COLUMN & NEWS
コラム・ニュース一覧
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COLUMN/コラム2012.08.16
ジョニデを探して on サンセット大通り
あのビリー・ワイルダーの名作にも名を残す、ロサンゼルス一有名なこの目抜き通りは、1911年にハリウッド最初の映画スタジオが誕生して以来、映画の道として知られてきました。西はベル・エアーやビバリー・ヒルズなど映画スターが多く住む高級住宅地、東はハリウッド、35キロに渡って伸びる大通りは、映画とは切っても切れない関係にあります。でも、サンセット大通りはそれだけじゃありません。ここは、ゴーゴーダンス発祥の地とも言われるWhisky A Go-Goを始め、The Roxy Theatre、Key Club、The Viper Room、House of Bluesなどの有名なナイトクラブが軒を連ね、毎年8月には道を封鎖してのミュージックフェスタも開かれる、音楽の通りでもあるのです。そして、映画&音楽といえば、このお方。ザ・シネマ恒例イケメン俳優グランプリで目下4連覇中のジョニー・デップです!今回は、まさにジョニデが追い求める二つが詰まったサンセット大通りに、彼の欠けらを探しにいざ出発! まず、サンセットでジョニデゆかりといえば何と言っても、ナイトクラブのThe Viper Room。その昔1940年代には、あのミッキー・コーエンやバグジー・シーゲルも訪れていたというジャズバーでした。その後、幾人かの手を経て、共同オーナーとしてジョニデがThe Viper Roomとしてオープンしたのが1993年。オープニングにはティム・バートンやタランティーノも駆けつけました。元々はミュージシャン志望でもあったジョニデ自身も演奏し、ロック系のハードな音楽を主体としたThe Viper Roomは、ジェニファー・アニストン、ドリュー・バリモア、トム・ハンクスなど、数々の俳優やミュージシャンが集まる場所としても有名です。残念なことに、このクラブを一層有名にしたのが、ジョニデの友人でもあったリバー・フェニックスのドラッグ中毒死でした。その後、10年を経てもリバーの影が薄れることはなく、バーを巡って訴訟などが起きたこともあり、ジョニデは遂に2004年にクラブを手放してしまいます。楽しい音楽と、俳優・ミュージシャン仲間が人目を気にせず楽しめる場所を目指してオープンしたというジョニデの思いを考えると、少し寂しい気もしますね。 そんなThe Viper Roomから1ブロックほど離れた所にあるのが、タトゥーショップのShamrock Social Clubです。その腕はもちろん、ソーシャルクラブという名前の通り、ビリヤードやおしゃべりを楽しむ社交場としても愛され、アンジェリーナ・ジョリーやレディー・ガガなどセレブが数多く来店。ジョニデもお気に入りの一つで、店に出入りする姿もパパラッチされています。ところで、数えきれないジョニデのタトゥーの中でも名高い(?)のが“Winona Forever”。「シザーハンズ」共演後に交際していたウィノナ・ライダーにちなんで彫ったものの 、破局後に「Wino Forever(アル中万歳!)」に変えてしまったというのは有名なエピソード。つい最近も長年のパートナーだったヴァネッサ・パラディと別れてしまったジョニデですが、また一つタトゥーが消される運命にあるのでしょうか? 最後にご紹介するのは、ハリウッドの伝説的ホテル、Chateau Marmont。カリフォルニアとは思えない古いお城のような佇まいのホテルには、古くはF・スコット・フィッツジェラルドやジェームズ・ディーンから、リンジー・ローハン、ヒース・レジャーまで、俳優、ミュージシャン、作家など多くの著名人が宿泊。映画にも頻繁に登場し、クエンティン・タランティーノの「フォー・ルームス」や、ソフィア・コッポラの「Somewhere」などで、いい味を出しています。ジョニデも宿泊やイベント出席などで同ホテルを訪れていますが、なんと、ケイト・モスとは交際当時にホテルの全室で愛し合ったと本人が豪語したとかしないとか。さすがジョニデ、その体力と財力には唸らされます。さて、少し歩いただけでも、ジョニデに縁のある場所を発見できるサンセット大通り。実はジョニデ、サンセットの裏通りに家も持っているそう。ジョニデの欠けらを探してサンセット大通りを歩けば、ほかでもない本人に出会えるチャンスかも?!■
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COLUMN/コラム2012.08.14
吹き替え担当者よりご報告、『レイダース』ノーカットTV版吹き替えが無い!?の巻
春の放送時に、すでに字幕版だけでなくHD吹き替え版をあわせてお送りしており、その際に村井国夫のノーカットビデオ版をレイバックしてHDバージョンを作った、という顛末は、別記事にてすでにご報告しましたが、今回は、TV版の方のオンエアです。 TV版吹き替えは、ザ・シネマが大切にしてきた、特別なコンテンツの一つ。 いま改めて、むかしTVで見た吹き替え映画を見なおしてみれば、きっと懐かしい思いがすることでしょう。こみあげてくるノスタルジーがあるはずです。あの日あの頃の情景がフラッシュバックで蘇るかもしれません。字幕版ではそれがないとは言いませんが、より「懐かしさを楽しむ」ということができるのは、少なくとも水野晴郎や淀川長治が映画の原体験だという多くの人にとって、やはり、TV版吹き替えの方でしょう。 「懐かしさを楽しむ」、これは映画そのものが持っているオリジナル本来の価値や面白さとはまた違った魅力、それも、かなり大きな魅力ではないでしょうか。ザ・シネマが往年のTV版吹き替えを尊重する理由の一つです。