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PROGRAM/放送作品
世界侵略:ロサンゼルス決戦
[PG12]宇宙の侵略者から地球を守れ!海兵隊員たちの壮絶な市街戦を描くノンストップSFアクション
1942年にロサンゼルス上空に出現した未確認飛行物体へ米軍が砲撃した実際の騒動を、現代に置き換えて映画化。銃が腕と一体化した戦闘型エイリアンを相手に繰り広げる、ノンストップの市街戦が迫力満点。
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COLUMN/コラム2022.03.08
“実話”の強みを最大限に生かしたヒーロー物語『エリン・ブロコビッチ』
アメリカ映画の保存・振興を目的とした、「AFI=アメリカン・フィルム・インスティチュート」という機関がある。この「AFI」が1998年から2008年に掛け、「アメリカ映画100年シリーズ」として、「アメリカ映画ベスト100」「映画スターベスト100」など、様々な「ベスト100」を発表した。 その中で、2003年に発表されたのが、「ヒーローと悪役ベスト100」。映画史上に輝く、ヒーローと悪役それぞれ50人(人間とは限らないが…)が選出された。 ヒーローの第1位は、『アラバマ物語』(1962)でグレゴリー・ペックが演じた、人種差別と闘う弁護士、アティカス・フィンチ。続いては、インディ・ジョーンズやジェームズ・ボンド、『カサブランカ』(42)でハンフリー・ボガートが演じたリックなど、錚々たる顔触れが並んでいく。 ヒーローと銘打ちながらも、闘うヒロインたちも、ランクインしている。第6位『羊たちの沈黙』のクラリス・スターリングを筆頭に、『エイリアン』シリーズ(79~ )のリプリー、『ノーマ・レイ』(79)『テルマ&ルイーズ』(91)のヒロインたち、そして第31位に、本作『エリン・ブロコビッチ』(2000)でジュリア・ロバーツが演じた、タイトルロールが挙がる。 エリン・ブロコビッチ、それはクラリスやリプリーと違って、実在の人物。本作は、実話の映画化なのである。 彼女の物語の映画化は、カーラという女性が、カイロプラクティックを受ける時に、施術者から信じがたい話を耳にしたことに始まる。その施術者の友人に、日々の生活費にも困っているような、バツ2で3人の子持ちの女性がいた。そんな彼女が、法律知識はゼロだったにも拘わらず、大企業を相手取った公害訴訟で、数多くの被害者たちのために、莫大な和解金を勝ち取ったというのだ。 カーラはその話を、自分の夫に伝えた。その夫とは、本作を製作することになる、ジャージー・フィルムズの経営者の1人、マイケル・シャンバーグだった。 *** ロサンゼルス郊外の小さな町ヒンクリーに住む、エリン・ブロコビッチは、今まさに窮地に立たされていた。離婚歴2回で、乳呑み児を含む3人の子どもを抱えたシングルマザーの彼女は、貯金が底を突きそうなのに、高卒で何の資格もないため、就職活動もままならない状態。 そんな最中、職探しのドライブ中に、信号無視の車に追突されて、鞭打ちになってしまう。老弁護士のエド・アスリーは、相手が一方的に悪いので、賠償金が取れると請け負うが、法廷でのエリンの暴言などから陪審員の心証が悪かったせいか、びた一文得ることができなかった。 お先真っ暗のエリンは、エドの法律事務所に押し掛け、無理矢理雇用してもらうことに。豊満なバストをはじめ、常にボディラインを強調するような服装の彼女に、同僚たちは良い顔をしなかったが、本人は注意されても言い返し、直そうとはしない。 ファイルの整理という、誰でもできるような仕事を命じられたエリンは、その中の不動産案件の書類に、引っ掛かるものを感じる。地元の大企業PG&E社が、自社工場の近隣住民の土地を買おうとしているのだが、不審に思える点があったのだ。 エリンが独自に調査を始めると、その土地が工場からの排出物に混ざった六価クロムによって、汚染されている疑いが強いことがわかる。そして近隣の住民には、癌など健康被害が続出していることが、明らかになる。 事務所に現れないエリンが、サボっていると誤解して、エドは彼女を解雇する。しかしエリンが探り当てた事実を知ると、最初は及び腰ではあったが、やがて彼女と共に、大企業相手の訴訟に乗り出す。 新たな恋人となった、隣人のジョージの愛にも支えられながら、エリンの熱い戦いが繰り広げられていく…。 *** “六価クロム”は、電気メッキ、酸化剤、金属の洗浄、黄色顔料など、広く使用されている化合物。非常に強い毒性があり、肌に付着すると皮膚炎や腫瘍を起こし、また長期間体内に取り入れると、肝臓障害・貧血・肺がん・大腸がん・胃がんなどの原因になる可能性がある。 日本でも60歳前後ならば、記憶に残っている方が多いだろう。1970年代前半から後半に掛けて、東京・江東区の化学メーカー工場が、“六価クロム”を排出。近隣の土壌が汚染されて、大きな社会問題となった。 PG&E社は、そんな有害物を大量に排出しながら、適切な処理を怠り、長年近隣住民を騙し、隠蔽し続けていたのである。エリンとエドは、634人の住民を原告に立ててPG&E社と戦い、1996年に3億3,300万㌦=約350億円という、全米史上最高額(当時)の和解金を勝ち取った。 一連の顛末を映画化した本作のことを、エリン本人は「実話度98%」と評価する。事実でない残りの2%は、例えば原告となる住民たちが実名ではないことや、エリンが実際には高卒ではなく、カンザス州立大学を卒業しているということなど。いずれにしろそれらの改変は、“実話”である強みを、損なうほどのことではない。 映画化に当たって、スティーヴン・ソダーバーグ監督へのオファーを決めたのは、マイケル・シャンバーグ、ダニー・デヴィートと共に、ジャージー・フィルムズを経営する、ステイシー・シャー。『アウト・オブ・サイト』(98)で組んだ経験から、「…あまりにもドラマティックでおもしろい…」このストーリーを、「地に足のついた現実的な映画にしてくれる」監督は、ソダーバーグしかないと、白羽の矢を立てたのである。 1963年生まれのソダーバーグは、20代中盤に撮った長編第1作『セックスと嘘とビデオテープ』(89)が、カンヌ国際映画祭で最高賞=パルム・ドールを獲るという、華々しいデビューを飾った。