COLUMN & NEWS
コラム・ニュース一覧
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COLUMN/コラム2012.09.21
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年10月】銀輪次郎
ロバート・レッドフォード、グレン・クローズ、ロバート・デュヴァル、キム・ベイシンガーら豪華スターたちが贈る感動の野球映画。35歳にして新人メジャーリーガーになった男ロイの波乱万丈物語。不屈のチャレンジ精神と雷の落ちた木から削りだしたバット『ワンダー・ボーイ』で活躍する主人公のロイ。野球の物語ながらサスペンス的な要素もあって、程よい緊張感を持つ本作は、野球ファンはもちろんのこと、どなたでも楽しめる作品です。ところどころ出てくる“奇跡”については、鑑賞後に「こんなことは起こりえない」やら「あんな展開はない」と色々ツッコミを入れて頂くのも一興。35歳のロイ役を当時48歳のレッドフォードが演じたことにも驚かされる野球映画の秀作!レッドフォードかっこいいぞ! Copyright © 1984 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2012.09.21
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年10月】山田
15歳で『ローリング・ストーン』誌のライターになった実体験を基に、キャメロン・クロウ監督が少年の切ない青春を綴る、自伝的物語。ちょっぴり寂しい、でもとても幸せな気持ちになれること間違いなし。当時の風俗、音楽やファッションに傾倒していた人ならなおのこと。「パイレーツ・ロック」では24時間ロックを流し続ける海賊ラジオ局の船長を演じていたフィリップ・シーモア・ホフマンは、本作では、1982年に弱冠33歳で亡くなった伝説のロック・ライターであるレスター・バングス役。なかなか本人に似ている。演技も板についている。そしてケイト・ハドソンが通常より数十倍可愛く見える。音楽監修はピーター・フランプトン御大。劇中流れる音楽も、ザ・フー、トッド・ラングレン、イエスから、オールマン、ツェッペリン、レーナード・スキナードなどなど。。胸が熱くなる。 Copyright © 2000 DreamWorks Films L.L.C. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2012.08.26
2012年9月シネマ・ソムリエ
■9月1日『ブーリン家の姉妹』 16世紀の英国王室を揺るがした一大スキャンダルを映画化。時のイングランド国王、ヘンリー8世の寵愛を受けた新興貴族の姉妹アンとメアリーの数奇な愛憎ドラマだ。野心家で執念深いアンに『ブラック・スワン』のN・ポートマン、心優しい妹メアリーにS・ヨハンソン。この二大女優がほとばしらせる激情が観る者を終始圧倒する。「クィーン」の脚本家ピーター・モーガンらの一流スタッフが参加し、重厚で奥行きある歴史劇を創造。エリザベス1世の時代の幕開けを告げる結末も深い余韻を残す。 ■9月8日『キラー・インサイド・ミー』 米国文学界の異端児ジム・トンプスンの代表作「おれの中の殺人鬼」。この特異な一人称形式の犯罪小説を、M・ウィンターボトム監督がドライなタッチで映画化した。1950年代のテキサスを舞台に、人当たりのいい保安官助手の青年が冷酷な連続殺人鬼に変貌していく姿を描出。人間の不可解さと倒錯的な愛の形が観る者を驚かせる。主人公の殺人衝動を目覚めさせてしまう娼婦役にジェシカ・アルバ。もうひとりのヒロインに扮したケイト・ハドソンとともに、新境地の汚れ役を体当たりで熱演した。 ■9月15日『ルドandクルシ』 メキシコ映画界を代表する才能たちが手を組み、世界に向けて放った一作。同国出身の国際的スター、G・ガルシア・ベルナルとD・ルナが兄弟に扮して主演を務めた。田舎のバナナ農園で働く兄弟が、スカウトに見出されてプロ・サッカー選手に。ルド(乱暴者)とクルシ(自惚れ屋)のあだ名を頂戴した彼らの波乱に満ちた運命を綴る。おおらかで脳天気なコメディ仕立てだが、ちょっぴりほろ苦くて後味は爽やか。兄弟がPKの直接対決に挑む終盤は、メキシカン・サッカーの猥雑な熱気も味わえる。 ■9月22日『CQ』 巨匠フランシス・F・コッポラの息子ロマン・コッポラの監督デビュー作。偉大な父のサポートを得て、CMや音楽ビデオの演出で培ってきた豊かな感性を花開かせた。