そして、まさに、あの頃みんなが胸躍らせた『インディ・ジョーンズ』123作のような作品は、「懐かしさを楽しむ」を提案し続けてきた当チャンネルの立場として、TV版吹き替えの放送もマストなのです。 今回、TV版でも、すでにオンエアしているビデオ版同様、あえて村井国夫版(現在は村井國夫とご改名されています)をチョイスしています。ちなみにこのバージョンはDVD・ブルーレイには未収録(らしい)です。 もちろん村井さん以外のバージョンも、いろいろと存在はします。主立ったところでは、『ブレードランナー』新録の時に当チャンネルでも吹き替えをお願いした、ハリソン・フォードのもう一人のFIX声優・磯部勉さんバージョン。ハリソンと言えば磯部さん、という印象も定着してはいるのですが、磯部さんは『レイダース』を吹き替えられたことがどうやらないみたいだ、3本揃わなくなる、ということが今回はネックに。 また、ジャック・ライアンなどは磯部さんイメージでも、インディとハン・ソロに関しては村井さんの声のイメージを勝手に抱いている、という担当者の個人的感覚も、理由としてありました。 村井さんの軽妙な、あえて言えば良い意味でちょっと“チャラい”持ち味が、宇宙のチャラ男 ハン・ソロにはまさにハマり役だった気がします。インディも、80年代後半の金曜ロードショーでの村井版がインディ吹き替えの元祖なので、逆にその印象から、インディアナ・ジョーンズ博士というキャラクターに対してちょっと“チャラい”イメージを持ってしまっていた、という逆転現象も、私の中では起こっていました。 子供の頃、村井さんの声でシリーズを見てそういう印象を抱いていて、字幕で見られる歳になって原音で聞いてみたら、インディが渋くてダンディな男だったことにビックリ!という覚えがあります。個人的思い入れではありますが、しかしこれ、私だけの感覚ではないのではないでしょうか?オリジナルにイメージが近いのは磯部さんの方かもしれません。あちらも流石に素晴らしかった!しかし、オリジナルから若干ズレた印象を吹き替えが与えてしまったとしても、それもまたよしだった古き良き昭和の吹き替え。日本の吹き替え文化がかつて持っていた豊かさでしょう、これは。その価値観で言うなら、村井版もやっぱり素晴らしいのです! 人情味が数倍増しになる羽佐間道夫版のロッキー、朴訥なキャラがより強調される、ささきいさお版のランボー、どちらもスタローン本人の声とは似ていないけれど良い!ということと同じです。小池朝雄→石田太郎のコロンボ、山田康雄のダーティハリーも同様。オリジナルよりキャラが魅力的になってますけど、なにか?という域にまで達した吹き替えの傑作も、その昔には存在しえたのです。村井国夫版インディはその一つに数えていいのではないでしょうか。 ネット情報によると、『レイダース』は、金曜ロードショーの1985年10月4日、前身の水曜ロードショーから引っ越ししてきて最初の回の放送作品だったようです。 またも個人的な話で恐縮ですが、私が見たのは1987年12月25日の再放送でした。その夜は水曜ロードショーから通算して800回記念というメモリアルな回で、故・水野晴郎さんのトークも、過去取り上げてきた主な映画の懐古が話のメイン。『レイダース』の解説は少しだけという特別なスタイルをとっていたことを、今も鮮明に記憶しています。なぜなら、この回をビデオに録画した私は、全キャラの台詞を時系列順に完コピできほど、どのタイミングで何のCMが入るかまで覚えるほど、飽きずに何度も何度も繰り返し見たからです。軽く100回は見たのではないでしょうか。今、こういう仕事に就いている、それが一つの原点です。 今回、業務として久しぶりにこのTV版を視聴した途端、先ほど書いた通りの、泣けてくるようなノスタルジーがこみあげてきたことは、言うまでもありません。同様の感傷にひたっていただける方、懐かしさを共有いただける方が、一人でも多くいてくださることを、担当者として切に願っています。 金曜ロードショーでオンエアされたものは85年・87年どちらもノーカットの村井版でした。もちろんTVの場合はノーカットと言ってもエンドロールは大抵カットされますので、余韻を楽しむ、という訳にはいきませんが。それ以外にも、オリジナルとのちょっとした違いは存在します。例を2つ挙げましょう。 まず序盤ネパールの酒場、熱せられた「ラーの杖の冠」のメダルを握って手の平をヤケドしたゲシュタポのトートが、慌てて屋外に出て積雪の中に手を突っ込み、思わず「あ〜キモチい!」と漏らす、あの、ちょっとコメディっぽい台詞。TV版のトート役の内海賢二もビデオ版の樋浦勉もそう言っていますが、原語版では「ワオ」とか「ハウッ」とか、声にならない声を上げているだけ。気持ち良いなんてことは一言も言ってないのです。『レイダース』はTVとビデオで同一翻訳を使い回しているようなので、あの台詞は声優さんのアドリブではなく、翻訳家が台本に盛り込んだ、昭和のTV吹き替えならではの“サービス”なのでしょう。こうした小さなアレンジが塵も積もれば山となり、金曜ロードショー版はオリジナルよりちょっとだけコメディ寄りの印象に振れています(前述した村井さん一流の個性もありますし) もう一カ所、「魂の井戸」でインディとマリオンが生き埋めにされる場面。2人の頭上で入り口が閉ざされ、2人を見殺しにベロックやトートらナチス側がその場を立ち去るシーンですが、ここでTV版ではBGMが入ります(カイロの路地でマリオンを乗せたトラックが爆発する前半シーンの音楽の流用)。しかし本来ここにBGMは入りません。オリジナルはもちろん、同一翻訳使い回しのビデオ版でさえ音楽は無し。トートの不気味な高笑いと、石扉が「ドガシャーン」と閉められる音の反響だけしか入っていません。このシーン、金曜ロードショーではCMチャンスの直前でした。生き埋めにされた2人は果たして脱出できるのか!?というサスペンスが、BGMのおかげでCM前に倍増しています。