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NEWS/ニュース2019.02.05
★主演ベン・スティラー吹き替えを担当の堀内賢雄さんコメント到着★【TV初】『(吹)LIFE!/ライフ[ザ・シネマ新録版]』。ザ・シネマでベン・スティラー特集放送&プレゼントキャンペーン決定!!
ザ・シネマでは、TV初の『(吹)LIFE!/ライフ[ザ・シネマ新録版]』(2019年2月24日(日)21時~放送)を制作・放送します。本作は、ジェームズ・サーバー氏の短編小説の映画化『虹を掴む男』をベン・スティラー監督・主演でリメイクした人気作。リストラ対象とされた中年男性が、自分の人生を強く掴みなおすまでを描いた感動の人間ドラマです。主演のベン・スティラーの吹き替えを担当した堀内賢雄さんからコメントが到着しました! < 演じた感想&映画への感想 >僕が今まで演じた、ベン・スティラーの中では一番抑えた演技かな。日常シーンでの抑えた演技と、妄想や幻想シーンでのオーバーな演技ができるということで、そのメリハリがすごく重要になってくるんですよね。このギャップを楽しみながら演じたので、そこに注目してご覧いただけたらと思います。主人公は、まじめで誠実で好きな人に気持ちも伝えられない、それが、あることがきっかけで心が動いていく。この人間の機微がよく描かれていて、この映画をみる人は勇気と希望が貰えると思います。<ファンの方へメッセージ>僕が一番、演じたかった作品に出演させていただいて、すごく光栄だし誇りに思っています。『LIFE!/ライフ』や「ベン・スティラー」のファンの皆さまに本当にいいものがお送りできるように一所懸命に演じますのでご期待ください!決して裏切ることはありません!--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ザ・シネマでは、新録吹き替え版の放送を記念して、プレゼントキャンペーンを実施します!堀内さん直筆サイン入り台本を3名様にプレゼント!そして、2月にベン・スティラー出演作を特集「『LIFE!/ライフ』放送記念:ベン・スティラー」を放送!『ズーランダー NO.2』や「ナイト ミュージアム」シリーズなど。この機会にぜひ、ザ・シネマをお楽しみください。 番組を視聴するにはこちら ■『(吹)LIFE!/ライフ[ザ・シネマ新録版]』プレゼントキャンペーン!『(吹)LIFE!/ライフ[ザ・シネマ新録版]』の放送にあわせ、主演のベン・スティラー役に堀内賢雄さん直筆サイン入りの台本を3名様にプレゼントします! ザ・シネマのWEBサイトプレゼントページより応募ください。※ザ・シネマの会員「ザ・シネマメンバーズ」へ会員登録(無料)に登録が必要です。応募期間:2019年2月5日(火)~2019年3月28日(木) プレゼント応募はコチラ ■【TV初】2月放送番組『(吹)LIFE!/ライフ[ザ・シネマ新録版] 放送日:2月24日(日)21:00~/2月28日(木)10:45~番組情報:https://www.thecinema.jp/program/04367 空想癖のサエない男が本物の冒険に飛び出す!ベン・スティラーが監督・主演を兼任して描く人生賛歌 番組を視聴するにはこちら <解説>ダニー・ケイ主演作『虹を掴む男』をベン・スティラー監督&主演でリメイク。空想癖を持つ主人公の冒険世界をVFXアクション満載に描く一方、本物の冒険シーンは壮大な自然をバックに生命力豊かに映し出す。<ストーリー>雑誌『LIFE』のフィルム管理部に勤めるウォルターは、空想の世界で冒険を繰り広げることで退屈な人生から現実逃避していた。しかし自分を変える勇気はなく、想いを寄せる同僚シェリルにも話しかけられない始末。そんなある日、経営陣の交代に伴って『LIFE』の廃刊が決まり、ウォルターは写真家ショーンから最終号の表紙を飾るネガを受け取る。ところが大事なネガが行方不明となり、ウォルターはショーンを捜すため冒険の旅に出る。2013/アメリカ/監督・製作:ベン・スティラー出演:ベン・スティラー (堀内賢雄) 、クリステン・ウィグ (安藤麻吹) 、ショーン・ペン (山路和弘)シャーリー・マクレーン (谷育子)、 ほか---------------------------------------------- ■ザ・シネマの特集番組:『LIFE!/ライフ』放送記念:ベン・スティラー ベン・スティラーが監督&主演を務め、キャリアの転機と自ら位置づけたというファンタジー・アドベンチャー『LIFE!/ライフ』放送に合わせて、マルチな“才人”ベン・スティラー出演作を特集放送。『ズーランダー NO.2』放送日:2月5日(火)深夜01:30~/2月13日(水)9:00~/2月23日(土)23:15~/2月28日(木)13:00~人類史上最もおバカなモデルが再び世界を救う?ベン・スティラー監督・主演の爆笑コメディ続編番組情報:https://www.thecinema.jp/program/04373 番組を視聴するにはこちら <解説>ベン・スティラーがナルシスト満点に演じるファッションモデル、ズーランダーが前作から15年ぶりに復活。その衰えを知らぬおバカぶりはもちろん、俳優からミュージシャンまで前作以上に豪華なカメオ出演も楽しい。<ストーリー>セレブばかりを狙った連続殺人事件が起き、ローマではジャスティン・ビーバーが犠牲になる。事件を追うインターポールの捜査官ヴァレンティーナは、ビーバーが死の直前に残した表情から捜査のヒントを得る。一方、すっかり過去の人となった元カリスマ・ファッションモデルのデレクとライバルのハンセルに、ファッション界の大御所から仕事が舞い込む。ローマへ飛んだ2人は、ヴァレンティーナと出会い捜査への協力を頼まれる。2016/アメリカ/監督・製作・脚本:ベン・スティラー/出演:ベン・スティラー、オーウェン・ウィルソン、ウィル・フェレル、ペネロペ・クルスほか © 2019 Paramount Pictures.『ナイト ミュージアム』放送日:2月23日(土)14:45~/2月28日(木)15:00~博物館の展示物がみんな動き出す!胸躍るアイデアを映像化したアドベンチャー・シリーズ第1弾番組情報:https://www.thecinema.jp/program/03758 <解説>夜になると動き出す自然史博物館の展示物のキャラクター像は、実際の歴史や性格を反映しつつ遊び心も利いていて楽しい。 テディ・ルーズベルト大統領役を故ロビン・ウィリアムズが演じ、貫禄十分な存在感を魅せる。<ストーリー>失業中のバツイチ男ラリーは、心配する息子ニックへの面目を保つため、ニューヨーク自然史博物館の夜警の仕事に就く。引退するセシルら老警備員3人組に代わって一人で館内を警備することになるが、その初日、彼は信じられない光景を目にする。なんと博物館の展示物が夜になると勝手に動き出すのだった。驚いたラリーは辞職しようとするが息子のために思いとどまり、展示物について猛勉強することで対処法を学んでいく。