の危機に立ち向かう一種のヒーロー映画に化けた。その大転機となったのが、ブラジルの大都市リオデジャネイロでドミニク・ファミリーが大暴れした『MEGA MAX』で、まだワイスピを未体験という人にはまず『MEGA MAX』をおススメすることにしている。最近のワイスピが打ち出している疑似家族的なテーマ性や、破天荒なノリと楽しさが凝縮されているからだ。

 何度も危機を乗り越え、右肩上がりの成長を見せているワイスピだが、七作目の『SKY MISSION』撮影中にシリーズ最大の悲劇に見舞われた。ブライアンを演じヴィン・ディーゼルと二枚看板を張ってきたポール・ウォーカーが、現実の世界でのカークラッシュで亡くなってしまったのだ。

 ポールは友人の車の助手席に乗っており、猛スピードの運転による単独事故だった。奇妙なことに、事故現場は用事がない車両が入ってくることもなければ、アクセルを吹かすほどの距離もない隔絶された一区画だった。筆者は現場を訪れたことがあるのだが、歩道に突っ込んだ時のタイヤ跡は無謀運転というよりもコントロールを失ったかのように見えた。今となっては真相はわからないが、時折マッスルカーやトラックがやって来て、車から降りるでもなくしばらく時間を過ごして走り去っていったのが印象に残った。きっと彼らもワイスピのファンで、彼らなりのやり方でポールを悼みに来たのだろう。

 『SKY MISSION』の撮影は一旦中断されたが、プロデューサーも務めるヴィン・ディーゼルと製作陣は撮影の続行を決め、ポールの代役を実弟のカレブとコディが務め、CG技術を駆使してポールの顔に差し替えた。たまに不自然にポールの顔が映らないシーンがあるはスタッフの苦肉の策だったのだろう。しかし驚いたことに、悲劇と困難の中で完成した『SKY MISSION』は、言うなれば「ポール・ウォーカー祭り」と呼びたい仕上がりになっていたのだ!

 ぶっちゃけた話、ポールは正統派の二枚目俳優で、ヴィン・ディーゼルやドウェイン・ジョンソンのようなマイノリティに出自を持つアクの強い俳優陣が個性を発揮するワイスピの世界では次第に目立たなくなってしまっていた。ところが『SKY MISSION』にはポールのアクション的な見せ場がふんだんにあり、岸壁から転落する寸前のバスから脱出するアクロバティックなスタントや、タイが誇るアクションスター、トニー・ジャーを相手取っての対決シーンでは、ブラジリアン柔術を嗜む身体能力の高さが存分に生かされていた。

 そして特筆すべきは「映画史上でも最も美しい」と言っても過言ではない、ラストの別れのシーンだろう。ディーゼルと製作陣はストーリー上でブライアンを殺したりはせず、ワイスピ・ユニバースのどこかで生きているという設定にすることに決めた。メインキャストぞれぞれの表情がブライアン=ポールへの想いを語り、そしてドミニクとブライアンが運転する車がふたつの道に分かれていく。『SKY MISSION』は監督が三作目から担当してきたジャスティン・リンからジェームズ・ワンに交代し、テイストにも微妙な変化が見られるのだが、長年携わってきたキャストやスタッフのポールへの気持ちが詰まったラストはシリーズ屈指の名場面となった。

 そして『SKY MISSION』と『ICE BREAK』でより顕著になったのが、007シリーズや「ミッション:インポッシブル」を視野に入れた、世界を股にかけるアクションエンタメ志向。さらに超大作化に伴い、「カーアクションを可能な限り実写で撮影する」という当初からのポリシーは「誰も見たことがない斬新なアクションを人力で生み出す!」という狂気じみた執念すら感じさせるようになった。公道レースに熱くなっていた素朴な時代が懐かしくもあるが、アウトローの意地と誇りという初期からのスピリットを失うことなく、これほどの規模での成長をリアルタイムで目撃できていることは、映画ファンにとって幸せな体験だと心から思っている。

村山章
映画ライター。1971年生まれ。映像編集スタジオを経て映画ライターに。雑誌、新聞、ウェブ等で映画記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」では代表を務める。

