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PROGRAM/放送作品
ジャンゴ 繋がれざる者
[R15+]奴隷主をぶっ殺せ!タランティーノが西部劇の常識を覆す!ディカプリオ初の悪役も必見
クエンティン・タランティーノ監督が西部劇に黒人奴隷制の歴史を絡めた意欲作。レオナルド・ディカプリオが初の悪役に挑み、憎々しさを見せつける。アカデミー助演男優賞(クリストフ・ヴァルツ)・脚本賞受賞。
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COLUMN/コラム2014.10.04
エンドロールが最大の見どころ!? 『DEGNEKI 電撃』『ブラック・ダイヤモンド』
ひとつはタランティーノが様々な場所で80年代~90年代の香港アクション映画を再評価することで、ハリウッドに多くの香港映画人が参入したこと。この流れの中で『ラッシュアワー』(98年)でジャッキー・チェンが本格的にハリウッドに再進出するきっかけを作り、チョウ・ユンファが当時のタランティーノの恋人であるミラ・ソルヴィーノと共演する形で『リプレイスメント・キラーズ』(98年)でハリウッド進出を果たした。そしてジェット・リーは『リーサル・ウェポン4』(98年)での強烈な悪役で世界デビューを果たし、世界中から絶賛されている。 そしてもうひとつは、タランティーノ自身の監督作である『ジャッキー・ブラウン』(97年)によって、70年代のブラックスプロイテーション映画のテイストを現代に甦らせたことだ。この影響下でジョン・シングルトン監督、サミュエル・L・ジャクソン主演で『黒いジャガー』(71年)のリメイク作『シャフト』(00年)が公開されてスマッシュヒットを飛ばし、70年代ブラックスプロイテーション映画パロディの集大成となる『アンダーカバー・ブラザー』(02年)のような作品が登場した。 こうした香港アクションとネオ・ブラックスプロイテーションという流れが融合したのが、本稿で取り上げる『DENGEKI 電撃』(01年)と『ブラック・ダイヤモンド』(03年)に、『ロミオ・マスト・ダイ』(00年)を加えたアンジェイ・バートコウィアク監督によるヒップホップ・カンフー映画三部作と呼ばれる作品群となる。 本シリーズの第一弾『ロミオ・マスト・ダイ』は、『リーサル・ウェポン』(87年)『ダイ・ハード』(88年)『マトリックス』(99年)といったメガヒットアクション映画を連発する名プロデューサーのジョエル・シルバーが、『リーサル・ウェポン4』で撮影監督を務めたバートコウィアクの監督デビュー作として、同作に出演したジェット・リーのハリウッド映画主演デビュー作をあてがう形で実現した作品。『ロミオ・マスト・ダイ』は、本作出演後に飛行機事故で急逝した歌姫アリーヤの初映画出演作であり、人気ラッパーのDMXもこの作品で本格的に俳優業に乗り出すことになるきっかけとなった作品でもある。 この流行り物を先取りし、初物尽くしでフレッシュなメンツで制作された『ロミオ・マスト・ダイ』は、アメリカをはじめとする全世界で大ヒットを記録。2500万ドルで制作されて、興行収入9100万ドルというメガヒット作となった。 この映画で俳優としての実力を認められたDMXを準主演とし、前作のスタッフを継承した上で、スティーヴン・セガールを主演に据えて制作されたのが『DENGEKI 電撃』である。 正義感の強すぎる刑事ボイドは、副大統領を狙うテロリストを撃退するも、副大統領を川に突き落としたために、犯罪多発地帯である15分署に左遷させられてしまう。さらにドラッグ密売現場で犯人を取り押さえたと思いきや、それは囮捜査官。この失敗からボイドは交通整理係にまで格下げされてしまう。しかしこの15分署内で起きている汚職を発見したボイドは……。 この映画が制作された頃、セガールは出演作がアメリカでは軒並み大コケする落ち目のアクション俳優となっており、その人気は急落していた。体重が大幅に増加したセガールが、似たようなプロットで、スタントダブルを使った似たようなアクションを繰り返すだけの作品に多くの観客が飽きていたためである。