COLUMN & NEWS
コラム・ニュース一覧
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COLUMN/コラム2013.06.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年7月】飯森盛良
アレクサンドリアは古代のエジプトの学芸都市だ。この映画の舞台となる4世紀にはローマ文化圏に組み込まれていた。その街に実在した女性天文学者が本作の主人公。だがその頃、街では狂信的な宗教勢力による、彼女たち知識人への大弾圧が始まろうとしていた…。 この映画では初期キリスト教団が恐ろしげに描かれるが、逆に「ローマ帝国に弾圧され虐殺される初期キリスト教徒たち」の物語は、欧米文化圏では繰り返し描かれてきた経緯があり、「彼らは気の毒な被害者だ」という前提がすでに十分共有されている。我々日本人もこの前提を共有しておかないと、偏った映画の受け取り方をしてしまう恐れがある。その上で本作は、「一方的な被害者というだけではない、加害者としての彼ら(キリスト教圏の先祖)の側面」を新鮮に描いているのだ。 また、あえて現代のテロリストと意図的に似たいでたちに初期キリスト教徒を描いているように見えたが、「今日のテロリストと同様の行為を、かつては我々キリスト教徒も行っていたのだ」と、欧米キリスト教文化圏に向けて訴えるような作りも、たいへん挑戦的に思えた。人類は、共通の欠点を持っている、と言いたいのだろう。重厚な歴史スペクタクルであるだけにとどまらない、必見の超問題作である。 © 2009 MOD Producciones,S.L.ALL Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2013.06.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年7月】招きネコ
飲んだくれの元プロ野球選手バターメーカーが率いる少年野球ダメ・チームが這い上がって、彼らをバカにしてきたエリート・チームと遂に対戦するという王道のストーリーに、世代や、国を超えて絶対にダメ・チームとダメ男に共感してしまう。少年野球チームベアーズのダメ少年たちは、チビ、デブ、メガネ、双子と、水島慎二のマンガのようなわかりやすさで笑えるし、紅一点のピッチャー、アマンダが女とバカにするエリートたちをねじ伏せる快投ぶりには胸がすく。そして、教える立場のダメ男コーチ、バターメーカーが子供たちから逆に生きる力を得ていく姿に胸が熱くなる。 この作品は、野球をモチーフにしているけど、本当に普遍的な、みんなが楽しめる作品。アマンダを演じた当時絶大な人気を誇ったアイドル、テイタム・オニールの可愛らしさは今見ても圧倒的です。そして、テーマ曲の「カルメン」が絶妙なマッチング。これを合わせた音楽担当はすごいな。 COPYRIGHT © 2013 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2013.06.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年7月】銀輪次郎
毎日の生活が、周到に仕込まれた巨大ロケセットの中のものだったら?もしも全てがメディアに作られた人生だったら?ジム・キャリー演じるトゥルーマンが住む小さな島シーヘブン。ここは実は巨大なロケセットで、トゥルーマン以外の全ての人はエキストラ。生まれた時から5,000台の隠しカメラがトゥルーマンを追いかけ、彼の生活が24時間TV放送される様を描いた異色コメディ。 コメディ作品ながら、近い将来、このような“本物”を追い求めるドキュメント番組が生まれることも有り得るのではないかと妙な予感を感じさせる本作。暗にメディア倫理的な問題の提起をしますが、エキストラの失言や失態に番組製作者目線でハラハラしたり、反対に周囲に不自然さを感じ始めるトゥルーマンの気持ちを察したりと、とても上手く作られた映画で楽しめますのでオススメ。自分の周りの生活が“本物”かどうかを確かめる機会にいかがでしょうか? TM & COPYRIGHT © 2013 BY PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2013.06.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年7月】山田