1969年のパリで、未完成のSF冒険映画の監督に指名されたフィルム編集者ポール。若き主人公の自分探しや映画への夢を、洗練された映像&音楽センスで紡ぎ上げた。観る者の目を奪うのは『バーバレラ』を思わせるレトロポップな劇中劇。スーパーモデルのA・リンドヴァルが惜しみなく披露するセクシーなコスプレもお楽しみあれ! ■9月29日『ワンダーランド』 1981年7月、ハリウッドで男女4人の血まみれ死体が発見された。ポルノ界の伝説的な巨根俳優ジョン・ホームズが関与したとされる“ワンダーランド事件”の映画化だ。 事件発生当時のホームズは麻薬を常用し、ギャングとも親交があったという。『ブギーナイツ』の主人公のモデルにもなったポルノスターの哀れな凋落ぶりが描かれる。謎多き事件の関係者の食い違う証言をフラッシュバックで映像化。ホームズを愛した2人の女との関係も描かれ、クライマックスでは陰惨なバイオレンスが炸裂する。 『ブーリン家の姉妹』© 2008 Columbia Pictures Industries, Inc. and Universal City Studios Productions LLLP and GH Three LLC. All Rights Reserved 『キラー・インサイド・ミー』©Copyright 2010 KIM PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED. 『ルドandクルシ』© 2008 CHA CHA CHA, INC. All rights reserved. 『CQ』© 2001 CQ PRODUCTIONS,LLC.ALL RIGHTS RESERVED 『ワンダーランド』© 2003 Lions Gate Films,Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2012.08.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年9月】大陸軍近衛軽槍騎兵第1連隊“ヴィスツラ・ウーラン”大尉 飯森盛良
イタリア・ソ連合作の歴史超大作。芝居がかったカリスマ性を持つ、スタミナみなぎるメタボ皇帝ナポレオン…ちょっと胡散臭い。権力の座から転落し、とにかく復権したくてアセりまくり、野望をギラつかせる。脂ぎったテカテカのロッド・スタイガー、いい! 一方、宿敵ウエリントンはお高くとまった嫌味な英国貴族の痩せ男。脂気が足らずパサパサした感じ。クリストファー・プラマーも上手い。2人ともデキる漢で2人ともイヤな野郎!でも対照的。この2人見ているだけで前半戦まったく飽きない。そして両雄が激突するワーテルロー、もう圧巻!ソ連映画らしい人海戦術で撮影された戦場の圧倒的規模感が凄すぎる!! 人間ドラマ、スケール、ニーノ・ロータの音楽(各国国家の「大序曲1812」的な使い方が巧み)、コスチューム、どれをとっても最高な、オールタイムmyベスト史劇。今じゃ絶対作れん。 (C) 1970 Dino De Laurentiis Cinematografica SpA, renewed 1998 International Picture Investments Limited. All Rights Reserved..
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COLUMN/コラム2012.08.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年9月】銀輪次郎
ソフィア・コッポラ監督第3作目。ポップな映像描写が素晴らしいのは言うまでもないのですが、その映像に負けず、使用楽曲が素晴らしい作品。冒頭オープニングで掛かるギャング・オブ・フォーの"NATURALS NOT IN IT"に度肝を抜かれ、舞踏会シーンで流れるスージー・アンド・ザ・バンシーズの"HONG KONG GARDEN"に心踊らされ、パーティーからの朝帰りシーンのバウ・ワウ・ワウの"FOOLS RUSH IN"はとても感傷的な気持ちにさせられます。その他にも、ザ・キュアー、ザ・レディオ・デプト、エイフェックス・ツイン、スクエアプッシャー、ニューオーダーなどなど、70年代以降のパンク、ポストパンク、ニューウェイブ、テクノ、アンビエント、エレクトロニカ楽曲の数々が登場。映画鑑賞後は、じっくりとサントラを聞き直したい作品です。 (C) 2005 I Want Candy LLC.