そんなセガールを本作に起用したシルバーは、まずセガールのトレードマークであるチョンマゲを切らせ、ダイエットを命令。セガール自身でしっかりとアクションが出来る状態にしてから、本作の撮影に臨ませている。 本作では久々にキレッキレのセガールアクションが堪能できる作品であり、またセガールが初めてワイヤーアクションに挑むなど新境地を開拓した作品でもある。敵役のマイケル・ジェイ・ホワイトのソードアクションも素晴らしく、『マトリックス』シリーズや『インファナル・アフェア』(02年)、『スパイダーマン2』(04年)などの名アクション振付師ディオン・ラム演出のファイトシーンは、前作『ロミオ・マスト・ダイ』を凌駕する、迫力満点な出来となっている。 『DENGEKI 電撃』も世界で8000万ドルの興行収入を稼ぎ出すスマッシュヒットとなり、この後再びジェット・リーを主演に迎え、『ロミオ・マスト・ダイ』と『DENGEKI 電撃』で俳優として著しい成長を見せたDMXとのダブル主演作『ブラック・ダイヤモンド』が制作されることになる。 鮮やかな手口で金庫破りを繰り返すトニーとその一団。ある日ロスの貸金庫に忍び込んだ一団は、見たこともないような黒いダイヤモンドを発見する。そのタイミングで謎の中国人スーから黒いダイヤモンドに手を出すなとの警告電話を受けたトニーは、彼らの雇主が裏切ったことを知り、スーの警告を無視してダイヤを奪って銀行から脱出する。しかしトニーの娘が謎の集団に誘拐され、引き換えにダイヤを要求される。そこにスーが現れ、トニーらにある取り引きを持ちかけるが……。 今回は敵役として登場するのは日系ハリウッド映画『クライング・フリーマン』(95年)や『ジェヴォーダンの獣』(01年)などで活躍する本格アクション俳優マーク・ダカスコスと、サモ・ハン主演のTVドラマ『LA大捜査線/マーシャル・ロー』(98年~)で注目を浴びたケリー・フー。両者ともバリバリに身体が動く俳優であり、クライマックスの3つの異なるシチュエーションでのアクションは最後まで飽きさせない。格闘シーンの振付けは、ジェット・リーの盟友であり、ジャッキー・チェンの兄弟子であるコーリィ・ユンが担当している。ちなみに本作では、後に総合格闘技の大スターとなるチャック・リデル、ランディ・クートゥア、ティト・オーティズというUFCレジェンドたちとジェット・リーが戦うという夢の対戦もあるので、格闘技ファンにも是非観てほしい作品だ。 さて、本シリーズはヒップホップをはじめとするブラックカルチャーと東洋アクションの融合という点で大いに評価されてきた作品であるが、公開当時からある“おまけ”が作品の評価とはまったく別次元で伝説となった作品群でもある。その“おまけ”とは、本編終了後のエンドクレジット時に流れるトム・アーノルドとアンソニー・アンダーソンの掛け合い漫才のことである。 『DENGEKI 電撃』では、すべての事件が解決した後で、アーノルドがホストをつとめるトーク番組にアンダーソンがコ・ホストとして出演するという設定で、これ以上ないほど大量の人種差別ネタや下ネタなどの不謹慎ネタを、2人が爆笑しながらぶちまけまくるというもの(しかも会話の内容は本編とは一切関係ない)。公開当時はマジメなセガールファンの顰蹙を大いに買っている。 続く『ブラック・ダイヤモンド』では映画業界悪口ネタでまたもや大暴走。この事件を映画化するならどんなキャストとスタッフが良いかを延々と語り合い、最後は『DENGEKI 電撃』のエンドロールでの自分たちの掛け合いを絶賛して終わるという意味不明かつ爆笑必至なものとなっている。 両方ともマジメな映画ファンからすると許されざる暴挙かもしれないが、最後の最後まで映画を楽しませようとする制作側の(ちょっと外れた)心意気が感じられて、個人的には大満足で映画を観終えることが出来た。今回放送される両作品も、エンドロールに入ったからといってチャンネルを変えるなどということが無いように注意して頂きたい。ご両親や恋人と観ると、非常に気まずい思いをするかもしれないが。■ 『DENGEKI 電撃』© Warner Bros. Entertainment Inc./『ブラック・ダイヤモンド』TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.
