COLUMN & NEWS
コラム・ニュース一覧
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】第1航空艦隊参謀兼副官 飯森盛良
同じ真珠湾攻撃を描いた2作品だが、まさに好対照!この2作に甲乙をつけたがる向きもあるが、それぞれ映画としての目的がまるっきし違う。2001年の『パール』は戦闘シーンをCGで迫力満点に描きつつ、戦時下の恋人たちのドラマを描く、破壊×LOVEの戦争メロドラマ。オールド・ハワイのファッションもかっこいい。 一方1970年の『トラ!』は、オールド・ハワイとかチャラいことは言ってられない。日米開戦に至るまでの経緯を丹念に描いていき、そして皆さん、いよいよ今日のその時、1941年12月8日を迎えるのであります、という流れで〆る、大真面目な歴史戦争映画だ。この2つを並べて優劣つけるなんざぁ野暮ってもんよ。2作まとめて見て、「こっちはこの点が優れてる、あっちはあの点で勝ってる。みんなちがってみんないい」というのが大人というものなのであります。 (C) Touchstone Pictures and Jerry Bruckheimer Motion Picture (C) 1970 Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 1998 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】銀輪次郎
『シンプル・プラン』の原作者スコット・スミスの人気小説をドリームワークスが映画化!メキシコにバカンスに出かけた若者4人が、マヤ遺跡が眠るジャングルで巻き込まれる戦慄のホラーサスペンスです。既にお気づきかと思いますが、この物語の主犯格は「草」。正確に言うと「蔦(つた)」です。タイトルからネタバレ気味ですので、正直もう展開は読めるとは思いますが、ここは大目に見てください。犯人は分かっているのに、此処彼処で驚いてしまうのは、ドリームワークスが繰り出すリアルな映像描写と絶妙な音楽の“間”。最後まで手に汗握る展開は、暑い夏をさらに熱くしそうです。決して涼しくなることはありませんのでご注意を!(※本作品は、一部内容にグロテスクな描写が含まれますので、気分を害される方はご視聴をお控え下さい。) COPYRIGHT (C) 2012 DREAMWORKS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】山田
唯一無二の作品作りで映画ファンを魅了するタランティーノ。そんな彼が撮った「戦争映画」は破格の面白さである。公開当時行われた、上映開始後1時間以内に退席した観客に鑑賞料を返却する「面白さタランかったら全額返金しバスターズ」キャンペーンに乗っかった人は一人もいないのでは?分かる人にはたまらないオマージュの数々。相変わらずの暴力描写から、お得意の無駄話(今作は少なめ)。また、モリコーネからビリー・プレストン、デビッド・ボウイまで、相変わらずのミックステープ的選曲の素晴らしさ。この夏のザ・シネマでは、そんな彼の作品、『レザボアドッグス』も『パルプ・フィクション』も『フォー・ルームス』も『ジャッキー・ブラウン』もあわせて放送!題して“タランティーノ祭”! (C) 2009 UNIVERSAL STUDIOS
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COLUMN/コラム2012.08.02
【タランティーノ的L.A.案内】第3回:若き日のタランティーノ
■サウスベイとサウスセントラル QTが育ったサウスベイは、ロサンゼルス空港の南に位置し、幾つかのビーチタウンや、高級住宅地のパロス・バーデスなども含む、中間所得者層以上の多い地域。一方、東に隣接するサウスセントラルは、低所得者層が多く、治安の悪い地域として知られます。幼い頃から、映画の影響か、アウトロー指向が強く、危ない地域に対する憧れが強かったというQT。自宅の或るサウスベイから、近隣のサウスセントラルにもよく足をのばしていたそうで、3年程通ったサウスベイの私立校を毛嫌いし、治安の悪い地域にある公立校への転校をせがんだという話もあるほど。