検索結果
-
PROGRAM/放送作品
メイフィールドの怪人たち
怪人は隣人か、それとも夢中で近隣を監視する住人たちか?トム・ハンクス主演のホラー・コメディ
トム・ハンクス演じるレイの妻を演じるのは、『スター・ウォーズ』のレイア姫でも知られるキャリー・フィッシャー。劇中には古典ホラー好きで知られるジョー・ダンテ監督の趣味が随所にちりばめられている。
-
COLUMN/コラム2022.09.30
コメディミュージカルの古典『ブルース・ブラザース』は、なぜ狂騒的なまでに巨大化したのか?
◆汝、光を見たか——音楽バラエティの人気キャラ、劇場映画化への過程 たとえ原点となる番組や映画を知らずとも、サングラスに黒帽子、黒服に身を包んだノッポとデブのコンビは、多くの人にカルチャーアイコンとして周知されているだろう。1980年に公開されたアメリカ映画『ブルース・ブラザース』は、そんな異貌をきわめた連中が、歌って逃げて大騒動を巻き起こすコメディミュージカルである。 ミュージカル、というのは、彼らの出自に由来するものだ。作品のメインキャラクターであるジェイク(ジョン・べルーシ)とエルウッド(ダン・エイクロイド)の義兄弟は、タイトルと同名のR&Bシンガー。パフォーマンスは抜群だが素行に難があり、刑務所でくさい飯を食ってきた問題児だ。 そんなジェイクの仮出所後、二人はかつて世話になった孤児院を訪れると、税金の滞納で存続の危機に直面していることを知る。 更生の証に、自分たちの心のふるさとを救いたい。はたしてどうすれば……? 彼らは打開策を得ようと訪れた教会で、神父の啓示から思わぬヒントを得る。「バンドだ!!」 汝、光を見たか——。ブルース・ブラザース(以下:BB)は滞納金を肩代わりすべく、バンドを再集結させて金を稼ごうと思い立ったのだ。だがしかし、仮出所の身でありながら、ジェイクたちはバンドメンバーを半ば強制的にショービジネスの世界へと誘導し、さらには誘拐、そして破壊に次ぐ破壊と、実行の過程で無自覚に犯罪をおかしまくるのである。そしてクライマックス、映画は州兵や警察、SWATを総動員しての、シカゴ市街を制圧する大スペクタクルを展開させ、コメディを越境したパニック映画の様相を呈していくのである。 トラブルメーカーとして物語を牽引するBBは、もともと米TVバラエティ『サタデー・ナイト・ライブ』(以下『SNL』)の音楽スケッチに登場する名物キャラクターだった。同番組の出演者であるコメディアンのジョン・べルーシとダン・エイクロイドによって結成され、エイクロイドが経営するバーで週末ライブをおこなったり、同時にスタジオを盛り上げるための前座として番組に登場。そこから徐々に知名度を上げ、インパクトの強い存在感を示していく。ちなみにブルース・ブラザースというコンビ名は、後に同番組の音楽プロデューサーとなり、さらには映画作曲家として名を馳せるハワード・ショアの即興アナウンスにちなむものだ。 かくしてBBは『SNL』が生んだ気鋭のシンガーとして注目を集め、1978年11月にデビューアルバム「ブルースは絆/ブルース・ブラザーズ・ライヴ・デビュー」をリリースする。このアルバムは同年9月にロサンゼルスのユニバーサル・アンフィシアターで、同じくコメディアンであるスティーブ・マーティンのショーに出演したさいの演奏が音源となっている。このショーのゲスト司会を務めていた一人が『スター・ウォーズ』(77)のレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーで、彼女が『BB』にジェイクを付け狙う謎の刺客として登場するのは、これがパイプとなっている。 「ブルースは絆」はビルボードのヒットチャート1位を獲得して350万枚を売り上げ、史上もっとも売れたブルースアルバムになった。こうした高波はコメディ俳優ジョン・べルーシの知名度を押し上げることとなり、その勢いは『SNL』での人気に加え、初の主演映画『アニマル・ハウス』(79)を興行的成功へと導いた。そして『BB』映画化の気運を上げていったのである。 なにより重要なのは、このファーストアルバムのライナーノーツに、ジェイクとエルウッドのフィクショナルな経歴が記載され、それが映画への決定的な導きとなったことだろう。