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PROGRAM/放送作品
(吹)ジャンゴ 繋がれざる者
[R15+]奴隷主をぶっ殺せ!タランティーノが西部劇の常識を覆す!ディカプリオ初の悪役も必見
クエンティン・タランティーノ監督が西部劇に黒人奴隷制の歴史を絡めた意欲作。レオナルド・ディカプリオが初の悪役に挑み、憎々しさを見せつける。アカデミー助演男優賞(クリストフ・ヴァルツ)・脚本賞受賞。
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COLUMN/コラム2012.08.03
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年8月】山田
唯一無二の作品作りで映画ファンを魅了するタランティーノ。そんな彼が撮った「戦争映画」は破格の面白さである。公開当時行われた、上映開始後1時間以内に退席した観客に鑑賞料を返却する「面白さタランかったら全額返金しバスターズ」キャンペーンに乗っかった人は一人もいないのでは?分かる人にはたまらないオマージュの数々。相変わらずの暴力描写から、お得意の無駄話(今作は少なめ)。また、モリコーネからビリー・プレストン、デビッド・ボウイまで、相変わらずのミックステープ的選曲の素晴らしさ。この夏のザ・シネマでは、そんな彼の作品、『レザボアドッグス』も『パルプ・フィクション』も『フォー・ルームス』も『ジャッキー・ブラウン』もあわせて放送!題して“タランティーノ祭”! (C) 2009 UNIVERSAL STUDIOS
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PROGRAM/放送作品
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
[PG12]クエンティン・タランティーノが古き良きハリウッドに愛を捧げる!郷愁を誘う長編グラフィティ
1969年に起きたシャロン・テート殺害事件を背景に、クエンティン・タランティーノ監督が60年代ハリウッドを独自の視点でノスタルジックに活写。アカデミー助演男優賞(ブラッド・ピット)と美術賞を受賞。
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COLUMN/コラム2012.08.02
【タランティーノ的L.A.案内】第3回:若き日のタランティーノ
■サウスベイとサウスセントラル QTが育ったサウスベイは、ロサンゼルス空港の南に位置し、幾つかのビーチタウンや、高級住宅地のパロス・バーデスなども含む、中間所得者層以上の多い地域。一方、東に隣接するサウスセントラルは、低所得者層が多く、治安の悪い地域として知られます。幼い頃から、映画の影響か、アウトロー指向が強く、危ない地域に対する憧れが強かったというQT。自宅の或るサウスベイから、近隣のサウスセントラルにもよく足をのばしていたそうで、3年程通ったサウスベイの私立校を毛嫌いし、治安の悪い地域にある公立校への転校をせがんだという話もあるほど。サウスベイとサウスセントラル、全く違う二つの地区ですが、QTを語る上では、地理以上に密接な関係にあるのです。 そんな二つの地域に散らばったロケ地(跡)を幾つか続けてご紹介。 まずは、「パルプ・フィクション」の冒頭と最後に登場し、パンプキンとハニー・バニーが強盗を企てたHawthorne Grill。前回ご紹介したグーギースタイルのレストランでしたが、残念ながら、その面影はありません。 こちらは、「ジャッキー・ブラウン」で、主人公行きつけの地元のバーという設定で登場したCockatoo Inn。実はここ、マフィアのアンドリュー・ロココが1946年にオープンし、全盛期にはジョン・F・ケネディを始め、セレブや各界の著名人が宿泊する社交場として名を馳せる一方で、裏社会との結びつきも強かったとか。