8月13日(土)21:00~
再放送:8月14日(日)21:00~/8月27日(土)15:15~
カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した『孤独の報酬』(63)と『ザ・フィールド』(90)ではアカデミー賞候補になり、『キャメロット』(67)ではゴールデングローブ賞の主演男優賞も獲得。そんな名優リチャード・ハリスが、子供向けのエンタテインメントと称されていた「ハリー・ポッター」に出演すること自体が“事件”だった。
「最初は断るつもりだった。だが、どこでこの話を聞きつけたのかはわからないが、11歳の孫娘から電話があって、『もしおじいちゃんがダンブルドア役を引き受けなかったら、これから一生口をきいてやらないからね!』と言ったんだ。そうなったらほかに選択肢はないからね(笑)」
なんとも微笑ましいエピソード。しかし、いざ演じることになった時、この名優といえどもダンブルドア役はかなり難しかったらしい。
「原作には、どの部分にもダンブルドアのエッセンスが詰まっていて、たとえ彼が実際に姿を見せていなくても、とても重要な役割を占めるキャラクターなんだ。しかも、この役を演じるためには、とても美しく書かれたセリフを語るにふさわしい、パーフェクトなリズムとテンポを見つけなければならない。それは、これまで演じてきたどの役柄よりも難しいものだったんだ」
そんな不安を吹き飛ばしてくれる意外な助っ人が、ロンを演じたルパート・グリントだったようだ。
「ダニエルら若い俳優と初めてセリフを読み合わせた時だった。私がなんとかセリフを読み終えた時にルパートが、『ミスター・ハリス、いまの読み方はすごくよかったです。あなたはきっとこの役をすばらしく演じられると思います』ってね。うれしかったよ」
残念ながら2002年に亡くなったハリスにとって、この「秘密の部屋」が遺作となってしまったのだ。死後に会ったダニエルは彼をしのび、こう言った。
「亡くなった両親を映す“みぞの鏡”の虜になったハリーを、ダンブルドアが諭すシーンは忘れられない。僕は難しくて悩んでいたけど、ミスター・ハリスが見守ってくれると思うと、すごく安心して、落ち着いて演じることができた。彼がいないのは本当に悲しいことだけど、ダンブルドアは永遠に僕の胸に生き続けるから…」
取材・文/金子裕子
2011年7月13日発行「別冊シネコンウォーカーvol.2 角川ムックNo.39」より抜粋
リチャード・ハリス
1930年生まれ、アイルランド出身。『地獄で握手しろ』(59)で映画デビューし、上記作品のほか、クリント・イーストウッド監督作『許されざる者』(92)やリドリー・スコット監督作『グラディエーター』(00)などに出演。2002年に他界。
『ハリー・ポッターと賢者の石』™ & © 2001 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』™ & © 2002 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』™ & © 2004 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』™ & © 2005 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.