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COLUMN/コラム2012.08.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年9月】招きネコ
ベトナム戦争の闇についてアメリカ映画が描いた作品として、そのロシアン・ルーレットというショッキングなモティーフと共に公開当時衝撃を呼んだ作品でした。それから、何度となく見ていますが、見る度に新しい発見があります。それは、戦争の恐怖とか、政治・反戦とかいうメッセージが声高に出てくるのではなく、感情移入できる人間ドラマが幾重にも織りなされ、俳優たちの演技やマイケル・チミノ監督の演出で込められた思いを何気ない一言や場面に見る度に新たに気づくからです。デ・ニーロ、メリル・ストリープ、そしてなんと言ってもウォーケン!彼らの作り出すキャラクターのなんと繊細なこと!何度でも見たい素晴らしい映画とは、こうやって一緒に年月を重ねられる作品なのかもしれません。 (C) 1978 Universal Studios. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2012.08.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年9月】山田
ケイシー・アフレック演じる、誰にでも好かれる田舎町の保安官が、ジェシカ・アルバ演じる娼婦との出会いをきっかけに、隠されていた裏の顔を見せ、冷酷な連続殺人鬼に変貌していく姿を描いた本作。異端の犯罪小説家として名高いのジム・トンプソン原作のクライムノベルを、イギリスを代表する映画監督の一人であるマイケル・ウィンターボトムが映画化。ウィンターボトムらしからぬバイオレンス描写(と性描写)がふんだんに盛り込まれた作品に仕上がっており、主演のケイシー・アフレックがドクロちゃんのように武器を使うことなく、怖めず臆せずひたすら拳のみで殺すシーンはなかなかのもの。。娼婦役のジェシカ・アルバの生のお尻も拝めます。 (C) Copyright 2010 KIM PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2012.08.16
ジョニデを探して on サンセット大通り
あのビリー・ワイルダーの名作にも名を残す、ロサンゼルス一有名なこの目抜き通りは、1911年にハリウッド最初の映画スタジオが誕生して以来、映画の道として知られてきました。西はベル・エアーやビバリー・ヒルズなど映画スターが多く住む高級住宅地、東はハリウッド、35キロに渡って伸びる大通りは、映画とは切っても切れない関係にあります。でも、サンセット大通りはそれだけじゃありません。ここは、ゴーゴーダンス発祥の地とも言われるWhisky A Go-Goを始め、The Roxy Theatre、Key Club、The Viper Room、House of Bluesなどの有名なナイトクラブが軒を連ね、毎年8月には道を封鎖してのミュージックフェスタも開かれる、音楽の通りでもあるのです。そして、映画&音楽といえば、このお方。ザ・シネマ恒例イケメン俳優グランプリで目下4連覇中のジョニー・デップです!今回は、まさにジョニデが追い求める二つが詰まったサンセット大通りに、彼の欠けらを探しにいざ出発! まず、サンセットでジョニデゆかりといえば何と言っても、ナイトクラブのThe Viper Room。その昔1940年代には、あのミッキー・コーエンやバグジー・シーゲルも訪れていたというジャズバーでした。その後、幾人かの手を経て、共同オーナーとしてジョニデがThe Viper Roomとしてオープンしたのが1993年。オープニングにはティム・バートンやタランティーノも駆けつけました。元々はミュージシャン志望でもあったジョニデ自身も演奏し、ロック系のハードな音楽を主体としたThe Viper Roomは、ジェニファー・アニストン、ドリュー・バリモア、トム・ハンクスなど、数々の俳優やミュージシャンが集まる場所としても有名です。