これなどはTV的な必要性からの付け足しでしょう。 この“盛る”ということもまた、往年の吹き替えならではの魅力です。後でオリジナルを見ると案外こざっぱりした印象で、「何かが違う」と、むしろ物足りなく感じてしまうことが結構あります。 以上、紙幅の都合で『レイダース』だけしか触れられませんが、『魔宮の伝説』も『最後の聖戦』も、そのTV吹き替えには、TV洋画劇場黄金時代の吹き替えならではの魅力がたくさん詰まっているのです。 最後に、今回ちょっと残念だったのは(ちょっとどころか担当者としては痛恨だったのは)、『レイダース』と『最後の聖戦』が、カット版しか手に入らなかったこと。お終いに、その顛末をご報告します。 もちろんザ・シネマは、いかなる場合でも、可能であればまずはノーカットの素材を優先的にオンエアしようと努めておりますし、TV吹き替えであれノーカットの素材が存在するのであれば、当然そちらを優先してお届けしたいのは山々なのですが…。 『インディ・ジョーンズ』123の過去のTV日本語吹き替え版は、海外の権利者の方で放送用テープを保管しており、放送契約を交わした当チャンネルは、それを一時的に借り受けてオンエアします。金曜ロードショー版であっても日本テレビから借りてくる訳ではないのです。 そこで、まず海外に、村井国夫バージョンの金曜ロードショー版のテープを送ってほしい、と詳細なリクエストを出したのですが、さすがに海外相手に「村井国夫」とか「金曜ロードショー」などと言って通じる訳がないのは当然です。「日本語吹き替え版が何バージョンかあるので、送るからそちらで中身を見てくれ」との回答があってテープが送られてきて、当方にてそれら全てを見て確認することになりました。この展開は今回に限った話ではなく、海外でテープが保管されている場合には割とよくあるパターンです。 結果、『レイダース』と『最後の聖戦』はカット版しかなかった、ということです。オフィシャルなルートから「日本語吹き替え版はこれで全部だ」という形で渡されたもののうち村井TV版はカット版でしたので、ノーカット版はもう失われてしまった、ということなのでしょう。 なお、日本語吹き替え版を作った制作会社や、それをオンエアした放送局に、当時のコピーが残されている可能性もゼロではありません。しかし、放送用のマザーテープは、吹き替えを制作した会社や放送した局から、映画の権利者(テレビ放送権の配給会社など)に提出されます。そして多くの場合、権利保護の観点から、局や制作会社側は「コピーを滅却しなければならない」という契約を結んでいますので、彼らがコピーしたテープをいま持っていなくても、むしろ当然なのです。または契約で、彼らが保管を許可されている場合もありますが、その場合は権利者に照会すれば有るなら有るでテープの在処が分かるはずです。今回は、それも無いことが一応オフィシャルに確認されています。 なぜ、過去のテープが保管されていない、破棄されてしまった、ということが起こるのか? 今回の『レイダース』、『最後の聖戦』個別の話ではなく(今回の個別の事情までは当方も把握できていません)、以下、一般論として書きますが、まず第一に、日本側の問題が挙げられます。かつてはTV放送しかなく、その音声をDVDやブルーレイに収録するとか、CSの洋画専門チャンネルでオンエアするといった未来(つまり今日)の「二次使用」を前提には考えておらず、「二次使用」という概念そのものが存在すらしていませんでした。いま我々がもう一度見たい「昭和のお宝吹き替え」の時代には、皮肉なことに、それを保存しておかねばならない必要性が、今日ほど大きくはなかったのです。そのため、権利保護のための滅却という以前の問題で、不要になったから日本側で捨てちゃった、というケースもあったのです。 第二に、海外側の問題。「昭和のお宝吹き替えだ」「バージョン違いの日本語吹き替え版には、声優さんごとのそれぞれ違った趣がある」といった価値観を、海外の権利者に理解してもらうことは、さすがに難しそうです。特に、DVD日本語音声用などの用途で、吹き替えが近年になってノーカットで新録されたような場合、それが最新・最良の素材という扱いになるため、過去の、カットされた、古い旧式のテープで残されている日本語版を保存し続けていかねばならない必要性を、海外側では強く感じてくれない、ということがあります。これは仕方ないと言えば仕方ないことでしょう。 以上のいずれか、あるいは全く別の理由により、『レイダース』と『最後の聖戦』の金曜ロードショー村井国夫版ノーカットTVバージョンは、もう存在しない、ということが、現段階での暫定的な結論です。しかし、海外からの回答は「滅却したから残っていない」ではなく、「こちらの手もとにあるのはこれだけだ」という言い方でした。この世にノーカット版のコピーが1本も残っていないと断言できるほどの確定的な結論ではありません。望みは完全に絶たれた訳ではありません。いつの日にか、「実は捨てていなかった」「よく探してみたら見つかった」といった形で、ノーカット素材が発見されることを、87年ノーカット村井国夫版によって人生の進路が決まった1人の熱烈なファンとして、私も、心から祈っています。 『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』COPYRIGHT © 2012 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. 『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』Indiana Jones and the Temple of Doom ™ & © 2010 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. Used Under Authorization.