しかしその後はスランプに陥り、興行的にも作品の評価的にも、暫しの低迷が続いた。 そんな彼にとって、『アウト・オブ・サイト』は、久々の成功作。そのプロデューサーから依頼された本作の脚本を読んだ時、エリンのストーリーに思わず惹き込まれて、プロジェクトに参加することを決めたという。 それまでこの訴訟についてはまったく知らなかったソダーバーグは、事実のリサーチを進めていく中で、「…不必要に刺激的にしたり、ドラマティックな効果を狙うためだけのシーンがないようにすることが大切だ…」と見極めた。彼を起用した、プロデューサーの狙い通りとなったわけである。 本作の内容を精査すると、大企業側からの妨害や、エリンの強烈なキャラによって起こる軋轢などは、実にサラリと描かれている。こうした題材を映画化するに当たっては、通常は強調されるであろう、そうしたエピソードには主眼を置かず、一直線な“ヒーロー譚”に仕立て上げている。それが本作を成功に導いたと言える。 もちろんそれらは、バッチリとハマったキャスティングによるところも大きい。エリンを演じたジュリア・ロバーツは、本作の10年前に出演した『プリティ・ウーマン』(90)以来、TOPスターの1人として、活躍。30代前半となって、そろそろ大きな“勲章”を手にしたい頃であった。 そんな時に出会った本作に臨むのに、エリン・ブロコビッチ本人に会ったり、取材したりなどは、一切行わなかったという。本人を真似た役作りではなく、自分自身が『エリン・ブロコビッチ』という作品の中で、そのキャラクターを創り上げるというチョイスを行ったわけである。 エリンは実在の人物とはいえ、誰もが顔を知っているような存在というわけではなかったので、このアプローチは成立。結果的に、大成功を収めた。 因みにジュリアがエリン本人と初めて会ったのは、本作の撮影で、ジュリア演じるエリンが、子ども3人を連れて、ダイナーで食事をするシーンだった。このシーンで、エリンがカメオ出演。ウェイトレスを演じている。 自分が演じている本人とセリフのやり取りをするのは、「…とても奇妙な感じで…」戸惑いを覚えていたというジュリア。ふとエリンの胸元のネームプレートを見たら、“ジュリア”と書いてあって、「…もう少しで気が違うかと…」思ったという。 何はともかく、ジュリアは本作が代表作の1本となった。そして念願の、“アカデミー賞主演女優賞”の獲得に至った。 老弁護士エド役のアルバート・フィニーの好演も、ジュリアが栄冠を得るための、大いなるアシストになった。それほどこの作品での、エドとエリンの老若押し引きのコンビネーションは、見事である。 ソダーバーグは、この役を誰が演じるか話し合った時に、真っ先にフィニーの名を挙げた。1960年代からの彼の長いキャリアをリスペクトしていたというソダーバーグの狙いは、ここでも見事に当たったと言える。惜しむらくはフィニーが、アカデミー賞のノミネートから漏れたことである。 さてソダーバーグはこの年2000年は、本作に続いて、麻薬戦争を扱った『トラフィック』が公開されて、こちらも大成功を収めた。アカデミー賞では、『エリン・ブロコビッチ』と『トラフィック』両作で、“アカデミー賞監督賞”にノミネートされるという、62年振り2人目の快挙を成し遂げた。即ち5人の監督賞候補者の内、2人分を彼が占めたということである。 こうなると票が割れて、賞自体を逃すこともありえたが、『トラフィック』の方で、見事に受賞を遂げた。実質的には同年にこの2作があったからこそ、高い評価を得たと言えるだろう。 その後は度々「引退」を匂わせながらも、現代の巨匠の1人として、活躍を続けているのは、多くの方が知る通り。本作がそのステップに向かう、大きな役割を果たしたことは、疑うべくもない。 さて「実話度98%」の本作であったが、エリン・ブロコビッチ本人のその後の人生も、なかなか凄まじい。 本作内ではアーロン・エッカートが演じ、エリンを優しく支える存在として描かれた恋人のジョージは、実際はベビーシッターとしてエリンから報酬を貰っていた上、その後更なる金銭を求めて、彼女を相手に訴訟を起こしている。また本作で描かれる物語以前に別れた夫とも、訴訟沙汰となった。 本作では、育児もそっちのけで大企業との戦いに奔走する母エリンに、子ども達も理解を示す描写が為されている。実際は十代になった子ども達は、ドラッグ漬けになり、その治療で大変な目に遭ったという。 その後も環境活動家として、公害企業との戦いに身を投じているエリンだが、2012年には3度目の離婚となった。 本作で描かれた物語以降も、「事実は小説よりも奇なり」を地で行くエリン・ブロコビッチの人生。また新たに映画化される日が来ても、不思議ではない。■ 『エリン・ブロコビッチ』© 2000 Universal City Studios, Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
ビニー/信じる男
首の骨を折る瀕死の重傷から奇跡のカムバック!不屈のボクサーの実話をマイルズ・テラー主演で映画化
マーティン・スコセッシが製作総指揮を務め、実在するボクサーの奇跡の復活劇を映画化。マイルズ・テラーがハードな肉体改造で主人公ビニーに扮し、ケガからの復帰にかける壮絶な執念を鬼気迫る演技で魅せる。
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COLUMN/コラム2019.03.26
映画史上もっともリアルなエイリアン迎撃戦『世界侵略:ロサンゼルス決戦』