サウスベイとサウスセントラル、全く違う二つの地区ですが、QTを語る上では、地理以上に密接な関係にあるのです。 そんな二つの地域に散らばったロケ地(跡)を幾つか続けてご紹介。 まずは、「パルプ・フィクション」の冒頭と最後に登場し、パンプキンとハニー・バニーが強盗を企てたHawthorne Grill。前回ご紹介したグーギースタイルのレストランでしたが、残念ながら、その面影はありません。 こちらは、「ジャッキー・ブラウン」で、主人公行きつけの地元のバーという設定で登場したCockatoo Inn。実はここ、マフィアのアンドリュー・ロココが1946年にオープンし、全盛期にはジョン・F・ケネディを始め、セレブや各界の著名人が宿泊する社交場として名を馳せる一方で、裏社会との結びつきも強かったとか。それでも一世を風靡したこの場所に、地元の人も愛着があるのでしょう、綺麗な全国チェーンのホテルに生まれ変わった今でも、色あせた看板とオウムだけは残されています。 さて、同じく「ジャッキー・ブラウン」で、マックス・チェリーの店として使われた保釈保証業者の店も、真新しいビルへと変貌。 が、ここで終わらないのがQTマニア!よーく見てください。本編10分51秒あたりで後ろに見えるビル、これは今もあるカーソン市庁舎なのです。画面右、木に遮られつつも”City Hall”の文字が小さく見えますよね? かつては世界一大きかったモール、デル・アモ・ファッション・センター。「ジャッキー・ブラウン」で、フードコートやデパートの試着室など、お金の受け渡 しの舞台となったところです。ところでこの映画の時代設定、いつなんでしょう。製作された1997年には既に世界一の座から陥落していた訳ですが、わざわざキャプションまでつけて紹介しちゃう気合いの入れっぷり。少年時代にここの映画館に通ったQTのちょっとしたプライドでしょうか。 ■本日のランチ 本企画恒例?のランチ、今回は「ジャッキー・ブラウン」から。車のトランクへ隠れるのを渋るクリス・タッカーに、サミュエル・L・ジャクソンがご褒美としてちらつかせるのがRoscoe’s House of Chicken and Wafflesです。台詞のみでの登場ですが、ここは見逃せないQTポイント!弾丸トークのクリス・タッカーをも黙らせてしまうRoscoe’sは、その名の通り、チキンとワッフルを一緒に出す南部スタイルのレストラン、というより食堂。ロス内に数店舗を構え、オバマ大統領がサプライズで遊説の途中に立ち寄ったり、スヌープ・ドッグも贔屓にしたり、たくさんのファンがいます。 ハリウッドにもあるのですが、ここはQT映画にふさわしいサウスセントラル店をチョイス。駐車場でFワードを連呼しているお姉さんの横をすり抜け店内へ。ガードマンがいるという事実に安心感を覚えるべきなのか、逆に不安を覚えるべきなのか・・・。 前置きはこの辺にして、目玉のフライドチキンとワッフルのセットを早速注文。オデール(サミュエル・L・ジャクソン)的にはグレイビーソースも欠かせないらしいですが、カロリー激高メニューにこれ以上のカロリーはちょっと・・・ということで、今回は無し。 ほどなく料理が登場。どーん。何てシンプル。熱々のチキンは衣がカリカリ、味が中までしみ込み、バターをたっぷり塗込んでシロップをかけたワッフルと、意外にも絶妙なマッチ。どちらも主役なのですが、敢えて言うなら、お汁粉に塩昆布がついてくるような感覚でしょうか。 これまた名物のオレンジジュース、レモネード、フルーツパンチが三層になった欲張りなドリンクは、チキンとバターにまみれた胃袋を少しだけ爽やかにしてくれます。 ■QTの原点 さて、一年分くらいの鶏肉を食した後は、いよいよ若きQTの足跡を探しに。サウスベイのこの辺りは、トーランスを中心に日系人がとても多い地域。自動車企業を始め、多くの日本企業がアメリカ本社を構え、日系のスーパーから病院、学校まで、アメリカにいながら日本のような生活も可能なのです。QTが時代劇ファンになったのも、もしかすると、育った環境が少なからず影響していたのかもしれません。 ※こちらが母校のFleming中学校。 ※そしてNarbonne高校。 この辺りはさらっと。何せ学校嫌いのQTですから。 