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】招きネコ
アイリッシュ系マフィアと新興イタリア系マフィアの抗争を舞台に、男と男、男と女の愛と友情と裏切りが描かれるギャング映画と言うと、全くもって普通に聞こえるかも知れませんが、コーエン兄弟ワールドなので、かっこいいけど、おかしいんです。人間って真面目であればあるほど、客観的に見ると可笑しく見えるというのがよくわかります。この映画にはまっていた当時、「迷惑なヤツ」という代名詞として、この作品でジョン・タトゥーロが演じる主役でもない「バーニー」を隠語として友達と使っていたくらい、脇役から主役まで人間くさく愛すべきキャラがそろい、アルバート・フィニーやガブリエル・バーンら、普段あまり主役をやらない個性派俳優たちが輝いています。コーエン兄弟作品の魅力である、カメラワークと音楽による名シーンも満載。アルバート・フィニーがマシンガンを撃ちまくり、「ダニー・ボーイ」が流れる場面は映画史に残る名シーンだと思います。 (C)1990 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】第1航空艦隊参謀兼副官 飯森盛良
同じ真珠湾攻撃を描いた2作品だが、まさに好対照!この2作に甲乙をつけたがる向きもあるが、それぞれ映画としての目的がまるっきし違う。2001年の『パール』は戦闘シーンをCGで迫力満点に描きつつ、戦時下の恋人たちのドラマを描く、破壊×LOVEの戦争メロドラマ。オールド・ハワイのファッションもかっこいい。 一方1970年の『トラ!』は、オールド・ハワイとかチャラいことは言ってられない。日米開戦に至るまでの経緯を丹念に描いていき、そして皆さん、いよいよ今日のその時、1941年12月8日を迎えるのであります、という流れで〆る、大真面目な歴史戦争映画だ。この2つを並べて優劣つけるなんざぁ野暮ってもんよ。2作まとめて見て、「こっちはこの点が優れてる、あっちはあの点で勝ってる。みんなちがってみんないい」というのが大人というものなのであります。 (C) Touchstone Pictures and Jerry Bruckheimer Motion Picture (C) 1970 Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 1998 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】銀輪次郎
『シンプル・プラン』の原作者スコット・スミスの人気小説をドリームワークスが映画化!メキシコにバカンスに出かけた若者4人が、マヤ遺跡が眠るジャングルで巻き込まれる戦慄のホラーサスペンスです。既にお気づきかと思いますが、この物語の主犯格は「草」。正確に言うと「蔦(つた)」です。タイトルからネタバレ気味ですので、正直もう展開は読めるとは思いますが、ここは大目に見てください。犯人は分かっているのに、此処彼処で驚いてしまうのは、ドリームワークスが繰り出すリアルな映像描写と絶妙な音楽の“間”。最後まで手に汗握る展開は、暑い夏をさらに熱くしそうです。決して涼しくなることはありませんのでご注意を!(※本作品は、一部内容にグロテスクな描写が含まれますので、気分を害される方はご視聴をお控え下さい。) COPYRIGHT (C) 2012 DREAMWORKS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】山田
唯一無二の作品作りで映画ファンを魅了するタランティーノ。そんな彼が撮った「戦争映画」は破格の面白さである。公開当時行われた、上映開始後1時間以内に退席した観客に鑑賞料を返却する「面白さタランかったら全額返金しバスターズ」キャンペーンに乗っかった人は一人もいないのでは?分かる人にはたまらないオマージュの数々。相変わらずの暴力描写から、お得意の無駄話(今作は少なめ)。また、モリコーネからビリー・プレストン、デビッド・ボウイまで、相変わらずのミックステープ的選曲の素晴らしさ。この夏のザ・シネマでは、そんな彼の作品、『レザボアドッグス』も『パルプ・フィクション』も『フォー・ルームス』も『ジャッキー・ブラウン』もあわせて放送!題して“タランティーノ祭”! (C) 2009 UNIVERSAL STUDIOS
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COLUMN/コラム2012.08.02
【タランティーノ的L.A.案内】第3回:若き日のタランティーノ
■サウスベイとサウスセントラル QTが育ったサウスベイは、ロサンゼルス空港の南に位置し、幾つかのビーチタウンや、高級住宅地のパロス・バーデスなども含む、中間所得者層以上の多い地域。一方、東に隣接するサウスセントラルは、低所得者層が多く、治安の悪い地域として知られます。幼い頃から、映画の影響か、アウトロー指向が強く、危ない地域に対する憧れが強かったというQT。自宅の或るサウスベイから、近隣のサウスセントラルにもよく足をのばしていたそうで、3年程通ったサウスベイの私立校を毛嫌いし、治安の悪い地域にある公立校への転校をせがんだという話もあるほど。サウスベイとサウスセントラル、全く違う二つの地区ですが、QTを語る上では、地理以上に密接な関係にあるのです。 そんな二つの地域に散らばったロケ地(跡)を幾つか続けてご紹介。 まずは、「パルプ・フィクション」の冒頭と最後に登場し、パンプキンとハニー・バニーが強盗を企てたHawthorne Grill。