■観客を深い没入感へと誘導するSF戦争スリラー 『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のコンセプトは明快だ。映画におけるリアルな戦闘描写が確立された時代に、エイリアンの侵略戦争を描いたらどのような展開ができるのだろう? そんな興味をとことんまで追求してみせた作品である。すべてのショットが誰かの視点ごしだったり、あるいはCNNニュースなど馴染みのメディアのフォーマットを介したディスプレイ映像であったりと、あたかも自分が戦場のオンタイムの目撃者であるかのような、没入感の高いビジュアル作りが施されている。 物語はいきなり核心から入っていく。東京湾に流星群が降り注ぎ、その2時間後に正体不明の敵が湾岸を包囲し、全世界で一斉攻撃を開始したという報道がなされる。映画はそんなエイリアンとの戦闘下において、アメリカ海兵隊による民間人救助の模様を拾い上げていく。そして同時にそこが、エイリアンの世界侵略に対する最後の防衛線となるのだ。 こうした性質上、本作はランニングタイム110分のうち、90分間ほぼオンタイムでストーリーが進行する。このような作りが、ドラマを能動的に読み解いていくのではない、自分がスクリーンと接続する乗り物にまたがり、劇中の主人公の体験を受動するかのような環境へと観る者を誘導していく。 ■『ロサンゼルス決戦』のリアリティ創出(1:歴史) まず『世界侵略:ロサンゼルス決戦』がこうしたスタイルを獲得するまでの、ハリウッド映画のリアル戦闘描写へのアクセスの道程をざっくりと記しておきたい。異論はあるかもしれないが、参考までにお付き合い願おう。 前述した「リアルな戦闘描写が確立された時代」というのは、スティーブン・スピルバーグによる第二次世界大戦映画『プライベート・ライアン』(98)を起点とする。が、それより少し前にリドリー・スコット監督が『G.I.ジェーン』(97)のリビア部隊の救出シーンにおいて「ジッター(クイック)ズーム」というカメラワークを導入し、リアルな戦闘描写の嚆矢となった。ジッターとは「ゆらぎ」や「乱れ」を指す言葉で、カメラのズーム機能を急速に前後させ、カメラ視点の定まらない様子を表現したものだ。 このカメラの動きを強調するスタイルが、ドキュメンタリーのような臨場感を示す記号のひとつとして定着していく。代表的な使用タイトルとして名作TVSFシリーズのリメイク『GALACTICA/ギャラクティカ』(03〜09)などが挙げられるが、同シリーズでは宇宙艦隊戦などの画を見せる場合にジッターズームを多用し、著しく迫真性を帯びたものへとビジュアルを昇華させている。 そして『G.I.ジェーン』の翌年に登場した『プライベート・ライアン』は、戦闘シーンをリアルに再現するスタイルを確立させ、映画に大きな革命をもたらした。40年代の記録映像のように手持ちカメラを徹底させることで、戦争という物理的実体を即物的に捉え、観客の視点とスクリーン上のアクションとを一体化させたのである。しかも同作に対抗意識を燃やしたリドリー・スコットが『ブラックホーク ダウン』(01)において90分ノンストップの戦闘シーンを展開させるなど、その模様はさらに激化していったのだ。 このようにスピルバーグのアプローチは多くの模倣を生み、戦闘描写の常套手段となった。また当時はフィルムからデジタルへと移行する過渡期にあり、デジタルのノンリニア編集は膨大な数の映像素材の接続を可能にし、またカメラのデジタル化はフィルムの限界を超え、その複雑な編集に足る映像素材を提供していったのだ。そしてCGIの進化は様々なカメラワークへの合成や加工を容易にするなど、それらの要素が絡んで一本の縄を編むかのように、映画の表現を膨らませていったのである。結果『トランスフォーマー』や『ジェイソン・ボーン』シリーズなど、アクションを主体とする作品の台頭や、『ゼロ・グラビティ』(13)『レヴェナント:蘇えりし者』(16)のように、劇中の主人公の体験を受動する「ライド・アトラクション」型映画の台頭をうながしたのである。 ■『ロサンゼルス決戦』のリアリティ創出(2:手法・VFX) 『世界侵略:ロサンゼルス決戦』も、こうしたライド・アトラクション型の系譜に連なる作品のひとつだ。そしてリアリティを目標とし、エイリアンの要素をこうした映画に適合させるために、数多くのVFX(視覚効果)が必要となった。 監督のジョナサン・リーベスマンと視覚効果スーパーバイザーのエベレット・バレル指揮のもと、VFXを担当したのはシネサイト、ハイドラックスといった大手VFXベンダー(製造元)で、特にシネサイトはエミー賞の視覚効果賞を受賞したTVミニシリーズ『ジェネレーション・キル 兵士たちのイラク戦争』(08)でクリエイトした、イラク侵攻作戦のビジュアルが起用の決め手となった。そのことからも分かるように「リアルな戦闘描写」という本作の方向性は徹底したものといえるだろう。(*1) ●シネサイトによる『ジェネレーション・キル 兵士たちのイラク戦争』VFXリールhttps://vimeo.com/163721486 またカナダのバンクーバーにあるVFXスタジオ、エンバシーVFXがエイリアンの創造に中心的な役割を果たし、最近でも『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)で活用された3DCGソフト「Houdini」を用いてエフェクトの開発に努めた。またガレージバンドと呼ばれるVFXチームでは、暗視ゴーグルやライフルスコープごしに見る映像などノイズ系エフェクトソフトを駆使し、この映画の決め手となるルックを創造している。 しかし最も困難だったのは、手持ちカメラを一貫させた本作に数多くの合成処理を施さねばならなかったことだろう。現在はライブカメラの動きを把握するカメラトラッキングソフトウェアの開発によって、手持ちカメラで撮影した規則性のない複雑なカメラワークでも、CGエフェクトを追跡し合成することができるようになった。本作でもそうした「boujou」や「PFTrack」などの3Dトラッキングソフトを用いてマッチムーブに対応しているが、作業自体は非常に煩雑きわまるものだったようだ。しかしこうした困難への果敢なチャレンジこそが、この「映画史上もっともリアルなエイリアン迎撃戦」の描写を実現させたといえるだろう(*2)。ちなみに映画において、手持ちカメラのマッチムーブが大きくクローズアップされたのは1996年に製作・公開されたデザスターパニック『ツイスター』で、同作ではCGで生成された竜巻を、手持ちカメラのような不規則なライブ映像に適合させるため、コンピュータ上において手作業での合成がおこなわれている。前段の『プライベート・ライアン』然り、革新的な表現の開発には、それに挑んだ野心的な先行作があることを忘れてはいけない(*2)。 とはいえ軍事アドバイザー監修のもとブートキャンプを敢行した、この映画独自の作劇アプローチも賞賛に値するし、要求に応えた俳優たちの優れたパフォーマンスも映画に説得力を与えている。また説得力という点では、1990年代後半から2000年代初頭にテレビ界に台頭した「リアリティ番組」も同作のコンセプト・ならびに方法論や映像づくりに影響を及ぼしていることも付け加えておきたい。■ 参考文献/(*1) Cinefex 125 - Battle: Los Angeles / Rango / Black Swan / Sucker Punch(*2)BATTLE LOS ANGELES: BEN SHEPHERD – VFX SUPERVISOR – CINESITEhttps://www.artofvfx.com/battle-los-angeles-ben-shepherd-superviseur-vfx-cinesite(*3)日本版シネフェックス12(1996年・トイズプレス)