それでも一世を風靡したこの場所に、地元の人も愛着があるのでしょう、綺麗な全国チェーンのホテルに生まれ変わった今でも、色あせた看板とオウムだけは残されています。 さて、同じく「ジャッキー・ブラウン」で、マックス・チェリーの店として使われた保釈保証業者の店も、真新しいビルへと変貌。 が、ここで終わらないのがQTマニア!よーく見てください。本編10分51秒あたりで後ろに見えるビル、これは今もあるカーソン市庁舎なのです。画面右、木に遮られつつも”City Hall”の文字が小さく見えますよね? かつては世界一大きかったモール、デル・アモ・ファッション・センター。「ジャッキー・ブラウン」で、フードコートやデパートの試着室など、お金の受け渡 しの舞台となったところです。ところでこの映画の時代設定、いつなんでしょう。製作された1997年には既に世界一の座から陥落していた訳ですが、わざわざキャプションまでつけて紹介しちゃう気合いの入れっぷり。少年時代にここの映画館に通ったQTのちょっとしたプライドでしょうか。 ■本日のランチ 本企画恒例?のランチ、今回は「ジャッキー・ブラウン」から。車のトランクへ隠れるのを渋るクリス・タッカーに、サミュエル・L・ジャクソンがご褒美としてちらつかせるのがRoscoe’s House of Chicken and Wafflesです。台詞のみでの登場ですが、ここは見逃せないQTポイント!弾丸トークのクリス・タッカーをも黙らせてしまうRoscoe’sは、その名の通り、チキンとワッフルを一緒に出す南部スタイルのレストラン、というより食堂。ロス内に数店舗を構え、オバマ大統領がサプライズで遊説の途中に立ち寄ったり、スヌープ・ドッグも贔屓にしたり、たくさんのファンがいます。 ハリウッドにもあるのですが、ここはQT映画にふさわしいサウスセントラル店をチョイス。駐車場でFワードを連呼しているお姉さんの横をすり抜け店内へ。ガードマンがいるという事実に安心感を覚えるべきなのか、逆に不安を覚えるべきなのか・・・。 前置きはこの辺にして、目玉のフライドチキンとワッフルのセットを早速注文。オデール(サミュエル・L・ジャクソン)的にはグレイビーソースも欠かせないらしいですが、カロリー激高メニューにこれ以上のカロリーはちょっと・・・ということで、今回は無し。 ほどなく料理が登場。どーん。何てシンプル。熱々のチキンは衣がカリカリ、味が中までしみ込み、バターをたっぷり塗込んでシロップをかけたワッフルと、意外にも絶妙なマッチ。どちらも主役なのですが、敢えて言うなら、お汁粉に塩昆布がついてくるような感覚でしょうか。 これまた名物のオレンジジュース、レモネード、フルーツパンチが三層になった欲張りなドリンクは、チキンとバターにまみれた胃袋を少しだけ爽やかにしてくれます。 ■QTの原点 さて、一年分くらいの鶏肉を食した後は、いよいよ若きQTの足跡を探しに。サウスベイのこの辺りは、トーランスを中心に日系人がとても多い地域。自動車企業を始め、多くの日本企業がアメリカ本社を構え、日系のスーパーから病院、学校まで、アメリカにいながら日本のような生活も可能なのです。QTが時代劇ファンになったのも、もしかすると、育った環境が少なからず影響していたのかもしれません。 ※こちらが母校のFleming中学校。 ※そしてNarbonne高校。 この辺りはさらっと。何せ学校嫌いのQTですから。 やがて、ある夏QTは、地元劇団のトーランス・シアター・カンパニーに加入し、なんとカップルスワッピングがテーマの劇で、いきなり主役を獲得。 ※トーランスのアダルト劇場Pussycat Theater跡地 しばらくこの劇団で活動を続けた後、15歳でついに高校をドロップアウト。今はなきトーランスのアダルト劇場Pussycat Theaterで案内係の仕事を始めるのです。 そして時は流れ、QT22歳の時、人生の転機が訪れます。 本企画の締めは、やっぱりここしかありません。レンタルビデオ店Video Archives、の跡地です。