前回ご紹介したグーギースタイルのレストランでしたが、残念ながら、その面影はありません。 こちらは、「ジャッキー・ブラウン」で、主人公行きつけの地元のバーという設定で登場したCockatoo Inn。実はここ、マフィアのアンドリュー・ロココが1946年にオープンし、全盛期にはジョン・F・ケネディを始め、セレブや各界の著名人が宿泊する社交場として名を馳せる一方で、裏社会との結びつきも強かったとか。それでも一世を風靡したこの場所に、地元の人も愛着があるのでしょう、綺麗な全国チェーンのホテルに生まれ変わった今でも、色あせた看板とオウムだけは残されています。 さて、同じく「ジャッキー・ブラウン」で、マックス・チェリーの店として使われた保釈保証業者の店も、真新しいビルへと変貌。 が、ここで終わらないのがQTマニア!よーく見てください。本編10分51秒あたりで後ろに見えるビル、これは今もあるカーソン市庁舎なのです。画面右、木に遮られつつも”City Hall”の文字が小さく見えますよね? かつては世界一大きかったモール、デル・アモ・ファッション・センター。「ジャッキー・ブラウン」で、フードコートやデパートの試着室など、お金の受け渡 しの舞台となったところです。ところでこの映画の時代設定、いつなんでしょう。製作された1997年には既に世界一の座から陥落していた訳ですが、わざわざキャプションまでつけて紹介しちゃう気合いの入れっぷり。少年時代にここの映画館に通ったQTのちょっとしたプライドでしょうか。 ■本日のランチ 本企画恒例?のランチ、今回は「ジャッキー・ブラウン」から。車のトランクへ隠れるのを渋るクリス・タッカーに、サミュエル・L・ジャクソンがご褒美としてちらつかせるのがRoscoe’s House of Chicken and Wafflesです。台詞のみでの登場ですが、ここは見逃せないQTポイント!弾丸トークのクリス・タッカーをも黙らせてしまうRoscoe’sは、その名の通り、チキンとワッフルを一緒に出す南部スタイルのレストラン、というより食堂。ロス内に数店舗を構え、オバマ大統領がサプライズで遊説の途中に立ち寄ったり、スヌープ・ドッグも贔屓にしたり、たくさんのファンがいます。 ハリウッドにもあるのですが、ここはQT映画にふさわしいサウスセントラル店をチョイス。駐車場でFワードを連呼しているお姉さんの横をすり抜け店内へ。ガードマンがいるという事実に安心感を覚えるべきなのか、逆に不安を覚えるべきなのか・・・。 前置きはこの辺にして、目玉のフライドチキンとワッフルのセットを早速注文。オデール(サミュエル・L・ジャクソン)的にはグレイビーソースも欠かせないらしいですが、カロリー激高メニューにこれ以上のカロリーはちょっと・・・ということで、今回は無し。 ほどなく料理が登場。どーん。何てシンプル。熱々のチキンは衣がカリカリ、味が中までしみ込み、バターをたっぷり塗込んでシロップをかけたワッフルと、意外にも絶妙なマッチ。どちらも主役なのですが、敢えて言うなら、お汁粉に塩昆布がついてくるような感覚でしょうか。 これまた名物のオレンジジュース、レモネード、フルーツパンチが三層になった欲張りなドリンクは、チキンとバターにまみれた胃袋を少しだけ爽やかにしてくれます。 ■QTの原点 さて、一年分くらいの鶏肉を食した後は、いよいよ若きQTの足跡を探しに。サウスベイのこの辺りは、トーランスを中心に日系人がとても多い地域。自動車企業を始め、多くの日本企業がアメリカ本社を構え、日系のスーパーから病院、学校まで、アメリカにいながら日本のような生活も可能なのです。QTが時代劇ファンになったのも、もしかすると、育った環境が少なからず影響していたのかもしれません。 ※こちらが母校のFleming中学校。 ※そしてNarbonne高校。 この辺りはさらっと。何せ学校嫌いのQTですから。 やがて、ある夏QTは、地元劇団のトーランス・シアター・カンパニーに加入し、なんとカップルスワッピングがテーマの劇で、いきなり主役を獲得。 ※トーランスのアダルト劇場Pussycat Theater跡地 しばらくこの劇団で活動を続けた後、15歳でついに高校をドロップアウト。今はなきトーランスのアダルト劇場Pussycat Theaterで案内係の仕事を始めるのです。 そして時は流れ、QT22歳の時、人生の転機が訪れます。 本企画の締めは、やっぱりここしかありません。レンタルビデオ店Video Archives、の跡地です。QTといえばビデオ屋、ビデオ屋といえばQT。ここで並外れた映画知識を活かして働いた5年間、ロジャー・エイヴァリーなど、情熱を共有できるオタク仲間と出会ったことで、青年QTの創作意欲に火がつきます。そこから苦節10年、ついにレザボア・ドッグスでデビューを果たしたQTのその後の活躍は皆さんもご存知の通り。 現在は跡形もなくなったVideo Archivesですが、世界一有名なビデオ店の跡地を訪れるファンは今でも多いはず。新作「ジャンゴ 繋がれざる者」の公開を控えるQTの映画道は、まだまだ続きます。きっとこれからも、一映画ファンとして、私たちを楽しませる映画を作り続けてくれることでしょう。■
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COLUMN/コラム2012.08.01
2012年8月のシネマ・ソムリエ