残念なことに、このクラブを一層有名にしたのが、ジョニデの友人でもあったリバー・フェニックスのドラッグ中毒死でした。その後、10年を経てもリバーの影が薄れることはなく、バーを巡って訴訟などが起きたこともあり、ジョニデは遂に2004年にクラブを手放してしまいます。楽しい音楽と、俳優・ミュージシャン仲間が人目を気にせず楽しめる場所を目指してオープンしたというジョニデの思いを考えると、少し寂しい気もしますね。 そんなThe Viper Roomから1ブロックほど離れた所にあるのが、タトゥーショップのShamrock Social Clubです。その腕はもちろん、ソーシャルクラブという名前の通り、ビリヤードやおしゃべりを楽しむ社交場としても愛され、アンジェリーナ・ジョリーやレディー・ガガなどセレブが数多く来店。ジョニデもお気に入りの一つで、店に出入りする姿もパパラッチされています。ところで、数えきれないジョニデのタトゥーの中でも名高い(?)のが“Winona Forever”。「シザーハンズ」共演後に交際していたウィノナ・ライダーにちなんで彫ったものの 、破局後に「Wino Forever(アル中万歳!)」に変えてしまったというのは有名なエピソード。つい最近も長年のパートナーだったヴァネッサ・パラディと別れてしまったジョニデですが、また一つタトゥーが消される運命にあるのでしょうか? 最後にご紹介するのは、ハリウッドの伝説的ホテル、Chateau Marmont。カリフォルニアとは思えない古いお城のような佇まいのホテルには、古くはF・スコット・フィッツジェラルドやジェームズ・ディーンから、リンジー・ローハン、ヒース・レジャーまで、俳優、ミュージシャン、作家など多くの著名人が宿泊。映画にも頻繁に登場し、クエンティン・タランティーノの「フォー・ルームス」や、ソフィア・コッポラの「Somewhere」などで、いい味を出しています。ジョニデも宿泊やイベント出席などで同ホテルを訪れていますが、なんと、ケイト・モスとは交際当時にホテルの全室で愛し合ったと本人が豪語したとかしないとか。さすがジョニデ、その体力と財力には唸らされます。さて、少し歩いただけでも、ジョニデに縁のある場所を発見できるサンセット大通り。実はジョニデ、サンセットの裏通りに家も持っているそう。ジョニデの欠けらを探してサンセット大通りを歩けば、ほかでもない本人に出会えるチャンスかも?!■
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COLUMN/コラム2012.08.14
吹き替え担当者よりご報告、『レイダース』ノーカットTV版吹き替えが無い!?の巻
春の放送時に、すでに字幕版だけでなくHD吹き替え版をあわせてお送りしており、その際に村井国夫のノーカットビデオ版をレイバックしてHDバージョンを作った、という顛末は、別記事にてすでにご報告しましたが、今回は、TV版の方のオンエアです。 TV版吹き替えは、ザ・シネマが大切にしてきた、特別なコンテンツの一つ。 いま改めて、むかしTVで見た吹き替え映画を見なおしてみれば、きっと懐かしい思いがすることでしょう。こみあげてくるノスタルジーがあるはずです。あの日あの頃の情景がフラッシュバックで蘇るかもしれません。字幕版ではそれがないとは言いませんが、より「懐かしさを楽しむ」ということができるのは、少なくとも水野晴郎や淀川長治が映画の原体験だという多くの人にとって、やはり、TV版吹き替えの方でしょう。 「懐かしさを楽しむ」、これは映画そのものが持っているオリジナル本来の価値や面白さとはまた違った魅力、それも、かなり大きな魅力ではないでしょうか。ザ・シネマが往年のTV版吹き替えを尊重する理由の一つです。そして、まさに、あの頃みんなが胸躍らせた『インディ・ジョーンズ』123作のような作品は、「懐かしさを楽しむ」を提案し続けてきた当チャンネルの立場として、TV版吹き替えの放送もマストなのです。 今回、TV版でも、すでにオンエアしているビデオ版同様、あえて村井国夫版(現在は村井國夫とご改名されています)をチョイスしています。ちなみにこのバージョンはDVD・ブルーレイには未収録(らしい)です。 