そこに光を見たアイクロイドは、これを叩き台にBBのバックストーリーにまつわる脚本を執筆。『アニマル・ハウス』を成功させたユニバーサルが入札して映画化権を取得し、監督も同作を手がけたジョン・ランディスが拝命することとなったのである。 ◆大きく影響を及ぼした、スピルバーグの戦争コメディ このチャプターは映画を観た後の追補的なものとなるが、それにしてもなぜ『ブルース・ブラザース』は、はみ出し者のささやかな慈善物語のはずが、上映時間133分に及び、そして狂騒的なまでにスペクタキュラーな作品へと変貌してしまったのだろう? 前者は脚本執筆経験のなかったエイクロイドが、セオリーを念頭に置かず、書きたい要素をすべて脚本に綴ったことが起因している。そのため初稿は従来の倍はある300ページの大冊となり、エイクロイドは自省と皮肉を込め、この脚本の表紙をイエローページ仕様にしている。 ランディスはそんな膨大な脚本を大幅に加工し、劇場映画として成立するよう調整したが、それでも縮小しきれず作品は148分に及び、プレビューを経て最終的に133分へと刈り込んだ。このリカット前のロングバージョンが、DVDで発表された「コレクターズ・エディション版」の正体だ(ザ・シネマでは133分の劇場オリジナル公開版を放送)。 加えて映画はジェームズ・ブラウンやアレサ・フランクリン、レイ・チャールズにジョン・リー・フッカー、そしてキャブ・キャロウェイといった音楽界の大物アーティストが出演し、劇中における彼らのパフォーマンスを均等に、そして余すところなく入れようとしたことで、本作の長編化は必然になったとも言われている。 そして後者だが、ランディスはもともと「グロスアウト」と呼ばれるバカげた笑いを信条に、それらがアクションと緊密に接合され、物語がスペクタクルへと変質していく傾向をスタイルとしている。前作『アニマル・ハウス』も、狼男伝説をコメディに置換した『狼男アメリカン』(81)も、こうした作家的特性のもとにあり、監督はそれを『BB』にも適合させ、そして極めようとしたのだ。 ランディスのこうした企図を焚きつけた要因のひとつに、同時期にスティーブン・スピルバーグ監督が手がけた戦争コメディ『1941』(79)の存在が挙げられる。当作はジョン・べルーシの主演映画として『BB』に先行し、ある種の指標となった。また同じユニバーサルの製作・配給映画だったために台所事情は筒抜けで、『1941』が最終予算として2,600万ドル(公称)を調達し、クライマックスの大騒動を可能としたことをランディスは知るのだ。 幸か不幸か『BB』は脚本の大幅なリライトによって予算の見通しが立たず、撮影開始後からかなり経っても具体的な製作費が決まらなかった。そのため撮影進行に応じてバジェットが上乗せさせ、最終的には『BB』は3.300万ドルの超大作となった。その背後には、『1941』の存在が妙々に関わっているのである。 この予算に関する余話として、ランディスは皮肉と友情を込めてスピルバーグに税査定職員としてカメオ出演を依頼した。もともとはランディスが『1941』で『ダンボ』(41)を上映中の映画館に、バイクで乗り付ける兵士の役で出演し、その返礼というべきものだが、スピルバーグも彼の勇気とチャレンジを賞賛し、これを快諾。さらには返す刀で人気SF TVドラマの名作『ミステリー・ゾーン』(59〜64)の劇場版アンソロジー『トワイライトゾーン/超次元の体験』(83)の監督の一人としてランディスを任命する(映画の冒頭、深夜のドライブでダン・エイクロイドがアルバート・ブルックスを相手に、テレビ番組のイントロ当てをするスケッチは、昔のランディスとスピルバーグにまつわる逸話を脚色したものだ)。 後に同作における不幸な撮影事故で、ランディスとスピルバーグとは袂を分つことになるが、80年代ハリウッドを牽引した二人の関係性もまた、別種のジェイクとエルウッドといえる。そしてそれは、『ブルース・ブラザース』を語るうえで欠くことのできない要素なのだ。■ 『ブルース・ブラザース』© 1980 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
-
PROGRAM/放送作品
(吹)メイフィールドの怪人たち