「ハイ・フィデリティ」でのエキセントリックな音楽オタク役がハマりまくっていたジャック・ブラック。本作でも、どうしようもない(でも愛すべき)ロック馬鹿を演じ、エネルギッシュかつハイテンションな魅力が爆発!随所に散りばめられた小ネタに、特にクラシック・ロック周辺がお好きな人はニヤつくこと間違いなし。部屋に貼られたポスターに始まり、生徒に教えるギターリフやフレーズ、教材として使われるライブ映像から、一時停止して確認したくなる、黒板に書かれた”ロック相関図”。そして要所要所で流れる名曲の数々。王道過ぎるベタな展開に、笑えて泣ける!一人で観ても家族で観ても、ロック好きでもそうでなくても、最高に楽しめる1本! TM & COPYRIGHT © 2013 BY PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2013.05.26
2013年6月のシネマ・ソムリエ
■6月1日『不良少女モニカ』 I・ベルイマン監督の初期作品の中で最も広く知られた青春映画。みずみずしさと冷徹さが共存するその演出は、のちの仏ヌーベルバーグの作家たちにも影響を与えた。内気な若者ハリーと奔放な少女モニカが恋に落ち、着の身着のままの旅に出る。やがて厳しい現実的問題に直面した2人の選択が、残酷なコントラストを成していく。 ベルイマンに見出されたH・アンデルセンが、野性味あふれるモニカを圧倒的な存在感で体現。北欧の夏の空気感をシャープに取り込んだモノクロ映像も、実に魅惑的だ。 ■6月8日『冬の光』 田舎町の牧師トマスは4年前に妻を亡くして気力を失い、愛人の女性教師との関係にも煩わしさを感じている。そんなある日、信者のひとりが自殺したとの知らせが届く。I・ベルイマンが『鏡の中にある如く』と『沈黙』の間に発表した“神の沈黙”3部作の第2作。信仰心が揺らいだ牧師の苦悩を、恐ろしいほど深く静かに見すえていく。窓辺の“光”を印象的に捉えたカメラは名手S・ニクヴィスト。I・チューリンらの名優が脇を固め、神の不在という主題の解釈を観る者に委ねる結末も重い余韻を残す。 ■6月15日『青春群像』 フェデリコ・フェリーニが生まれ故郷の港町リミニを舞台に撮り上げた自伝的な青春映画。イタリアン・ネオリアリスモ的なテイストが色濃く残る初期の秀作である。 結婚後も浮気性が治らない駄目男ファウストを中心に、あてどない日々を過ごす若者5人の姿を描出。いつの時代も変わらぬ青春期の高揚感と鬱屈が観る者の郷愁を誘う。カーニバルの狂騒、浜辺に漂う寂寥感など、フェリーニらしいバイタリティや詩情に満ちた場面が随所に見られる。物語&映像と見事に融合した音楽はニーノ・ロータ。 ■6月22日『ニューヨーカーの青い鳥』 ニューヨークを舞台にした摩訶不思議な恋愛喜劇。雑誌の恋人募集広告が縁でめぐり合った男女と、彼らのかかりつけのセラピストたちが珍妙な騒動を繰り広げていく。原作&共同脚本は、不条理な作風で名高い劇作家クリストファー・デュラング。登場人物は変人だらけで、会話もまったく噛み合わない。唖然とするような怪作である。唐突なオープニングから大団円のラストまで、まさにR・アルトマン監督の独壇場。巨匠の作品中ではマイナーな1本だが、予測不可能な驚きを生む演出力はさすが。 ■6月29日『ネイキッド・タンゴ』 『蜘蛛女のキス』『太陽を盗んだ男』などで知られる脚本家L・シュレイダーの監督作品。1920年代アルゼンチンのタンゴ・バーを舞台に、男女の壮絶な愛憎模様を描く。 裕福な人妻から酒場の娼婦へと堕ちていくヒロイン役のM・メイが艶やかな魅力を披露。タンゴしか愛せない殺し屋に扮した怪優V・ドノフリオとの共演が見ものだ。ギャング映画の様式に則った映像世界の中に、派手な原色の照明に彩られたタンゴ・シーンを挿入。“血”の赤に染まった破滅的な結末まで濃厚な仕上がりの一作である。 『不良少女モニカ』©1953 AB Svensk Filmindustri Stills Photographer: Louis Huch 『冬の光』©1963 AB Svensk Filmindustri 『青春群像』RIZZOLI 1953 『ニューヨーカーの青い鳥』©1996 Lakeshore International Corp. All Rights Reserved. 『ネイキッド・タンゴ』©TOHO-TOWA