2006/アメリカ/監督・製作:ショーン・レヴィ/出演:ベン・スティラー、カーラ・グギー、ディック・ヴァン・ダイク、ミッキー・ルーニーほか© 2006 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 『ナイト ミュージアム2』放送日:2月23日(土)16:45~/2月28日(木)17:00~今度は世界最大の博物館の展示物が動き出す!展示物の種類もスケールもアップした冒険シリーズ第2弾番組情報:https://www.thecinema.jp/program/03731 番組を視聴するにはこちら <解説>魔法の石板の力で博物館の展示物が動く大騒動が、スミソニアン博物館に舞台を移しスケールアップ。伝説の飛行士アメリア・イヤハートをエイミー・アダムスが好演し、主役ベン・スティラーと抜群の掛け合いを魅せる。<ストーリー>ラリーはニューヨーク自然史博物館の警備員を辞め、当時の経験を活かしたアイデアで発明品会社を経営し成功を収めていた。一方、自然史博物館でホログラム展示が導入され、不要になった展示物がスミソニアン博物館の保管庫へ移されることに。ところが、展示物に命を宿す魔法の石板まで間違って運び出され、スミソニアン博物館の展示物が動き出してしまう。そんな中、古代エジプト王カームンラーが世界征服の企みを進める。2009/アメリカ/監督・製作:ショーン・レヴィ/出演:ベン・スティラー、エイミー・アダムス、ハンク・アザリアほか © 2009 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』放送日: 2月23日(土)19:00~/2月28日(木)19:00~夜中に動き出す博物館の展示物が最後の冒険に!NYから大英博物館に舞台を移して描くシリーズ最終章番組情報:https://www.thecinema.jp/program/04277 <解説> 夜の博物館で展示物が動き出す騒動が、大英博物館まで舞台を広げ新たな興奮へとエスカレート。夜警役ベン・スティラーが展示物の原始人を1人2役で演じて爆笑を誘う。歌って踊れる某スターのカメオ出演にも注目。<ストーリー>アメリカ自然史博物館の夜警ラリーと展示物たちは、新設されたプラネタリウムの祝賀パーティーを準備する。ところが、いざ本番で展示物たちに異変が発生し、パーティーは台無しに。騒動の原因を調べたところ、展示物に生命を吹き込む魔法の石板の異変が明らかに。石板の秘密を解くため、ラリーは高校生になった息子ニッキーや展示物たちと共に、石板を作った古代エジプト王アクメンラーの父がいる大英博物館へと向かう。2014/アメリカ//監督・製作:ショーン・レヴィ/出演:ベン・スティラー、ロビン・ウィリアムズ、オーウェン・ウィルソン、レベル・ウィルソンほか© 2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 番組を視聴するにはこちら
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COLUMN/コラム2017.12.15
地下浸水が巻き起こす大スペクタクル! ロシア映画が放つ自国初のディザスター超大作!!『メトロ42』~12月5日(火)ほか
前々回、このコーナーでは「ロシア映画史上最大規模のSFファンタジー」と銘打ち、同国初となるエンタテインメント大作『プリズナー・オブ・パワー 囚われの惑星』(08)について触れた。その先陣に連なるがごとく、というワケではないが、今回の『メトロ42』。ロシア映画史上初のディザスター大作として『プリズナー〜』から5年後の、2013年に製作された作品である。 ある日、モスクワの中心にある新建物の大規模工事によって、地下鉄トンネルの壁に亀裂が生じ、首都を貫流するモスクワ川からの水が内部に流入。数千人に及ぶ乗客が洪水に巻き込まれてしまう。しかもその水流は地下鉄トンネルの崩壊だけでなく、都市全体の破壊を招きかねない事態へと及んでいくーー。物語はこうした未曾有の危機に立ち向かう現場のプロフェッショナルたちの戦いと、災害に巻き込まれた市井の人々のサバイバルを大迫力で展開させていく。災害描写もこの手のジャンルが不慣れにしては堂に入ったもので、濁流の衝撃を受け、電車内の乗客がミキサーのように撹拌されるショットや、漏電によって死体が折り重なるショットなど、観る者はそれらの、悲壮にしてスケアリーなパニック描写に心底驚かされるだろう。 ■ロシア映画、エンタテインメント大作化への流れ だが、なによりも驚かされるのは、ロシアでは『メトロ42』のようなディザスター映画がこれまで作ってこられなかったことだ。 こうした疑問は同国内でも共通のものとしてあったようで、本作の完成記者会見で監督や製作スタッフらはマスコミから「なぜロシアではディザスター映画が製作されないのか?」という質問を受けている。その問いに対して監督のアントン・メゲルディチェフは「映画に対する国家支援のシステムの変化」と「ロシアでディザスター映画を展開させられる適切なプロットを見つけることが難しい」のふたつを回答として挙げている。 前者の「国家支援のシステムの変化」関しては、少し解説が必要かもしれない。旧ソビエト時代の映画はソ連邦国家映画委員会、通称「ゴスキノ」と呼ばれる中央行政機関が、同国内の映画製作を管理していた。しかし1980年代後半のペレストロイカ(政治改革)以降、国の統制を受けていた映画製作は独立採算制の導入によって民営化が推し進められ、同時にアメリカ映画の市場制圧に対抗すべく、ロシア映画もハリウッドスタイルの大がかりなアクションを導入した作品を手がけるようになったのだ。そして1990年代の変換期を経て、2000年にはプーチン大統領就任以後の経済成長と同時に映画の国策化、ならびに保護育成を目的に、ゴスキノは文化省へと吸収。そこからの援助資金だけで製作される作品が増加したのである。 こうした映画の変革は、韓国と同じ傾向にある。1996年、韓国では憲法裁判所が検閲行為を違憲とし、脚本と完成作品の提出を義務とした検閲システムが廃止となった。韓国民主化を旗印とする金大中は、国益のために映画産業を政府がバックアップすることを選挙公約として掲げ、98年に大統領当選が決まると、それまで国の機関だった「映画振興公社」を民間に委ね、映画の改革を始めるのである。こうした改革が大きな原動力となり、韓国映画は飛躍的な進化を遂げていったのだ。日本における韓流ブームの嚆矢となった『シュリ』(99)は、まさにこの“韓国映画ルネッサンス”と呼ぶべき変容の象徴として生まれたのだ。先述のこうした状況を踏まえてみると、おのずとロシア映画における『メトロ42』の立ち位置がわかるだろう。 そして後者の「ロシアでディザスター映画を展開させることへの困難」という事情だが、ロシアは地震などの自然災害が少なく、地域によっては寒波などの設定は考慮できても、それが多くの観客の実感を伴わせるとはいいにくい。