ザ・シネマ 高橋ターヤン
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NEWS/ニュース2011.09.22
【最強男トーナメント】決勝戦、結果発表!ついに王者が決定!!
いよいよ『最強男トーナメント』も決勝戦。勝ち残ったのは、ザ・ロックとチャック・ノリスを降したスティーヴン・セガールと、シルヴェスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーを降したジャン=クロード・ヴァン・ダムの二人。一回戦を圧勝し、準決勝では苦戦を強いられたセガールと、一回戦で苦しみながらも勝利をおさめ、準決勝では爆発的な勝利を収めたヴァン・ダム。近距離での戦いを得意とするセガールと、遠距離での攻撃を得意とするヴァン・ダム。ともにマルチな格闘技経験者であり、現在の総合格闘技シーンにも深くかかわっている二人だけに、どのような試合展開になるのかはまったく読めない。まず入場してきたのはセガール。ノリスとのフルラウンドに渡る激戦を戦っただけに疲労の色は隠せないが、その大胆不敵なオーラはまったく損なわれておらず、むしろ戦いに向けての高いモチベーションを感じさせる。セコンドはもちろん弟子でありUFCミドル級王者のアンデウソン・シウバと、元UFCライトヘビー級王者のリョート・マチダだ。金網の中に入ると大きく呼吸を吸い、瞑想するかのように目をつむったセガール。戦いに向けての準備は万全のようだ。続いて入場してくるのはヴァン・ダム。セガールとは対照的に、シュワちゃんを撃破した後のテンションの高さは今も続いているようであり、満面の笑みを浮かべながらの入場となった。セコンドは元PRIDEヘビー級王者のエメリヤーエンコ・ヒョードル。客席最前列には、親交の深いイタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ首相もおり、ヴァン・ダムを激励している。ヴァン・ダムは金網に入ると準備体操代わりの股割りを披露。少々調子に乗っている感はあるものの、こちらは連戦の疲れを感じさせず絶好調のようだ。アメリカとベルギーの国歌が演奏され、いよいよトーナメント決勝のゴングが鳴った!まずはお互いの攻撃圏の外、つまり離れた距離から、けん制のジャブやローキックを出し合う両者。一歩でも相手の圏内に入った途端に、強烈な攻撃を受けることが両者分かっているのであろう。お互いの攻撃範囲の中に入らず、緊張感あふれるにらみ合いが延々と続く。しかし殴り合いを観に来た客はそうは思わない。膠着状態に見える両者に対して、盛大なブーイングを送る。レフェリーが2度、3度と消極的な戦いをやめるように注意するも、両者に大きな動きは無いまま、1ラウンドは終了した。自コーナーに戻る両者に観客は遠慮ないブーイングを浴びせる。インターバル中、両陣営のセコンドたちは、ともに冷静を絵に描いたような選手であるため、このようなブーイングの中でも平常心を忘れぬように選手に伝えている。はたしてその思いは両選手に伝わっているのか?そして運命の第2ラウンドのゴングが鳴った!やはり距離を詰めない両者。ブーイングはさらに大きさを増していく。そしてついにシュワちゃんを破ってテンションが上がっているヴァン・ダムが焦れ、セコンドの指示を無視して大技の回転胴回し蹴りを繰り出す!セガールは遠い間合いから出たこの大技を冷静に避け、そのまま空中のヴァン・ダムに“セガール拳”を連打!空中という避けようのない空間で連打を受けたヴァン・ダムは、為す術もなくそのままダウン!セガールは追撃のパウンドを叩き込み、ヴァン・ダムの反応が無くなったことをレフェリーが確認して試合を止めた!歓喜の感情を爆発させるセガール陣営。そして金網の中央で微笑を浮かべるセガールの手をレフェリーが高々と上げ、長きにわたるトーナメントの終了を宣言した。結果的にスタミナをロスしたこと以外、重大なダメージを受けることなく圧倒的な強さでトーナメントを制したセガール。まさに『最強男トーナメント』の覇者に相応しい貫禄で、セガールは優勝トロフィーを受け取った。