やがて、ある夏QTは、地元劇団のトーランス・シアター・カンパニーに加入し、なんとカップルスワッピングがテーマの劇で、いきなり主役を獲得。 ※トーランスのアダルト劇場Pussycat Theater跡地 しばらくこの劇団で活動を続けた後、15歳でついに高校をドロップアウト。今はなきトーランスのアダルト劇場Pussycat Theaterで案内係の仕事を始めるのです。 そして時は流れ、QT22歳の時、人生の転機が訪れます。 本企画の締めは、やっぱりここしかありません。レンタルビデオ店Video Archives、の跡地です。QTといえばビデオ屋、ビデオ屋といえばQT。ここで並外れた映画知識を活かして働いた5年間、ロジャー・エイヴァリーなど、情熱を共有できるオタク仲間と出会ったことで、青年QTの創作意欲に火がつきます。そこから苦節10年、ついにレザボア・ドッグスでデビューを果たしたQTのその後の活躍は皆さんもご存知の通り。 現在は跡形もなくなったVideo Archivesですが、世界一有名なビデオ店の跡地を訪れるファンは今でも多いはず。新作「ジャンゴ 繋がれざる者」の公開を控えるQTの映画道は、まだまだ続きます。きっとこれからも、一映画ファンとして、私たちを楽しませる映画を作り続けてくれることでしょう。■
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COLUMN/コラム2012.08.01
2012年8月のシネマ・ソムリエ
■8月4日『赤ちゃん泥棒』 ケチな強盗犯ハイが刑務所で見初めた婦人警官エドと電撃結婚。すかさず2人は子作りに励むが、エドが不妊症と判明し、5ッ子の赤ちゃんのひとりを誘拐してしまう!コーエン兄弟が初めて大手スタジオの資金で撮ったコメディ。変人揃いのキャラクター、奇抜なユーモア、スピーディなチェイス・アクションが入り乱れる痛快作だ。“愛すべきロクデナシ”に扮した若きニコラス・ケイジがはまり役! 慌ただしいドタバタ劇を、心温まるおとぎ話のように着地させ.るコーエン兄弟のお手並みも見事。 ■8月11日『ボビー』 1968年6月5日、混迷するアメリカの希望の星だったロバート・F・ケネディ上院議員が暗殺された。その悲劇の現場、LAアンバサダー・ホテルの一日の出来事を綴る。監督・脚本・出演を兼ね、念願の企画を実現させたのは俳優エミリオ・エステヴェス。彼のもとに集った豪華キャストが“グランドホテル形式”の人生模様を盛り立てる。兄JFKに続いて凶弾に倒れた、悲運の政治家ボビーのニュース映像を挿入。クライマックスの暗殺シーンでは、差別や貧困の撲滅を訴えた彼の演説が深い感動を呼ぶ。 ■8月18日『エンド・オブ・バイオレンス』 バイオレンス映画の製作者マイクが、チンピラに殺されかける怪事件が発生。その背後には、FBIが暴力を撲滅するために極秘開発中の監視システムが存在していた。 ヴィム・ヴェンダース監督が大都会LAを舞台に撮り上げた異色スリラー。監視衛星を利用した架空のテクノロジーをモチーフに、人間と暴力の関係を考察していく。 ノワールな雰囲気とユーモアが入り混じる映像世界は、そこはかとなく奇妙な味わい。鬼才サミュエル・フラーの出演シーンやライ・クーダーが手がけた音楽にも注目を。 ■8月25日『ガールフレンド・エクスペリエンス』 毎回、意外な企画で映画ファンを驚かせるS・ソダーバーグ監督、面目躍如の一作。何と主演を務めるのは、アダルトビデオ界の現役トップ女優サーシャ・グレイである。 主人公チェルシーはNYの富裕層を顧客とする高級エスコートガール。セックスのみならず、ディナーへの同伴などのサービスを提供する彼女の公私に渡る日常を描く。自分磨きを怠らない主人公のプロフェッショナルな姿勢や内なる不安、裕福な男たちの虚しい生態を描出。ドキュメンタリー調の映像が覗き見的な好奇心をかき立てる。 『赤ちゃん泥棒』 © 1987 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 『ボビー』©2006 BOBBY,LLC ALL RIGHTS RESERVED. 『エンド・オブ・バイオレンス』©MK2. 『ガールフレンド・エクスペリエンス』©2009 2929 Productions LLC,All rights reserved.