もちろん村井さん以外のバージョンも、いろいろと存在はします。主立ったところでは、『ブレードランナー』新録の時に当チャンネルでも吹き替えをお願いした、ハリソン・フォードのもう一人のFIX声優・磯部勉さんバージョン。ハリソンと言えば磯部さん、という印象も定着してはいるのですが、磯部さんは『レイダース』を吹き替えられたことがどうやらないみたいだ、3本揃わなくなる、ということが今回はネックに。 また、ジャック・ライアンなどは磯部さんイメージでも、インディとハン・ソロに関しては村井さんの声のイメージを勝手に抱いている、という担当者の個人的感覚も、理由としてありました。 村井さんの軽妙な、あえて言えば良い意味でちょっと“チャラい”持ち味が、宇宙のチャラ男 ハン・ソロにはまさにハマり役だった気がします。インディも、80年代後半の金曜ロードショーでの村井版がインディ吹き替えの元祖なので、逆にその印象から、インディアナ・ジョーンズ博士というキャラクターに対してちょっと“チャラい”イメージを持ってしまっていた、という逆転現象も、私の中では起こっていました。 子供の頃、村井さんの声でシリーズを見てそういう印象を抱いていて、字幕で見られる歳になって原音で聞いてみたら、インディが渋くてダンディな男だったことにビックリ!という覚えがあります。個人的思い入れではありますが、しかしこれ、私だけの感覚ではないのではないでしょうか?オリジナルにイメージが近いのは磯部さんの方かもしれません。あちらも流石に素晴らしかった!しかし、オリジナルから若干ズレた印象を吹き替えが与えてしまったとしても、それもまたよしだった古き良き昭和の吹き替え。日本の吹き替え文化がかつて持っていた豊かさでしょう、これは。その価値観で言うなら、村井版もやっぱり素晴らしいのです! 人情味が数倍増しになる羽佐間道夫版のロッキー、朴訥なキャラがより強調される、ささきいさお版のランボー、どちらもスタローン本人の声とは似ていないけれど良い!ということと同じです。小池朝雄→石田太郎のコロンボ、山田康雄のダーティハリーも同様。オリジナルよりキャラが魅力的になってますけど、なにか?という域にまで達した吹き替えの傑作も、その昔には存在しえたのです。村井国夫版インディはその一つに数えていいのではないでしょうか。 ネット情報によると、『レイダース』は、金曜ロードショーの1985年10月4日、前身の水曜ロードショーから引っ越ししてきて最初の回の放送作品だったようです。 またも個人的な話で恐縮ですが、私が見たのは1987年12月25日の再放送でした。その夜は水曜ロードショーから通算して800回記念というメモリアルな回で、故・水野晴郎さんのトークも、過去取り上げてきた主な映画の懐古が話のメイン。『レイダース』の解説は少しだけという特別なスタイルをとっていたことを、今も鮮明に記憶しています。なぜなら、この回をビデオに録画した私は、全キャラの台詞を時系列順に完コピできほど、どのタイミングで何のCMが入るかまで覚えるほど、飽きずに何度も何度も繰り返し見たからです。軽く100回は見たのではないでしょうか。今、こういう仕事に就いている、それが一つの原点です。 今回、業務として久しぶりにこのTV版を視聴した途端、先ほど書いた通りの、泣けてくるようなノスタルジーがこみあげてきたことは、言うまでもありません。同様の感傷にひたっていただける方、懐かしさを共有いただける方が、一人でも多くいてくださることを、担当者として切に願っています。 金曜ロードショーでオンエアされたものは85年・87年どちらもノーカットの村井版でした。もちろんTVの場合はノーカットと言ってもエンドロールは大抵カットされますので、余韻を楽しむ、という訳にはいきませんが。それ以外にも、オリジナルとのちょっとした違いは存在します。例を2つ挙げましょう。 まず序盤ネパールの酒場、熱せられた「ラーの杖の冠」のメダルを握って手の平をヤケドしたゲシュタポのトートが、慌てて屋外に出て積雪の中に手を突っ込み、思わず「あ〜キモチい!」と漏らす、あの、ちょっとコメディっぽい台詞。TV版のトート役の内海賢二もビデオ版の樋浦勉もそう言っていますが、原語版では「ワオ」とか「ハウッ」とか、声にならない声を上げているだけ。