ゲストには、裸も辞さない体当たり演技が高い評価を獲得している女優の安藤玉恵さん、自らの経験を活かし、障がい者の性活動を支援するNPO法人ノアールの理事長を務めるくましのよしひこさん、そしてくましのさんの10年来の友人であり、ノアールの活動に共鳴するリリー・フランキーさんという豪華布陣が登場。その模様を、(ほぼ)全文レポートします!!

※ネタバレ有。映画の内容、結末についての記載があります。

司会:岩田和明(「映画秘宝」編集長/以降、司会)
登壇者:安藤玉恵(以降、安藤)、くましのよしひこ(以降、くましの)、リリー・フランキー(以降、リリー)


司会:早速ですが、映画の感想からお聞かせください!

リリー:本当に良い映画だから、「映画秘宝」なんかが取り上げるべきじゃないですよ。「キネマ旬報」しかダメ。

司会:場違いですいません(笑)。安藤さんはいかがでした?

安藤:すごく元気になりました。笑顔になれますよね。

リリー:あれ、「私は主人公と歯茎が似てる」って言わないとダメじゃない?

安藤:主人公のライラは笑うとすごい歯茎が出るんですけど、それが私とソックリなんですよ。でもそのことは黙っていようと思ってたんですが、さっきからずーっとリリーさんが「言え言え」って(笑)。

リリー:でもさ、本当に良い映画なんだよね。インド映画できっちりタブーを描きつつ、役者の演技も素晴らしいし。しかもさ、まさか同性愛の展開になるなんて思わないよね。

安藤:本当にそう。まさかって思った!

リリー:それでいて家族の物語でもあってさ、ちょっと凄いよね。

司会:くましのさんはいかがでしたか。

くましの:実は僕、1年くらい前から本作の存在は知っていて、ずっと追いかけていたんです。それでようやく初めて観た時、自分が障がい者なんで、「どっかで気を抜いて主人公が障がい者じゃなくなる一瞬があるんじゃないか」と、アラを探す感じで観たんですよ。でもね、正直騙されましたね。

リリー:プロの障がい者が騙されたんだ。

くましの:そうなんですよ。主演の女優さんを調べたら、普通に健常者だったんですよ。

リリー:あの子、魅力あるよね。あとさ、主人公のように同じ脳性麻痺で車いすの人でも、くましのくんみたいにハッキリ喋れる人と、ライラみたいに滑舌が良くない人もいるよね。

くましの:脳性麻痺は2、3タイプあって、僕は体が固まっちゃうタイプなんです。ライラは上手く卵を割れないシーンがありましたけど、手が揺れちゃったり、言語障害が出たりするタイプなんでしょうね。

リリー:くましのくんの場合、卵は割れないけどTENGAのエッグは上手にできるでしょ。

くましの:封を開けるのがちょっと難しいんですけどね。

司会:TENGAといえばオナニーということで(笑)、ライラも冒頭でしてましたよね。安藤さんも劇団ポツドールの舞台でオナニーシーンを披露されていましたけど…。

安藤:いいんですよ、それは(笑)。

リリー:それでいえばさ、これまでのドラマや映画で描かれてきた障がい者像って、すごく聖人化されてたんだよね。あの人は性欲がない、あるはずがないみたいなさ、とても驕った見方の作品が作られてきた。
くましのくんが「ノアール」って団体で活動しているのは、僕ら障がい者にだって性欲はあるしセックスだってしたいんだってことを訴えるために活動しているわけです。んで僕もそれに共鳴してお手伝いしているんですけど、彼らの基本的な欲求や尊厳を、ボランティアの人でさえ認めてないんですよ。性欲があるってことを知った途端、冷たくなったりするんです。
だから障がい者の人たちは“天使”を演じなきゃいけないんです。そういう意味でこの映画は障がい者の性をしっかり描いていて、くましのくんの活動にすごく近いんだよね。…っていう話をしたかったんだけど、なぜか安藤玉恵のオナニー話になるというね。でもね、彼女のオナニーもすごいですよ。