■8月4日『赤ちゃん泥棒』 ケチな強盗犯ハイが刑務所で見初めた婦人警官エドと電撃結婚。すかさず2人は子作りに励むが、エドが不妊症と判明し、5ッ子の赤ちゃんのひとりを誘拐してしまう!コーエン兄弟が初めて大手スタジオの資金で撮ったコメディ。変人揃いのキャラクター、奇抜なユーモア、スピーディなチェイス・アクションが入り乱れる痛快作だ。“愛すべきロクデナシ”に扮した若きニコラス・ケイジがはまり役! 慌ただしいドタバタ劇を、心温まるおとぎ話のように着地させ.るコーエン兄弟のお手並みも見事。 ■8月11日『ボビー』 1968年6月5日、混迷するアメリカの希望の星だったロバート・F・ケネディ上院議員が暗殺された。その悲劇の現場、LAアンバサダー・ホテルの一日の出来事を綴る。監督・脚本・出演を兼ね、念願の企画を実現させたのは俳優エミリオ・エステヴェス。彼のもとに集った豪華キャストが“グランドホテル形式”の人生模様を盛り立てる。兄JFKに続いて凶弾に倒れた、悲運の政治家ボビーのニュース映像を挿入。クライマックスの暗殺シーンでは、差別や貧困の撲滅を訴えた彼の演説が深い感動を呼ぶ。 ■8月18日『エンド・オブ・バイオレンス』 バイオレンス映画の製作者マイクが、チンピラに殺されかける怪事件が発生。その背後には、FBIが暴力を撲滅するために極秘開発中の監視システムが存在していた。 ヴィム・ヴェンダース監督が大都会LAを舞台に撮り上げた異色スリラー。監視衛星を利用した架空のテクノロジーをモチーフに、人間と暴力の関係を考察していく。 ノワールな雰囲気とユーモアが入り混じる映像世界は、そこはかとなく奇妙な味わい。鬼才サミュエル・フラーの出演シーンやライ・クーダーが手がけた音楽にも注目を。 ■8月25日『ガールフレンド・エクスペリエンス』 毎回、意外な企画で映画ファンを驚かせるS・ソダーバーグ監督、面目躍如の一作。何と主演を務めるのは、アダルトビデオ界の現役トップ女優サーシャ・グレイである。 主人公チェルシーはNYの富裕層を顧客とする高級エスコートガール。セックスのみならず、ディナーへの同伴などのサービスを提供する彼女の公私に渡る日常を描く。自分磨きを怠らない主人公のプロフェッショナルな姿勢や内なる不安、裕福な男たちの虚しい生態を描出。ドキュメンタリー調の映像が覗き見的な好奇心をかき立てる。 『赤ちゃん泥棒』 © 1987 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 『ボビー』©2006 BOBBY,LLC ALL RIGHTS RESERVED. 『エンド・オブ・バイオレンス』©MK2. 『ガールフレンド・エクスペリエンス』©2009 2929 Productions LLC,All rights reserved.
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COLUMN/コラム2012.07.25
【タランティーノ的L.A.案内】第2回:トイレとグーギーと二番館
さて、クイズです。 こちらの交差点、どのタランティーノ(QT) 映画で登場したかお分かりですか?これで分かった貴方はかなりのQTマニア! 思い浮かべてください、らしくないピンクの箱を持ったマーセルスを。 もうお分かりですね。「パルプ・フィクション」で、無事に自宅から父の形見の時計を回収したブッチ(ブルース・ウィリス)が、運悪くマーセルス(ヴィング・レイムス)に遭遇してしまう交差点です。 ■パサデナ 交差点のすったもんだから、遡ること十数時間。ブッチは、ボクシングの八百長試合で約束を破ったことからマーセルスに追われる身となります。その試合の会場となったのが、こちらのレイモンド・シアター。現在は、オリジナルの外観や一部の内装を維持する形で、マンションへと生まれ変わっています。レイモンド・シアターがあるパサデナは、こうした重厚な建物が似合うLA郊外の街。閑静な高級住宅地として知られ、古い街並や文化的なスポットの多い所としても有名です。 ■ダウンタウンLA さて、そんなパサデナとはガラリと雰囲気の違うダウンタウンLAへ。「ジャッキー・ブラウン」で、サミュエル・L・ジャクソンとロバート・デ・ニーロが待ち合わせに利用したのが、こちらのストリップバー。 到着してみたものの、何やら不穏な空気を感じ、車内からの撮影のみで退散。それもそのはず、気づけばここは、ダウンタウンのスキッド・ロウと呼ばれる地区から僅か1ブロックほど。リトル・トーキョーにも隣接するスキッド・ロウは、治安の悪いダウンタウンLAの中でも、極めて犯罪率の高いスラム街。ドラッグ売買にギャング、売春、まさに映画さながらの光景が現実に起こりうる一画なのです。 そんな危険度MAXなスキッド・ロウのど真ん中を通り抜け、辿り着いたのがダウンタウンのすぐ西にある、パークプラザホテル。1925年に建てられた由緒あるビルは現在、結婚式などのイベント会場や、撮影のロケーションとして利用されています。担当の方の話では、最近は「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」、「ドライブ」、近日公開予定の「Gangster Squad(原題)」などで使用、ほぼ毎週のように映画やテレビ、CM、ミュージックビデオなどの撮影が入っているそうです。今では衰退してしまったこの一帯に、似つかわしくないほどの荘厳さを湛える建物。目指すは・・・・ そう、男子トイレです!「レザボア・ドッグス」で、Mr.オレンジが警官と遭遇したという芝居の再現シーンで使われたトイレは、外装に負けないほどの風格を映画当時そのままに留めていました。 ■今日のランチ ダウンタウンから一旦ザ・シネマオフィス近辺まで戻り、本日のランチ。今回は、QTが時々執筆のため訪れるというサンセット通り沿いのタイレストランへ。