事故などの人災に関しては1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故のような実例も挙げられるが、娯楽映画の題材に採り入れるほど、同事件に対する自国の傷は癒えていない。 そこで着目されたのが、地下鉄だったのである。ロシアでは交通量の増大に対してインフラ整理が追いつかず、モスクワ市内での車の遅延や渋滞が常態化しており、その緩和手段として地下鉄が市民の重要な足代わりとなっている。また2009年以降、高速鉄道の開業によって鉄道網が大きく拡張されるなど、より鉄道が利便性や安全性を高めていることも手伝い、ロシア人の多くがいちばんリアリティを感じられる設定といえる。じっさい本作の企画は2010年に成立したというから、時代的にも符号が合う。 しかし地下鉄当局からは「ありえない設定」だとして、いっさいの協力を得ることはできず、また大量の水を撮影に用いることから、必然的に地下鉄運施設の使用は無理と判断。すべてをロケセットで再現するアプローチがとられた。そのため本作では全長118メートルのトンネルのセットを建造し、加えて車両などは現物大のラージスケールモデルと、水の質感を損ねないために3分の1縮尺寸の小スケールモデル(といってもその大きさは軽トラくらいはある)が撮影に併用されている。すなわちCGなどのデジタルエフェクトは副次的にとどめ、プラクティカルエフェクトを主体とした特撮が用いられたのだ。また役者たちの演技を中心とした本編ショットでは、機微に応じた撮像を得るために高解像度のRED epicをメインカメラとして使い、パニックシーンや視覚効果の素材ショット撮影には機動性に優れたARRI Alexaを用いるなど、用途に応じた撮影機材の選択がなされている。 こうした撮影手法が「ありえない設定」として地下鉄当局に否定された同作に「ありえる」かのような説得力をもたらしているのである。 ■ハリウッドスタイルの中に見え隠れするお国柄 いっぽうのドラマに関しても、初めて本格的なディザスター映画を製作するにあたり、ハリウッド映画のスキルをヒントに作劇がなされた。古くは『ポセイドン・アドベンチャー』(72)や『タワーリング・インフェルノ』(74)といったアーウィン・アレン製作のものから、『デイ・アフター・トゥモロー』(04)『2012』(09)などディザスター映画の職人ローランド・エメリッヒ監督が手がける近年のものまで、こうした作品に顕著な、パブリックな出来事と個人ドラマの融合によるスタイルを模範として作られている。 ただちょっと我々的に違和感を覚えるのが、主人公の医師アンドレイ(セルゲイ・プスケパリス)と、彼の妻イリーナ(スベトラーナ・コドチェンコワ)と不倫関係にあったブラト(アナトーリー・ベリィ)が同じ列車内に乗り合わせるという、穏やかでない人間関係だ。これは他でもない、ロシアの高い離婚率を象徴する設定といっていい。およそ70%といわれる同国の離婚率の高さは、こうした男女関係のもつれとなって映画に反映され、むしろ地下鉄の事故設定よりも多くのロシア人が実感をともなう要素かもしれない。 グルーバルなハリウッドスタイルを標榜しつつ、映画は根のところでお国の事情が垣間見える。そうした点からも『メトロ42』は、味わい深いディザスター映画といえるだろう。 © LLC PRODUCTION COMPANY OF IGOR TOLSTUNOV, 2012
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COLUMN/コラム2017.12.05
VFXの発展に寄与したロシアの“スター・ウォーズ”『ナイト・ウォッチ』『デイ・ウォッチ』~12月6日(水)ほか
■この世に人間がいるように、”異種”もまた存在する---。 前々回の『プリズナー・オブ・パワー 囚われの惑星』(08)そして前回の『メトロ42』(13)を例にとり、筆者(尾崎)担当の本コラムでは連続して「国産映画のハリウッド化」という、ロシア映画界の変容のプロセスに触れてきた。だが真の意味でこの『ナイト・ウォッチ』(04)と『デイ・ウォッチ』(06)こそが、ロシア映画の歴史を一新させた作品といっていいだろう。しかし両作の公開からすでに11年が経ち、その偉業はやや薄らいだ感がある。今やハリウッド映画に距離を詰めすぎ、そのイミテーションな佇まいが笑いの対象となっているロシア映画だが、興行成績を大きく塗り替え、またロシアン・ポップカルチャーとして同国のエンタテインメント・ムービーの新たなスタイルを生んだ本作の価値は大きい。このダークファンタジーの、果たして何がすごかったのかーー? それを思い出し、改めて敬意を払うのもムダな行為ではないだろう。 光と闇の超能力者である異種たちがお互いを監視し、1000年ものあいだ平和が均衡が保たれている人間の世界。『ナイト・ウォッチ』は、その均衡を破壊する邪悪な存在の復活と、光と闇が再び戦闘状態に入ろうとする物語だ。そして前作が“光の側の視点”で描かれているのに対し、『デイ・ウォッチ』は光側のドラマを中心とした物語だ。光と闇が休戦協定を結んで1000年目の現在、その均衡を破ると予言された異種の「闇側」が登場するのが『ナイト〜』ならば、『デイ〜』は「光側」が頭角を現し、予言どおり均衡は破られて全面戦争に突入するという展開を描いている。こうして両作は、ロシア映画の旧態依然とした表現の外殻をやぶり、ハリウッドに拮抗するようなエンタテインメント映画の新たなフォーマットを作り出し、ロシア映画史上空前の興行的ヒットを打ち立てたのだ。 ■監督ティムール・ベクマンベトフの成した偉業 本作を監督したティムール・ベクマンペトフは1961年生まれで、数多くのコマーシャルを手がけてきたCMディレクターだ。そのため映像の持つ力を熟知し、同時に優れたマーケッターでもある。 まず『ナイト・ウォッチ』を監督するにあたってベクマンペトフがおこなったのは、視覚効果ファシリティ(設備)のインフラ整理だ。同作以前、ロシアでは大作映画のVFXやCGを手がけるような、大手のファシリティがひとつとして存在しなかった。スタジオの民営化によって小型の製作会社が乱立し、VFXの工房も同じような轍を踏んでいたのである。 ベクマンペトフはこうした、CMくらいでしか活かすことのできないロシア圏内の小規模な視覚効果ファシリティを、映画用に大きくひとつにまとめたのだ。複数のファシリティをコミュニティに置き、ネットワークを介して仕事を共有することで、デジタル視覚効果のワークフローと組織化を確立。CGやVFXのクオリティをあげることに成功している。それによって『ナイト・ウォッチ』は、ロシア映画としても異例ともいえる全編1000ショットに及ぶVFXと、36%を占めるCGエフェクトを作り上げている。こうしたVFXのインフラ整理によって、続編である『デイ・ウォッチ』はより精度を高めたVFXショットを、『デイ』よりも安価で数多く生み出している。 