怪人は隣人か、それとも夢中で近隣を監視する住人たちか?トム・ハンクス主演のホラー・コメディ
トム・ハンクス演じるレイの妻を演じるのは、『スター・ウォーズ』のレイア姫でも知られるキャリー・フィッシャー。劇中には古典ホラー好きで知られるジョー・ダンテ監督の趣味が随所にちりばめられている。
-
COLUMN/コラム2021.11.10
“ロマコメ女王”2人を生んだ、未だ色褪せないおとなの恋愛映画『恋人たちの予感』
恋愛をテーマにしたコメディ映画“ロマンティック・コメディ”、略して“ロマコメ”。『或る夜の出来事』(1934)『ローマの休日』(53)『アパートの鍵貸します』(60)等々、ハリウッドでは古より、このジャンルから数多くの名作が生み出されている。 1989年に製作された本作『恋人たちの予感』も、そんな系譜に連なる、“ロマコメ”マスターピースの1本。この後90年代を席捲する、2人の“ロマコメ女王”を生み出したという意味でも、記念すべき作品である。 2人の“ロマコメ女王”の1人目は、もちろんメグ・ライアン(1961~ )。『トップガン』(86)『インナースペース』(87)などで若手女優として売り出し中だった折りに、本作の主演で、その人気が決定的なものとなった。 以降、『キスへのプレリュード』(92)『めぐり逢えたら』(93)『フレンチ・キス』(95)『恋におぼれて』(97)『ユー・ガット・メール』(98)『ニューヨークの恋人』(2001)といった、同ジャンルの作品に次々と主演。齢四十に至る頃まで10年強に渡って、キュートな魅力を全開に、“ロマコメの女王”の名を恣にした。 “ロマコメ女王”のもう一人は、本作の脚本を担当したノーラ・エフロン(1941~2012)である。脚本家になる前には、ホワイトハウスのインターン、「ニューヨーク・ポスト」紙の記者、コラムニストなどの多彩な職歴がある彼女だが、実は両親のヘンリー&フィービー・エフロンが、名作『ショウほどすてきな商売はない』(54)などのシナリオをコンビで書いた、有名脚本家夫婦。蛙の子は蛙と言うべきか、転身後には、アリス・アーレンと共同で脚本を書いた社会派の秀作『シルクウッド』(83)が、アカデミー賞の候補になるなど、気鋭の脚本家として注目の存在となった。 本作以降、90年代は監督としても活躍。特にメグ・ライアン主演で、エフロンが脚本・監督を担当した『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』は、本作と合わせて、エフロン&メグの“ロマコメ3部作”などと謳われる。 この2人の“女王”の誕生のきっかけを作ったのは、本作のプロデューサーであり、監督のロブ・ライナー(1945~ )。『スタンド・バイ・ミー』(86)『ミザリー』(90)といった、スティーヴン・キング原作の映画化作品などで知られるライナーのフィルモグラフィーを覗くと、本作のような“ロマコメ”の監督の印象は、ほとんどない。 ではなぜ、『恋人たちの予感』を手掛けるに至ったのか?実は本作は、彼の実体験をベースにして作られたものなのである。 ***** 1977年、シカゴ大学を卒業したサリー(演:メグ・ライアン)は、同じく卒業したてで、親友の彼氏であるハリー(演:ビリー・クリスタル)を車に同乗させて、ニューヨークへと移る旅に出る。2人の初対面は、ほぼ「最悪の部類」。18時間もの道中で会話を交わすも、何かにつけて意見が合わない。 しかしその時にハリーがサリーに言った、「男と女はセックスが邪魔をして、友達になれない」という言葉が、その後の人生に大きな影響をもたらすとは、2人とも思ってもみなかった。 5年後ニューヨークの空港で、サリーは付き合い始めたばかりの恋人の男性に見送られて出張先に向かおうとしている時に、偶然ハリーと再会。搭乗する飛行機まで同じだった2人は、5年前と同じように、機内で口論になってしまう。ハリーから近々結婚するという話を聞きながら、サリーはまたも彼と、喧嘩別れのような形となる。 更に5年後。ハリーは妻に浮気されて、やむなく離婚し、サリーも5年前から付き合っていた彼氏と、破局に至った。お互いにそんな傷心の状態にあるタイミングで、3度目の出会いが訪れた。 