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COLUMN/コラム2012.07.25
【タランティーノ的L.A.案内】第2回:トイレとグーギーと二番館
さて、クイズです。 こちらの交差点、どのタランティーノ(QT) 映画で登場したかお分かりですか?これで分かった貴方はかなりのQTマニア! 思い浮かべてください、らしくないピンクの箱を持ったマーセルスを。 もうお分かりですね。「パルプ・フィクション」で、無事に自宅から父の形見の時計を回収したブッチ(ブルース・ウィリス)が、運悪くマーセルス(ヴィング・レイムス)に遭遇してしまう交差点です。 ■パサデナ 交差点のすったもんだから、遡ること十数時間。ブッチは、ボクシングの八百長試合で約束を破ったことからマーセルスに追われる身となります。その試合の会場となったのが、こちらのレイモンド・シアター。現在は、オリジナルの外観や一部の内装を維持する形で、マンションへと生まれ変わっています。レイモンド・シアターがあるパサデナは、こうした重厚な建物が似合うLA郊外の街。閑静な高級住宅地として知られ、古い街並や文化的なスポットの多い所としても有名です。 ■ダウンタウンLA さて、そんなパサデナとはガラリと雰囲気の違うダウンタウンLAへ。「ジャッキー・ブラウン」で、サミュエル・L・ジャクソンとロバート・デ・ニーロが待ち合わせに利用したのが、こちらのストリップバー。 到着してみたものの、何やら不穏な空気を感じ、車内からの撮影のみで退散。それもそのはず、気づけばここは、ダウンタウンのスキッド・ロウと呼ばれる地区から僅か1ブロックほど。リトル・トーキョーにも隣接するスキッド・ロウは、治安の悪いダウンタウンLAの中でも、極めて犯罪率の高いスラム街。ドラッグ売買にギャング、売春、まさに映画さながらの光景が現実に起こりうる一画なのです。 そんな危険度MAXなスキッド・ロウのど真ん中を通り抜け、辿り着いたのがダウンタウンのすぐ西にある、パークプラザホテル。1925年に建てられた由緒あるビルは現在、結婚式などのイベント会場や、撮影のロケーションとして利用されています。担当の方の話では、最近は「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」、「ドライブ」、近日公開予定の「Gangster Squad(原題)」などで使用、ほぼ毎週のように映画やテレビ、CM、ミュージックビデオなどの撮影が入っているそうです。今では衰退してしまったこの一帯に、似つかわしくないほどの荘厳さを湛える建物。目指すは・・・・ そう、男子トイレです!「レザボア・ドッグス」で、Mr.オレンジが警官と遭遇したという芝居の再現シーンで使われたトイレは、外装に負けないほどの風格を映画当時そのままに留めていました。 ■今日のランチ ダウンタウンから一旦ザ・シネマオフィス近辺まで戻り、本日のランチ。今回は、QTが時々執筆のため訪れるというサンセット通り沿いのタイレストランへ。日が落ちると色とりどりのネオンが輝くToi on Sunsetの店内は、西洋・東洋ごった煮のヒッピー風味で、昼間でもインパクト十分。「パルプ・フィクション」特等席でユマ・サーマンに見つめられながら食事をしつつ、セス・ローゲン似の店員とお話。QTは時々来店するそうで、店内には「レザボア・ドッグス」と「パルプ・フィクション」の直筆サイン入りポスターも。場所柄、QT以外にも沢山の映画関係者や音楽関係者が来店するらしく、最近では、アメリカで封切りされたばかりの「Savages(原題)」を監督したオリバー・ストーンや、新ジェイソン・ボーンのジェレミー・レナーが訪れたそう。 そんな話で盛り上がる中、丁度テイクアウトで来店した女性をセスが紹介してくれました。なんと彼女は、QT製作総指揮の「ヘルライド」に端役で出演し、三部作が予定される同作第2弾にも出演するとのこと!何と嬉しいハプニング。今は同じ通りのアパレルショップのマネージャーも兼業するという彼女。そんな役者の卵にいろんな場所で出会えるのもロサンゼルスならではなのです。 ■グーギー建築とQT 1950年代〜1960年代、ここロスを中心にグーギー建築というスタイルが流行しました。その名も、サンセット通りにかつてあったGoogiesというカフェから来ています。車社会ならではともいえるグーギー建築は、大きな屋根や窓、派手なネオンなど、道路からも目に付きやすい形が特徴。ロスを訪れた人なら大抵目にする、ロス空港真ん中のUFOのような建物もグーギー建築です。 そんな古き良き時代のロスを象徴するグーギーをQTが放っておくはずがありません。当時すでに衰退していたグーギー建築を見事に再現したのが、「パルプ・フィクション」でした。同作のプロダクションデザイナーのDavid Wascoと、セットデコレーターのSandy Reynolds-Wascoによれば、ユマ・サーマンとジョン・トラボルタがダンスを披露したダイナー、ジャック・ラビット・スリムは、Googiesを設計したジョン・ロートナーらのデザインをモデルにしたそう。