 ストリートレースに生きる男たちのドラマから、スーパーカーを駆使してミッションを遂行する超絶アクション映画へと進化した『ワイスピ』こと『ワイルド・スピード』シリーズ。続きも続いたり、15年間で合計7本! もはや一見さんには踏み込めない、ディープな世界を形成しているように思えるが、どっこい作りは単純明快、かつ観客の嗜好を満たす娯楽純度の高いシリーズだ。なので、新規参入をいまからでも暖かく迎えてくれる。

 もともと1作目の『ワイルド・スピード』(01)は、路上の走り屋が改造車でスピードを競うストリートレースを舞台に、ポール・ウォーカー演じる潜入捜査官ブライアンと、ヴィン・ディーゼル演じる走り屋の王ドミニクのライバル関係を描くカーバトル映画だった。
しかしヴィン・ディーゼルのシリーズ復帰と、彼が演じるドミニクとブライアンが手を組む4作目の『ワイルド・スピード MAX』(09)から、『ワイスピ』は2人を中心に、過去シリーズに登場したアウトローたちを仲間として取り込んでいき、現在の“チームミッションもの”の形を成していったのである。ああ、なんという少年漫画イズム!

 そんな変化のいっぽうで「車」「美女」そして「アクション」という、男の好物を三点盛りにしたシリーズの構成要素は、昔から徹底した魅力を発し続けている。

 たとえば「車」――。カーバトル映画の出自を持つ『ワイスピ』は、日本車によるアメリカ市場の制圧や、それに対抗するアメ車といった、製作当時の車事情を反映していた。しかし回を重ねて物語が壮大になるにつれ、ド派手な高級車や特殊車両がガンガン登場し、それらが容赦なく破壊されるなど、シリーズにおける車の役割は変質化している。が、
「仲間を重んじる人情派のドミニクは、ローテクで硬質なアメ車」
「切れ味するどい運転テクを持つブライアンは、ハイテク志向の日本車」
というふうに、登場車がそれぞれのキャラクターを体現するといった、車種に対するこだわりは1作目から熱く継受されているのだ。

 そして「美女」――。ドミニクのパートナー、レティ(ミシェル・ロドリゲス)や妹ミア(ジョーダナ・ブリュースター)など、男たちを取り巻く『ワイスピ』ヒロインはエキゾチックな美女がそろっている。いずれも修羅場をくぐってきただけに、うかつに手を出すと骨を折られそうな強者ばかりだが、そんな浮世離れした彼女たちだからこそ、映画の華としていっそうの輝きを放つ。
またセミレギュラー、イレギュラーで登場するヒロインも注目のひとつで、昨年『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(15)でワンダーウーマンを演じ、話題をさらったガル・ガドットや、日本を発祥とするドリフトバトルを盛り込んだ3作目『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(06)の北川景子など、当世話題の美女たちの初々しい姿を拝めるのも『ワイスピ』ならではの楽しみだ。

 さらにダメ押しは「アクション」――。流麗なドライブテクを駆使して繰り広げられるカーバトルはシリーズ名物の見せ場だが、時代を経てアクションのスタイルもアクロバティックに、そしてエクストリームに激化し、もはや車で空中を駆けるようなシチュエーションさえ珍しくない。
また、ヴィン・ディーゼルのアクションスターとしてのキャリアと共にあるシリーズだけに、映画はカーバトルを越えた肉体アクションを見せることもある。特に5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』(11)におけるドウェイン・ジョンソンの参戦は衝撃的で、ヴィンとロック様、アクション界のツートップが、怪獣映画もかくやの直接対決を披露してくれるのだ。

 もちろん、ストリートレースやドリフトバトルに軸足を置いた初期作も、爆走描写の快感は未だ色褪せることはなく、こうした作品ごとの推移をまとめ見して実感するのも、シリーズものならではの醍醐味といえるだろう。現在、最新作となる8作目が製作中の『ワイスピ』、いまならまだまだ十分間に合うぞ!

尾崎一男
映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「特撮秘宝」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」「cinefil」などがある。併せて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも顔を出す。
ページトップへ