安藤:あくまで舞台で、ですから(笑)。それにしても主演のカルキ・ケクランは体当たりの演技でしたね。男の人ともするし、同性の女の子ともしてますしね。

リリー:そうなんだよ!幼なじみの男の子とチューしたかと思えばバンドマンによろめいて、NYではかっこいい男ともしちゃうしさ。あの時なんてさ、全然ションベンしたくないのにわざとトイレ行って男にパンツ脱がさせてたもんね。

安藤: うそ~。ちゃんとおしっこしてたでしょ!

リリー:いや、俺ずーっと耳すませて音聞いてたけど、まったくションベンの音しなかったもん。

安藤:じゃあトイレに行ったのは、誘ってたってこと?

リリー:そうですよ。また良いパンツはいてましたもんね。

くましの:間違いなく勝負パンツでしたね、あれは。

安藤:じゃあ彼の家に勝負パンツで行ってたってこと?

くましの:たぶん。

安藤:もうちょっとふたりとも純粋に観てくださいよ(笑)。まあでも、あの状況になったらしたくなりますよね。それはわかります。

■全盲の人でも家族おぶって天ぷらバリバリ揚げてる人もいるし、そういう生活描写も本当のリアルに近いよね。(リリー)

リリー:話は変わるけどさ、全盲のレズビアンの子もライラにしてもさ、いつもパキっとした色の洋服を着てるよね。やっぱ目立つ服着ていないと危ないってことなんだよね。くましのくんもいつも赤い服着てるもんね。

くましの:はい。車いすも赤です。

リリー:スティービー・ワンダーも目立つジャケット着てるもんね。あ、そういえばくましのくんは監督と主演の人と会ってるんだよね。

くましの:9月にあいち国際女性映画祭でお会いして。ご拶程度でしたけど、日本でこんな活動してますって伝えました。カルキさん、いい匂いでしたね~。

リリー:カルキさんって、フランス人だけどインド育ちなんでしょ。インドって今、世界で一番映画作ってる国ですよね。

安藤:最近のニュースだとあんまりいい話を聞きませんけど、そんな国がこういう映画を作るんだって、最初は信じられなかったです。

リリー:まあ、インド映画の9割が踊りまくってますもんね。この映画でも途中、いい感じのダンスミュージックがかかって、「あ、やっぱ踊るんだ」って思ったよね。踊りは外せないんだろうね。あとさ、劇中の曲もすごい良かったよね。

くましの:踊る場面が2つあるじゃないですか。家族で踊っているシーンと、全盲の女の子と踊るところと。で、その2回ともライラが膝かっくんってなるんですけど、あれは“脳性麻痺あるある”ですね。力がぐいぐいって抜けちゃうんですよ、ライラみたいなタイプの脳性麻痺って。見る人が見ると、ああいう描写で騙されちゃんうんです。

リリー:健常者は勝手に「障がいのある人は何にもできない」って思いがちだけど、意外とそんなことないんですよね。全盲の人でも家族おぶって天ぷらバリバリ揚げてる人もいるし、そういう生活描写も本当のリアルに近いよね。

くましの:僕個人のことで言えば、時間をかければ大体のことはできます。ただ時間がかかりすぎるってことがあって、自分で全部やろうとしたら1日が35時間くらいないと収まりきらなくなっちゃうんです。だからヘルパーさんを入れるんですね。ライラもNYにお母さんと一緒に行くじゃないですか。あれをもし彼女ひとりで全部やろうとしたら、きっと1日じゃ収まりきらなくなっちゃうと思います。

リリー:お母さんもお父さんも良い感じだよね。そして小太りの弟がまた効いているよね。あの小太りの弟がいるだけで、ものすごい家族感がでるもんね。

■すごいなって思ったのは、嘘がないのと、足りないことがひとつもないことです。(安藤)

司会:安藤さんは女優としてライラをご覧になっていかがでしたか?

安藤:本当に感動しましたね。すごいなって思ったのは、嘘がないのと、足りないことがひとつもないことです。

司会:障がいのある役を演じられたことはありますか?

安藤:ありますね。山下敦弘監督の『松ヶ根乱射事件』です。

リリー:そういえばさ、くましのくんは編集前の違うバージョンも観てて、公開版とエンディングが違うんだよね。俺はさ、最初本編を観た後に『マルガリータで乾杯を!』って邦題見てさ。この邦題のつけ方、ふんわり感がハンパないですよね。まあでも、原題が『Margarita, With A Straw』だから、『ストローでマルガリータを』にはならないか。それにしても最近はウッディ・アレンの映画も全部『恋するバルセロナ』とかさ、観たいんだけどDVD取るのが恥ずかしいみたいなタイトルのつけ方じゃないですか。この映画のポスターにしたって、全然内容と違うしね。でもラストシーンを考えると、『マルガリータで乾杯を!』はしようがないか。

くましの:原題はトンチが効いてるっていうか、脳性麻痺で手が動かないからビールも何もストローじゃないと飲めないんですよ。しかも、ビールはストローで飲むとめちゃくちゃ酔いが回るんですよね。あとこれも“障がいあるある”なんですけど、アルコールが入ると言語障がいが軽くなるんですよ。普段ガチガチの言語障がいの子も、お酒を飲むとスラスラ喋れるんです。

リリー:飲むとションベン行きたくなるじゃない。でも、車いすで入れるトイレを併設してる飲み屋ってほぼないんだよね。だから、飲むとしたら便所チェックするよ。俺はラブドールのリリカっていうのが家にいて、車いすにリリカを乗せて友だちと会わせたりしてるからさ。リリカが来たことによって、くましのくんの生活がもっと分かるようになった。

安藤:真面目に聞いて良いのか分かんない(笑)。

リリー:あとラストシーンでさ、ライラが新しい髪型にして、「今日はデートなの」って言ってレストランでマルガリータを飲んでるんだけど、そこに誰が来たかは映してないじゃないですか。あれちょっとお客さんに誰が来ると思ったか、挙手で聞きたいです。考えられるのは幼なじみか、レズビアンの元恋人か、このふたりでもない誰かじゃないですか。で、そこに来るのが誰であって欲しいかって、お客さんそれぞれが考える一番のハッピーエンドなのかなって。

(会場のお客さんに手を上げてもらう)


司会:幼なじみだと思った人はおひとりですかね。意外と少ないですね。レズビアンのハヌムは3、4人…これも少ないですね。ではこのふたりでもない、第3の人だって方は…これもあんまりいないか。じゃあ、誰も来ないと思った人っています?あ、これが一番多いですね。実は、僕もそう思ったんですよね。でもたしかに、お客さんに委ねるようなラストになっていましたもんね。

くましの:可能性としていろいろあるよっていう感じでしたね。

リリー:あとさ、ライラは言い難いことを親に告白したり、自分が浮気したことを彼女に言ったりとかさ、一番人間が持ちにくい勇気を持ってたよね。

司会:安藤さんは、お母さんに女優になるって言った時はどうでしたか。

安藤:うちは映画のお母さんのように反対されることはなくて、逆に「裸になれないなら、女優になるのはやめなさい」って言われました。

リリー:そして、ポツドールでオナニーしたっていうね。

安藤:もういいよそれは!でも、映画のお母さんも結局は理解しようとしていたよね。最初はつっぱねてたけど。

リリー:あと、インドからNYに行く展開もいいよね。

安藤:NYに留学できるってことは、ライラは裕福なお家ですよね。

リリー:借金してでも留学させたいって感じじゃない?だって弟と相部屋だったよ。だからオナニーする時も背中向けてたもん。でも、ハヌムの方はお金持ちでしょうね。実家が金持ちの顔してる。それにしても、本当に良い映画だったな。今年観た中でベスト5に入りますよ。

司会:これまでのインド映画は歌と踊りばっかりでしたが、最近はこういったおしゃれな作品も数多く作られています。今、インド映画は本当に一番おもしろくて豊かだと思いますよ。

安藤:日本でもインド映画ってけっこう公開されてるんですか?

司会:やっていますね。東京国際映画祭でも公開しています。

リリー:でも日本で一番ヒットしたのは『ムトゥ 踊るマハラジャ』でしょ。江戸木純さんが2万円くらで買ってきて大ヒットした伝説の映画ですよね。俺もね、名古屋の街で踊りまくるっていうインド映画のポスター書いたことあるよ。インド人がドジャースに入団するっていう話。

司会:『ムトゥ〜』の後はたくさんのインド映画が日本に上陸しましたもんね。最近では『きっと、うまくいく』がヒットしました。


■女性が主人公でストレートに障がい者の性を描いた作品って、おそらく本作が初めてではないでしょうか。(くましの)

リリー:しかしさ、女性が観るような映画で、障がい者の当たり前の性欲求を作品にしてくれるっていうのはいいよね。くましのくんと俺がトークショーしてもさ、こんな香ばしい女子は来てくれないじゃないですか。だからこういう機会にさ、ポスターに騙されたとしてもですよ、障がい者の現実をこんな甘酸っぱい温かい映画にしてもらえるっていうことは、くましのくんの活動にも説得力をもたらしてくれることだと思います。

くましの:これまで男性の障がい者が主人公の映画はありましたけど、女性が主人公でストレートに障がい者の性を描いた作品って、おそらく本作が初めてではないでしょうか。

リリー:障がい者の人の苦労って感覚的に分かっても、知らないことがたくさんあるんですよね。最近だと『最強のふたり』とかもあって、障がいのある人をきちんと描いた作品はいいなって思いますよね。マイノリティの人が主人公になる映画はまだまだ続いていくだろうね。

司会:安藤さんはライラ役のオファーがきたら演じたいと思いますか?

安藤:いいんですか?歳がアレですけど(笑)。

リリー:『マルガリータで乾杯を!3』だったら年齢も間に合いますよ。晩年のライラとしてさ。

安藤:顔も似てるしね。歯茎がね。

リリー:あとさ、ライラがNYの大学で会った男の子とセックスするじゃない。あれ、初体験じゃなかったっぽいよね。

安藤:初体験じゃないでしょ。だって最初にデートしてたよね。あれ、でもその時はしてなかったのかな。

リリー:幼なじみの男性とはしてたのかな?

くましの:うーん。どうすかね。

リリー:なんか初体験じゃないっぽい反応だったんだよね。

司会:ちょっと痛がってませんでした?

安藤:でもあの時はすでに女の子とは関係があるわけだから…。

リリー:ペニスバンドでしてたってこと?そうかな〜。別にアラを探しているわけじゃくて、「彼らの映ってない部分の生活はどんなんだろう」って想像させるのは、良い映画ってことですよね。

安藤:でも初めてとは思ってなかった。

司会:僕も初めてじゃないだろうなって思って観てました。

リリー:そうなのかなあ。俺は初めてだと思ってたからなあ。ショックだなあ。じゃああの幼なじみとやってたのかなあ。アイツと最初、濃厚なキスしてたしな。

くましの:その時も誘ったのはライラの方ですもんね。

リリー:でもあのふたりはしてないでしょう。なんかしてないと思う。だってあのふたりがするとしたら実家になるでしょ。

安藤:意外とできるんじゃない?