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PROGRAM/放送作品
(吹)世界侵略:ロサンゼルス決戦
[PG12]宇宙の侵略者から地球を守れ!海兵隊員たちの壮絶な市街戦を描くノンストップSFアクション
1942年にロサンゼルス上空に出現した未確認飛行物体へ米軍が砲撃した実際の騒動を、現代に置き換えて映画化。銃が腕と一体化した戦闘型エイリアンを相手に繰り広げる、ノンストップの市街戦が迫力満点。
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COLUMN/コラム2018.10.19
男たちのシネマ愛『モリー』2018年11月放送
映画ライターなかざわひでゆき×ザ・シネマ飯森盛良の対談シリーズ「男たちのシネマ愛」が今、初の音声ファイルとなって帰ってきた!今回熱く語るのは、名物特集「激レア映画、買い付けてきました」として調達してきた2018年11月の3作品。3本目は、ハートウォーミングな兄妹のドラマを、90年代末の美しすぎるLAを舞台に綴る感動作『モリー』。90'sリバイバルの今、このキラっキラ感にヤラれろ!うおっまぶしっ!!
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PROGRAM/放送作品
エリン・ブロコビッチ
巨大企業から史上最高の和解金を獲得した女性は無職のシングルマザー!ジュリア・ロバーツ主演の実話サクセス物語
大企業から全米史上最高額の和解金を勝ち取った実在の女性を、J・ロバーツが熱演しアカデミー主演女優賞を受賞。S・ソダーバーグ監督の、作品にリアリティを感じさせるドキュメンタリータッチの演出が秀逸。
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NEWS/ニュース2016.09.12
公開最新作『ハドソン川の奇跡』 トム・ハンクス、アーロン・エッカート来日記者会見レポート!
9.24(土)公開PRのため、サリー機長役のトム・ハンクス、ジェフ副操縦士役のアーロン・エッカートが9/16に来日。都内ホテルでおこなわれた記者会見の模様をお届けします。会見では、実際に事故機に搭乗していた日本人の方もサプライズゲストで登場。 ザ・シネマでは、トム・ハンクスの代表作『ターミナル』『キャスト・アウェイ』『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の3作品を絶賛9月放送中です。また、10月には『アポロ13』を放送。最新作を見る前に、もう一度トムの勇姿を要チェック! トム・ハンクス(以下T・H)、アーロン・エッカート(以下A・E)がにこやかに登壇し、記者会見がスタート。 T・H:非常に喜んでいます。今日は皆さんにお会いできてうれしいです。この映画には誇りをもっています。実際にこの便に搭乗していた日本人の方にお会いしました。私たちを嫌ってないようなので、安心しました(笑)それは良いサインだと思います。 A・E:皆さん、こんにちは。そして、東京に来られたことを大変うれしく思っております。まだホテルにこもりきりで何も見られていないのですが、皆様から歓迎を受けて、大変うれしく思っています。素晴らしい映画ができたと思いますので、是非、日本のみなさん、見て楽しんでください。 T・H:リッツカールトンは、とても素敵なホテルです。ペニンシュラもとてもいいホテルですし、パークハイアットもすてきなホテルです。インペリアルホテルも第一級のホテルです。でも私たちは今、リッツカールトンにいて、皆さんとご一緒できて、とってもうれしいです。 司会者:たくさんのホテル名を出して頂いて、一泊無料になるかもしれませんね。 T・H:それが狙いでした(笑) ※クリント・イーストウッド監督のビデオメッセージが流れる。 クリント・イーストウッド監督のコメント「日本の皆さんこんにちは。今回、東京に伺えず残念です。でもトムとアーロンがそちらにいることを嬉しく思っています。そして、『ハドソン川の奇跡』を皆様にご覧頂けることを楽しみにしております。」 T・H:(あまりに短いコメントで、顔を押さえて爆笑) A・E:ずっとそういうふうに監督に言われて作っていました。 T・H:えー彼との仕事ぶりが、こういう感じだったと、よくわかると思います。非常に彼は口数が少なく、寡黙な男。でもちゃんと言葉を選んで大事なことは言っています。アンダーラインは、‘非常に少ない’です(笑) A・E:彼と仕事をしている楽しさを今思い出しました。いつも笑っていらして、目をキラキラと輝かせて、私たちが映画を作ることを、苦も無くできるそういう現場でした。 ■初めてクリント・イーストウッド監督と仕事をされてみて、どうだったのか?もう少しお聞かせください。 T・H:とにかく、彼が偉大な俳優であり監督であることは、すでに知っています。何年にあの映画を見たとか、今でも鮮明に覚えています。彼が監督になってからの作品は、目を見張るものがありまして、多分、20世紀に残る代表作5、6本は彼の手によるものだと思います。(眉間に皺をよせ、監督の顔マネをしながら)こういうふうに見て、非常に驚異を感じる。あの顔ですから(笑) でもこれは機嫌がいいときです。私たちに非常に期待をもってくださっている。俳優のことを思ってくださって、本当に俳優のことが好きなんですね。とにかく俳優によって映画が作られるということで、俳優を大事にしてくださる方です。 