そして勝利者インタビューでは、これからもライフワークとして続く『沈黙』シリーズと環境問題について小一時間ほど熱く語り、最後は2時間にわたって得意のギターの腕前を披露して、この大会の幕を下ろしたのだった。以上の結果通り、スティーヴン・セガールが栄えある『最強男』の名誉を手に入れました!そして、“熱き男たちの戦いを振り返る!”ということで、今回『最強男』の座を賭けて戦った6人の主演作品を、あらためて9/24(土)・25(日)の2日間に連日放送!是非ご覧下さい!!■プレイバック ▼9月24日(土)12:00-16:00アーノルド・シュワルツェネッガー『ターミネーター』ジャン=クロード・ヴァン・ダム『ユニバーサル・ソルジャー』▼9月25日(日)12:00-20:30ザ・ロック『スコーピオン・キング』シルヴェスター・スタローン『クリフハンガー』スティーヴン・セガール『暴走特急』チャック・ノリス『野獣捜査線』これまでの試合内容を振り返りたい方は、臨場感溢れる“試合レビュー”がこちらのブロブで掲載中。こちらも是非!!■
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NEWS/ニュース2011.08.24
【2011年9月特集】最強男トーナメント ガチで一番強いのは誰だ!?SP
ハリウッドを代表するアクション・スター6人が、もし本気で戦ったら誰が一番強いのか!?そんなコンセプトでお届けする、アクション映画ファンのみならず格闘技ファンも必見のガチ企画、『最強男トーナメント ガチで一番強いのは誰だ!?SP』。3週に渡る“トーナメント方式”による王者決定戦!6人の主演作品を連日2作品ずつ放送。そして2作目放送終了後の時間に、この『ザ・シネマ ブログ』に掲載される“スペシャルブログ”で試合結果を発表!さらに結果だけでなく、映画専門誌『映画秘宝』や、格闘技専門サイト『kamipro.com』に寄稿し、両ジャンルに精通した専門家である高橋ターヤン氏による、試合経過をリアルにシュミレーションした“試合レビュー”として掲載!! ■最強男トーナメント ルールブック ・ 試合は近年の総合格闘技で主流となっている、八角形にケージ(金網)を張ったマットにて行われる。・ 頭突き、噛み付き、急所攻撃は禁止とする。またケージを掴んでの攻撃や防御も禁止する。・ 着衣はスパッツやショートパンツ以外のものの着用を禁ずる。また急所を防御するファールカップを着用する。・ 選手はオープンフィンガーグローブ、マウスピースを着用する。・ 試合は1ラウンド5分の3ラウンド制で行われる。ラウンド間のインターバルは60秒とする。・ 試合は打撃等によるKO、サブミッションによるタップアウト、レフェリーストップによるTKOによって勝者が 決まるほかに、3ラウンドの間に決着がつかない場合は、3人のジャッジによる判定で多数支持を受けた選手を 勝者とする。・ トーナメントは6名による準々決勝を一回戦として行い、準決勝2試合、決勝戦を1日で行う、 ワンデイトーナメントとして実施する。・ 準々決勝で敗れた選手の内1名を主催者が選定し、敗者復活として準決勝に出場させる。・ トーナメントの優勝者は最強のアクション俳優の証たる「最強男」の称号を得る。 ■放送作品と日時 《一回戦》▼9月6日(火)21:00-23:00/23:00-25:00スティーヴン・セガール『暴走特急』 VS ザ・ロック『スコーピオン・キング』▼9月7日(水)21:00-23:00/23:00-25:00アーノルド・シュワルツェネッガー『ターミネーター』 VS チャック・ノリス 『野獣捜査線』▼9月8日(木)21:00-23:00/23:00-25:00シルヴェスター・スタローン『クリフハンガー』 VSジャン=クロード・ヴァン・ダム 『ユニバーサル・ソルジャー』 各試合の詳細な内容を臨場感たっぷりに伝える“試合レビュー”は、各放送日の2作目が放送終了後に、随時この『ザ・シネマ ブログ』にアップ予定!乞うご期待!!
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NEWS/ニュース2011.09.09
『最強男トーナメント ガチで一番強いのは誰だ!?SP』開催中!!