ようやく友達同士になれて、頻繁にデートするようになる2人だったが、話題になるのは、お互いの恋愛の悩みばかり。時にはロマンティックなムードになりかかることもあったが、“友情”を守るのが第一と、その度にお互いのそうした気持ちは振り払っていた。 そんな付き合いをずっと続けていこうと、ハリーはジェス(演:ブルーノ・カービィ)、サリーはマリー(演:キャリー・フィッシャー)という、お互いの同性の親友を紹介し合って、交際させようとする。しかし目論見は見事に外れて、ジェスとマリーが意気投合。ハリーとサリーは、お互いの親友同士が結婚することになってしまう。 そんな予想外の出来事もありながら、「セックスはしない」ことで、あくまでもお互いの友人関係を守り続けていこうとする2人。しかし遂に、一線を越えてしまう局面が訪れて…。 ***** 監督のロブ・ライナーは、自分のことを“ピーターパン・シンドローム”であると自己分析していた。即ち、彼の心の中にはいつまでも子どもでいたいという気持ちが潜んでいて、己が年をとったことをなかなか受け入れられない…。 12歳の少年が姿かたちだけ大人になってしまう、『ビッグ』(88)という作品がある。当時30代だったトム・ハンクスが演じたこの主人公のモデルとなったのが、実はライナー。そしてこの作品を作ったのは、ライナーの元妻である、女性監督のペニー・マーシャルだった。 ライナーとマーシャルの10年続いた結婚生活は、81年に終わりを告げる。“ピーターパン”である彼にとって、自分の結婚がうまくいかなかったという現実を受け入れるのは、非常に困難なことであった。 そしてそんなタイミングで、本作『恋人たちの予感』の構想が浮かび上がる。「男女の友情は成立するのか?」「そのときセックスはどうなるのか?」といったモチーフが、ライナーの中に湧き出てきたのである。 そうしたアイディアが、具体的に動き出すのは、84年。ノーラ・エフロンがライナーのチームに呼び出され、新しい映画のプロジェクトについて話し合いを持つようになってから。 幾つかの企画が挙がったが、決め手に欠けた。そんな中で、ライナーたち男性陣とエフロンの雑談中に、盛り上がった話題があった。 ライナーたちは、「女性とは絶対に友人関係になれない」と主張。その理由は、「セックスの問題が必ず入り込んで、友情関係の邪魔をする」というものだった。それに対してエフロンは、そんなはずはないと反論。両者の間で応酬が繰り広げられた。 ライナーはこの雑談の内容を受けて、「友情を育む男女の物語」を映画化しようと提案。物語を具体的に編む上で、主人公たちは親友であり続けるために、「決してセックスをしない」のを決め事にした。 その提案にエフロンが乗って、脚本作りがスタート。主人公の男の方に関しては、エフロンはライナーのキャラクターをベースにした。こうして、ひょうきんな半面、陰気で内省的な部分の持ち主でもある“ハリー”が生まれた。 一方で女性の方の“サリー”には、エフロン自身が投影されているところが多い。ライナーによればエフロンは、陽気で楽観的で、ある種の完璧主義者だった。サリーがレストランで、パンやベーコンの焼き方やマヨネーズの添え方などについて細々と注文を付けるのは、完全にエフロン本人の流儀であることを、彼女自身が認めている。 さてこのようにしてシナリオが出来上がり、キャスティングの段階になって、ライナーは必然的に、自分の身近な人間から俳優を選ぶこととなった。彼にとって、自身がモデルとなったハリー役のビリー・クリスタル(1948~ )は、長年の親友。ハリーとサリーが、それぞれのベッドから電話して慰め合うシーンがあるが、あれはライナーとクリスタルが、お互いの離婚後にやっていたことそのままだという。 ハリーの同性の親友ジェスを演じたブルーノ・カービィ(1949~2006)も、そうだ。彼はライナーが離婚で打ちのめされている時に、ジェスがハリーにしたように、優しく接してくれた人物だった。 一方でメグ・ライアンに関しては、それまでにライナーの過去作のオーディションを受けていたことが、きっかけになった。ライナーが“サリー”役に彼女はどうかと思い付き、先に決まっていたクリスタルに会わせたところ、2人の雰囲気がぴったりだったので、ヒロインに決めたという。 