QTといえばビデオ屋、ビデオ屋といえばQT。ここで並外れた映画知識を活かして働いた5年間、ロジャー・エイヴァリーなど、情熱を共有できるオタク仲間と出会ったことで、青年QTの創作意欲に火がつきます。そこから苦節10年、ついにレザボア・ドッグスでデビューを果たしたQTのその後の活躍は皆さんもご存知の通り。 現在は跡形もなくなったVideo Archivesですが、世界一有名なビデオ店の跡地を訪れるファンは今でも多いはず。新作「ジャンゴ 繋がれざる者」の公開を控えるQTの映画道は、まだまだ続きます。きっとこれからも、一映画ファンとして、私たちを楽しませる映画を作り続けてくれることでしょう。■
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PROGRAM/放送作品
レザボア・ドッグス
クエンティン・タランティーノ監督の鬼才伝説はここから始まった!衝撃クライム・アクション
本筋と関係なく延々と続く会話、生々しい暴力、絶妙に選ばれた楽曲…。監督第1作にしてクエンティン・タランティーノが持ち味を確立。黒ずくめのチンピラが3すくみで銃を構えあう場面など、映像もスタイリッシュ。
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COLUMN/コラム2012.07.25
【タランティーノ的L.A.案内】第2回:トイレとグーギーと二番館
さて、クイズです。 こちらの交差点、どのタランティーノ(QT) 映画で登場したかお分かりですか?これで分かった貴方はかなりのQTマニア! 思い浮かべてください、らしくないピンクの箱を持ったマーセルスを。 もうお分かりですね。「パルプ・フィクション」で、無事に自宅から父の形見の時計を回収したブッチ(ブルース・ウィリス)が、運悪くマーセルス(ヴィング・レイムス)に遭遇してしまう交差点です。 ■パサデナ 交差点のすったもんだから、遡ること十数時間。ブッチは、ボクシングの八百長試合で約束を破ったことからマーセルスに追われる身となります。その試合の会場となったのが、こちらのレイモンド・シアター。現在は、オリジナルの外観や一部の内装を維持する形で、マンションへと生まれ変わっています。レイモンド・シアターがあるパサデナは、こうした重厚な建物が似合うLA郊外の街。閑静な高級住宅地として知られ、古い街並や文化的なスポットの多い所としても有名です。 ■ダウンタウンLA さて、そんなパサデナとはガラリと雰囲気の違うダウンタウンLAへ。「ジャッキー・ブラウン」で、サミュエル・L・ジャクソンとロバート・デ・ニーロが待ち合わせに利用したのが、こちらのストリップバー。 到着してみたものの、何やら不穏な空気を感じ、車内からの撮影のみで退散。それもそのはず、気づけばここは、ダウンタウンのスキッド・ロウと呼ばれる地区から僅か1ブロックほど。リトル・トーキョーにも隣接するスキッド・ロウは、治安の悪いダウンタウンLAの中でも、極めて犯罪率の高いスラム街。ドラッグ売買にギャング、売春、まさに映画さながらの光景が現実に起こりうる一画なのです。 そんな危険度MAXなスキッド・ロウのど真ん中を通り抜け、辿り着いたのがダウンタウンのすぐ西にある、パークプラザホテル。1925年に建てられた由緒あるビルは現在、結婚式などのイベント会場や、撮影のロケーションとして利用されています。担当の方の話では、最近は「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」、「ドライブ」、近日公開予定の「Gangster Squad(原題)」などで使用、ほぼ毎週のように映画やテレビ、CM、ミュージックビデオなどの撮影が入っているそうです。今では衰退してしまったこの一帯に、似つかわしくないほどの荘厳さを湛える建物。目指すは・・・・ そう、男子トイレです!「レザボア・ドッグス」で、Mr.