A・E:そうですね、彼は、映画の私のヒーロー的な存在です。今でも大変覚えているのですが、撮影の初日、ハドソン川の側で何百人ものスタッフと共に撮影をしていました。雨が降っていたのですが、監督はずっと私たちの側にいてくれたんですね。ウインドブレーカーを着て、帽子をかぶって、一瞬たりとも室内に入ることなく、一日中、私たちの側にいて指示してくださって、そういうところは本当に力になります。 ■危機を向かえた時に、それを乗り越えさせてくれるものは何か。今の日本人の心に響くとても希望に満ちたメッセージがこの映画には含まれていると思っています。実際にこのUSエアウェイズ1549便に日本人搭乗者がいたということは、ご存じでしたか?T・H:本当に驚きで、先程この裏でお会いして、初めて知りました。荷物は戻ったか?と彼らに確認しました。一番知りたかったことです。その答えは、彼らから聞いてください。 A・E:私も知りませんでした。どういう経験をされたかっていうのを、聞くのがとても興味深いです。すごい衝撃があって、それからとてもスムーズに着水したとお答えになっていました。実際に映画を作っていた時、サリー機長本人が私たちと一緒に撮影に参加されていました。最初に救助に来てくれた方々も撮影に参加されて、何が起こったのかということを、私が直接聞くことができました。これは大変重要でした。 ■今回、演じられるにあたって、事実に忠実に過剰な脚色を加えないように演じているとお伺いしました。実際に乗客の皆様も映画を見ると思いますが、乗客の方々に何ていう風に言ってもらえたら、この映画をやってよかったと思いますか? T・H:とにかく、実際に経験した乗客がその場にいたわけですから、何を言われても私は受け入れます。彼らが見てくださった時に、我々が装飾したりとかドラマチックにしたりだとか、事実を事実としてちゃんと伝えたか、正確かというとこを感じて頂きたい。そういうところを見て頂きたい。 A・E:すごく面白かったって言って頂きたいですよね。やはり、見ている観客の方、全てに対して、自分がまさに経験したと思って頂きたいですよね。着水の時も、国家運輸安全委員会の調査もそうですけど、あたかも自分が経験したというふうに観客の方に思って頂きたい。 ■最近、実在の偉大な人物の役を演じることが多いですが、そういった役を演じる困難さ、なぜそういった役を演じ続けられるのか。また、悪役をやっておられないようにお見受けしますが、そういったことは考えたことはありますか? T・H:実際の人物ばかり続いたのは、理由はわからないです。トイストーリーのウッディも演じていますが、彼にはインタビューに行ったり調査したりはしてないです(笑)どういう風に物語が解釈されているのかに非常に興味ありまして、神話として残っている部分がありますが、そこに私たちが知らない事実が隠されていたり、二幕まで知っていたけれども三幕四幕があった、そういう面白さに興味があります。 本当にディテールにこだわるということ、実際に起きたことですから。何かが起きて、作っているわけでないですから、監督たちが勝手に作っているわけではないです。 俳優の仕事でとても大切な部分は、あまり飾り付けをしないことですね。この物語自体を、自分で編集したり作り上げたり、作り直したり、実際に体験したり感じたものがあるわけで、我々はそれを映画として正確に描きたかったということです。 できるだけノンフィクションにしたいということもあり、詳細にこだわるというのもあります。やはり多少作りあげる部分はあるのですが、やはり真実のDNAが含まれているかどうかが非常に大事なことです。 ■不時着事故があった当時、二人はどのように事件を知り、どのように感じたのか教えてください。 A・E:テレビで見ました。私は当時、ヨーロッパで映画を撮影してテレビで見たときの映像は、皆さん毛布に包まって、飛行機に乗った状態でした。その時、最初に思ったことは、ものすごく悪いことが起きてしまった。もしかしたら、9.11のようなテロが起きたかもしれないと頭をよぎりました実際はまったく反対で、NYというひとつの都市が一体となって155名を一生懸命、一緒になって助けたという素晴らしい出来事になったわけです。 T・H:私はアメリカにいて、テレビを見てニュースで初めて知ったのですが、まさに救援活動が行われていました。もうすでに救援隊が来ていて、水の中から乗客が救助している映像を見ていました。ニュージャージで実際に目撃した人たちは、低空飛行するこの飛行機を見て、またテロだと全員が感じたと思います。その後は多分ビルに突撃するのではないかとか何千人も死ぬのではないとか、ホントに悪いことを考えたと。ですから、私はこれを目撃しなくて良かったです。もし私が目撃していたら、多分大声で叫んでいたと思いますし、絶叫したと思います。完全に9.11の繰り返しと思ったに違いないです。 ■『アポロ13』、『キャスト・アウェイ』、『キャプテン・フィリップス』までトムさんの旅には困難が付き物ですが、今回またこの困難な旅に出てみようと思った最大の魅力はなんですか?また、アーロンさんは今回トムさんと旅に出られた感想を教えてください。 T・H:東京へ飛行機に乗ってやって来た男が最悪な事にスーツケースを無くした!という様な映画を撮りたいんですが、そういう映画だと誰も資金援助してくれないのです(笑)良い題材を常に求めていて、俳優としてはかなり競争心が強いタイプですし、一番大事なのは脚本だといつも思っています。本作のトッド・コマーニキの脚本は、17分くらいで読んだのではないか感じるほど、誰も知らなかった様々なサプライズが詰まっていました。理解していたと思っていたニュースの裏側にこんな事があったんだ!という気持ちは、私にとって良い映画を作るのに欠かせないレシピだといましたし、特に共演者がアーロン・エッカートだしね(笑) A・E:トムと一緒のフライトでちゃんと到着しましたよ!(笑)悪い事は何も起きませんでした(笑)トムと監督はもちろんですが、スタッフの方も自分達のやる事に非常に長けた集団だったので、本当に良い経験になりました。 私も皆さん同様、イーストウッド監督やトムの大ファンで、この現場で自分が常々知りたいと思っていた事を全部自分の目で見ることができたので、私にとっては本作に関わることは大きな特権だったと思っています。 ■盟友・ロバート・ゼメキス監督の『フライト(2013)』をご覧になっていたらどう思われたか率直な感想をお聞かせ下さい。サリー機長を演じるにあたって、どんな俳優を思い描いて演じられましたか? T・H:ボブ(ゼメキス監督)とは長い付き合いで、彼の映画は大好きだし、『フライト』は脚本段階で読ませてもらっていました。彼自身もパイロットなので、パイロットの様々な心理を想定して書いた脚本は素晴らしいと思いました。 まぁ、飛行機の映画は本作以前にもまぁまぁあります。今回はどの映画・俳優を参考にするというのではなく、この「ハドソン川の奇跡」を忠実に再現することを心掛けました。パイロットが何をすべきかという様な、脚本に書いてあることをサリー機長自身から細かく教えてもらいましたし、国家運輸安全委員会の公聴会の話しも聞きました。 原作を読んだところ、公聴会の事が全然描かれていないので、何故なのかをサリー機長に聞いたところ、小説の発行後に公聴会があったと事を知りました。この様な、サリー機長から直接情報を得た事も多く、本作の事実に集中する事を考えました。 ■サリーさんとジェフさんが信頼し合い、誇りに思い合っている部分に感動したのですが、実際のサリー機長にお会いした際に、彼から二人の関係性についてお聞きになったのかどうか、また、友情についてどう考え演じられたか教えてください。 T・H:実際は、サリーさんとジェフさんはチームになってたったの4日目で、知り合ったばかりだったのです。それ以前は会った事もなく、それはフライトアテンダントの方たちも全く同じでした。ただ、二人は知り合ったばかりだったにも関わらず、お互いのキャリアを尊敬していたし、経験も豊富でした。3日間の間にお互いが「良いパートナーだ」という事を理解していたんだと思います。 あの日、ジェフさんが離陸を担当していたのは何故なのか、サリーさんに聞いたところ、機長になる為には、数回に1回は離陸を体験しなければならないというのが理由でした。そういう事も含めて、サリーさんの説明は非常に納得がいくものでした。 A・E:当時コックピットにいたのは本当に2人だけだったとジェフさんも言っていました。プロとしての仕事にお互い敬意を持っていたのですが、この事件を経験することによって友達になっていったとい経緯があります。ジェフさん本人に当時の事を聞いて、よりいろいろな事が理解できたと思います。今でもサリーさんとジェフさんはとても良い友達ですよ。 ■最後にご挨拶をお願いします。 A・E:ありがとうございます(笑)今日は来てくれてありがとうございます。映画を愛してくれてありがとうございます。みなさんのお友達にも伝えてくださってありがとうございます。またお会いしましょう! T・H:今日はリッツカールトンにお越しくださりありがとうございます!(笑)ペニンシュラももちろん良いホテルですし、リッツは高い建物なので、窓から全てを見渡せます。とても生き生きとした会見になりました!ちょっと喧嘩になるかと思いましたが、とても平和的に終わる事ができて良かったです(笑)。ご協力に感謝します。 ※記者会見が終了し、トム・ハンクスとアーロン・エッカートは手を振って会場を後にしました。 --USエアウェイズ1549便に搭乗されていた日本人乗客の滝川裕己さんと出口適さんが登場。当時の様子を語ってくださいました。 ※左から、アーロン・エッカートさん、出口適さん、滝川裕己さん、トム・ハンクスさん ■事故に遭われた経緯を教えて頂けますでしょうか? 滝川さん:仕事でアラバマ州の方に出張があり、シャーロットで乗り継ぐ必要があり、あの事故に遭いました。 ■機内の様子はいかがでしたでしょうか? 出口さん:とても普通でした。バードストライクがあり、なんだなんだと騒ぎ出した事はありましたが、最後の最後までとても普通な感じでした。 滝川さん:出口君が言った様に、皆さん落ち着かれていたと思います。特に、落ちてから脱出するまでの順序も、とても秩序だっておりパニックになることもなく、順番に救助されていました。 ■作品をご覧になっていかがでしたか? 出口さん:一番びっくりしたのは、我々の命を救ってくれたヒーローであるサリー機長が容疑者扱いされていた事です。全く知らなかったので驚きました。 滝川さん:事故直後から出口君が言った様な事が起きていた事を知らなかったのでびっくりしたのと、映画の中身がすごくリアルで、実際に体験した者から見ても事実を忠実に再現されているなと感じました。 ■トムさんからどうしても聞いてほしい質問ということで「実際に荷物は戻ってきたのか?」というのがありますが、いかがでしたか?(笑) 出口さん:何か月後か忘れましたが、間違いなく戻ってきました。 滝川さん:私も、スーパーの会員カードまで戻ってきました(笑) 出口さん:すべてクリーニングがかかって、きれいに包装がされた状態で戻ってきてびっくりしました(笑)。<終了> ■ ■ ■ ■ ■ 『ハドソン川の奇跡』監督:クリント・イーストウッド出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニーほか9/24(土)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他全国ロードショー オフィシャル・サイトhttp://wwws.warnerbros.co.jp/hudson-kiseki/ <あらすじ>09年1月15日、極寒のNY上空850mで155名を乗せた旅客機を襲った全エンジン停止。近隣の空港に着陸するよう管制室から指示が飛ぶが、機長サリーはそれを不可能と判断し、ハドソン川への不時着を決断。航空史上誰も予想できない状況下の中、見事水面不時着を成功させ、全員生存の偉業成し遂げる。それは「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ、サリーは英雄と称賛されるはずだった。ところが機長の究極の決断に疑惑がかけられる。 ©2016 Warner Bros. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
ブラック・ダリア
[R-15]ロサンゼルス最悪の迷宮事件をデ・パルマが映画化!欲望にまみれた黒い謎を暴くサスペンス!