サリーの同性の親友マリー役に、キャリー・フィッシャー(1956~2016)を決めたのも、ライナー。こうして主要なキャスティングが、固まった。 因みに映画の冒頭から何組も出てくるのが、長年連れ添った老夫婦のインタビュー。リアルな装いなので、この部分はドキュメンタリーかと思うが、実は違う。エピソードだけを集めて、俳優たちをキャスティングして撮影した。その方が、実話の面白さをより伝えられるという判断だった。 余談はさて置き、このようにして決まった俳優陣、特にハリーとサリー役の2人が、いかに奇跡のような組み合わせであったか! エフロンの脚本、ライナーの演出を大きく広げる役割を果たした。 例えばメグ・ライアンが演じるに当たっての解釈は、「ハリーもサリーも、初めて会った瞬間からお互いに激しい恋心を抱いていたと思う。ただそのことに気づくまで11年もかかってしまっている」というもの。この考えをベースにした役作りが、長年に渡る2人の関係性の変化を描く上で、見事に機能している。 本作で最も有名だと言っても良いのが、ニューヨークのマンハッタンにあるカッツ・デリカテッセンで繰り広げられる「フェイクオーガズム」のシーンである。これは元々、脚本の打合せの際に、「女性の多くは(セックスの際に)オーガズムの“フリ”をした経験があるはず」と、エフロンが語ったことに衝撃を受けたライナーたちが、是非脚本に盛り込んでくれとオーダーしたことから生まれたもの。 しかしエフロンの脚本だと、自分とセックスした女性はすべてオーガズムに達していると自信満々に語るハリーと、それを否定するサリーという、食事中の会話止まりだった。ところが実際に撮影されたのは、店内が満席なのにも拘わらず、堂々とオーガズムでイッテるふりを演じて見せ、女性がセックス中に演技していても、男性には見分けがつかないことを、サリーがハリーに見せつけるというシーンだった。 これはメグ・ライアンが脚本を読んで、サリーが会話の最後に、その“フリ”を実演するようにしたいと提案したのを受けて、アレンジしたものだった。更にはこのシーンのオチとして、隣席の女性が「あの女性と同じものを」と注文する絶妙なギャグが入るが、これはコメディアンであるビリー・クリスタルのアイディア。因みにその女性を演じているのは、ロブ・ライナーの実の母親である。 こんなエピソードからも本作では、脚本の作成段階から撮影現場まで、今で言うジェンダー間のギャップを乗り越えようとする努力が行われていた様が窺える。80年代末という時代を考えれば、かなり先進的な試みだったと言える。そしてそれ故に本作は、「男女が出会って喧嘩して、しかし時の経過と共に離れられない間柄になっていく」という、“ロマコメ”の王道のような、ある意味古くさい構成でありながら、製作から32年経った今でも、色褪せない作品になったのである。 さて先に記した通り、ライナーの実体験を基にスタートした本作。ラストに訪れるハリーとサリーの“結末”も、撮影中にライナーの身に訪れた僥倖によって決まった。 当初ライナーは、離婚によって深く傷ついたハリーが、もう一度結婚してみようという気になるのには、あれだけの時間では無理なのではないかと考えていた。ところがライナー本人が、本作の撮影中に知り合った女性と、再婚することになったのだ。 そこで彼は、自分に出来ることならば、ハリーにも出来ないわけはないという気持ちになった。そして“ラスト”が、今の形に決まったのだという。 エフロンが書いた脚本には、こうした奇跡のような出来事を呼び起こす、魔法のような力があったのかも知れない。■ 『恋人たちの予感』© 1989 CASTLE ROCK ENTERTAINMENT. All Rights Reserved
-
PROGRAM/放送作品
(吹)メイフィールドの怪人たち 【日曜洋画劇場版】
怪人は隣人か、それとも夢中で近隣を監視する住人たちか?トム・ハンクス主演のホラー・コメディ
トム・ハンクス演じるレイの妻を演じるのは、『スター・ウォーズ』のレイア姫でも知られるキャリー・フィッシャー。劇中には古典ホラー好きで知られるジョー・ダンテ監督の趣味が随所にちりばめられている。
-
COLUMN/コラム2018.09.21