なによりこうしたインフラ整理は、ハリウッドに立派なモデルケースがある。1977年の映画『スター・ウォーズ』の製作がおこなわれたさい、監督であるジョージ・ルーカスから相談を受けた視覚効果マンのジョン・ダイクストラが、同作専用の視覚効果スタジオを設立。それまで映画会社の一部門だった視覚効果班が、大型ファシリティとして拡大化し、映画を支える存在になったのだ。それが現在のインダストリアル・ライト&マジック、通称ILMである。つまりベクマンペトフのおこなったことは、ロシアにILMを作ったに等しく、すなわち『ナイト・ウォッチ』はロシア映画界の『スター・ウォーズ』と喩えていいだろう。 また彼はロシア映画で初めてといえる本格的な「プロダクト・プレイスメント」を導入し、このシリーズに徹底したリアリティとコストダウン効果をもたらしている。プロダクト・プレイスメントとは、映画やテレビドラマの劇中に実在の商品や企業を映し出すことで、広告収入を得るシステムのこと。もとよりセルゲイ・ルキヤネンコによる原作は、例えば主人公がロックマニアという設定から、文中ではピクニックやブラックモアズ・ナイトなどのハードロック系サウンドの名前が出てきたり、他にも実在のバンドや企業名が多く登場し、ロシアの現代社会に異世界が存在するリアリティ作りに一役買っている。映画ではさらにそうした性質を徹底させることで、多くのロシア人の共感を得ることができ、映画は大きな興行的成功をモノしたのである ■幻となったシリーズ三作目『トワイライト・ウォッチ』 しかし、この二部作を愛する者にとってつくづく残念なのが、シリーズ第三作目となるはずだった『トワイライト・ウォッチ』の頓挫だろう。『ナイト』そして『デイ』の成功の後、ベクマンベトフはマーク・ミラーとG・J・ジョーンズの共著によるグラフィック・ノベルを原作とした『ウォンテッド』(08)を手がけ、本格的にアメリカ映画界進出を果たしている。そしてこの『ウォンテッド』の後、氏は満を持して『トワイライト・ウォッチ』に着手する予定だったのだ。同企画はハリウッド資本とロシア資本による合作となり、本編言語も英語になるとアナウンスされていたが、ファンはそれ以上に、ストーリーに対して耳目を傾けていた。というのも『デイ・ウォッチ』は、ルキヤネンコの原作版『ナイト・ウォッチ』のエピソード第2章「仲間の中の仲間」(映画でアントンとオリガの肉体が入れ替わるくだり)がベースとなっており、厳密に言えば小説版『デイ・ウォッチ』(ルキヤネンコとウラジーミル・ワシーリエフとの共同執筆)の映像化というワケではない。そのため物語が原作に準拠するのか、映画オリジナルの道を歩んでいくのか、そのことが最大の関心事だったのだ。それがうやむやになってしまったのは、かえすがえすも惜しい。 結局、シリーズがペンディングとなってしまった理由は、ペクマンペトフがハリウッドでの成功を得たためとも、同じ題材を取り組むことに飽きたためとも言われている。そもそも氏のような優秀なロシア映画人の海外流出は、世界的にロシア映画の知名度を上げることによる、外資獲得のもくろみがあった。しかしハリウッドナイズされた作品を手がけ、ロシア映画のハリウッド化に大きく貢献した男が、ハリウッドに身を沈めていくというのも皮肉な展開である。 とはいえ、“光”と“闇”という2大勢力の対立、そして「異種は自らの意志でどちらの側にでもつくことができる」という本作の基本設定になぞらえて、ここは「ロシア映画の革命を起こした異種が、ハリウッド側についた」とドラマチックに捉えるのが、この二部作のクリエイターらしい解釈かもしれない。■ © 2004 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
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COLUMN/コラム2017.11.15
五臓六腑にサイモン・ペグが染み渡る珠玉のダークコメディ『変態小説家』~11月08日(水)ほか
■ブリットコムの伝統を踏襲しつつ、新しい境地に立つ怪作 児童作家から犯罪小説家へと転身を図るべく、ビクトリア朝時代の連続殺人事件を研究していた主人公ジャック(サイモン・ペグ)。ところがそのうち「自分も殺人鬼に殺されるのでは?」という妄執に取り憑かれ、引きこもり状態になってしまう。そんなある日、ジャックはエージェントから「ハリウッドの経営幹部があなたの仕事に興味を抱いている」と聞かされ、その重要会議に出るための準備を迫られる。そして彼が家から一歩外へと踏み出したとき、ジャックはさらなる恐怖と直面することになるのだ! 『変態小説家』……いやぁ、それにしても、ため息が漏れるくらいひどい邦題である。原題も“A Fantastic Fear of Everything”(すべての素晴らしい恐怖)と、冒頭のストーリーを踏まえていないと抽象的で理解に困るが、それでもその不忠実さは邦題の比ではない。せめてもうひとつばかし知恵を絞り『妄想小説家』くらいのニュアンスを持たせて欲しかった。それというのも、この要領を得ない邦題のせいで、本作の持ち味がいまひとつ周りに伝わっていない気がするからだ。 そう、このサイモン・ペグ主演のホラーコメディには、いろいろと楽しい要素が詰まっている。まずパラノイアに陥ったジャックの心象が、彼の手がけた児童文学の形を借り、不条理な世界を形成していく異様な語り口が独特だ。そこへ加え、密室から外界へと舞台が移行していく急展開の妙や、細かな伏線を抜かりなく回収していく「空飛ぶモンティ・パイソン」(69〜74)式の構成など、由緒正しいブリットコム(英国コメディ)の韻を踏まえつつ、この映画ならではの世界を形成しているのだ。そもそも主人公が殺人鬼の影に支配される設定からして、ブラックな笑いを特徴とするイーリング・コメディ(英イーリング撮影所で製作された黄金期のコメディ作品群)の様式をまとい、ブリットコムの古典的な流儀に対して敬意を示しているし、また同時にサイモン・ペグの盟友であるエドガー・ライト監督が成立させた、軽快にリズムを刻むフラッシュ編集を採り入れるなど、ブリットコムの最先端な手法にも目配りしている。そうした性質もあって、本作は『007』シリーズの撮影で知られるイギリスの伝統スタジオ、パインウッドが支援している低予算映画の第一回作品となった(撮影自体はもうひとつの伝統スタジオ、シェパートンで行なわれているのが皮肉だが)。 ■笑いの異能者による一人芝居を楽しめ! 本作を監督したクリスピアン・ミルズは、映画『キングスマン』(14)でも楽曲が使用されている英国ロックバンド「クーラ・シェイカー」のギターボーカルとして知られている。なによりもお父さんが、英国を代表する喜劇役者ピーター・セラーズの主演作を数多く手がけたロイ・ボールティング監督で、ブリットコムの血筋をひいた作り手といえる。事実、これが初監督とは思えぬ堂に入ったコメディ演出や、既知されるコメディ映画に類例のない不思議なお笑い感覚が全編にただよっている。 