ハリウッドを代表するアクション・スター6人が、もし本気で戦ったら誰が一番強いのか!?そんなコンセプトでお届けする、アクション映画ファンのみならず格闘技ファンも必見のガチ企画『最強男トーナメント ガチで一番強いのは誰だ!?SP』。3週に渡る“トーナメント方式”による王者決定戦が、只今開催中!6人の主演作品を連日2作品ずつ放送。そして2作目放送終了後の時間に、この『ザ・シネマ ブログ』で勝敗結果を発表!さらに結果だけでなく、映画専門誌『映画秘宝』、格闘技専門サイト『kamipro.com』にも寄稿し、両ジャンルに精通した専門家・高橋ターヤン氏による、試合経過をリアルにシュミレーションした“試合レビュー”としてお届け!! 現在、一回戦の3試合を終え、9月12日(月)・13日(火)には準決勝が行われる!■最強男トーナメント ルールブック ・ 試合は近年の総合格闘技で主流となっている、八角形にケージ(金網)を張ったマットにて行われる。・ 頭突き、噛み付き、急所攻撃は禁止とする。またケージを掴んでの攻撃や防御も禁止する。・ 着衣はスパッツやショートパンツ以外のものの着用を禁ずる。また急所を防御するファールカップを着用する。・ 選手はオープンフィンガーグローブ、マウスピースを着用する。・ 試合は1ラウンド5分の3ラウンド制で行われる。ラウンド間のインターバルは60秒とする。・ 試合は打撃等によるKO、サブミッションによるタップアウト、レフェリーストップによるTKOによって勝者が 決まるほかに、3ラウンドの間に決着がつかない場合は、3人のジャッジによる判定で多数支持を受けた選手を 勝者とする。・ トーナメントは6名による準々決勝を一回戦として行い、準決勝2試合、決勝戦を1日で行う、 ワンデイトーナメントとして実施する。・ 準々決勝で敗れた選手の内1名を主催者が選定し、敗者復活として準決勝に出場させる。・ トーナメントの優勝者は最強のアクション俳優の証たる「最強男」の称号を得る。 ■放送作品と日時 《準決勝》▼9月12日(月)21:00-23:00/23:00-25:00チャック・ノリス『野獣捜査線』 VS スティーヴン・セガール『暴走特急』 ▼9月13日(火)21:00-23:00/23:00-25:00ジャン=クロード・ヴァン・ダム『ユニバーサル・ソルジャー』 VS アーノルド・シュワルツェネッガー『ターミネーター』各試合の詳細な内容を臨場感たっぷりに伝える“試合レビュー”は、各放送日の2作目が放送終了後に、随時この『ザ・シネマ ブログ』でアップ予定!乞うご期待!!■
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NEWS/ニュース2011.09.14
『最強男トーナメント ガチで一番強いのは誰だ!?SP』開催中!!
ハリウッドを代表するアクション・スター6人が、もし本気で戦ったら誰が一番強いのか!?そんなコンセプトでお届けする、アクション映画ファンのみならず格闘技ファンも必見のガチ企画『最強男トーナメント ?ガチで一番強いのは誰だ!?SP』。3週に渡る“トーナメント方式”による王者決定戦が、只今開催中!6人の主演作品を連日2作品ずつ放送。そして2作目放送終了後の時間に、この『ザ・シネマ ブログ』で勝敗結果を発表!さらに結果だけでなく、映画専門誌『映画秘宝』、格闘技専門サイト『kamipro.com』にも寄稿し、両ジャンルに精通した専門家・高橋ターヤン氏による、試合経過をリアルにシュミレーションした“試合レビュー”としてお届け!!現在、準決勝を終え、ついに9月21日(水)に決勝戦が行われる! ■最強男トーナメント ルールブック ・試合は近年の総合格闘技で主流となっている八角形にケージ(金網)を張ったマットにて行われる。・頭突き、噛み付き、急所攻撃は禁止とする。またケージを掴んでの攻撃や防御も禁止する。・着衣はスパッツやショートパンツ以外のものの着用を禁ずる。また急所を防御するファールカップを着用する。・選手はオープンフィンガーグローブ、マウスピースを着用する。・試合は1ラウンド5分の3ラウンド制で行われる。ラウンド間のインターバルは60秒とする。・試合は打撃等によるKO、サブミッションによるタップアウト、レフェリーストップによるTKOによって勝者が 決まるほかに、3ラウンドの間に決着がつかない場合は、3人のジャッジによる判定で多数支持を受けた選手を 勝者とする。・トーナメントは6名による準々決勝を一回戦として行い、準決勝2試合、決勝戦を1日で行う、 ワンデイトーナメントとして実施する。・準々決勝で敗れた選手の内1名を主催者が選定し、敗者復活として準決勝に出場させる。・トーナメントの優勝者は最強のアクション俳優の証たる「最強男」の称号を得る。 ■放送作品と日時 《決勝》▼9月21日(水)23:00-25:00/25:00-27:00スティーヴン・セガール『暴走特急』 VS ジャン=クロード・ヴァン・ダム『ユニバーサル・ソルジャー』試合の詳細な内容を臨場感たっぷりに伝える“試合レビュー”は、2作目が放送終了後に、この『ザ・シネマ ブログ』でアップ予定!乞うご期待!!■
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COLUMN/コラム2019.04.24
【ロッキー一挙放送記念!コラム:高橋ターヤンさん】『ロッキー』シリーズを不動の名作にしたある登場人物とは?
『ロッキー』は素晴らしい傑作映画である。これはぼくが今さら述べるまでもなく、世界中でこれほど多くの人々に愛され続け、多くの人々に影響を与えたシリーズというのは他にないのではないか。何も持たざる者が千載一遇のチャンスをゲットして輝ける表舞台に出ながらも、本当に大切なものを見つけていくドラマに感動する『ロッキー』。リングの上で勝敗など関係なく愛するエイドリアンの名を連呼するラストは、何回観てもパブロフの犬のように泣いてしまうのはぼくだけで無いはず。 しかしぼくの中で『ロッキー』シリーズで最も印象に残るのは、バート・ヤング演じるポーリーの存在だ。ポーリーは精肉工場で働く出っ腹の中年で、ペットショップで働く地味な妹エイドリアンに酔っては罵声を浴びせて憂さを晴らす毎日。もっと楽をして金を稼ぎたいと、友人のロッキーにマフィアを紹介してもらおうとするダメ男である。何故か妹に好意を持ったロッキーとエイドリアンの仲を取り持つが、2人が幸せそうになるとバットを持って大暴れ。しまいには「もっとおれに優しくしてくれよお…」(富田耕生さんの声で脳内再生してください)と情けない声を出す。ロッキーはシリーズを重ねるにしたがって、世界王者となり、最強の敵を次々と撃破し、アメリカを代表してソ連王者と戦うことになるのだが、ポーリーはずっとポーリーのままだ。しかしポーリーはシリーズを通じて多くの登場人物が退場していく中、最後までロッキーの傍らに寄り添い、終生ロッキーと共にあった。このポーリーの存在は、ファンの中でも賛否が分かれるところであるが、ぼくはポーリーこそが『ロッキー』シリーズを不動の名作たらしめてきた余人に代えがたい存在であると断言する。 ポーリーはロッキーの合わせ鏡のような存在である。チャンスをものにし、必死のトレーニングを行って日の当たる世界に飛び出していったロッキー。しかしもしあの時、世界王者アポロ・クリードの気まぐれでロッキーが挑戦者に選ばれることがなかったら。ロッキーは三流のボクサーとして選手生命を終え、マフィアの用心棒として誰からも認められることもなく生涯を終えていたかもしれない。ポーリーのように。ロッキーはポーリーの中に常に自身を見いだしていたのではないだろうか。だからこそ、特に自身を顧みることなく、何度も失敗を繰り返しながらずっと変わらずボンクラな人生を送るポーリーを、常にそばに置いてきたのではないだろうかと思うのだ。そしてそんなポーリーだからこそ、ロッキーが辛く苦しいときも、栄光に浸っているときも常に変わらぬ率直な態度でロッキーと共にいることができたのではないだろうか。そしてこの映画を観ているぼくたち観客のほとんどは、ポーリーと同じ境遇にある。つまらない人生、うまくいかない仕事、クソったれな人間関係、金は無い、酒や博打に逃げては後悔の日々……。だからこそぼくたちはポーリーにこの上ない嫌悪と同情、そしてシンパシーを同時に感じてしまうのではないだろうか。そしてロッキーはそんなポーリーを最後まで見下すことなく厚い友誼をもって遇していた点は感動的ですらある。 しかしポーリーは『ロッキー』シリーズ最終作『ロッキー・ザ・ファイナル』をもってシリーズを退場した。新シリーズ第1作となる『クリード チャンプを継ぐ男』では、どんな死に方をしたかは分からないが、ポーリーは死んでしまっているのだ。ロッキーはエイドリアンの墓の横に眠るポーリーの墓の前にたたずむ日々を送っており、そこに盟友アポロの忘れ形見であるアドニスが現れる。そしてロッキーの家に居候することになったアドニスに与えられた部屋こそ、ポーリーの部屋であった。これはロッキーがアドニスを新たな家族として迎え入れたことの証左である。ポーリーは死してなお、『ロッキー』シリーズに多大な影響を与え続けているのだ。 特集の記事はコチラ番組を視聴するにはこちら © 1990 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved
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COLUMN/コラム2019.12.27
遅れてきたアクション映画界の大型ルーキー、快進撃を続けるジェイソン・ステイ サム!
今、最も旬なアクションスターは誰か? アクション映画界は長らくシルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ジャッキー・チェン、スティーヴン・セガール、チャック・ノリスといったメンバーが、寡占ともいえるほ業界を牛耳ってきた。しかし、スタローンは73歳、シュワルツェネッガーは72歳、ジャッキー65歳、セガールは67歳で、ノリスに至っては79歳なのである。人類の平均寿命が延び、年金の支給開始がどんどん後ろ倒しになり、定年後も再雇用やセカンドキャリアが当たり前になっている昨今だとしても、いくらなんでも70代の後期高齢者にアクション映画界をいつまで背負わせているのかと怒られても致し方なしの状況は非常に問題だ。アクションスターの後継者問題は非常に深刻なレベルにあり、特に欧米のアクションスターの人材枯渇っぷりはみていて心配になるレベル。アクションスターという存在が、絶滅危惧種と言われても否定できない状態になっている。 しかしぼくのように年がら年中アクション映画ばかり観ている輩からすると、「心配ご無用!」と太鼓判を押したくなる新進気鋭の若手アクションスターがここにいる。ジェイソン・ステイサムである。 1967年、イングランド中部ダービーシャーで生まれたステイサムは、地元の露店で働きながら、カンフー、キックボクシング、空手といった武道を習得。またサッカー選手としても活躍し、のちに映画で共演することになる元プロサッカー選手ヴィニー・ジョーンズと共にフィールドを駆け回っていた時期もあった。しかし何と言ってもステイサムの才能が開花したのは、水泳の飛び込み競技。イギリス代表候補になるほど卓越した成績を残していたが、ステイサムはアスリートの道ではなくファッションモデルとしてキャリアを積み始める。トミー・ヒルフィガー、グリフィン、リーバイスといった有名ブランドのモデルを務めるだけでなく、シェイメンやイレイジャーといったバンドのミュージックビデオにも出演。そしてステイサムがモデルとして契約していたブランドのフレンチ・コネクションがある映画のスポンサーとなっており、その宣伝もかねてステイサムはその映画に出演することになる。新人監督ガイ・リッチーの長編監督デビュー作であり、ステイサムの映画デビュー作でもある『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(98年)は、その年のイギリス映画のナンバー1ヒット作となり、主人公グループの一人を演じたステイサムも映画俳優として注目を集めるようになっていく。さらに続くガイ・リッチー監督作『スナッチ』(00年)にも引き続き出演。本作では狂言回しの主人公を演じ、俳優としてのステータスは一気に上がったのであった。 ステイサムの転機となったのは2001年に公開された『ザ・ワン』(01年)。ジェット・リーという稀代のアクションスターと共演したこの映画を皮切りに、ステイサムは本格的にアクション俳優としての活動を開始。リュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープ社制作の『トランスポーター』シリーズ(02年~)では、無敵の運び屋フランク・マーティンに扮し、ステイサムの身体能力をフルに発揮したアクションとド派手なカースタンを披露。ステイサム主演で第3作まで作られる人気シリーズとなり、興行収入もうなぎ上りで『トランスポーター3 アンリミテッド』(08年)ではついに世界興収が1億ドルを突破することになる。他にも、アドレナリンを出し続けないと死んでしまう劇薬を投与された殺し屋の活躍を描く『アドレナリン』シリーズ(06年~)、シルベスター・スタローンが消耗品扱いをされてきたかつてのアクションスターを結集して制作した大傑作『エクスペンダブルズ』シリーズ(10年~)、チャールズ・ブロンソン主演作のリメイクとなる『メカニック』シリーズ(11年~)といった人気シリーズに次々と出演。確実に数字を見込めるアクションスターとしてその方向性は確定していくことになる。 しかし興収が1億ドルを突破するようなアクション大作にだけ出演する、単なるアクション俳優で終わらないのがステイサム。『バンク・ジョブ』(08年)や『ブリッツ』(11年)といった渋めのスリラーでもその存在感をアピールし、『SAFE/セイフ』『キラー・エリート』(共に11年)、『PARKER/パーカー』『バトルフロント』(共に13年)のような単発の佳作アクション映画にも主演。まさに八面六臂の大活躍で、アクション映画俳優としての地位を確立したのだった。 ステイサムのアクションの魅力は、幼少期に経験した様々な格闘技をベースにしたガチンコのファイトコレオグラフィと、抜群の身体能力を活かしたスタント。