リリー:まあ、誰がやったかやってないかなんて、本当に下衆の詮索ですけどね。

くましの:でもそれって、監督の術中にハマってるってことですね。

リリー:それにしてもこの映画って、ものすごいテンポで進んでいくじゃないですか。それなのに忙しく感じないっていうのは、出演者の濃密な存在感だと思うんですよ。だってさ、「え?レズ?」と思いきや「え?癌!?」ってなってさ、ジェットコースタームービーっていってもいいような展開なのに、本当に緩やかな空気が流れてる。やっぱり監督や出演者の濃度とか精度がすごいんだろうね。

安藤:ライラの表情がひとつひとつ、いちいちものすごいリアルなんですよね。ひとつ事件があると、彼女の心情ががすごい伝わってくるでしょ。だから話は忙しいけど、そう感じないのかなって思いました。

リリー:あとさ、最近エンドロールって延々長くて1曲じゃ終わらないじゃない。でもこの映画のエンドロールはさ、1曲目が終わって次の曲に移る時、ライラの声が入るじゃない。「1、2、3、4」ってさ。だから切り替わりがすごく自然なんだよね。とはいえね、あの「1、2、3、4」がピエール瀧の声じゃダメなんですよ。余韻がなくちゃ。本当に監督が隅々まで心を砕いている映画なんだなって気がしましたよ。

司会:2曲目の歌詞の内容も、映画とリンクしているんですよね。歌詞と映画の内容が全然合っていない、ただのタイアップ曲、みたいな映画も多いですからね。

リリー:あとさ、映画の中ではインドの母国語が一切なくて、英語しか喋らないんですよね、言語問題ってどうなってんだろうね。その時さ、ライラはもしかしてもらいっ子なのかなって思ったんですよ。肌の色も白いし。

司会:すいません…そろそろ終了のお時間になってしまいました…。

リリー:まだ良い話全然してないですよ。このまま帰ったら俺はバカだと思われますよ。せっかくバリアフリーじゃない会場にわざわざ登壇してくれたくましのくんの活動とも繋がりますからね、この映画は。

くましの:女性向けってことでは激オシです。

リリー:この映画を観た後、レズビアンのシーンが嫌だったって人は、何か偏見を持っているかもしれない。そして何より、障がいのある人をテーマに選んで、いろんな性のタブーを描いているってところが素晴らしいと思いますよ。くましのくんも今は人前だから真面目に喋ってますけど、本当はものすごいユーモアの持ち主なんですよ。知り合った時、くましのくんに「夢とかある?」って聞いたら「立ちバックですよね」って。そういうね、身を切ったギャグが言える人っていうのはおもしろい人ですよ。障がい者はギャグや下ネタを言わないって思うなんて、それこそ健常者の驕りだよね。よく乙武洋匡さんも「手も足も出ないや」とかって言うけど、それを素直に笑えない感覚こそ、一番の偏見ですよ。だってせっかくおもしろいこと言ってるのにさ。

くましの:でも最近、エロくなくなってきたって怒られたんですよ。

リリー:どういうこと?

くましの:なんかエロオーラがないって。ショックでしたね。修行します。気合入れ直します。

リリー:それどうするの?気合入れるって言っても。

くましの:どうしますかね…。まずはTENGAのエッグあたりからならし運転します。

リリー:でもさ、こうやって基本的な、誰もが持っている欲求を、手が動かなくたって全盲の人だって持っているんだってことを、くましのくんやこの映画がちゃんと言っているっていうことですよ。しかもこの映画は障がい者に性欲があるってことを描いている上に、バイセクシャルだからね。

安藤:でも描かれ方がすごく自然だし、オシャレなんですよね。だから私、『アメリ』みたいだよって周りにすすめようと思って。

リリー:でも『アメリ』でグッとくる人って、もうけっこういい歳いっているでしょ。今だとなんて言えばいいんだろう。『好きっていいなよ。』とかかな。

司会:あ、でもこの映画は『アメリ』に携わっていた方が宣伝をしているんですよね。

リリー:これはでも「映画秘宝」が取り上げないのが一番良いですね。「映画秘宝」は映画界の“おくりびと”ですから。個人的には友だちがやっている活動に近いことだし、精神的な価値観のバリアフリーが同時多発的に起きていることが嬉しいですね。映画の中で出てくる、偏見を持ったコンテストの審査員みたいなヤツって、現実に本当にいるんだよね。すごくドラマ的に見えるけど、現実にいるんだよ。