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COLUMN/コラム2013.05.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年6月】招きネコ
自分を捨てて上流階級の男と結婚した女への愛のため、貧しい境遇からのしあがり、彼女の元に舞い戻った男。愛に一途に生きる主人公ギャツビーを演じるのは、当時絶大な人気を誇ったロバート・レッドフォード。上下真っ白なタキシードを着ておかしくない完璧な美しさです。彼が愛した女デイジー役はミア・ファロー。彼女は、「レッドフォード様が命を賭けるほど魅力的に見えない」と当時このキャスティングは非難囂々でしたが、その容姿は今見ると1920年代のクラシカルなファッションがピッタリで他に代え難い美しさにあふれています。そして全編のファッションを担当したのが、ラルフ・ローレン。スポーティなサマーセーター、シャツ、ビシッと決めたスーツ、そしてラグジュアリーなドレスまで、完璧な美しさ。舞台となる白亜の邸宅、田園風景、クラシックカー、もう画面の隅々まで美しさに満ちあふれた映画。ストーリーの甘美さと共に、日常の殺伐とした現実から逃避して夢にひたってみてください。今年6月、レオ様主演のリメイクが劇場公開されますが、前でも後でもぜひ見比べて見て欲しい美しすぎる映画です。 The Great Gatsby™ & Copyright © 2013 by Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
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COLUMN/コラム2013.05.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年6月】飯森盛良
この良い面したオッサンがジョン・ミリアス監督です。かけてるグラサンはレイバンのアビエーター。着てるのはどうも実物っぽいA-2。この手のフライト・ジャケット姿(ナイロン系含む)で演出してるこの人のバックステージ写真は大量に残ってます。 はい、こういう格好してる漢ってのは、まず信頼してOK!だって亀山薫を見てくださいよ!かつて大空を駆ったヒコーキ野郎どもが戦場でまとった“現代の鎧”を蒐集し、わざわざ普段着として着るって行為は、自らそのイズムの継承者をもって任じているということの表明です。監督作を並べてみりゃ一目瞭然。『デリンジャー』、『風とライオン』、『ビッグ・ウェンズデー』、『コナン・ザ・グレート』、『若き勇者たち』、そして本作…ほら、全部、矜持を貫こうと意地になった漢たちの、実存を賭した大勝負の話ばっか! この格好で、さらに葉巻までふかしまくるミリアス監督。ちなみに『風とライオン』撮影中に男気映画の最高神ジョン・ヒューストンから葉巻を一子相伝されたパダワンであり、かつ『コナン』の現場でシュワに葉巻を直伝したマスターでもあるのです。このハリウッド葉巻閥、全員が一生ついて行きたい面々だな! 蛇足。『ビッグ・リボウスキ』の、リボウスキのダチのベトナム・ベテラン。モデルはこの監督です。 ® & © 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2013.05.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年6月】銀輪次郎
野獣ハンター集団のまとめ役を演じるジョン・ウェイン、彼の男気たっぷりの魅力と小象の可愛らしさを存分に楽しめる作品。野獣ハンターといっても、生きたまま動物を捕まえるハンターですのでご安心を。アフリカの大自然を舞台に、キリンにサイに象やヒョウなど、動物追いかける映像は迫力満点。CGではないリアルな映像作品というところが、今のCG全盛の時代において、逆に魅力を感じる気がします。聞くところによれば、動物の捕獲シーンは全てノースタント。俳優達が体を張って捕獲します。そして、恋や笑いといった要素も盛り込んで、人情味溢れる作品に仕上っているところは、さすがの名匠ハワード・ホークスのなせる業。誰もが聞き覚えのある挿入歌「小象の行進」の他、ヘンリー・マンシーニが生み出す小気味よい音楽も、まさに往年の娯楽映画ならでは。ジョン・ウェインの男気に惚れた方は、ザ・シネマ6月の特集「Mr.アメリカ ジョン・ウェイン」もどうぞご覧ください。 COPYRIGHT © 2013 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2013.05.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2013年6月】山田