さらに水泳競技で鍛え上げた無駄のない肉体美の躍動だ。大先輩のスタローンやシュワルツェネッガーのように巨大な筋肉の鎧ではなく、最盛期の総合格闘家ヴァンダレイ・シウバのように発達した広背筋と強くしなやかな筋肉がステイサムの強さの説得力となっているのだ。 閑話休題。ここでアクション映画界に存在する“もう一つの頂”、『ワイルド・スピード』シリーズ(01年~)に話を移そう。元々ヴィン・ディーゼルと故ポール・ウォーカーのコンビが繰り出すド派手なカーアクションで人気になったこのシリーズだが、シリーズ第5弾『ワイルド・スピード MEGA MAX』(11年)からDSS捜査官ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)が参戦した辺りから肉弾アクションも増量。それに伴って興行収入も倍々ゲーム状態で増加している人気シリーズである。 そんな人気シリーズの第6弾『ワイルド・スピード EURO MISSION』(13年)では、これまでアメリカ、日本、ブラジルといった世界をまたにかけて活躍するワイスピ一家が、ついにヨーロッパに乗り込んだ作品で、イギリス特殊部隊出身のオーウェン・ショウ率いる犯罪集団との激闘を描くアクション大作だ。ハイウェイで戦車とのカーチェイスや、巨大輸送機とのカーチェイスなどド派手なアクションが続く本作は、ワイスピ一家がオーウェンを逮捕して終わるのだったが、エンドクレジット後に流れた映像は、まさに世界を震撼させるものであった。そこでは東京で瀕死の重傷を負ったワイスピ一家の主要メンバーであるハンの姿が。シリーズ第3弾『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(06年)で事故死したとされていたハンは、謎の人物によって殺されていたのだった。その人物こそオーウェンの実兄であり元SAS最強の男デッカード・ショウ、演じるのはジェイソン・ステイサムその人であったのだ! ステイサムのワイスピシリーズ参戦のニュースは衝撃をもって世界で迎えられた。続く『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15年)では、ステイサム演じるデッカードが本格的に参戦。タイマンでホブスをボコり、カーチェイスでもワイスピ一家の強豪を上回る腕前を披露。たった一人でこれまでの主要登場人物全員を出し抜くチート状態で、ワイスピ一家はシリーズ最大の危機を迎えることになる。 主演陣のひとりであるポール・ウォーカーが撮影中に事故死するという悲劇を乗り越えて制作された『SKY MISSION』は、世界興収15億ドルを突破するというシリーズ最大の興収を記録。殺されずに逮捕されて刑務所に収監されたデッカードは、必ずや後続のシリーズでふたたび最強の敵としてワイスピ一家の前に立ちふさがるに違いない……映画を観たすべての観客がそう思ったはずだ。 しかし続く『ワイルド・スピード ICE BREAK』(17年)ではいきなりデッカードは弟のオーウェンと共にワイスピ一家側として参戦。さらにデッカード兄弟の母親であるマグダレーン(オスカー女優ヘレン・ミレン!)まで登場し、ショウ家は家族総出で謎のハッカー・サイファー(オスカー女優シャーリーズ・セロン!)と激戦を繰り広げることになる。この前作最強の敵が、次作では強力な味方となって、さらにコメディ的な役割も担う展開を、ぼくは勝手に“魁!男塾システム”と呼んでいるのだが、このシステムによってステイサムは前述の人気シリーズに加えてワイスピシリーズにもレギュラー参戦することになったのだ。 そしてワイスピシリーズ初の長編スピンオフ『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』では、デッカードはいきなり主役に昇格。ホブスとともに無敵の改造人間ブリクストン(イドリス・エルバ!)と激闘を展開するデッカードには、さらに強力な助っ人MI6エージェントのハッティ(ヴァネッサ・カービー)が登場。しかも何とハッティはデッカードの妹ということで、ワイスピ一家の増殖スピード以上にショウ家の増殖スピードが早すぎて、ますますステイサムはワイスピに必要不可欠な人材になっているのである。 という感じで、自身のシリーズ物を何作も抱えつつ、『エクスペンダブルズ』『ワイルド・スピード』という世界的なメガヒットシリーズでも重要な登場人物を演じ、さらに小粋なサスペンスや小品アクション映画にも多数出演。つまり今のアクション映画界はステイサム抜きでは語れない状態なのである。52歳にして意気軒高なステイサム。あと20年はその活躍から目が離せないぞ。■ 『ワイルド・スピード EURO MISSION』©2013 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED. 『ワイルド・スピード SKY MISSION』© 2015 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED. 『ワイルド・スピード ICE BREAK』© 2017 Universal City Studios Productions LLLP. All Rights Reserved