また、現代のビバリーヒルズで不思議な存在感を放つこのガソリンスタンドも、ジャック・ラビット・スリムに影響を与えた一つです。 そして、もう一つロスのグーギー建築と言えば、こちらのジョニーズ・コーヒー・ショップ。「ブギー・ナイツ」や「アメリカン・ヒストリーX」など沢山の映画のロケ地として知られます。もちろんQTの映画にも登場。「レザボア・ドッグス」で、Mr.オレンジが同僚の刑事と待ち合わせをするレストランが、このコーヒーショップでした。お店は残念ながら2000年に閉店し、今は荒れ果てた様子なのが寂しいところです。 ■QTが捧げる映画愛 ジョニーズから少し東に行ったところに、QTに縁の深い二番館、ニュー・ビバリー・シネマがあります。まるで映画の中から出て来たような佇まいの同館は、「イングロリアス・バスターズ」で映写技師を演じるメラニー・ロランが、役作りのために映写の練習を行い、最終試験として「レザボア・ドッグス」を映写したという逸話も残る、QTファンにはたまらない映画館。 実はこの映画館、リバイバル作品の二本立てスタイルを長年守り続けていましたが、時代の波には逆らえず、一時は廃業の危機に。そこに馳せ参じたのが、二番館やサブカル映画で育ち、今は超リッチになった我らがQT。「レザボア・ドッグス」の深夜上映にキャストを連れて参加して以来、同館のオーナーと親交があったQTは、2007年、 ここを土地ごと買い取ったのです。QTが破産しない限りは安泰となった同館は、これまで通りの2本立てや深夜上映を行い、時にはQT所有のフィルムプリントを上映するなど、映画好きのための場所であり続けています。映画館を買い取り、自分の35ミリプリントを上映する──まさに映画オタクにとって究極の夢を、QTはここで実現したのではないでしょうか。 さて次回は、さらに南に下り、いよいよQTの原点となった場所を巡ります。▼参考資料ニュー・ビバリー・シネマ:Vanity Fairブロググーギー建築:「パルプ・フィクション」DVD特典映像(David Wasco、Sandy Reynolds-Wascoインタビュー)
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COLUMN/コラム2012.07.20
【タランティーノ的L.A.案内】第1回:始まりはレザボア・ドッグス
ザ・シネマの米国オフィスがある、ここロサンゼルスは、言わずと知れた映画のまち。通りを行けば撮影に出くわし、カフェに入れば隣の席で映画関係者がミーティング中、といったことも珍しくありません。中でも、ロサンゼルスなくして語れないのが、映画オタク兼映画監督のクエンティン・タランティーノ(QT)。生まれこそテキサスですが、自他とも認めるロスっ子のQTは、 この町でオタク道まっしぐらの青少年時代を過ごしました。そんな彼の映画では、ロサンゼルスも大事な登場人物の一人。ビジュアルだけでなく、会話のそこかしこにローカルネタが散りばめられています。「レザボア・ドッグス」では、ラデラハイツの話でドッグス達が盛り上がったり、「ジャッキー・ブラウン」では、サミュエル・L・ジャクソンが、一般的に治安が悪いとされるコンプトンのジョークを飛ばしたりと、 ロスに住んでいなければ分からない話題だと自覚しながらも、敢えて入れたかったと語るQTに、この町へのこだわりと思い入れを感じます。本特集では、そんなロサンゼルスの至る所に残されたQTの足跡を辿ってみたいと思います。第1回目は、QTの名前を一躍世に知らしめることとなった「レザボア・ドッグス」のロケ地を中心に、ダウンタウンLAよりも北にある地域を巡ります。 ■ ザ・シネマのオフィスから車で30分ほどの所に、 「レザボア・ドッグス」で、チンピラ達の即席チームが押し入った宝石店があります。この店の扉を開いた瞬間から、彼らの喜劇、いえ悲劇は始まるのです。実際に店を襲うところは映されませんが、回想シーンでハーヴェイ・カイテルとティム・ロスが下見しているのが、Karina’s Wholesale Diamondです。実際はカツラ関連の会社と思われるこの建物は、ほとんどのロケ地が20年の間に変貌する中、当時と全く変わっていないように見えます。 次のロケ地に向かう前に立ち寄ったのは、Karina’s Wholesale Diamondから車で10分ほど、ワーナー・ブラザーズ・スタジオやウォルト・ディズニー・スタジオからは目と鼻の先にある、こちらの通り。「レザボア・ドッグス」誕生の10年程前にQTが通っていたアクティング・スクールがあった場所です。近所の店の人の話では、特に90年代は制作会社やスタジオ関係のオフィスが軒を連ねていたとのこと。元々俳優志望だったQTが、コミュニティシアターでしばらく演技を続けた後、本格的に演技の勉強を始めたのが、ジェームズ・ベスト・シアター・カンパニーでした。70・80年代の人気TVドラマ「爆発!デューク」などに出演していたジェームズ・ベストの大ファンだったQTは、ここで演技を学ぶうちに、カメラワークなど映画制作の基本を身につけていったのです。 