また共同監督として、レディオヘッドやザ・ヤング・ナイヴスのMVで知られるPVディレクター&アニメーターのクリス・ホープウェルが共同監督に名を連ね、彼が手がけたレディオヘッド「ゼア・ゼア」のPVに登場した、動物たちのモデルアニメーションが本作でも効果的に使われている。 だが何にもまして、主人公のジャックを演じたサイモン・ペグ自身の存在が、独特のユーモアとして機能している。特に映画の前半に展開される、彼の一人芝居は圧倒的な見ものだ。常に何かに怯えている狭心なさまや、外界を警戒していたジャックが意を決し、全ての元凶となるコインランドリーに向かうまでの葛藤を、ひたすらハイテンションな演技と、古典落語を演じる噺家のごとき言葉たぐりと感情表現で、観る者を飽きさせることなく劇中へと誘っていく。 このように主人公が常に不安を抱えた一人芝居は、主人公の女性が検診を受け、結果がわかるまでの感情の揺れ動くさまをリアルタイムで捉えた『5時から7時までのクレオ』(62)や、男性恐怖症の女性が妄執にとらわれていくプロセスを丹念に描いたロマン・ポランスキー監督の『反撥』(65)に近いテイストのものといえる。特に本作の場合、後者である『反撥』からの強い影響は明らかだ。象徴的に挿入される眼球のアップや、同作の主人公キャロルの画面から滲むような焦燥感など、それらを『変態小説家』は劇中で見事なまでに反復している。いちおう本作は『ウィズネイルと僕』(87)で知られるブルース・ロビンソン監督が執筆した小説“Paranoia in the Launderette”を基にしたという指摘があるが、こうした映画を出典とするディテールも、同作のプロデュースを務めているサイモンのオタク的なこだわりを感じさせる。 ■実際のサイモン・ペグは、映画とは真逆!? そんなふうに、プロデューサーとしてこの映画を成立させ、また劇中でも圧倒的なパフォーマンスを見せるサイモン・ペグだが、筆者が主演作『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!』(07)の宣伝プロモーションで出会ったときの彼は、あの突き抜けて陽性な感じとは程遠い、物静かで知性的な雰囲気をただよわせていた。もちろん、ときおり楽しいコメントを提供し、周囲に笑いをもたらしてくれるが、それは同席したエドガー・ライト監督の談話を補足するような場合がほとんどで、自分から率先して笑いをとるようなことはなかったと記憶している。 『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)や『宇宙人ポール』(11)など、サイモンとの数多いコンビ共演で知られているニック・フロストは、こうしたコメディ俳優の二面性を主演作『カムバック!』(14)で取材したさい、以下のように語っていた。 「コメディ俳優は 実生活も笑いと楽しさにあふれていると思われがちだけど、コメディとドラマを自然体で演じるタイプの役者は、精神的にも相当の負荷がかかるんだよ」(*1) もっとも、このコメントは同じ頃に亡くなった名優ロビン・ウィリアムスの訃報に触れたものだったのだが(同作の劇中、ロビン主演のTVコメディ『モークとミンディ』(79)が引用されている)、先のサイモンの印象があまりにも強く残っていたので、筆者は反射的に彼の盟友サイモンのことを連想してしまった。 スクリーン上のサイモンと現実の彼との隔たりに、精神的負荷が起因していると思うほど短絡的ではないにせよ、フロストの話は笑いを生業とする役者にはテンプレのごとくついてくるものだ。しかしサイモンの場合、こうしたギャップをコントロールし、あえて自身の中で楽しんでいるフシがある。例えば先の『ホットファズ』のインタビューでも、 「僕はイギリスの、あまり事件が起こらない場所で育ったんで、ロンドンの観光地みたいなところで怪奇事件が起きたら面白いと思い、アイディアを膨らましたんだ」(*2) と発想のきっかけをこのように話していたし、ジェリー・ブラッカイマーが製作するハリウッド・アクション映画のテイストを拝借したことにも、 「ハリウッド・アクションに決して悪意を抱いているワケじゃなく、二兆拳銃の銃撃戦が田舎のパブで行われている、そんなセッティングのズレに笑ってほしいんだよ」(*3) と答えている。なので『変態小説家』で見せた演技も、こうしたギャップにこだわるサイモン自身を体現しているのかもしれない。単にインタビュー当日、虫の居所が悪かっただけかもしれないが、邦題が招く誤解を少しでも和らげるためにも、このようにまとまりよく結ばせてほしい。■ ©2011 SENSITIVE ARTIST PRODUCTIONS LIMITED
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COLUMN/コラム2017.05.20
同業者からリスペクトされるジョージ・クルーニーの映画人としての使命感が映像に結実した、入魂の『グッドナイト&グッドラック』〜05月09日(火)ほか
『シリアナ』(05)でアカデミー助演男優賞を受賞した時、壇上に上がったジョージ・クルーニーのスピーチに耳を傾ける同業者たちの、尊敬と憧れに満ちた表情が今でも忘れられない。クルーニーはこう言い切った。『映画に携わる仲間の一員であることを誇りに思う』と。場内に割れんばかりの拍手と歓声が沸き上がったことは言うまでもない。 同年、クルーニーが2度目の監督作に選んだ『グッドナイト&グッドラック』を見ると、まさしくオスカーナイトでの言葉通り、彼が映画人としての使命にいかに忠実であるかがよく分かる。選んだネタは、1950年代のアメリカ社会で吹き荒れたマッカーシー上院議員による反共産主義活動、いわゆる赤狩りに敢然と挑み、マーカーシズムの悪夢を終焉へと導くきっかけになったTVマンたちのリアルストーリーだ。宗教や思想の自由を束縛する政治の横暴に立ち向かおうとした人々を映像で蘇らせること。それはそのまま、今のハリウッドに求められるミッションだと、彼は確信したに違いない。その決断が、10年後のまさに今の今、これほど重い意味を持つことになるとは、当時のクルーニー自身、想像だにしていなかったかも知れないが。 物語のキーマンは、アメリカ3大ネットワークの1つ、CBSの人気ニュース番組"シー・イット・ナウ"のキャスター、エド・マローだ。ある空軍兵士が赤狩りによって不当に除隊処分されようとしている事実を掴んだマローと番組スタッフが、マッカーシー側の圧力を受けながらも、虚偽と策謀の実態を生放送の中で告発していくプロセスを、クルーニーは当時のニュースフィルムと自ら撮った映像とを交えて構成。そこまでなら、多くの監督が取ってきた既存の手段だ。1950年代にはモノクロだったTV番組を克明に再現するため、カラーで撮ったフィルムをポスト・プロダクションであえて彩度を落としてモノクロに変える方法も、さほど珍しくはない。 監督としてのジョージ・クルーニーが同業他者と少し違うのは、その徹底した美意識だ。