オレンジが警官と遭遇したという芝居の再現シーンで使われたトイレは、外装に負けないほどの風格を映画当時そのままに留めていました。 ■今日のランチ ダウンタウンから一旦ザ・シネマオフィス近辺まで戻り、本日のランチ。今回は、QTが時々執筆のため訪れるというサンセット通り沿いのタイレストランへ。日が落ちると色とりどりのネオンが輝くToi on Sunsetの店内は、西洋・東洋ごった煮のヒッピー風味で、昼間でもインパクト十分。「パルプ・フィクション」特等席でユマ・サーマンに見つめられながら食事をしつつ、セス・ローゲン似の店員とお話。QTは時々来店するそうで、店内には「レザボア・ドッグス」と「パルプ・フィクション」の直筆サイン入りポスターも。場所柄、QT以外にも沢山の映画関係者や音楽関係者が来店するらしく、最近では、アメリカで封切りされたばかりの「Savages(原題)」を監督したオリバー・ストーンや、新ジェイソン・ボーンのジェレミー・レナーが訪れたそう。 そんな話で盛り上がる中、丁度テイクアウトで来店した女性をセスが紹介してくれました。なんと彼女は、QT製作総指揮の「ヘルライド」に端役で出演し、三部作が予定される同作第2弾にも出演するとのこと!何と嬉しいハプニング。今は同じ通りのアパレルショップのマネージャーも兼業するという彼女。そんな役者の卵にいろんな場所で出会えるのもロサンゼルスならではなのです。 ■グーギー建築とQT 1950年代〜1960年代、ここロスを中心にグーギー建築というスタイルが流行しました。その名も、サンセット通りにかつてあったGoogiesというカフェから来ています。車社会ならではともいえるグーギー建築は、大きな屋根や窓、派手なネオンなど、道路からも目に付きやすい形が特徴。ロスを訪れた人なら大抵目にする、ロス空港真ん中のUFOのような建物もグーギー建築です。 そんな古き良き時代のロスを象徴するグーギーをQTが放っておくはずがありません。当時すでに衰退していたグーギー建築を見事に再現したのが、「パルプ・フィクション」でした。同作のプロダクションデザイナーのDavid Wascoと、セットデコレーターのSandy Reynolds-Wascoによれば、ユマ・サーマンとジョン・トラボルタがダンスを披露したダイナー、ジャック・ラビット・スリムは、Googiesを設計したジョン・ロートナーらのデザインをモデルにしたそう。また、現代のビバリーヒルズで不思議な存在感を放つこのガソリンスタンドも、ジャック・ラビット・スリムに影響を与えた一つです。 そして、もう一つロスのグーギー建築と言えば、こちらのジョニーズ・コーヒー・ショップ。「ブギー・ナイツ」や「アメリカン・ヒストリーX」など沢山の映画のロケ地として知られます。もちろんQTの映画にも登場。「レザボア・ドッグス」で、Mr.オレンジが同僚の刑事と待ち合わせをするレストランが、このコーヒーショップでした。お店は残念ながら2000年に閉店し、今は荒れ果てた様子なのが寂しいところです。 ■QTが捧げる映画愛 ジョニーズから少し東に行ったところに、QTに縁の深い二番館、ニュー・ビバリー・シネマがあります。まるで映画の中から出て来たような佇まいの同館は、「イングロリアス・バスターズ」で映写技師を演じるメラニー・ロランが、役作りのために映写の練習を行い、最終試験として「レザボア・ドッグス」を映写したという逸話も残る、QTファンにはたまらない映画館。 実はこの映画館、リバイバル作品の二本立てスタイルを長年守り続けていましたが、時代の波には逆らえず、一時は廃業の危機に。そこに馳せ参じたのが、二番館やサブカル映画で育ち、今は超リッチになった我らがQT。「レザボア・ドッグス」の深夜上映にキャストを連れて参加して以来、同館のオーナーと親交があったQTは、2007年、 ここを土地ごと買い取ったのです。QTが破産しない限りは安泰となった同館は、これまで通りの2本立てや深夜上映を行い、時にはQT所有のフィルムプリントを上映するなど、映画好きのための場所であり続けています。映画館を買い取り、自分の35ミリプリントを上映する──まさに映画オタクにとって究極の夢を、QTはここで実現したのではないでしょうか。 さて次回は、さらに南に下り、いよいよQTの原点となった場所を巡ります。▼参考資料ニュー・ビバリー・シネマ:Vanity Fairブロググーギー建築:「パルプ・フィクション」DVD特典映像(David Wasco、Sandy Reynolds-Wascoインタビュー)