気持ち良いなんてことは一言も言ってないのです。『レイダース』はTVとビデオで同一翻訳を使い回しているようなので、あの台詞は声優さんのアドリブではなく、翻訳家が台本に盛り込んだ、昭和のTV吹き替えならではの“サービス”なのでしょう。こうした小さなアレンジが塵も積もれば山となり、金曜ロードショー版はオリジナルよりちょっとだけコメディ寄りの印象に振れています(前述した村井さん一流の個性もありますし) もう一カ所、「魂の井戸」でインディとマリオンが生き埋めにされる場面。2人の頭上で入り口が閉ざされ、2人を見殺しにベロックやトートらナチス側がその場を立ち去るシーンですが、ここでTV版ではBGMが入ります(カイロの路地でマリオンを乗せたトラックが爆発する前半シーンの音楽の流用)。しかし本来ここにBGMは入りません。オリジナルはもちろん、同一翻訳使い回しのビデオ版でさえ音楽は無し。トートの不気味な高笑いと、石扉が「ドガシャーン」と閉められる音の反響だけしか入っていません。このシーン、金曜ロードショーではCMチャンスの直前でした。生き埋めにされた2人は果たして脱出できるのか!?というサスペンスが、BGMのおかげでCM前に倍増しています。これなどはTV的な必要性からの付け足しでしょう。 この“盛る”ということもまた、往年の吹き替えならではの魅力です。後でオリジナルを見ると案外こざっぱりした印象で、「何かが違う」と、むしろ物足りなく感じてしまうことが結構あります。 以上、紙幅の都合で『レイダース』だけしか触れられませんが、『魔宮の伝説』も『最後の聖戦』も、そのTV吹き替えには、TV洋画劇場黄金時代の吹き替えならではの魅力がたくさん詰まっているのです。 最後に、今回ちょっと残念だったのは(ちょっとどころか担当者としては痛恨だったのは)、『レイダース』と『最後の聖戦』が、カット版しか手に入らなかったこと。お終いに、その顛末をご報告します。 もちろんザ・シネマは、いかなる場合でも、可能であればまずはノーカットの素材を優先的にオンエアしようと努めておりますし、TV吹き替えであれノーカットの素材が存在するのであれば、当然そちらを優先してお届けしたいのは山々なのですが…。 『インディ・ジョーンズ』123の過去のTV日本語吹き替え版は、海外の権利者の方で放送用テープを保管しており、放送契約を交わした当チャンネルは、それを一時的に借り受けてオンエアします。金曜ロードショー版であっても日本テレビから借りてくる訳ではないのです。 そこで、まず海外に、村井国夫バージョンの金曜ロードショー版のテープを送ってほしい、と詳細なリクエストを出したのですが、さすがに海外相手に「村井国夫」とか「金曜ロードショー」などと言って通じる訳がないのは当然です。「日本語吹き替え版が何バージョンかあるので、送るからそちらで中身を見てくれ」との回答があってテープが送られてきて、当方にてそれら全てを見て確認することになりました。この展開は今回に限った話ではなく、海外でテープが保管されている場合には割とよくあるパターンです。 結果、『レイダース』と『最後の聖戦』はカット版しかなかった、ということです。オフィシャルなルートから「日本語吹き替え版はこれで全部だ」という形で渡されたもののうち村井TV版はカット版でしたので、ノーカット版はもう失われてしまった、ということなのでしょう。 なお、日本語吹き替え版を作った制作会社や、それをオンエアした放送局に、当時のコピーが残されている可能性もゼロではありません。しかし、放送用のマザーテープは、吹き替えを制作した会社や放送した局から、映画の権利者(テレビ放送権の配給会社など)に提出されます。そして多くの場合、権利保護の観点から、局や制作会社側は「コピーを滅却しなければならない」という契約を結んでいますので、彼らがコピーしたテープをいま持っていなくても、むしろ当然なのです。または契約で、彼らが保管を許可されている場合もありますが、その場合は権利者に照会すれば有るなら有るでテープの在処が分かるはずです。今回は、それも無いことが一応オフィシャルに確認されています。 なぜ、過去のテープが保管されていない、破棄されてしまった、ということが起こるのか? 