マローはCBS入社後、第二次大戦下のロンドンでラジオ・ジャーナリストとして番組を担当していた時、毎夜ナチスの空襲に脅えるロンドン市民に対して、番組終了間際に『グッドナイト、アンド、グッドラック』と呼びかけることで知られていた。もしかして就寝後、爆死するかも知れない人々の耳に『おやすみ、そして、幸運を祈ります』がどう届いたか?想像に難くないが、"シー・イット・ナウ"でもその決まり文句が番組の結びにも使われていたことから、クルーニーは映画のタイトルとして流用。しかし、そんなキザな文句を台詞としてかっこよく決められる俳優はそう多くない。 そこで、発案段階から監督のファースト・チョイスだったのがデヴィッド・ストラザーンだ。映画デビュー前の数年間を舞台俳優として全米各地を巡演したこともあるストラザーンの口跡の良さを見抜いていたクルーニーは、信念を持って彼を主役に抜擢。一語一語が視聴者の心に届くようなその紳士的な抑揚と発音は、社会を覆う赤狩りの暗雲を切り裂く鋭利な刃物のようで、監督の狙いはどんぴしゃだったはず。声だけじゃない。ストラザーンの顔の輪郭、特に美しい眉と目が、本番中、左下に置かれた原稿とカメラの間をゆっくりと往復する時、観客は思わず惹きつけられて当時のTV視聴者になったような錯覚を覚えるほど。実物のマローはストラザーンとは似ても似つかぬルックスだが、左下と正面を往復する目線は全く同じ。監督が事実を忠実にコピーしていることが伺える。『シリアナ』でクルーニーと組み、後に『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)でオスカーに輝くカメラマン、ロバート・エルスウィットの、ストラザーンの輪郭を熟知したアングルとライティングにも注目して欲しい。 クルーニーは脇役にもこだわった。台詞がある役には1950年代のアメリカ人らしい顔と雰囲気を持った俳優たちが集められた。番組スタッフ役のロハート・ダウニーJr(『アベジャーズ』の前は『チャーリー』(92)で赤狩りでハリウッドを追われたチャップリンを好演)、同じくパトリシア・クラークソン(『エデンより彼方に』(02)で'50年代のブルジョワ主婦役)、同じくテイト・ドノヴァン(『メンフィス・ベル』(90)で第2次大戦を戦った米軍パイロット役)、放送局幹部役のジェフ・ダニエルズ(『カイロの紫のバラ』(85)で往年の映画スター役)、そして、プロデューサー役にはクラシックビューティの権化とも言うべきジョージ・クルーニー本人という、まさにパーフェクトな布陣である。 音楽も粋だ。シークエンスとシークエンスを繋ぐグッド&オールドなジャズナンバーを歌うのは、現役最高峰のジャズシンガーと言われるダイアン・リーヴス。劇中でリーヴスのバッグハンドを務め、映画で使われる全曲のアレンジを担当しているのは、監督の叔母で歌手兼女優だったローズマリー・クルーニー(02年に他界)のラスト・アルバムをプロデュースしたマット・カティンガブだ。 マローが"シー・イット・ナウ"と同じくホストを務めるインタビュー番組"パーソン・トゥ・パーソン"で、伝説のピアニストでワケありのリベラーチェに白々しく結婚観を質問した直後の気まずい表情、同番組で話題に上がるミッキー・ルーニーのほぼレギュラー化していた新婚生活情報(ルーニーは93年の生涯で計8回結婚)等、クルーニーとグラント・ヘスロブが執筆した脚本には、けっこうな毒も含まれている。その最たるものは、劇中のほぼ全ショットにタバコの煙が充満している点だ。番組スタッフは四六時中タバコを吹かし、マローに至っては本番間際にプロデューサーから火を点けて貰い、カメラが回り始めても吸い続けていると言った具合だ(ストラザーンはノンスモーカーらしいが)。これには理由があって、CBSのオーナー、ウィリアム・ペイリーがタバコ会社の御曹司で、社会の喫煙には寛容だったようなのだ。 つまり、ペイリーは反マッカーシズムを貫いた結果、スポンサー離れを招いた"シー・イット・ナウ"のスタッフを危険視しつつも、社員の健康には無頓着だったということになる。そんな、ある意味古き良き企業の矛盾を炙り出しながら、赤狩り時代のTV界をヒントに、ニュース番組の、ひいては映画産業のあるべき姿を問い質そうとしたとした監督・脚本・出演のジョージ・クルーニーは、やはり業界人にとって眩しい存在に違いないという、再び冒頭の結論に立ち戻ってしまう。 結婚以来、俳優としてはどうやら一段落つき、今秋の全米公開に向けて製作中の最新監督作『Suburbicon(原題)』は、マット・デイモンを主役に迎えた初のミステリーだとか。そんなクルーニーに新たなラックが訪れることを祈りたいと思う。■ ©2005 Good Night Good Luck, LLC. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2017.04.10
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2017年5月】タラちゃん
『ザ・フライ』は人間がハエ男になってしまうというお話でしたが、本作は一度人間としては死んで、ハエとなって甦るお話。前代未聞、インド発の「フライ」アクションです。 お調子者のジャニは、近所に住む美しい慈善活動家ビンドゥに一方的な想いを寄せている。はじめはウザがられていたが、努力の甲斐あって次第に2人の距離は縮まっていく。資産家でありながらヤクザとしても暗躍しているスディープは、それを良く思わず、ジャニを殺害してビンドゥに近づく。ジャニは執念でハエ=「マッキー」となって死から甦り、彼女を守るべく立ち上がる。 あらすじを読むだけで笑ってしまう、誰も想像しえなかったであろう奇想天外ストーリー。これだけ聞くと正直「B級」のニオイが漂いますが、決して侮ってはなりません!ハエの視点で巨大な人間の世界を飛び回るCGの迫力は思わず息をのむクオリティ。本国で大ヒットしたのがうなずける、一大エンターテインメント作品になっています。 特筆すべきは脚本。「よく思いつくなあ…!」と思わずうなってしまう細かい描写の連続。小さな体の非力なハエが、最強のヤクザたちに勝てる唯一の武器、それは【ウザさ】!相手が手を動かせない状況で顔にペタッと止まったり、耳元を飛び交って羽音を聴かせたり、文字通りの「ウザッ!!」という攻撃を仕掛けるジャニ。しかもスパ中、会議中、お休み前など、一番ウザいタイミングで襲ってきます。それを「んもううっ!やめんかいっ!」と嫌がる悪役スディープの演技も爆笑必至です。 一見史上最弱の生き物であるハエが、どんどん筋トレしてたくましくなり、持ち前のウザさでライバルを追い詰めてくストーリーが本当に秀逸!本作を観たら、それ以降ハエを見る目が変わること請け合いです。 もちろん踊るシーンも歌うシーンもありますよ。インド映画ですもの。「僕はハエ 地獄に落ちろ」と繰り返す、めちゃくちゃな歌詞も必見です。エンディングには目を疑うダンスシーンが登場しますので、最後までしかとご覧ください!■ ©M/s. VARAHI CHARANA CHITRAM
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COLUMN/コラム2016.11.03
【DVDは通常版が受注生産のみ】今こそくつがえせ、オールスターパニック超大作の不評を!!ー「エクステンデッド版」が引き出す『スウォーム』の真価 ー
そうした状況下で『ポセイドン・アドベンチャー』(69)や『タワーリング・インフェルノ』(74)といった、オールスターキャストによるディザスター(大災害)を描いた大作が観客の支持を得たのだ。これらを製作した同ジャンルの担い手が、名プロデューサーとしてテレビや映画の一時代を築いてきたアーウィン・アレンである。『スウォーム』はそんなアレンが満を持して送り出した、殺人蜂が人間を襲う昆虫パニック超大作だ。 蜂を敵役にした昆虫パニック映画には、『デューン/砂の惑星』(84)や『グローリー』(89)の撮影監督としても名高いフレディ・フランシスが手がけた『恐怖の昆虫殺人』(67)や、ニューオーリンズから飛来した殺人蜂が人々を襲う『キラー・ビー』(76)などの先行作品がある。しかし『スウォーム』は、そういった諸作とは大きく一線を画す。1974年、アーサー・ハーツォグによる同名原作が出版された直後に映像化権が取得され、早々と映画化が検討されてきた。 時おりしも『タワーリング・インフェルノ』でアレンのプロデュース作品に弾みがついた時期で、同作に引き続いて名匠ジョン・ギラーミンが監督をする予定となっていた。しかしギラーミンは『キングコング』(76)や『ナイル殺人事件』(78)といった大型企画に関与しており、プロジェクトからやむなく離脱。また、空を覆い尽くす蜂の大群を視覚化するのに、これまでにない特殊効果撮影の必要性を覚え、長期における企画の熟考がなされてきたのである。最終的には『タワーリング~』でアクション演出の手腕をふるったアレン自らが監督として、作品の指揮を執ることになったのだ。ヒットを連発する敏腕プロデューサー直々の演出に、作品に対する期待は否応なく膨らんでいったのである。 また企画が練られている間に、好機も巡ってきた。人食いザメの恐怖を描いたスティーブン・スピルバーグの出世作『ジョーズ』(75)が映画界を席巻し、世に動物パニック映画のブームが訪れたのだ。このムーブメントと、アレン自らが築いたパニック大作ブームの追い風に乗り『スウォーム』は当時の最大数となる全米1400館の劇場で一斉公開されたのだ。 ■ハチを敵役にした背景 そもそも、なぜ蜂が恐怖の対象として本作に用いられたのか? 1957年、ブラジルで蜂蜜の生産向上を目的とした、アフリカミツバチとセイヨウミツバチとの交配種が生み出された。ところが本来の目的に反し、このミツバチが狂暴種となって群れをなし、ブラジル各地で猛威をふるう存在となってしまった。それが60年代に入ってから徐々に生息範囲を広げ「やがて北米に侵入してくるのでは」という懸念が、当時のアメリカ社会に蔓延していたのである。 ハーツォグの原作小説「スウォーム」は、こうした事実をヒントに執筆された秀逸なSF作品だ。スタイルとしては、1969年にマイケル・クライトンが「アンドロメダ病原体」で実践した「具体的な社会事例と科学理論を織り交ぜたセミドキュメンタリータッチ」を踏襲しており、作品はリアリティあふれるハード科学フィクションの様相を呈している。各地で起こった蜂による被害報告をはじめとし、事態はやがて全米における変異殺人蜂の猛襲へと移行していき、最終的には科学者たちが遺伝子操作で蜂を自滅へと追いやっていく。その一部始終が、あたかも現実の出来事のように描かれている。 しかしアレンの映画版は、そんな原作から「殺人蜂の群れが人間を襲う」というスペクタクル成分のみを抽出し、自身のプロデュース映画の方法論にのっとった脚色を施している。結果、これまでの動物パニック映画のような低予算スリラーではなく、巨額の製作費で、ド派手な見せ場に重点を置いた「オールスターパニック超大作」として成立することとなる。 ■『スウォーム エクステンデッド版』とは? 『スウォーム』の劇場公開時のランニングタイム(上映時間)は116分。同タイプの作品にしてはコンパクトな印象を受けるが、これは当時、アメリカ映画の斜陽によって、お金をかけた大作であってもラニングタイムを極力短くし、上映回数を増やそうとした動向によるものである。そのため、本編中の展開やキャラクターの行動に未消化な部分が生じ、作品の評価を貶める結果を招いてしまう。そのことは興行にも影響することとなり、『スウォーム』は2100万ドルの製作費に対して1000万ドルしか収益を得ることができず、パニック大作のムーブメントに自ら引導を渡してしまったのだ。 そんな『スウォーム』を、本来あるべき正しい形にしたものが、この「エクステンデッド版」だ。ランニングタイムは156分。1992年12月に、アメリカでLD(レーザーディスク)ソフトとして発売されたのが初出となった(日本未発売)。 当時の米国LDソフト市場は既発売のタイトルを、オリジナルの画角、あるいはデジタルリマスタリングによる高画質化のうえで再リリースするという流れにあった。『スウォーム』もその流れを汲むタイトルとして、ワイドスクリーン収録、デジタルリマスター化に加え、劇場公開時よりも40分長いバージョンが発売されたのだ。また前年(1991年)にはアーウィン・アレンが亡くなったことから、リリースには氏を偲ぶ意図も含まれている。 ただアレンの死後ということで、はたして誰の監修による「エクステンデッド版」ということが取り沙汰されるだろう。しかし、こうした拡張バージョンは作品の劇場公開とは別に、テレビ放送用に作成されるケースが多かった。例えば1977年、米NBCネットワークが『ゴッドファーザー』(72)ならびに『ゴッドファーザーPARTII』(74)を時系列に組み替え、未公開シーンを挿入して7時間半に拡張した『ゴッドファーザー/コンプリート・エピック・フォー・テレビジョン』を放映した。それを筆頭に『キングコング』『パニック・イン・スタジアム』(76)さらには『スーパーマン』(78)などの作品が、テレビ放映時にはランニングタイムの長いバージョンでオンエアされている。テレビ局側にとっても、視聴率を稼ぎ、また放映時のコマーシャル単価を上げるためにも、未公開シーンを挿入した別バージョンは大きな効力となった。ことに『スウォーム』の場合、劇場での興行成績が振るわなかったことから、副次収益を得るために、こうした拡大バージョンの準備が整えられていたのである。 『スウォーム エクステンデッド版』は、登場する個々のキャラクターたちが各自なんらかの接点を持ち、緊密な関係を結んでいるのが特徴だ。また、それらの登場人物を介して場所や視点の移動がスムーズにおこなわれるなど、演出や編集において細かな配慮がなされている。ところが「劇場公開版」では、それがことごとくカットされ、全体の繋がりが著しく悪くなってしまっている。殺人蜂の襲撃を受けるメアリーズビルの町長や学校長なども、それぞれが役割に応じて未曾有の危機に対処すべく存在するのに、同バージョンでは彼らがただパニックに巻き込まれるだけの「悲惨な人」にすぎない。 なによりも「劇場公開版」では、殺人蜂の発生の詳細や、人を死に至らしめる個体の特性が明らかにされないままストーリーが進むという、説明不足な欠点があった。しかし「エクステンデッド版」では、蜂が仲間を増やしながら潜伏していた事実や、連中がプラスティックを噛み砕く強靭な顎を持ち、そのプラスティックを巣作りの材料に用いるといった特異性にもキチンと言及しており、対象となる殺人蜂がいかに脅威的な存在であるかを明示している。 また、恐ろしい変異種が主要キャラクターを襲い、無差別に犠牲者を生み出すという緊張感も「劇場公開版」は台無しにしている。特に両親を蜂に殺され、その仇を討とうと巣に火を放ったポール少年(クリスチャン・ジットナー)は、自らも毒によって非業の死を遂げる。そんな、子どもであろうと容赦しない描写も「劇場公開版」では削除され、立ち位置も曖昧なままに彼は映画から姿を消してしまう。クレーン(マイケル・ケイン)が自らを犠牲にして解毒剤を作ったクリム博士(ヘンリー・フォンダ)の死に接し、ハチとの戦いに勝とうと誓う象徴的な名シーンも削除され、また1838年のチェロキー族インディアンの強制移送に喩えられた、悲壮ともいえる列車での国民避難も「劇場公開版」では単に脱線事故を作り出す以上の意味を成すことはない。 こういった諸々の重要シーンを40分も削ぎ落としたのでは、評価に影響が及ぶのも仕方がないというものだ。 『スウォーム』が製作されて、およそ38年の歳月が経つ。現在ならば本作のような映画も、CGIによって途方もない蜂の群れを再現できるだろうし、先に挙げた「アンドロメダ病原体」が『アンドロメダ…』(71)になったような、原作のまま硬質に映画化するアプローチも考えられるだろう。事実、本作のリメイクの話は、これまでに何度となく浮上しては姿を消している。 しかし時代の趨勢によって、映画のありようが大きく変わってからでないと、古典の持つ価値を計ることができない場合もある。総数2200万匹(広報発表)といわれる本物の蜂を使って撮影に挑み、あるいは街のセットを豪快に燃やしてディザスター描写を作り上げた、そんな本物ならではの迫真に満ちた映画体験は、今ではなかなか得難いものだ。 不完全な形での劇場公開によって、必要以上の悪評をこうむってしまった『スウォーム』。「エクステンデッド版」の存在は、この不遇に満ちたオールスターパニック超大作の立場を一転させ、同作の真価を引き出してくれるのである。キーの叩きに乗じて持ち上げすぎた感もあるが、少年時代、本作に何回も接し、貴重な時間を割いた者として、その心情に嘘偽りはない。■ TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.
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COLUMN/コラム2015.12.15
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2016年1月】うず潮
『007 スペクター』でボンドガールに抜擢された旬の女優レア・セドゥがマリー・アントワネットを慕うヒロイン役に!マリー・アントワネット役を『ナショナル・トレジャー』でブレイクしたダイアン・クルーガーが演じ、フランス革命前夜の様子を王妃に仕える朗読役のヒロインを通して描いた歴史愛憎劇。豪華絢爛な衣装はもちろん、一般非公開の部屋で撮影されたベルサイユ宮殿のシーンも必見! 王妃を想い慕う健気な朗読役のヒロインを演じた、レア・セドゥのどこか悲しげな瞳が印象的。死の影が迫った女たちの愛憎がうごめく中、王妃は自分を慕う彼女の気持ちを利用してある指令を下します。思わず「断れよ!」と突っ込みたくなりますが、王妃の気持ちを受け入れて、覚悟決めたレア・セドゥの凛とした姿は儚い美しさを感じずにはいられません… 死の恐怖に怯えながらもどこか優雅に振る舞う王族たち、そんな主人を見捨て始める給仕たち…本作は歴史の裏側を垣間見たような気分になれる1本。男女問わず、お楽しみ頂けます!また、フランス屈指の女優が競う「トリコロール」3部作も1月に放送。こちらもぜひ! ©2012 GMT PRODUCTIONS - LES FILMS DU LENDEMAIN - MORENA FILMS - FRANCE 3 CINEMA - EURO MEDIA FRANCE - INVEST IMAGE
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COLUMN/コラム2015.03.31
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年4月】キャロル
リチャード・ギアが一気にスターダムにのし上がった『愛と青春の旅だち』より2年ほど前に公開された『アメリカン・ジゴロ』。売れっ子NO.1の男娼が美人の人妻に本気で惚れてしまった矢先に、過去に一度相手をした客の殺害容疑をかけられてしまう・・・というストーリー。昨今は『プリティ・ウーマン』や『シカゴ』といった“素敵なオジサマ”の印象が強いR.ギアだが、本作ではイケメン絶頂期の若かりし姿を拝める。ドンピシャ世代ではない私でも、ナルホドこのオジサマは甘さと強さを兼ねそろえた猛烈にカッコいいスーパースターなんだと否が応でも納得させられます。ちなみにザ・シネマではR.ギアのイケメン絶頂期の『愛と青春の旅だち』と『アメリカン・ジゴロ』を2作品とも4月に放送しますので、お見逃しなく。 TM, ® & COPYRIGHT © 2015 BY PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2014.09.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2014年9月】うず潮
マカロニ・ウエスタンの大スターとなったクリント・イーストウッドが帰国後、ハリウッドに復帰した第1作。冤罪で私刑された復讐に燃える男を、持ち前のニヒルな無表情で熱演した西部劇。牛追いをするクリント・イーストウッドが川を渡っていたところ、謎な男たちに、一方的に襲われ縛り首に。たまたま通りかかった連邦保安官に救われ、判事によって冤罪を認められたクリント・イーストウッドは、元保安官という前歴を買われ町の保安官に任命される。そこから自分を縛り首にした男たちを追い詰める、無表情のクリント・イーストウッドの復讐劇は必見です! HANG 'EM HIGH ©1968 ROSE FREEMAN REVOCABLE TRUST AND LEONARD FREEMAN TRUST. All Rights Reserved