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COLUMN/コラム2020.01.05
本気で泣ける少林寺映画、『新少林寺/SHAOLIN』
“少林寺”といえば、ジェット・リー(当時はリー・リンチェイ)主演の映画。1970年代生まれのぼく世代にとっては、映画『少林寺』(82年)はそれだけのインパクトを持った映画だった。 まずは予告編からして、朝日をバックにリズムカルな「ハッ!ハッ!ハッ!ハハッ!」という掛け声とともに修行を積む少林僧たち、そして「天に竹林寺、地には少林寺」という唐突すぎて意味不明なキャッチコピー、「知られざること2000年…初めてカメラが撮らえた…世界の武術のルーツ少林寺」「全中国武術大会チャンピオン総出演」「中国縦断ロケ2万キロ」といったモンド映画のように観客の好奇心をそそるコピーが連打される、東宝東和ハッタリ演出の総力を結集したかのような最高の出来で、この予告編を観た全国の小中学生は劇場に殺到。それまで少林寺と言えば日本の武道である少林寺拳法(実は少林寺拳法も本作の製作・プロモーションなどをフルサポートしている)しか知らなかった少年少女たちは、ブルース・リーやジャッキー・チェンとも違う本作のカンフーに喝采を送り、日本では16億円を超えるメガヒットを記録したのだった。 少林寺映画は続編『少林寺2』(83年)『阿羅漢』(86年)という“リンチェイ少林3部作”の大ヒットが決定打となり、完全に世界各国で市民権を獲得。中国では映画を観た少年たちが次々と家出をして少林寺を目指すという社会現象が起き、日本でも『少林寺三十六房』(77年)のような過去作も次々と公開される一大ブームを巻き起こすこととなる。 ところで読者の皆さんは、少林寺はどのような場所なのかご存じであろうか。 少林寺は正式には嵩山少林寺といい、中国河南省にある寺院である。禅宗の開祖である達磨大師がインドから中国に渡り、嵩山で壁に向かって9年間座禅を続け(面壁)悟りを開いたことに始まるとされており、所説はあるが達磨によって少林武術が創始され、僧兵集団を形成していくことになる。隋末には、隋を滅ぼした王世充による攻撃もあったが、これを討伐する太宗・李世民の軍に僧兵を援兵し、国家の庇護を受けた少林寺は発展していくことになる(この時代が『少林寺』で描かれる時代となる)。 その後も少林寺では多様な武術が発展していくのだが、清代末期には武術組織と新興宗教を母体とした義和団の乱が勃発。諸外国の連合軍によって義和団の乱が鎮圧されると、国際的な監視下で中国全土で武術の禁止が発令され、少林拳も強く規制されることになる。さらに袁世凱死去後の軍閥時代末期となる1928年には、軍閥の抗争に巻き込まれる形で寺院の建物や所蔵物が焼失してしまう事態が発生。現在はいくつかの建造物は復興されているが、完全復興には至っていない状態は続いている。しかし少林寺は何回かの存亡の危機に瀕しながらも、そのたびに不死鳥のように蘇ってきた歴史があり、中国の市場経済化以降は、現方丈の釈永信の下で商標ビジネスや物販、少林武術ショーを積極的に行い、巨大な利権を生み出す観光化を推し進めている。 そんな少林寺を舞台にした映画は、中国・香港・台湾の各映画界において何度も何度も作品が作成されてきた。隋代末期の物語をベースとする少林寺モノのブームが沈静化したのちは、かつて福建省に存在していたとされていた福建少林寺の南派少林寺系の武侠や英雄の物語が繰り返し映画化されている(『ドランクモンキー酔拳』(78年)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズ(91年~)のウォン・フェイフォンなど)。 そして1997年の香港の中国返還後は、多くの香港映画人が中国に渡って少林寺映画を製作。中でも『少林寺』の監督チャン・シン・イェンと『マトリックス』(99年)のユエン・ウーピンが共同監督し、ウー・ジンが主演した『新・少林寺』シリーズ(99年~)と『少林武王』シリーズ(01年~)は中国本土でも大ヒットとなった。