日が落ちると色とりどりのネオンが輝くToi on Sunsetの店内は、西洋・東洋ごった煮のヒッピー風味で、昼間でもインパクト十分。「パルプ・フィクション」特等席でユマ・サーマンに見つめられながら食事をしつつ、セス・ローゲン似の店員とお話。QTは時々来店するそうで、店内には「レザボア・ドッグス」と「パルプ・フィクション」の直筆サイン入りポスターも。場所柄、QT以外にも沢山の映画関係者や音楽関係者が来店するらしく、最近では、アメリカで封切りされたばかりの「Savages(原題)」を監督したオリバー・ストーンや、新ジェイソン・ボーンのジェレミー・レナーが訪れたそう。 そんな話で盛り上がる中、丁度テイクアウトで来店した女性をセスが紹介してくれました。なんと彼女は、QT製作総指揮の「ヘルライド」に端役で出演し、三部作が予定される同作第2弾にも出演するとのこと!何と嬉しいハプニング。今は同じ通りのアパレルショップのマネージャーも兼業するという彼女。そんな役者の卵にいろんな場所で出会えるのもロサンゼルスならではなのです。 ■グーギー建築とQT 1950年代〜1960年代、ここロスを中心にグーギー建築というスタイルが流行しました。その名も、サンセット通りにかつてあったGoogiesというカフェから来ています。車社会ならではともいえるグーギー建築は、大きな屋根や窓、派手なネオンなど、道路からも目に付きやすい形が特徴。ロスを訪れた人なら大抵目にする、ロス空港真ん中のUFOのような建物もグーギー建築です。 そんな古き良き時代のロスを象徴するグーギーをQTが放っておくはずがありません。当時すでに衰退していたグーギー建築を見事に再現したのが、「パルプ・フィクション」でした。同作のプロダクションデザイナーのDavid Wascoと、セットデコレーターのSandy Reynolds-Wascoによれば、ユマ・サーマンとジョン・トラボルタがダンスを披露したダイナー、ジャック・ラビット・スリムは、Googiesを設計したジョン・ロートナーらのデザインをモデルにしたそう。また、現代のビバリーヒルズで不思議な存在感を放つこのガソリンスタンドも、ジャック・ラビット・スリムに影響を与えた一つです。 そして、もう一つロスのグーギー建築と言えば、こちらのジョニーズ・コーヒー・ショップ。「ブギー・ナイツ」や「アメリカン・ヒストリーX」など沢山の映画のロケ地として知られます。もちろんQTの映画にも登場。「レザボア・ドッグス」で、Mr.オレンジが同僚の刑事と待ち合わせをするレストランが、このコーヒーショップでした。お店は残念ながら2000年に閉店し、今は荒れ果てた様子なのが寂しいところです。 ■QTが捧げる映画愛 ジョニーズから少し東に行ったところに、QTに縁の深い二番館、ニュー・ビバリー・シネマがあります。まるで映画の中から出て来たような佇まいの同館は、「イングロリアス・バスターズ」で映写技師を演じるメラニー・ロランが、役作りのために映写の練習を行い、最終試験として「レザボア・ドッグス」を映写したという逸話も残る、QTファンにはたまらない映画館。 実はこの映画館、リバイバル作品の二本立てスタイルを長年守り続けていましたが、時代の波には逆らえず、一時は廃業の危機に。そこに馳せ参じたのが、二番館やサブカル映画で育ち、今は超リッチになった我らがQT。「レザボア・ドッグス」の深夜上映にキャストを連れて参加して以来、同館のオーナーと親交があったQTは、2007年、 ここを土地ごと買い取ったのです。QTが破産しない限りは安泰となった同館は、これまで通りの2本立てや深夜上映を行い、時にはQT所有のフィルムプリントを上映するなど、映画好きのための場所であり続けています。映画館を買い取り、自分の35ミリプリントを上映する──まさに映画オタクにとって究極の夢を、QTはここで実現したのではないでしょうか。 さて次回は、さらに南に下り、いよいよQTの原点となった場所を巡ります。▼参考資料ニュー・ビバリー・シネマ:Vanity Fairブロググーギー建築:「パルプ・フィクション」DVD特典映像(David Wasco、Sandy Reynolds-Wascoインタビュー)
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COLUMN/コラム2012.07.20
【タランティーノ的L.A.案内】第1回:始まりはレザボア・ドッグス
ザ・シネマの米国オフィスがある、ここロサンゼルスは、言わずと知れた映画のまち。通りを行けば撮影に出くわし、カフェに入れば隣の席で映画関係者がミーティング中、といったことも珍しくありません。中でも、ロサンゼルスなくして語れないのが、映画オタク兼映画監督のクエンティン・タランティーノ(QT)。生まれこそテキサスですが、自他とも認めるロスっ子のQTは、 この町でオタク道まっしぐらの青少年時代を過ごしました。そんな彼の映画では、ロサンゼルスも大事な登場人物の一人。ビジュアルだけでなく、会話のそこかしこにローカルネタが散りばめられています。「レザボア・ドッグス」では、ラデラハイツの話でドッグス達が盛り上がったり、「ジャッキー・ブラウン」では、サミュエル・L・ジャクソンが、一般的に治安が悪いとされるコンプトンのジョークを飛ばしたりと、 ロスに住んでいなければ分からない話題だと自覚しながらも、敢えて入れたかったと語るQTに、この町へのこだわりと思い入れを感じます。本特集では、そんなロサンゼルスの至る所に残されたQTの足跡を辿ってみたいと思います。