作家エルロイがロスの闇を描く『L.A.コンフィデンシャル』を含むシリーズのうち、原作発表順では第1作となる同名小説を、鬼才デ・パルマが映像化。実際に起きた未解決猟奇事件に着想を得たL.A.ノワール。
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COLUMN/コラム2014.06.21
ハリウッド暗黒史に語り継がれるふたつの怪事件 ― その虚飾にまみれた倒錯と悲哀の世界
ブラック・ダリア事件は、20世紀のアメリカ犯罪史上最もセンセーショナルな未解決事件のひとつである。1947年1月15日の午前10時半、ロサンゼルスの空き地を通りかかった主婦が発見した女性の死体は、胴体がふたつに切断されていた。さらに血と内臓を抜かれたうえに性器が切除され、口が左右の耳元まで裂かれたその死体はさながらグロテスクなアートのようで、ネクロフィリアらの性的倒錯者による犯行が疑われた。被害者の名はエリザベス・ショート。ハリウッド女優としての成功を夢見て、マサチューセッツ州から上京してきた22歳の美しい白人女性だった。ロス市警は前例のない大がかりな捜査態勢を敷き、何人もの容疑者が捜査線上に浮かんだが、事件は迷宮入りしてしまう。 マスコミが熾烈な取材合戦を繰り広げ、被害者エリザベスを悪夢のようなメロドラマのヒロインに見立てて報じたこの事件は、ブラック・ダリアというネーミングもキャッチーだった。事件の前年に公開されたレイモンド・チャンドラー脚本のスリラー映画『青い戦慄』の原題が『The Blue Dahlia』であり、生前のエリザベスが黒い服を好んだことからブラック・ダリアと命名されたのだ。殺人の手口といい、被害者のプロフィールといい、そのあまりにも異様な残虐性と悲劇性を知れば知るほど、否応なく闇の中の真相への好奇心をかき立てられてしまう。そんな特別な魔力を秘めた怪事件である。 ブライアン・デ・パルマ監督が手がけた2006年作品『ブラック・ダリア』は、ジェームズ・エルロイの“暗黒のL.A.4部作”の一作目となった同名犯罪小説の映画化だ。エルロイとブラック・ダリア事件の間には数奇な因縁がある。エルロイは事件発生の翌年にあたる1948年にロサンゼルスに生まれたが、10歳の時に母親を何者かに惨殺されてしまう。しかもその事件は迷宮入りし、やがてどす黒い犯罪の世界に引きつけられたエルロイは、非業の死を遂げた自らの母親の残像をエリザベス・ショートにだぶらせていく。こうしてブラック・ダリア事件は“アメリカ文学の狂犬”と呼ばれる異端的作家の原点となった。そんなエルロイの個人的なトラウマや執着が反映された小説に基づく『ブラック・ダリア』は、事件の全貌を徹頭徹尾リアルに再現することを試みたノンフィクション的志向の作品ではなく、あくまで“事実を背景にしたフィクション”なのである。 かくして完成した『ブラック・ダリア』は、デ・パルマ監督のもとにヴィルモス・ジグモンド(撮影)、ダンテ・フェレッティ(美術)、マーク・アイシャム(音楽)らの一流スタッフと、ジョシュ・ハートネット、アーロン・エッカート、スカーレット・ヨハンソン、ヒラリー・スワンクらの豪華キャストが集った堂々たるハリウッド大作だというのに、興行的にも批評的にも失敗作と見なされた。その要因はいくつか考えられるが、筆者が思うにまず脚色のミスが挙げられる。エルロイの長大な原作小説から多くの要素を削ってプロットをスリム化したにもかかわらず、出来上がった映画は極めてストーリーが錯綜してのみ込みづらい。エルロイ流の濃密な心理描写&暴力描写が際立つ小説では、複数のエピソードがいつしか絡み合い、ひとつの真実へと到達する構成が圧倒的なカタルシスを生んだが、たかだが2時間の映画でそれを成し遂げるのは容易ではない。そもそもデ・パルマという監督は職人的なストーリーテラーではなく、根っからのヴィジュアリストである。大勢の登場人物の入り組んだ相関関係を描くには不向きなタイプで、ドラマの焦点がぼけてしまった感は否めない。 それ以上に大問題なのはマデリンというファムファタールを演じるヒラリー・スワンクが、どこからどう見てもミスキャストとしか思えないことだ。マデリンが惨殺されたエリザベス・ショートに“瓜ふたつの美女”という設定は、この物語において絶対に押さえておかねばならない重大ポイントだというのに、“男前”のスワンクはお世辞にも主人公の警官バッキー・ブライカート(ジョシュ・ハートネット)をひと目で魅了するほどの美貌の持ち主とは言いがたい。おまけにエリザベス役のミア・カーシュナーとは似ても似つかぬ貌立ちであり、二重の意味で不可解な配役となった。エリザベスの可憐さや愛に飢えた哀しみを表現したカーシュナーの好演が光るぶん、なぜカーシュナーにひとり2役でエリザベスとマデリンを演じさせなかったのかと惜しまれる。そうすれば“死んだはずの美女へのオブセッション”を主題にしたヒッチコックの『めまい』の信奉者であるデ・パルマの創作意欲も、大いに刺激されたであろうに。