11月2日『秋のソナタ[HDデジタルリマスター版]』

大女優I・バーグマン、最後の映画出演作となった人間ドラマ。母国スウェーデンに戻り、巨匠I・ベルイマンとの撮影中の激しい議論の末に完成させた入魂作である。 ノルウェーの田園地帯の牧師館に暮らす中年女性が、国際的なピアニストの母親と7年ぶりに対面。自由奔放な母親と、抑圧されて育った娘の心の断絶が描かれていく。ベルイマンの厳密な演出のもと、バーグマンともうひとりの名女優L・ウルマンが壮絶な演技合戦を披露。母娘が感情を剥き出しにするクライマックスは息をのむ迫力だ。

 

11月9日『夏の夜は三たび微笑む[HDデジタルリマスター版]』

ある夏の日、郊外の別荘に集まった男女が織りなす群像劇。恋愛絡みの問題を抱えた登場人物たちの珍騒動を、軽妙洒脱なタッチで綴るロマンティック・コメディである。「第七の封印」「野いちご」で世界的な名声を確立したI・ベルイマン監督が、その直前に発表した珠玉作。重厚な作風で名高い巨匠の機知に富んだ語り口に魅了される。シェイクスピアの「真夏の夜の夢」を連想させる物語と、北欧の風景が見事にマッチ。その牧歌的なムード漂う映像世界は、カンヌ国際映画祭で詩的ユーモア賞に輝いた。

 

11月16日『女はそれを待っている[HDデジタルリマスター版]』

I・ベルイマン監督は女性を主人公に据え、その内面を探求した映画を数多く遺したが、これもその1本。産科医院で同部屋になった女性3人の出産をめぐる物語である。不仲の夫との子を流産したセシリア、自分を捨てた恋人との子を身ごもったヨルディス、初めての妊娠に胸躍らせるスチーナ。不安や希望が錯綜する3人の思いを描く。皮肉な運命をたどる3人の葛藤を、ドキュメンタリーのようにリアルに描出。出産、すなわち生命の誕生という神秘に直面した女性たちへの畏敬の念も感じられる一作だ。

 

11月30日『バタフライ・エフェクト』

カオス理論のひとつである“バタフライ効果”を題材にしたサスペンス映画。先読みを許さない独創的かつスピーディなプロットが好評を博し、2本の続編が製作された。 幼少期の記憶が一部欠落したまま成長した大学生エヴァン。当時の日記を利用して過去に舞い戻った彼は、愛する幼なじみの女の子を悲惨な運命から救い出そうとする。主人公が過去に戻り、運命を変えようともがくたびに事態が悪化する展開が衝撃的。手に汗握るスリルに加え、人生の暗い一面や愛の切なさを描いたドラマも心に残る。

 

『秋のソナタ[HDデジタルリマスター版]』©1978 AB Svensk Filmindustri 『夏の夜は三たび微笑む[HDデジタルリマスター版]』©1955 AB Svensk Filmindustri 『女はそれを待っている[HDデジタルリマスター版]』©1958 Folkets Hus och Parker. All Rights Reserved 『マイ・ブラザー』©2009 Brothers Production, LLC. All Rights Reserved. 『バタフライ・エフェクト』© MMIV ALL RIGHTS RESEREVED