ジェームズ・ベスト・シアター・カンパニーを後にして向かうのは、「レザボア・ドッグス」のロケ地が集まるイーグル・ロックです。ここは、ダウンタウンLAの北東に位置し、人口の4割近くが外国生まれ、メキシコ系や、特にフィリピン系を始めとするアジア系が多い、移民の町です。 ■ さて、何はともあれ、まずは腹ごしらえということで、Pat & Lorraine’s Coffee Shopへ。登場人物が繰り広げる取り留めのない会話は、QTの十八番とも言えるスタイルですが、「レザボア・ドッグス」の冒頭でも、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」について話に花が咲きます。その舞台となったのが、丁度この席なのです。 内装は映画と殆ど変わらず、夫婦が営む昔ながらの食堂といった趣。その日は丁度、5、6人のロケハンチームが脚本片手に来店していましたが、レトロで少しひなびた雰囲気がいい味を出しているのでしょう。 アメリカでは、朝食やお昼に具沢山のオムレツを食べるのは一般的ですが、レストランお勧めのJohnny Omeletteを頼むと、予想通りボリューム満点。野菜たっぷりオムレツにチーズをのせ、メキシコ風にアボカドとビーンズ、またはポテトがついてきます。さらに自家製のビスケットまでセット。あまりの量に、残りをドギーバッグ*に入れ、店頭のレジへ。映画では、ローレンス・ティアニー演じるジョーが席を立って支払いを済ませるシーンがありますが、実際のレストランでも、アメリカには珍しく、テーブルではなくレジでの支払いなのです。(*ドギーバッグ:レストランの食べ残しを持ち帰るための容器で、飼い犬用という口実から着いた名前。持ち帰りが前提かと思われるほどの量が出されるアメリカのレストランでは、必ず置いてあります。) お店の人の話では、映画の公開から20以上年経った今でも、ロケ地となったレストランを一目見ようと訪れる人は多く、中には海外、特に最近はイギリスからの観光客が多いそうです。QT、そして「レザボア・ドッグス」のカルト的人気の高さが伺えますね。ちなみに、ドッグス達が颯爽と歩く有名なタイトルシーンに登場するレンガ塀も、レストランの目と鼻の先ですが、今は別の壁に塗り替えられ、残念ながら当時の面影はありません。 空腹が満たされた後は、「レザボア・ドッグス」のメイン舞台となった場所へ。物語の大半を占める倉庫は既にコピー・サービス店に姿を変えていますが、トランクから拷問用のガソリンを取り出すMr. ブロンド(マイケル・マドセン)の背後に見える景色は余り変わっていないように感じます。 こちらは、Mr. ピンク(スティーブ・ブシェーミ)が逃走中に車に引かれる交差点。ちなみに、追いかける警察官の一人は、中々イケメンのプロデューサー、ローレンス・ベンダーです。バックグラウンドにあったガソリンスタンドは更地になり、残された価格表示の看板だけが当時を偲ばせます。 また、QT演じるMr. ブラウンが車をぶつけてしまう路地裏や、その後Mr. オレンジが銃で撃たれる線路沿いもこの辺り。路地裏は余り変わっていませんが、線路は舗装されすっかり綺麗になっていました。ちなみに、この路地の一本隣の通りでは、何らかの撮影の真っ最中でした。映画撮影に遭遇したければ、スタジオにも遠くないこの辺りをぶらつくのも手かもしれません。さて、「レザボア・ドッグス」を中心に駆け足で回った第1回「始まりはレザボア・ドッグス」。QTファンの貴方も、イーグル・ロック・ツアー(ランチ付きコース)なんていかがですか? ▼参考資料NPRインタビュー:Quentin Tarantino: 'Inglourious' Child Of CinemaBernard, Jami. Quentin Tarantino: The Man and His Movies. HarperPerennial, 1995Peary, Gerald, Ed. Quentin Tarantino Interviews. University Press of Mississippi, 1998
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COLUMN/コラム2012.07.19
「ハリウッド2大スター主演×ハリウッド2大作」連動企画/ザ・シネマL.A.スタッフ発!現地レポート
さらに、「タランティーノ祭/鬼才とスターのコラボ・ワールド」、「血の抗争/ギャング映画特集」と題した大特集を展開!見どころ満載、ザ・シネマ夏の2大コンテンツをお見逃しなく!!さて、今回ブログでは、 ザ・シネマL.A.スタッフ発!「タランティーノ的L.A.案内」、「ジョニデを探してon サンセット大通り」と題した現地レポートを、計4回にわたって連載!お楽しみに!■
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NEWS/ニュース2012.07.11
アクションスター列伝【アジア人対決】結果発表!