こうも観る者に困惑を強いるスワンクの役どころ、逆にぜひとも注目していただきたい。 とはいえフィルムノワールには“混乱”が付きものであり、それがいびつな魅惑にも転化しうるジャンルだけに、上記のネガティブなポイントも踏まえたうえで本作を楽しみたい。とりわけ“ミスター・ファイアー”の異名で鳴らす熱血警官リー・ブランチャード(アーロン・エッカート)と“ミスター・アイス”ことブライカートの出会いから、エリザベスの死体が発見されるまでのハイテンポな導入部がすばらしい。この警官コンビが犯罪者のアジトを張り込む姿を映し出すカメラが緩やかにビルの屋上を越え、エリザベスの死体発見者の主婦を捉えていくダイナミックなクレーンショット! その後もブランチャードが2人の殺し屋に襲撃されるシークエンスなど、デ・パルマ印の“影”や“階段”に彩られ、長回しとスローモーションを駆使したスリリングな場面が少なくない。『ファントム・オブ・パラダイス』の怪優ウィリアム・フィンレイと、『ハリー・ポッター』シリーズのレギュラー女優フィオナ・ショウが終盤に見せつける狂気の形相も圧巻のひと言。そしてデ・パルマといえば『キャリー』『殺しのドレス』から近作『パッション』に至るまで“衝撃のラスト”が十八番だが、本作のラストには“アメリカ犯罪史上最も有名な死体”たるエリザベスの切断死体を活用している。そのサプライズ演出にギョッとさせられるか、ニヤリとするか、ぜひお見逃しなく。 ブラック・ダリア事件から12年後の1959年6月16日、TVシリーズ「スーパーマン」の主演俳優としてお茶の間のヒーローとなったジョージ・リーヴスが自宅で突然の死を遂げた。拳銃による自殺説が有力とされているこの事件を題材にした『ハリウッドランド』は、架空のキャラクターである私立探偵ルイス・シモの調査を通して、リーヴスが死に至るまでの軌跡を忠実に再現したという触れ込みの実録ドラマだ。ハードボイルド・ミステリーの形をとっているが、知られざる“衝撃の真実”が見どころではない。カメラワークや色調共にクラシック・スタイルの端正な映像で語られるのは、スーパーマンのイメージが強すぎて映画界では大成せず、人知れず苦悩を深めていった男の悲劇。当時のハリウッドはテレビの普及などによってスタジオ・システムが揺らぎつつあったが、まだTVドラマは二流役者の仕事と見なされていた。 何より驚かされるのは、リーヴス役のベン・アフレックにまったくスター俳優らしいオーラのようなものが感じられないことだ。リーヴスはスタジオ重役の妻(ダイアン・レイン)との不倫に耽ったり、それなりに華やかな俳優人生を送ったようだが、アフレックの瞳や表情には生彩がなく、動きもやけに鈍い。白黒テレビの時代ゆえに、青と赤ならぬくすんだ灰色のタイツ&マントに身を包んで「スーパーマン」の撮影をこなすシーンなどは、目も当てられないほど痛々しい。本作が製作された2006年はアフレックのキャリアが停滞していた時期で、それがオーラの欠如となって表れたのか、それとも確固たる役作りによるものだったのか、今となっては不明である。いずれにせよアフレックの悲哀漂う演技は、破滅へと向かうリーヴスのキャラクターに見事にはまり、ヴェネチア国際映画祭男優賞受賞、ゴールデン・グローブ助演男優賞ノミネートという栄誉をたぐり寄せた。そしてこの翌年、アフレックはミステリーノワールの秀作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』で監督デビューを果たし、のちに『アルゴ』でアカデミー作品賞を受賞。飛躍的な復活を遂げたのだった。 また本作は、エイドリアン・ブロディ演じる探偵シモのキャラクターの負け犬っぷりも強烈だ。妻子と別れ、どん詰まりの日々を送るシモは、金目当てで請け負ったリーヴスの死の調査に深入りするうちに、この孤独なスーパーマン俳優にシンパシーを抱くようになる。すなわちこれは一見対照的な世界に身を置きながらも、本質的に同じ悩みを持つ男たちの魂が共鳴する物語なのだ。この映画には『ブラック・ダリア』のような過激なヌードやバイオレンスもなく、本格的なスリラーや謎解きを期待する人は肩すかしを食らうだろう。しかしある程度の人生経験を積み、ふと“もうひとつの人生”を夢想したりする40代以上の視聴者の心には、ちょっぴり切なく響くドラマに仕上がっているのではあるまいか。 1940~1950年代の混沌としたムードや風俗を今に甦らせた『ブラック・ダリア』『ハリウッドランド』には、現代劇では醸し出せない優雅さと禍々しさがせめぎ合っている。夢という名の虚飾と欲望にまみれた奇々怪々なふたつの事件。それらを生み落としたハリウッドの得体の知れない闇には、まだまだ映画化の題材がいくつも転がっていそうである。■ ©2006 EQUITY PICTURES MEDIENFONDS GmbH & Co.KG? And NU IMAGE ENTERTAINMENT GMBH