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PROGRAM/放送作品
ヘイトフル・エイト
[R15+指定版]逃げ場なき山小屋で生き残るのは誰?Q・タランティーノ監督が過激に描く密室ウエスタン
猛吹雪で山奥に閉じ込められた男女8人が織りなす対立と衝撃のミステリーを、クエンティン・タランティーノ監督が容赦のないバイオレンスと巧みな伏線で構築。エンニオ・モリコーネがアカデミー作曲賞を受賞。
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COLUMN/コラム2012.07.20
【タランティーノ的L.A.案内】第1回:始まりはレザボア・ドッグス
ザ・シネマの米国オフィスがある、ここロサンゼルスは、言わずと知れた映画のまち。通りを行けば撮影に出くわし、カフェに入れば隣の席で映画関係者がミーティング中、といったことも珍しくありません。中でも、ロサンゼルスなくして語れないのが、映画オタク兼映画監督のクエンティン・タランティーノ(QT)。生まれこそテキサスですが、自他とも認めるロスっ子のQTは、 この町でオタク道まっしぐらの青少年時代を過ごしました。そんな彼の映画では、ロサンゼルスも大事な登場人物の一人。ビジュアルだけでなく、会話のそこかしこにローカルネタが散りばめられています。「レザボア・ドッグス」では、ラデラハイツの話でドッグス達が盛り上がったり、「ジャッキー・ブラウン」では、サミュエル・L・ジャクソンが、一般的に治安が悪いとされるコンプトンのジョークを飛ばしたりと、 ロスに住んでいなければ分からない話題だと自覚しながらも、敢えて入れたかったと語るQTに、この町へのこだわりと思い入れを感じます。本特集では、そんなロサンゼルスの至る所に残されたQTの足跡を辿ってみたいと思います。第1回目は、QTの名前を一躍世に知らしめることとなった「レザボア・ドッグス」のロケ地を中心に、ダウンタウンLAよりも北にある地域を巡ります。 ■ ザ・シネマのオフィスから車で30分ほどの所に、 「レザボア・ドッグス」で、チンピラ達の即席チームが押し入った宝石店があります。この店の扉を開いた瞬間から、彼らの喜劇、いえ悲劇は始まるのです。実際に店を襲うところは映されませんが、回想シーンでハーヴェイ・カイテルとティム・ロスが下見しているのが、Karina’s Wholesale Diamondです。実際はカツラ関連の会社と思われるこの建物は、ほとんどのロケ地が20年の間に変貌する中、当時と全く変わっていないように見えます。 次のロケ地に向かう前に立ち寄ったのは、Karina’s Wholesale Diamondから車で10分ほど、ワーナー・ブラザーズ・スタジオやウォルト・ディズニー・スタジオからは目と鼻の先にある、こちらの通り。「レザボア・ドッグス」誕生の10年程前にQTが通っていたアクティング・スクールがあった場所です。近所の店の人の話では、特に90年代は制作会社やスタジオ関係のオフィスが軒を連ねていたとのこと。元々俳優志望だったQTが、コミュニティシアターでしばらく演技を続けた後、本格的に演技の勉強を始めたのが、ジェームズ・ベスト・シアター・カンパニーでした。70・80年代の人気TVドラマ「爆発!デューク」などに出演していたジェームズ・ベストの大ファンだったQTは、ここで演技を学ぶうちに、カメラワークなど映画制作の基本を身につけていったのです。 ジェームズ・ベスト・シアター・カンパニーを後にして向かうのは、「レザボア・ドッグス」のロケ地が集まるイーグル・ロックです。