今回の『レイダース』、『最後の聖戦』個別の話ではなく(今回の個別の事情までは当方も把握できていません)、以下、一般論として書きますが、まず第一に、日本側の問題が挙げられます。かつてはTV放送しかなく、その音声をDVDやブルーレイに収録するとか、CSの洋画専門チャンネルでオンエアするといった未来(つまり今日)の「二次使用」を前提には考えておらず、「二次使用」という概念そのものが存在すらしていませんでした。いま我々がもう一度見たい「昭和のお宝吹き替え」の時代には、皮肉なことに、それを保存しておかねばならない必要性が、今日ほど大きくはなかったのです。そのため、権利保護のための滅却という以前の問題で、不要になったから日本側で捨てちゃった、というケースもあったのです。 第二に、海外側の問題。「昭和のお宝吹き替えだ」「バージョン違いの日本語吹き替え版には、声優さんごとのそれぞれ違った趣がある」といった価値観を、海外の権利者に理解してもらうことは、さすがに難しそうです。特に、DVD日本語音声用などの用途で、吹き替えが近年になってノーカットで新録されたような場合、それが最新・最良の素材という扱いになるため、過去の、カットされた、古い旧式のテープで残されている日本語版を保存し続けていかねばならない必要性を、海外側では強く感じてくれない、ということがあります。これは仕方ないと言えば仕方ないことでしょう。 以上のいずれか、あるいは全く別の理由により、『レイダース』と『最後の聖戦』の金曜ロードショー村井国夫版ノーカットTVバージョンは、もう存在しない、ということが、現段階での暫定的な結論です。しかし、海外からの回答は「滅却したから残っていない」ではなく、「こちらの手もとにあるのはこれだけだ」という言い方でした。この世にノーカット版のコピーが1本も残っていないと断言できるほどの確定的な結論ではありません。望みは完全に絶たれた訳ではありません。いつの日にか、「実は捨てていなかった」「よく探してみたら見つかった」といった形で、ノーカット素材が発見されることを、87年ノーカット村井国夫版によって人生の進路が決まった1人の熱烈なファンとして、私も、心から祈っています。 『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』COPYRIGHT © 2012 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. 『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』Indiana Jones and the Temple of Doom ™ & © 2010 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. Used Under Authorization.
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】招きネコ
アイリッシュ系マフィアと新興イタリア系マフィアの抗争を舞台に、男と男、男と女の愛と友情と裏切りが描かれるギャング映画と言うと、全くもって普通に聞こえるかも知れませんが、コーエン兄弟ワールドなので、かっこいいけど、おかしいんです。人間って真面目であればあるほど、客観的に見ると可笑しく見えるというのがよくわかります。この映画にはまっていた当時、「迷惑なヤツ」という代名詞として、この作品でジョン・タトゥーロが演じる主役でもない「バーニー」を隠語として友達と使っていたくらい、脇役から主役まで人間くさく愛すべきキャラがそろい、アルバート・フィニーやガブリエル・バーンら、普段あまり主役をやらない個性派俳優たちが輝いています。コーエン兄弟作品の魅力である、カメラワークと音楽による名シーンも満載。アルバート・フィニーがマシンガンを撃ちまくり、「ダニー・ボーイ」が流れる場面は映画史に残る名シーンだと思います。 (C)1990 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved