洋画専門チャンネル ザ・シネマ

The Godfather 徹底解剖

第1作『ゴッドファーザー』が製作されて40年超。ザ・シネマでは3部作を一挙特集放送!いつまでも人々を魅了してやまない、映画史に燦然と輝く金字塔的作品。その魅力と真髄を徹底解剖する!

ゴッドファーザーシリーズ一挙放送 3部作を字幕版、吹き替え版で一挙放送!超美麗画質でお届けします!

詳しくはこちら
詳しくはこちら
詳しくはこちら
詳しくはこちら
詳しくはこちら
詳しくはこちら

 映画スターを取材するとき、「映画史上のキャラクターの中であなたがもっとも演じたい役は?」という質問をぶつけることがある。『ゴッドファーザー』ファンは意外に多くて、たとえばジョニー・デップが「マイケル・コルレオーネ」、ベニチオ・デル・トロが「トム・ヘイゲン」、ショーン・ペンが「青年期のヴィトー・コルレオーネ」という回答だったりして、妙な親近感が湧くからおもしろい。

 なぜ、こんなにも愛されているのだろうか。今年は、第1作『ゴッドファーザー』が製作されて40周年にあたる記念すべき年だ。アカデミー賞においても、第1作(1972)が作品・主演男優(マーロン・ブランド)・脚色賞受賞。第2作(1974)が作品・監督・助演男優(ロバート・デ・ニーロ)・脚色・美術・作曲賞受賞。正編・続編とも作品賞受賞はオスカー史上初で、前2作は公開当時から相応の評価を受けている。しかし、このサーガを不朽の傑作たらしめているのは、公開から40年経っても少しも古臭さを感じさせないこと。いや逆に、まるで熟成される豊潤なワインのごとく、作品的評価が年々高まっている点が興味深い。1998年にAFI(アメリカ映画協会)が選んだアメリカ映画ベスト100第3位、2007年にAFIが選んだアメリカ映画ベスト100第2位(第1位は『市民ケーン』)だった。

 これは、単なるギャング映画ではなく、アメリカへ移民してきたマイノリティ(イタリア系アメリカ人)の、家族の絆を描いたファミリー映画になっている点がミソである。シリーズの導入部は黒澤明監督の『悪い奴ほどよく眠る』からアイデアをいただいた、ドン・コルレオーネ=闇社会の権力者の娘の結婚式で、家族(ファミリー)が一堂に会するところから始まる。3部作の冒頭はつねに家族の集合写真から始まる。主人公ヴィトー・コルレオーネは犯罪によって、コルレオーネ帝国というべき巨大組織(ファミリー)を築き上げた男だ。しかし家族を守るため、もうひとりの主人公のその息子のマイケル・コルレオーネは意思に反してファミリービジネスに手を染め、その帝国(ファミリー)を継承することになる。彼は闇の権力を手に入れるかわりに、愛すべき家族(ファミリー)を失うことになる。そうしたオペラ的な悲劇が待ち受ける。痛ましいアメリカンドリームだ。

 このシリーズがつきせぬ魅力を放つのは、見てはならないピカレスクな裏社会をのぞき見させるような愉しみがあるからだ。ニーノ・ロータの哀調あふれたワルツの音楽にのせて、撮影監督ゴードン・ウィリスによってゴールデンアンバー(琥珀色)を基調にして陰影を強調された、マーロン・ブランドやアル・パチーノといった俳優たちが絶妙なアンサンブルを魅せる。彼らをマリオネットのように操るのは、才能に煌めきを見せるフランシス・フォード・コッポラ監督だ!

 結局、3部作そのものは20年にわたる壮大な叙事詩として完成された。だが、そもそもパラマウント映画によって、まったく成功の見込みがなかった企画としてスタートされた第1作(出演者はブランド以外、無名だった)がさまざまな偶然が重なり、映画史に残る金字塔的作品になったことがもはや奇跡だ。そして登場人物たちに生命が吹き込まれるその製作過程も劇的だった。だからこそ、観る者は“彼ら”をいとおしく愛してしまうのだ。

サトウムツオ

映画評論家。日本における『ゴッドファーザー』の第一人者。敬愛する映画監督はスコセッシとイーストウッド。映画コラム等を中心に、雑誌やWEBなど様々な メディアに寄稿。ハリウッドスターへの取材も多数行ってきた。

ページトップへ