ガイ・リッチー周辺のスタッフ&キャストでおくる、1974年の痛快スポーツムービー「ロンゲスト・ヤード」のリメイク(?)もの。アメフトがサッカーに置き換わっている以外、ストーリーとしてはほぼ一緒ではあるが、キャラクターの濃さ(と分かり易さ)、スタイリッシュかつスピード感溢れる映像に選曲の良さも光り、サッカー好きはもちろん、そうでなくても大興奮!どんな時でも悪人面、主演のヴィニー・ジョーンズはというと、プレミアリーグでも活躍した元・プロサッカー選手。時々見せる愛嬌のある笑顔に、「もしかしたら普段は大人しくて優しい人なのでは?」と勝手に思っていたのですが、何やら選手時代にもかなり凶暴で恐れられていたらしく、東京へのフライト途中のケンカが原因でヴァージンアトランティック航空に搭乗禁止とか、イエローカード最速記録(キックオフして3秒後!)保持者だとか。やはりそのままのようだ。ザ・シネマではもちろん、「ロンゲスト・ヤード」1974年版、リメイクの2005年版もあわせて放送いたします! COPYRIGHT © 2013 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED
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COLUMN/コラム2013.04.28
2013年5月のシネマ・ソムリエ
■5月4日『野いちご』 ウディ・アレンらに多大な影響を与えてきたI・ベルイマン監督の代表作。ベルリン国際映画祭金熊賞などを受賞し、ベルイマンの世界的な名声を確立した傑作である。名誉博士の称号を授かることになった老教授が、ストックホルムからルンドへ車で向かう。その道中のさまざまな出会い、主人公の胸に去来する苦い思い出を映し出す。とかく哲学的で難解とされるベルイマン作品の中では共感しやすく、老いや孤独といった主題を繊細に紡いだ逸品。冒頭のシュールな“悪夢”は一度観たら忘れられない。 ■5月11日『サイコ リバース』 ネブラスカ州の田舎町を舞台にしたサイコ・スリラー。ある列車事故をきっかけに、地元の銀行に勤める物静かな青年ジョンの驚くべき“秘密”が明らかになっていく。主演は『麦の穂をゆらす風』『レッド・ライト』などのC・マーフィ。実力派の曲者俳優が『サイコ』の殺人鬼ノーマン・ベイツを彷彿とさせる多重人格者を演じた。妙なふたつの顔を持つ主人公の狂気と悲哀が渦巻くドラマが展開。日本では未公開に終わったが、E・ペイジ、S・サランドンらが脇を固めるキャストも充実している。 ■5月18日『処女の泉』 巨匠I・ベルイマンが民間伝承に基づいて撮り上げた深遠なドラマ。中世のスウェーデンを舞台に、3人の羊飼いに殺される少女の悲痛な運命と父親による復讐を描く。製作当時としては衝撃的な暴行シーンを生々しく映像化。殺人とその復讐を通して、神の沈黙や宗教的な赦しなどのテーマを探求した映像世界は今なお色褪せていない。荒涼とした北欧の山間部の風景、登場人物の鬼気迫る表情を捉えたスヴェン・ニクビストのカメラが秀逸。1972年のホラー『鮮血の美学』の元ネタにもなった名作である。 ■5月25日『死刑台のエレベーター』 ルイ・マル監督が弱冠25歳で撮り上げたデビュー作。愛人関係にある男女の完全犯罪が些細なミスから綻び、思わぬ事態へと発展していく様を描く犯罪サスペンスだ。決して手に汗握るスリルに満ちた作品ではないが、全編を覆う物憂げなムードが魅惑的。アンリ・ドカエ撮影の白黒映像とマイルス・デイヴィスの即興音楽が圧巻である。夜のパリをさまようヒロイン役はジャンヌ・モロー。のちにヌーベルバーグのミューズとなる名女優の鮮烈な美貌と、クールな頽廃をまとった情念が忘れえぬ印象を残す。 『野いちご』©1957 AB Svensk Filmindustri 『サイコ リバース』©2009 CORNFIELD PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved. 『処女の泉』©1960 AB Svensk Filmindustri 『死刑台のエレベーター』© 1958 Nouvelles Editions de Film