先にこのブログにてお詫びと訂正をいたしました『(吹)地球の頂上の島』。12月24日の特集放送時は、事前にご案内していたものとは異なる吹き替えバージョンでの放送となってしまいました。ここに重ねて、視聴者の皆様にはお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。

 後日2ちゃんを見ていたら、まず当チャンネルの放送がバージョン間違いであったこと、さらに、当チャンネルが放送すると言っておきながら放送しなかったバージョンが、実は稀少音源バージョンであったことを、その書き込みで初めて知った次第です。

 本当に申し訳ございませんでした。そこで3月、「厳選!吹き替えシネマ」企画として、12月やるとアナウンスしておきながらやらなかった方の『(吹)地球の頂上の島[TBS版]』を、今度こそ本当にやります。探し当ててきました。

 また、3月3日の日曜日あさ6時からの放送回は、「スカパー!大開放デー」にあわせ、この作品を無料放送いたします。ザ・シネマにご加入いただいていない方でも、CSを視聴可能な環境をお持ちであればお楽しみいただけます。

 ところで、2ちゃんに限らず、当チャンネル編成部は、当サイトの「ご意見・ご要望」投稿機能などを通じて皆様からお寄せいただくお声を、放送作品選定の上で、実は非常に参考にさせていただいております。

 とりわけ「厳選!吹き替えシネマ」企画は、「あの吹き替え版は傑作だった」といった参考資料が世の中に案外少なく、担当者個人の思い出に頼ってやっている部分が大きいのですが、私個人の引き出しなど高が知れており、すでに底を尽きかけています。あの懐かしい昭和の頃、9時からのTV洋画劇場を夜ごと夢中で見まくっていた世代の皆様にご教授を乞い、“集合知”作戦でこの企画を継続・発展させていきたく考えておりますので、今後とも昭和TV洋画劇場ファンだった皆様には、ご指導ご鞭撻の程、本気で、何卒よろしくお願いいたします。

 なお、いただいたリクエストは、本当に実際参考にさせていただいているのですが、どうしてもリクエストにお応えできないケースもあります…。「厳選!吹き替えシネマ」の場合ですと、吹き替え音源が現存しない(廃棄されたetc)、というケースがザラにありますので、そういう作品は吹き替えのリクエストにはお応えできません。当方としても無念です…。

 たとえば、池田秀一さんが声をやられた、とあるシリーズ作品。この吹き替え版は何年にもわたって同じ方からリクエストを度々いただいておりました。また、かつて日曜洋画劇場でノーカットで放送されたアカデミー超大作。こちらも沢山の方からリクエストをいただいており、私自身も当時VHSに3倍録画し繰り返し見た生涯BEST級な1本。…なのですが、これらは、“諸般の事情”により、当チャンネルで字幕版では放送しているにもかかわらず、吹き替え版ではオンエアできませんでした…。

 誠に申し訳ございません、としか言い様がありません…。さらに、いただいたリクエストに対し、「(吹き替えに限らず)放送できない“諸般の事情”とは具体的にこれこれこういうことです」と個別にお返事ができないことも、大変心苦しく思っております。

 ただ、リクエスト、確実に、こちらの目にとまり心に届いております。その点は間違いございません。特に何回かいただいている場合は、吹き替え担当の私を含め、各担当者がリクエストがあった事実を覚えており、機会あらば必ず実現させようと狙っております。実際に非常に参考にさせていただいておりますので、あきらめずお送りください。懐かしの吹き替えリクエスト、引き続き、本気でお待ちしております。

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 さて、話を『(吹)地球の頂上の島[TBS版]』に戻しますが、以下、ちょっと技術的なことを書きますので、ご興味のない方は読み飛ばしてください。

 このバージョンですが、いざゲットしてみると、フィルム&シネという、とてつもなく古い素材形態でした。TV用素材なのにフィルムなのです。はるかなる昭和の昔は、TV放送もビデオではなくフィルムでやっていたのです。これでは最近オンエアされないのも道理というもの。古代の失われたテクノロジーすぎて今では放送にかけられません。入っていた箱によれば、作られたのは何と昭和54年夏!

 なお、「フィルム&シネ」のシネとはシネテープのこと。フィルムには録音もできることはできるのですが、その昔TVの世界では、音声はシネという磁気音声テープにて別途用意し、画のフィルムと音のシネを同時再生させて放送していたのです。

 もちろん今日では(というかかなり前からですが)録画・録音をひとつでできるビデオテープ(や、さらにはディスク)が放送では使われています。今回ザ・シネマでは、大昔のフィルムの画とシネの音をまとめて1本のデジタルビデオテープに録りなおして現代仕様のマザーテープを1本作り、それを放送にかけることにします。昔のお宝音源を放送しようとすると、このように少々手間がかかるのです。ほとんど発掘出土品の復元のような作業です。

 元がとにかく古い素材ですので、画の退色やキズ、音のノイズなども相当あるにはあるのですが、大昔の「フィルム&シネ」としてはこれでもかなりマシな方。奇跡的グッド・コンディションとさえ言っても過言ではない状態なのです。

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 閑話休題。急遽この『(吹)地球の頂上の島[TBS版]』を追加した結果、3月の「厳選!吹き替えシネマ」企画は合計3作品となりました。

 他の1つは『(吹)グローリー』。むかし金曜ロードショーでやったやつで、私も当時見ました。懐かし!

 もう1つは『(吹)13デイズ』こちらは今回、懐かしのTV吹き替えを発掘するという「厳選!吹き替えシネマ」の企画趣旨から外れて、DVDバージョンを放送します。

 本来2時間半弱の映画が1時間半強にカットされてしまってます。これは、どこかのTV局がDVD音源をもとに大幅にカットして作ったTV放送用マザーだと思われます。それを、当チャンネルでも借りてきて放送する形になります。

 この1時間半尺の“どこかのTV局”放送バージョン超カット版とは別に、テレ朝開局45周年記念として10年前に日曜洋画劇場で放送された2時間バージョンのちょいカット版も存在する(JFKを山ちゃんがアテている)らしく、今回、当時の吹き替え台本をゲットするところまでは行ったのですが、肝心のマザーテープには残念ながら辿り着けませんでした…。

 この台本ですが、ちょっと珍しいものでしたので、以下、余談としてご報告します。

 普通、吹き替え台本というものは、日本語版制作スタッフ(日本の民放や吹き替え会社のスタッフ名)やら、オリジナル・スタッフ(ハリウッドのプロデューサー、監督、脚本家名)やら、また、どの俳優をどの声優がアテるか、といったキャスト一覧とかがまず巻頭数ページにあって、その後に「梗概(こうがい)」というページが続きます。これは、映画の起承転結を2~3ページにまとめたものでして、映画丸ごと1本見なくとも、声優さんたちがここだけ読めば話を理解できるように書いてあります。お仕事用なのでネタバレ禁止などとは言っていられませんから、オチまで書かれてます。

 日曜洋画劇場版の台本はさらに、普通は無いWikiのような情報ページが巻頭に付いています。「キューバ危機の背景」とか「13日間の主な動き」とか「主要登場人物」といった情報が詳細に記されていて、「主要登場人物」のページでは、各人物の肩書きや政治的スタンス、さらには事件当時の年齢(実話の映画化ですから)まで記されており、歴史的事件で活躍した実在の人物を声優さんたちが声で演じる上で参考となる情報が、懇切丁寧に紹介されてるのです。凄いなコレは!

 ここまで作り込まれた台本には、お目にかかったことがありません。その文章の著作権がどこにあるのか全く不明なので、この場にて紹介できないのが残念です…。

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 さて話を戻します。今回あえてDVD版にもかかわらず『13デイズ』を「厳選!吹き替えシネマ」企画でお届けしますのは、この映画のような、やたらにセリフが多くて情報量の多い映画は、「古き良き昭和のTV洋画劇場版を懐かしむ」といったコンセプトとは別に、そもそも日本語吹き替えでも見といた方がいいですよ、という余計なお節介的意図からです。

 以前、吹き替えの第一人者、とり・みき氏に当チャンネルHPにご寄稿いただいた際、この点はたいへん解りやすく解説いただいたのですが、字幕と吹き替えではデータ容量が全然違うのです。

 字幕には、1秒間に読ませるのは4文字までという字数制限があります。いくら映画の登場人物がセリフを早口でまくしたてていても、だからといって、文字数を×2して1秒間に8文字読ませるとか4文字を0.5秒で読ませるといったことはできないのです。

 なので、早口でまくしたてるようなセリフがある映画や、2人以上のキャラクターが同時に喋るような映画(たとえば法廷サスペンスとか)、あるいはボリューミーなセリフの逐語的な内容理解が話についていく上で不可欠になってくる映画(今回の『13デイズ』とか、あと『JFK』とか)は、吹き替えで見た方が情報が端折られておらず、得られる情報量がオリジナル音声により近く、解りやすさという点では歴然と勝っている、ということは、間違いなく言えることでしょう。

 「外国映画は俳優の生声を原音で聞いてこそナンボだ」という価値観をお持ちの方は、さらに字幕版も見れば完璧ということです。

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 もうひとつ、地上波版ということですと、多くの場合ノーカットとはいきません。今回は元が2時間半の映画を1時間近くもカットし、結果1時間半になっちゃった、という、カットの中でもかなり壮絶なカット版なのですが、逆に、コンパクトに要点がまとめられているように個人的には感じました。本作はちょっと難しめの政治サスペンスですので、むしろ歴史的背景を知らない人にはかえって解りやすくなっちゃってると思うのですが、どうでしょう?

 カットされているからといって、即・台無しと決めつけたものでもありません(そういうケースも確かにありますが…)。作品によっては民放のカット版の方がテンポが良く、怪我の功名的にノーカットよりも結果として面白くなっちゃってる逆転現象も間々起きるということも、吹き替えマニアの間では「21時の魔法」としてよく知られた現象です(ウソ)。
 この『13デイズ』の場合、吹き替えカット版も上記の理由で怪我の功名的にお勧めなのですが、やはり、端折られてしまったシーンも惜しいので(あと、俳優の生声を聞きたいという意味でも)、もし未見の場合、または過去に字幕版を見てるが話が難しすぎて長すぎて理解できなかったという場合は、まずは今回のカット版1時間半日本語吹き替えバージョンの方をご覧になられてはどうでしょうか。その上でオリジナル2時間半字幕版も見る、という順番が、日本人にとってこの作品を一番深く理解できる見方かとお勧めいたします。当チャンネルでは今回どちらのバージョンもやりますので、是非あわせてご視聴ください。

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 個人的に、今回のこの吹き替えカット版でひとつ残念だったのは、臨検のシーンです。ソ連の船舶が核兵器の資材をキューバに追加でさらに運び込もうとしている。アメリカとしてはそれを認める訳にいかず、かといって攻撃を加えれば即・第三次世界大戦=全面核戦争に突入=地球滅亡決定ですから、とりあえず“臨検”という名目で米海軍艦艇にソ連船を停船させ、船内に立ち入り検査をする。それがイヤなら引き返せば?という作戦にまずケネディ大統領は打って出ます。JFKが選んだ、第三次大戦を避けるためのギリギリの策です。

 しかし、米海軍がソ連船に“発砲”してしまいます!おいおいっ!! ホワイトハウスからのお目付役としてペンタゴンの臨検作戦司令部に戻っていたマクナマラ国防長官は、ギョッとするんですね。「なに勝手に撃ってんだよバカが!」と、海軍のアンダーソン提督に詰め寄る。

 ところがアンダーソン提督は「はぁ?いま撃ったのは照明弾ですけど、何か問題でも?」と開き直り。つまり、ただの威嚇射撃ってこと。「敵船を狙って撃った訳じゃありませんから。ただ船の上空に向かって照明弾を打ち上げてるだけですから。なのに、なに勘違いして大騒ぎしてんですか?こうもトウシロさんに横から口出しされちゃ、こっちは仕事になりませんわ!」と、逆ギレ気味に喰ってかかる。

 これは、どうやら軍部としては通常の手順にのっとった、普通の行動のようなんですけど、軍部の常識は世間の非常識!あと一押しどっかから変な力が加わったら第三次大戦に即突入という超緊迫した局面で、通常の手順通りかどうか知りませんが、そんな誤解を生みやすい刺激的なアクションをしてたら、何がどう転んでどんな事態に発展しちゃっても不思議はないのです。

 で、マクナマラ国防長官は顔を真っピンクに染めながら、アンダーソン提督に怒鳴り続けます。「いまオレたちがやってるのは海上封鎖じゃない!これは言語だ!まだ誰も知らない全く新しい言葉なんだよ!! 大統領がこの言葉でフルシチョフ書記長(ソ連のトップ)とコミュニケーションしてんのが分かんねぇのかボケが!」

 艦隊を派遣し海上封鎖はする。でも攻撃はしない。つまりソ連が核ミサイルを持ってくることは絶対に認めないが、かと言ってすぐ戦争をしようという考えはオレらは持ってないよ、というメッセージを、JFKは相手国に送っているのです。これは、カリブ海洋上に展開した海軍艦艇を使って身振り手振りをする、ものすごく規模の大きなジェスチャーゲームなのです。つまり、新しい言語。ジェスチャーは完璧にやらないといけない。動作のちょっとした間違いも許されない。なぜならジェスチャーが相手に正しく伝わらなければ即戦争だから。でも上手く相手に伝われば、相手の方からも、新しい、もしかしたら妥協的・平和的なリアクションが返ってくるかもしれない。これほど必死なジェスチャーゲームはちょっと他にありません。

 そんなことはお構いなしに、「いや、これが通常の手順ですから」と何も考えずに艦砲をブッ放す単純・単細胞な人たちの、おっかなさ…。敵国の奴らより、自国の身内にいるこういう連中こそが、実は一番怖いって真理を、この映画のこのシーンは教えてくれてます。そこをカットしちゃってるのは実に惜しまれる!…んですが、まぁ、カットされたシーンは“完全版”としての字幕版の方でお楽しみください。

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 この映画は、単純・単細胞な人たちのおっかなさを描きながら、それと対置する形で、“善き人々(men of good will)”をヒーローとして描いています。つまり、神経をすり減らしながら地味にジェスチャーゲームを繰り広げてる人たちです。周囲の単純・単細胞な人たちが「ナメられて堪っか!」「目にもの見せたれ!」「奴らをブチのめせ!」「よっしゃ戦争だ!」「オリャオリャー先制攻撃だーっ!」などと威勢良く派手に吠えまくっている。挙げ句の果てには「テメぇビビってんじゃねーぞ、この臆病もんがコラ」と“善き人々”のことを罵る。

 そんな喧噪と悪意の中にあって、“善き人々”はあきらめず、細心の慎重さで相手国へジェスチャーを地味に送り、相手が返してくるジェスチャーを注意深く見守り、向こうの意図を読み解こうとする。相手側にも自分たちと同じように戦争を避けたがっている“善き人々”は必ずいるはずだ。彼らはきっと自分たちにジェスチャーを返してくれているはずだ。そう願い、信じ続ける人たち。「ナメられて堪っか!」→戦争突入以外の、冷静で平和的な落とし所を辛抱強く模索し続ける人たち。それが、本作の主人公です。

 善き人々の「善」とは、善良とか善人とか温厚とか親切とか、この作品の場合はそういうことではなく、“政治的に善”ということでしょう。私は、政治的に善でありたいと自らに願う時、繰り返し、決まってこの映画を見返します。人生の指針ともいうべき作品です。

 いくつかのシーンでは何回見ても泣けます。

 キューバ上空を超低空偵察飛行し敵の対空砲火を雨アラレと浴びながらも、軍部のタカ派、戦略航空軍団司令官カーチス・ルメイ大将(4つ星の青い制服の人)に向かって「いや、自分は撃たれてません。鳥が当たっただけっす」とすっとぼけてみせる、典型的アメリカン・ナイスガイなF-8クルセイダーのアビエイター。もう、超絶にカッコいい!カッコよすぎて泣けてくるぜ!!

 カーチス・ルメイは大戦中、日本への空襲と原爆投下を指揮し、何十万人もの日本の民間人を虐殺した張本人です。そういう人物に「敵が撃ってきました!」とバカ正直に報告してたら、「ヨッシャこれで反撃の口実ができたぞ」という流れになり、戦争を始めてたでしょう。とにかく勝ちさえすればいい。その過程で何をしようがどれだけ人を殺そうが、最後に勝てば官軍で、全てが許されるんだ、というのがルメイという人の考え方なので。日本空襲の時もそうでしたから。そして、事態は最終的に米ソ全面核戦争まで行ってたでしょう。地球が滅んだ後で、どちらが勝とうが負けようが、どっちが官軍だろうが賊軍だろうが、もはや意味なんか無いと思うんですが…。

 考えてみれば、あのナイスガイがついたたった1つの“政治的に善”なる嘘が、世界の滅亡を食い止めた訳です。

 このカーチス・ルメイに代表される威勢の良い元気な人たちは、考えようによっては、敵に負けない・敵に勝つという軍人の職分を愚直にまっとうしているだけとも言えますが、自分の職業的視野を通してしか世界と物事を見れなくて、人としての道義的価値判断より職業的価値判断の方を優先させてしまう、困った仕事人間たち、致命的につぶしのきかない連中であるとも言えるでしょう。人間、こうはなりたくないもんですなぁ…。この点を映画的に強調するためか、彼らの家庭や家族は、この映画には登場しません。彼らにだってきっとお子さんや奥さんはいたんでしょうが、一切出てこない。

 一方の“善き人々”の、家庭での様子、特に子供達をいたわり、いつくしむ姿は、劇中で繰り返し丹念に描かれます。彼らは仕事人間である前に、まず、人の親なのです。威勢の良い人たちは「俺が死んでも祖国が勝てばそれでいい。命なんか惜しくない!祖国に勝利の栄光あれ!!」的な考えを持てるとしても、“善き人々”はそんな思考方法は持てない。彼らは、人の親だから。いつの日か、この世界を子供たちに譲り、その将来を思いやりながら老い、死んでいきたいと願っている人たちだからです。ゆえに、この世界を滅ぼさないために彼らは忍耐強く努力し、決して結論を急ごうとはしない。そんな彼らの立ち位置を示すため、家庭でのシーンをこの映画はことさらに盛ってくるのでしょう(吹き替え版では多くがカットされてますが…)。この点を踏まえて見ると、ラストのケネディの演説がよりいっそう胸に迫ってきます。

 さらに、まだまだ泣きポイントは尽きません。序盤、「空爆の原稿は結局書けなかったんだ…」というスピーチ・ライターのつぶやき、怖すぎ!心底ゾッとします…。また、クライマックスでボビーらがソ連大使館に最後の談判に乗り込んで行くシーン。あのシーンの煙突の煙ほど恐ろしい映画のワンシーンを、私は他に知りません。何度見ても総毛立つシーンです(ここも残念ながら吹き替え版ではカットなんですが…)。あと、ソ連女性秘書のあの顔!これらは感動号泣シーンではなく、最恐のホラーシーン、恐怖のあまり思わず涙目になる半べそシーンですが。なんせこれ、実話ですから!

 感動系の号泣シーンでは、14日目の朝日が昇った後の朝食のシーンですね。この映画って、日常のありふれた朝の食卓シーンから始まって、エンディングでまたそこに戻ってくるんですね。14日後の朝食の風景に。その間に、人類は滅亡の瀬戸際を体験してる訳です。いかに、家族で囲む、日常の、ありふれた食卓が、かけがえのない価値を持つものかを表現するために、そういう構成になっているんですね。ほんと、よく練られた作りの映画です。そこに鳴り続ける赤電話(ホワイトハウスとの直通回線)をガン無視、そして最後のJFKの演説と、もう、終盤は泣き所の連続!そして全編、心に響く、一生忘れたくない、反芻したい、暗唱したいセリフだらけ!

 この映画もまた、私にとっては間違いなく生涯BEST級に大切な1本です。ということで、ぜひ本作を1人でも多くの方にご覧いただきたく、DVD音源吹き替えカット版でもあえてお届けすることにした次第であります。

 この作品を出発点に、関心を『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』や『JFK』→『ボビー』→『ニクソン』→『フロスト×ニクソン』へとどんどん拡げていくという発展的な楽しみ方などもお勧めです。

 以上、ちょっととりとめもなく書き散らかしてきましたが、長くなりましたので、そろそろ終わりにします。最後にもう一度、重ねてお詫び申し上げます。また、今後とも「厳選!吹き替えシネマ」のラインナップにご期待ください。そしてリクエストもお待ちしております。■


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