第1回目は、QTの名前を一躍世に知らしめることとなった「レザボア・ドッグス」のロケ地を中心に、ダウンタウンLAよりも北にある地域を巡ります。 ■ ザ・シネマのオフィスから車で30分ほどの所に、 「レザボア・ドッグス」で、チンピラ達の即席チームが押し入った宝石店があります。この店の扉を開いた瞬間から、彼らの喜劇、いえ悲劇は始まるのです。実際に店を襲うところは映されませんが、回想シーンでハーヴェイ・カイテルとティム・ロスが下見しているのが、Karina’s Wholesale Diamondです。実際はカツラ関連の会社と思われるこの建物は、ほとんどのロケ地が20年の間に変貌する中、当時と全く変わっていないように見えます。 次のロケ地に向かう前に立ち寄ったのは、Karina’s Wholesale Diamondから車で10分ほど、ワーナー・ブラザーズ・スタジオやウォルト・ディズニー・スタジオからは目と鼻の先にある、こちらの通り。「レザボア・ドッグス」誕生の10年程前にQTが通っていたアクティング・スクールがあった場所です。近所の店の人の話では、特に90年代は制作会社やスタジオ関係のオフィスが軒を連ねていたとのこと。元々俳優志望だったQTが、コミュニティシアターでしばらく演技を続けた後、本格的に演技の勉強を始めたのが、ジェームズ・ベスト・シアター・カンパニーでした。70・80年代の人気TVドラマ「爆発!デューク」などに出演していたジェームズ・ベストの大ファンだったQTは、ここで演技を学ぶうちに、カメラワークなど映画制作の基本を身につけていったのです。 ジェームズ・ベスト・シアター・カンパニーを後にして向かうのは、「レザボア・ドッグス」のロケ地が集まるイーグル・ロックです。ここは、ダウンタウンLAの北東に位置し、人口の4割近くが外国生まれ、メキシコ系や、特にフィリピン系を始めとするアジア系が多い、移民の町です。 ■ さて、何はともあれ、まずは腹ごしらえということで、Pat & Lorraine’s Coffee Shopへ。登場人物が繰り広げる取り留めのない会話は、QTの十八番とも言えるスタイルですが、「レザボア・ドッグス」の冒頭でも、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」について話に花が咲きます。その舞台となったのが、丁度この席なのです。 内装は映画と殆ど変わらず、夫婦が営む昔ながらの食堂といった趣。その日は丁度、5、6人のロケハンチームが脚本片手に来店していましたが、レトロで少しひなびた雰囲気がいい味を出しているのでしょう。 アメリカでは、朝食やお昼に具沢山のオムレツを食べるのは一般的ですが、レストランお勧めのJohnny Omeletteを頼むと、予想通りボリューム満点。野菜たっぷりオムレツにチーズをのせ、メキシコ風にアボカドとビーンズ、またはポテトがついてきます。さらに自家製のビスケットまでセット。あまりの量に、残りをドギーバッグ*に入れ、店頭のレジへ。映画では、ローレンス・ティアニー演じるジョーが席を立って支払いを済ませるシーンがありますが、実際のレストランでも、アメリカには珍しく、テーブルではなくレジでの支払いなのです。(*ドギーバッグ:レストランの食べ残しを持ち帰るための容器で、飼い犬用という口実から着いた名前。持ち帰りが前提かと思われるほどの量が出されるアメリカのレストランでは、必ず置いてあります。) お店の人の話では、映画の公開から20以上年経った今でも、ロケ地となったレストランを一目見ようと訪れる人は多く、中には海外、特に最近はイギリスからの観光客が多いそうです。QT、そして「レザボア・ドッグス」のカルト的人気の高さが伺えますね。ちなみに、ドッグス達が颯爽と歩く有名なタイトルシーンに登場するレンガ塀も、レストランの目と鼻の先ですが、今は別の壁に塗り替えられ、残念ながら当時の面影はありません。 空腹が満たされた後は、「レザボア・ドッグス」のメイン舞台となった場所へ。物語の大半を占める倉庫は既にコピー・サービス店に姿を変えていますが、トランクから拷問用のガソリンを取り出すMr. ブロンド(マイケル・マドセン)の背後に見える景色は余り変わっていないように感じます。 こちらは、Mr. ピンク(スティーブ・ブシェーミ)が逃走中に車に引かれる交差点。ちなみに、追いかける警察官の一人は、中々イケメンのプロデューサー、ローレンス・ベンダーです。バックグラウンドにあったガソリンスタンドは更地になり、残された価格表示の看板だけが当時を偲ばせます。 また、QT演じるMr. ブラウンが車をぶつけてしまう路地裏や、その後Mr. オレンジが銃で撃たれる線路沿いもこの辺り。路地裏は余り変わっていませんが、線路は舗装されすっかり綺麗になっていました。ちなみに、この路地の一本隣の通りでは、何らかの撮影の真っ最中でした。映画撮影に遭遇したければ、スタジオにも遠くないこの辺りをぶらつくのも手かもしれません。さて、「レザボア・ドッグス」を中心に駆け足で回った第1回「始まりはレザボア・ドッグス」。QTファンの貴方も、イーグル・ロック・ツアー(ランチ付きコース)なんていかがですか? ▼参考資料NPRインタビュー:Quentin Tarantino: 'Inglourious' Child Of CinemaBernard, Jami. Quentin Tarantino: The Man and His Movies. HarperPerennial, 1995Peary, Gerald, Ed. Quentin Tarantino Interviews. University Press of Mississippi, 1998