安藤:私、あの人見て佐村河内さんを思い出しちゃった。ああいう胡散臭い感じ。

リリー:佐村河内さんが話題になった時は、みうらじゅんさんとこにすごい取材依頼がきたって。長髪サングラスだからさ。

安藤:あと私はトイレのシーンが大好きです。グッときました。あ、でも幼なじみとキスするところも良いですね。そう考えると体で感じちゃうシーンが多かったですね。全体的に性を描いているところは圧倒的に良かった。

リリー:障がいの有無に関係なく、女の人の性がかわいく描けてるよね。

安藤:そうなんですよ。本当にああいう反応するよねっていう感じで。

リリー:甘酸っぱいよね。だからやっぱり『アメリ』っぽいね。くましのくんはどんなシーンが良かった?

くましの:この前ちょうどNYに行って来たこともあって、ライラがイエローキャブの行き交う横断歩道をサーッと疾走するシーンとかがいいなって思いました。

リリー:意外とくましのくんの電動車いすも早いんですよ。重いから安定感あって。

くましの:NYでもコレで疾走してきたんですけど、誰も振り向いてくれないんですよね。それくらいいろんな人がNYにはいて、障がい者なんてめずらしくもなんともない。だからちょっと寂しかったですね。チラ見すらされないんですよ。LEDとかチカチカさせても振り向いてもくれなかった。

リリー:次行くときは志茂田景樹みたいな、南国の鳥っぽい格好していけばいいんじゃない。逆に目立ってくれないと危ないしね。まあでも、障がい者であるかどうかってこともそうですけど、女性の性欲求が本当にチャーミングに描かれているんで、珍しいと思いますよ。本当に良い映画なんで観て欲しいなって思います。

安藤:ちゃんと性を描いているのに、すっごいすんなり入ってきました。

くましの:しかも途中から障がい者っぽくなくなるんですよ。自然な感じで。

リリー:圧倒的に人間ドラマなんですよね。親の反対があったり勉強との兼ね合いがあったりさ。映画の途中からは障がいがあるってことを忘れて人間ドラマとして観ちゃいますよね。俺もくましのくんと10年くらい知り合いだけど、障がいがあることを忘れてるっていうか。こんなにメールの返信が早い手の曲がった人はいませんよ。あとくましのくんて、屋外で撮影する時もちゃんと警察に撮影許可取るし、本当にちゃんとした友だちなんですよ。だから周りに紹介する時は“ちゃんとした友だち”って言ってますよ。

司会:それではそろそろお時間がきてしまいましたので…。

リリー:最後になんかお客さんとゲームでもしますか。まあ、もう話し足りないことはないんですけどね。終わり方がわかんないの。お客さん、なんか物をもらったら帰ってくれるかな。

くましの:あ、リリーさんにイラストを描いてもらった、僕がやっているNPO法人ノアールのシールがあるんで、それをプレゼントしますよ。

リリー:せっかくくましのんがくれるんですから皆さん、捨てるんだったら劇場からなるべく遠いところで捨ててくださいね。劇場の外で見るのが一番傷つくんで。こんな良い映画観てもあいつら何も心変わってないなって思うから。ちなみに俺が描いた絵は車いすに乗ったクマがちんこ勃ててるやつですから、財布に一番貼りやすいデザインですよ。<終了>

取材、文:小泉なつみ

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いかがでしたでしょうか?作品の魅力を余すことなくお話し下さった安藤さん、くましのさん、リリーさんの作品への愛が伝わる1時間をご紹介させて頂きました!
本作は現在劇場にて絶賛公開中です。一人でも多くの方に観て頂きたい素晴らしい一本です!(編成部)


10月24日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
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