今回の対決は、【アジア人対決】! 『ザ・ワン』ジェット・リー無敵の存在になるため戦う男に扮するジェット・リー。パラレル・ワールドの自分自身と対決し最強を目指す。 VS 『アクシデンタル・スパイ』ジャッキー・チェン天性の予知能力を持つ健康器具セールスマンに扮するジャッキー・チェン。 アジア最強のスターはどっちだ!?いざ、対決! 世界が認めたアジアのアクション・スターとして肩を並べている、ジェット・リーとジャッキー・チェン。卓越した身体能力を活かし、これまで多くのアクション映画を送り出してきた彼らは、中国圏だけでなくハリウッドでも精力的に出演をこなしている。『ドラゴン・キングダム』で、念願のガチ・カンフー対決を果たしたのはご存じのとおりだが、ここでは両者それぞれのピンの主演作をぶつけてみよう! ジェット・リーはハリウッドで主演を務め、ひとりで複数の役をこなした『ザ・ワン』。125のパラレル・ワールドが存在するというSF設定の下、平行世界の自分を殺してはそのスキルを吸収して最強の存在になろうとする悪党。すでに123人を倒した、この犯罪者の陰謀を阻止すべく、残るひとりとなった最後の世界の保安官が立ち上がる。ジェットはこの主人公と、どんどん手ごわくなる悪役を演じ分けているのだが、クライマックスはもちろん自分対自分! 卓越した武術の素養を映画に活かしてきたジェットのアクションに、ハリウッドの共演者からは“速過ぎて、ついていけない”との声も上がった。しかし共演相手が同等に動ける“自分”なのだから、格闘の見せ場としてはハッキリ言って無敵。視覚効果やスタントなどのトリックを駆使して生み出されたジェットVSジェットの、スピード感たっぷりの死闘から目が離せない。 ■ 一方のジャッキーは、おひざ元の香港で主演した『アクシデンタル・スパイ』を放つ。天性の直観と子どもの頃から習っていたカンフーだけが取り柄の、孤児出身のサエないセールスマンが自身の出生の秘密を探るうちに、細菌兵器をめぐる謎の組織との戦いに巻き込まれる。そんな主人公の受難を、ジャッキーはいつもながらの体当たりのスタントで演じてみせる。離陸寸前の飛行機にバイクで突っ込み、手近なモノを引っつかんで格闘し、疾走するタンクローリーにしがみついて陸橋からダイブ! ハリウッドでは制約が多くて自分でスタントができないと常々こぼしていたジャッキーだが、そういう意味では水を得た魚というべき奮闘。全裸でイスタンブールの街を駆け回るハメに…という、ジャッキーらしいコミカルな見せ場も嬉しい。 どちらも2001年の作品で、当時のジェットは38歳、ジャッキーは47歳。この歳で過酷なスタントに挑んだジャッキーは確かに立派だし、その意欲的な姿勢は賞賛せざるをえない。しかし、『プロジェクトA』や『ポリス・ストーリー/香港国際警察』といった快作を送り続けた全盛期と比べると見劣るのも事実。その点、ジェットは脂の乗った年齢での出演作で、ハードな格闘を見せたばかりか、この一本で、設定上125人の“自分”を見せるという離れ業をやってのけた。ここは、まさしく“ザ・ワン(=唯一無二)であるジェットの勝ちとしておこう。 以上のように、【アジア人対決】を制したのは、「ザ・ワン」のジェット・リー! 来週7/16(祝・月)は24時間アクションスター列伝!これまでの【救出対決】【対テロリスト対決】【復讐対決】【逃避行対決】【ヴァンパイア対決】【アジア人対決】全6対決を振り返ります。アクションスターたちの熱きシチュエーションバトルを、もう一度ご堪能ください!■ Copyright © 2001 Revolution Studios Distribution Company, LLC. All Rights Reserved.©2001 GH PICTURES(CHINA) LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
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NEWS/ニュース2012.07.10
アクションスター列伝【ヴァンパイア対決】結果発表!