さらに香港の喜劇王チャウ・シンチーが監督・主演した『少林サッカー』(01年)は、少林寺(カンフー)+α映画の新地平を切り開き、2013年には本家嵩山少林寺が少林拳とサッカーを組み合わせたサッカースクール開校を発表するなど、映画の影響は大きく広がっていくことになる。ちなみに日本では少し遅れて少林寺映画ブームが到着し、『踊る大捜査線』シリーズの本広克行+亀山千広が制作し、柴崎コウが出演した『少林少女』(08年)、バラエティでも一時人気者となったチャン・チュワン君が主演した『カンフーくん』(07年)、『ガキ使』の浅見千代子が主演する『少林老女』(08年)などが制作されている。 そんな少林寺ブームも一段落した2010年代、新たな少林寺映画のマスターピースが登場することになる。『新少林寺/SHAOLIN』(11年)である。 中華民国の初期は、軍閥同士が血で血を洗う抗争を繰り返す動乱の時代であった。そんな時代の少林寺は、戦乱で家や家族を失った者、傷つき病に倒れる者を救う救済所となっていた。1912年のある日、少林寺に負傷した登封城の将軍・霍龍(チェン・チーフイ)が逃げ込んでくるが、悪逆非道を尽くす軍閥の長である侯杰(アンディ・ラウ)と副官の曹蛮(ニコラス・ツェー)が霍龍を追って少林寺に侵入。霍龍を殺害し、少林寺を侮辱して去っていく。霍龍亡き後の登封城の扱いをめぐって侯杰は妻の顔夕(ファン・ビンビン)の実兄である宋虎将軍(シー・シャオホン)と対立し、その暗殺をもくろむ。しかし腹心の曹蛮の裏切りに会い、侯杰は命からがら脱出するが、愛娘の勝男(嶋田瑠那)が重傷を負ってしまう。切羽詰まった侯杰は少林寺に飛び込むが、少林僧たちの懸命の救護活動の甲斐なく勝男は死んでしまう。勝男を失った悲しみを抱えた侯杰は厨房係の悟道(ジャッキー・チェン)に預けられるが、自ら頭を丸めて出家することを決意する。方丈(ユエ・ハイ)によって入山を許可され、武道と医療の修行を開始して浄覚という法名を与えられた侯杰だったが、曹蛮の悪政で村人が虐殺されそうになることを救ったために少林寺で生き延びていることがバレてしまう。曹蛮は侯杰を殺すため、少林寺に軍隊を送り込むが……。 少林寺の受難時代は隋代末、中華民国初期、文化大革命の3つのポイントとされており、少林寺映画と言えば隋代末を描くものがもっともメジャー。近代以降はどうしても銃vs.拳法という勝ち目のない勝負となってしまうため、映画として描きづらくなってしまうからだ。しかし本作は中華民国初期、少林寺の伽藍の多くが消失した事件をベースにしたオリジナルストーリーとなっている。 配役としては、1982年版『少林寺』でタン師父を演じたユエ・ハイが少林寺の方丈役を演じ、少林僧のリーダーである浄能役には『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(17年)で中国史上最高の興行収入を上げることになるウー・ジン、顔夕役には最近巨額脱税で話題となったファン・ビンビン、若き野心家・曹蛮役は『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』(06年)のニコラス・ツェー、そしてカンフーが使えない悟道役には何とジャッキー・チェンが演じており、物語を盛り上げる。監督は香港警察映画の名手ベニー・チャン、武術指導はジェット・リーの盟友でジャッキー・チェンの兄弟子のユン・ケイが担当。本作は香港では2011年の旧正月映画として公開されて大ヒットを記録し、第33回香港電影金像奨では助演男優賞、動作設計(アクション指導)などにノミネートされるなど、興行面でも評価面でも大成功を収めた映画となった。 しかし何と言っても本作の白眉は、主演のアンディ・ラウの演技。物語は残虐な侯杰が裏切られて少林寺に向かうまで、侯杰が少林寺で修業して開眼するまで、最後の大戦争をいう3部に分かれており、各章立てがちょうど1/3ずつの時間を使って構成されているのだが、第1部では残虐な冷血漢、第2部では思い悩む苦悩者、第3部では悟りを開いた高僧という、全く異なるキャラクターを見事に演じ分けている。 本作はもちろん激しいアクションが見所の作品であり、美術設計として金像奨にノミネートされた美しい少林寺の風景とクライマックスで破壊(爆破シーンが半端なく凄い!)されて瓦礫の山となるギャップの凄さもあるが、前述のアンディ・ラウとニコラス・ツェーの名演によって何よりも少林寺映画としては稀有な“泣ける少林寺映画”である所がこれまでの少林寺映画とはまったく異なる点となっている。憎しみも悲しみも乗り越えた主要登場人物たちが、最後にたどり着く境地をその目で確かめてほしい。■ © 2011 Emperor Classic Films Company Limited All Rights Reserved