A級スターたちが集まって、ものすごく 馬鹿げたコントを見せる傑作コメディ『アメリカン・パロディ・シアター』
『アメリカン・パロディ・シアター』、1987年の映画です。 日本では劇場公開されずに、ビデオで発売されました。レンタルビデオブームの最盛期でしたね。50歳以上の人じゃないと覚えていないと思うんですけど、日本中、どこに行ってもレンタルビデオ屋さんがあった時代です。1985年から90年くらいにかけてなんですけど。 この映画にもレンタルビデオ屋さんが出てきます。“カウチポテト”といわれる、ソファに座ってビデオを観るのが流行った時代で、この映画はまさにカウチポテト族を対象にして作られた“レンタルビデオ用映画”なんです。監督はジョン・ランディス。『ブルース・ブラザーズ』(80年)や『アニマル・ハウス』(78年)という傑作を作ってきた、コメディの巨匠なんですけど、この人の出世作『ケンタッキー・フライド・ムービー』(77年)は、短いコントが脈絡なくつながっていく映画で、この『アメリカン・パロディ・シアター』も同じ形式のコント集です。 で、コント集ですから、何人かの監督が手分けをしています。たとえばジョー・ダンテ。『グレムリン』(84年)で世界的な大ヒットを飛ばした監督ですね。この人のいちばん最初の作品『ムービー・オージー』(68年・未)は、TVをずっと録画してて、それを編集して、コマーシャルや歌番組やドラマや映画をぐちゃぐちゃにつないで笑えるものに組み替えた、6時間もある自主映画でした。もちろん著作権を無視しているので、観ることはできないんですが、要するに当時の言葉でチャンネル・サーフィン、今でいうザッピングをそのまま映画にしたようなものらしいです。で、この『アメリカン・パロディ・シアター』という映画自体が、その『ムービー・オージー』と同じ構成なんですね。 深夜に何もやることがない人が、TVのチャンネルをカチャカチャ替えるのをそのまま映画にしたような。この、チャンネルをカチャカチャ替える感じというのも、若い人にはわからないかもしれないですけど(笑)。つまり、ジョン・ランディスとジョー・ダンテという2人のコメディ監督が、原点に戻って撮ったのが、この『アメリカン・パロディ・シアター』です。 まあ、バカバカしい映画ですけど、今でもまったく古びてない秀逸なギャグも多いです。ランディスが演出した「ソウルのない黒人」とか、ダンテの「人生批評」は傑作です。あと、あっと驚くような当時の大スターが特別出演してるのもポイントです!■ (談/町山智浩) MORE★INFO. 本作は85年に撮影され、86年には完成していたが、ランディス監督の『トワイライトゾーン/超次元の体験』訴訟(ヴィク・モローが撮影中に事故死した事件)が長引いたため、アメリカ公開は87年になった。冒頭のパニック映画風なメイン・テーマは巨匠ジェリー・ゴールドスミス。「病院」スケッチの患者ミシェル・ファイファーと夫役ピーター・ホートンは、実生活でも結婚したばかりだった。ランディス監督のトレードマーク「See You Next Wednesday」、今回は「ビデオ・パイレーツ」の挿話の中に出てくる。コンドームを買いに行く「Titan Man」挿話は、名作『素晴らしき哉、人生!』(46年)のパロディ。ヘンリー・シルヴァがホストを務める、ネッシーが切り裂きジャックだったという挿話「Bullshit or Not」は、漫画家ロバート・L・リプリーの『Ripley's Believe It or Not(ウソかマコトか)』のパロディ。
-
PROGRAM/放送作品
マップ・トゥ・ザ・スターズ
[R15+]ハリウッドセレブたちの闇があらわに──デヴィッド・クローネンバーグ監督が描く群像ドラマ
ハリウッドでリムジン運転手だった脚本家の実体験を基に、デヴィッド・クローネンバーグ監督がセレブたちの暗部をシニカルに綴る。ジュリアン・ムーアが破天荒な演技で印象を残し、カンヌ国際映画祭女優賞を受賞。
-
COLUMN/コラム2014.12.01
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年12月】にしこ