『ブレイド2』&『ブレイド3』(ウェズリー・スナイプス)人間とヴァンパイアの混血 ブレイドに扮するウェズリー・スナイプス。人間に害するヴァンパイアを抹殺するため戦い続けるヴァンパイアハンター。 VS 『ニア・ダーク/月夜の出来事』(ジェニー・ライト)吸血鬼の少女メイに扮するジェニー・ライト。セクシーな振る舞いで今夜も生き血を求め、男を誘う。 最強のヴァンパイアはどっちだ!?いざ、対決! 『トワイライト』シリーズや『アンダーワールド』シリーズの最新作、リメイク版『フライトナイト』にジョニー・デップ主演の『ダークシャドウ』、岩井俊二監督の新作『ヴァンパイア』など、今年は吸血鬼映画が花盛り。ここでも、やはり吸血鬼を戦わせないといけない! というワケで、吸血鬼なのにヴァンパイアを憎む異能のヒーローの活躍を描いた『ブレイド』シリーズPart2&3のウェズリー・スナイプスと、美少女ヴァンパイアと青年の危険な恋を描く『ニア・ダーク/月夜の出来事』のヒロイン、ジェニー・ライトの対決である。 マーベル・コミック原作の『ブレイド』シリーズでスナイプスがふんする主人公ブレイドは、ヴァンパイアと人間の混血で、吸血鬼を撲滅することに命を懸けている戦士。2作目では同族の血をも求める凶悪な新種スーパー・ヴァンパイア、3作目ではヴァンパイア族の無敵の始祖を相手に、それぞれ壮絶な死闘を繰り広げる。その戦いぶりは、もう豪快そのもので、刀を振るい、ブーメラン型のナイフを放っては、ヴァンパイアをシュワッと粒子化して消滅させる気持ち良さ。カラテの有段者であるスナイプスらしく、肉弾戦の見せ場もふんだんで、頭部よりも上に決まるスピード感たっぷりのハイキックだけでなく、滞空式ブレーンバスターまで見せつけるのだから、これはもう超・総合格闘技と呼びたい。トレードマークのサングラスもクールで、オレ様指数の高い活躍にエキサイトさせられる。■一方の『ニア・ダーク/月夜の出来事』は『ハート・ロッカー』でアカデミー賞を射止めた女流監督キャスリーン・ビグローのデビュー作として知られている。 ビグロー監督といえば同作はもちろん、『ハート・ブルー』や『K-19』などの女性らしからぬ超・硬派な作品で知られているが、描かれる女性キャラも精神的にタフだ。本作でジェニー・ライトが演じるヒロイン、メイは一見、ショートカットのキュートなヴァンパイア。荒くれ者ぞろいの吸血鬼集団の中ではか弱くも見えるが、愛する男を守るためには仲間を敵に回す覚悟がある。それだけでなく、彼のためなら命を懸けて、日光の下にも飛び出す一途さ。こんなにも想われる男は幸せ者だ。さて勝敗だが、ガチでぶつかったら、そりゃあもうスナイプスの圧勝だろう。しかし牙を剥いてくる敵には容赦しない男の中の男ブレイドにも人間味があって、ワケありの可憐な女子を、たとえ彼女がヴァンバイアであってもボッコボコにするはずがない。それはどう考えても、“俺様”の美学に反するじゃないか。とういうわけで、ジェニー嬢がスナイプスに勝ちを譲られる、という結末で締めたい。 以上のように、【ヴァンパイア対決】を制したのは、「ニア・ダーク/月夜の出来事」のジェニー・ライト! 明日7/11(水)のアクションスター列伝は【アジア人対決】!こちらもお見逃しなく!■ ©2002 NEW LINE PRODUCTIONS,INC. ALL RIGHTS RESERVED.「ブレイド3」 ©MMIV NEW LINE PRODUCTIONS,INC. (c)MMV NEW LINE HOME ENTERTAINMENT,INC.ALL RIGHTS RESERVED.