ここは、ダウンタウンLAの北東に位置し、人口の4割近くが外国生まれ、メキシコ系や、特にフィリピン系を始めとするアジア系が多い、移民の町です。 ■ さて、何はともあれ、まずは腹ごしらえということで、Pat & Lorraine’s Coffee Shopへ。登場人物が繰り広げる取り留めのない会話は、QTの十八番とも言えるスタイルですが、「レザボア・ドッグス」の冒頭でも、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」について話に花が咲きます。その舞台となったのが、丁度この席なのです。 内装は映画と殆ど変わらず、夫婦が営む昔ながらの食堂といった趣。その日は丁度、5、6人のロケハンチームが脚本片手に来店していましたが、レトロで少しひなびた雰囲気がいい味を出しているのでしょう。 アメリカでは、朝食やお昼に具沢山のオムレツを食べるのは一般的ですが、レストランお勧めのJohnny Omeletteを頼むと、予想通りボリューム満点。野菜たっぷりオムレツにチーズをのせ、メキシコ風にアボカドとビーンズ、またはポテトがついてきます。さらに自家製のビスケットまでセット。あまりの量に、残りをドギーバッグ*に入れ、店頭のレジへ。映画では、ローレンス・ティアニー演じるジョーが席を立って支払いを済ませるシーンがありますが、実際のレストランでも、アメリカには珍しく、テーブルではなくレジでの支払いなのです。(*ドギーバッグ:レストランの食べ残しを持ち帰るための容器で、飼い犬用という口実から着いた名前。持ち帰りが前提かと思われるほどの量が出されるアメリカのレストランでは、必ず置いてあります。) お店の人の話では、映画の公開から20以上年経った今でも、ロケ地となったレストランを一目見ようと訪れる人は多く、中には海外、特に最近はイギリスからの観光客が多いそうです。QT、そして「レザボア・ドッグス」のカルト的人気の高さが伺えますね。ちなみに、ドッグス達が颯爽と歩く有名なタイトルシーンに登場するレンガ塀も、レストランの目と鼻の先ですが、今は別の壁に塗り替えられ、残念ながら当時の面影はありません。 空腹が満たされた後は、「レザボア・ドッグス」のメイン舞台となった場所へ。物語の大半を占める倉庫は既にコピー・サービス店に姿を変えていますが、トランクから拷問用のガソリンを取り出すMr. ブロンド(マイケル・マドセン)の背後に見える景色は余り変わっていないように感じます。 こちらは、Mr. ピンク(スティーブ・ブシェーミ)が逃走中に車に引かれる交差点。ちなみに、追いかける警察官の一人は、中々イケメンのプロデューサー、ローレンス・ベンダーです。バックグラウンドにあったガソリンスタンドは更地になり、残された価格表示の看板だけが当時を偲ばせます。 また、QT演じるMr. ブラウンが車をぶつけてしまう路地裏や、その後Mr. オレンジが銃で撃たれる線路沿いもこの辺り。路地裏は余り変わっていませんが、線路は舗装されすっかり綺麗になっていました。ちなみに、この路地の一本隣の通りでは、何らかの撮影の真っ最中でした。映画撮影に遭遇したければ、スタジオにも遠くないこの辺りをぶらつくのも手かもしれません。さて、「レザボア・ドッグス」を中心に駆け足で回った第1回「始まりはレザボア・ドッグス」。QTファンの貴方も、イーグル・ロック・ツアー(ランチ付きコース)なんていかがですか? ▼参考資料NPRインタビュー:Quentin Tarantino: 'Inglourious' Child Of CinemaBernard, Jami. Quentin Tarantino: The Man and His Movies. HarperPerennial, 1995Peary, Gerald, Ed. Quentin Tarantino Interviews. University Press of Mississippi, 1998