「ロマンチック・コメディの女王」と言えば、古くはメグ・ライアン、現役続行中のキャメロン・ディアス、実力派リース・ウィザースプーン、はたまたエマ・ストーン?と名前が挙がってくるのでしょうが、真にこの名にふさわしいのはこの人しかいません。ノーラ・エフロン。2012年に急逝されたこの偉大なロマンチック・コメディ界の巨星の最高傑作と言い切りたい!それが『恋人たちの予感』です。彼女はこの作品の脚本家でありますが(監督は『スタンド・バイ・ミー』のロブ・ライナー。ノーラが監督し、大ヒットした『めぐり逢えたら』に、トム・ハンクスの親友役としても出演しています)、この作品は会話劇と言っても過言ではないほど、登場人物がしゃべるしゃべるしゃべる。ずばりと男女の考え方の違いをウィットに富んだ表現でしゃべるしゃべる。ハリーとサリーはシカゴ大学を卒業し、就職の為にNYへと向かう車の相乗り相手として知り合います。サリーは理想主義の優等生タイプ。ハリーは世の中を斜に構えて見ているペシミスト。自分は恋人の友人であるにも関わらず口説いてくるハリーにサリーは嫌悪感を抱きつつ、合うはずもない2人、NYに到着し「もう二度とお会いすることもないでしょう」的お別れをします。車の中での会話も男女の考え方をユニークでありながら、端的に主役二人に語らせます。「男女の友情なんて存在しない。男は女に魅力を感じた時点でヤリたいと思ってる」「そんな事はない、私には男友達が沢山いる」という2人の会話が後半部分の伏線となっていきます。それから5年後、2人はばったり空港で再会。サリーがハリーの友人の恋人だった為気づいたものの、それがなければ気づかなかった程、相手に関心のない2人。挨拶のみでさようなら。さらに6年後、ハリーの離婚直後にNYの本屋で再会。ちょうどサリーも恋人と別れたばかり。最初の出会いから11年経って初めて、お互いに心を開き合い、2人は親友になります。「魅力的だけど寝たいと思わない初めての女性だ」。ハリーはサリーに言います。数々の名シーンはあれど、1つあげるのであれば、伝説の名シーン。「自分の過去の彼女は皆、自分とのセックスに満足していた!」と言い張るハリーにサリーが「女は誰でも人生に1度はオーガズムに達するフリをした事がある」と主張。「そんなばかな事あるか!」と取り合わないハリーに、お客が大勢いるカフェの中で、あられもないオーガズムの演技を披露する。というアレです。サリーが大熱演を終えた後、1人の中年の女性にカメラが。オーダーを取りに来た店員に「彼女(サリー)と同じものをちょうだい」というシーンがあります。その中年の女性を演じているのは監督、ロブ・ライナーの実のお母様!!お互いの違うところを理解した上で受け入れ、嬉しいことはもちろん、悲しいことも何でも共有したいと思う間柄になった2人。そんな2人の素晴らしい親友ライフは、2人がなんとなく流れでセックスしてしまった事件によってぎくしゃくしたものに…「男女の友情は成立するのか?」映画+「男女の頭の中のギャップ」映画でもある本作。テーマは男女の性差、ですが、性別関係なく、確実に楽しめます!そして必ずやハッピーな気持ちになれる事請け合い!!いつ見ても楽しめますが、ぜひクリスマスに観ていただきたい1本。 WHEN HARRY MET SALLY © 1989 CASTLE ROCK ENTERTAINMENT. All Rights Reserved
-
PROGRAM/放送作品
ブルース・ブラザース
伝説のミュージシャンたちが豪華集結!全身黒ずくめの悪ノリコンビが大暴走する破壊力満点コメディ
米国のコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」の人気キャラクター“ブルース・ブラザース”が歌って踊って大暴れ。レイ・チャールズら有名歌手のゲスト出演や、破天荒なカー・アクションなど見せ場が満載。
-
PROGRAM/放送作品
(吹)ブルース・ブラザース
伝説のミュージシャンたちが豪華集結!全身黒づくめの悪ノリコンビが大暴走する破壊力満点コメディ
米国のコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」の人気キャラクター“ブルース・ブラザース”が歌って踊って大暴れ。レイ・チャールズら有名歌手のゲスト出演や、破天荒なカー・アクションなど見せ場が満載。