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PROGRAM/放送作品
L.A.コンフィデンシャル
[PG12相当]相容れないクセ者刑事をオスカー俳優が熱演。殺人事件の裏に潜む驚愕の秘密とは
1950年代ロス市警を舞台に、K・スペイシー、R・クロウ、ガイ・ピアースがタイプの異なる刑事役で演技合戦。謎の高級娼婦役キム・ベイシンガーがアカデミー助演女優賞に輝く。
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COLUMN/コラム2014.08.06
『ダウンタウン物語』『バーディ』〜普通とは「違った世界」を見せてくれる監督、アラン・パーカーによる、二つの映画
『小さな恋のメロディ』(71年)の原作・脚本者であるアラン・パーカーは、そんな大好きな監督だ。彼の作品にはいつも普通とは「違った世界」を見せられる思いがした。『ミッドナイト・エクスプレス』(78年)、『フェーム』(80年)、『バーディ』(84年)、『ミシシッピ・バーニング』(88年)、『ザ・コミットメンツ』(91年)とぼくの中で永遠不滅の大傑作が5本もある。思えば、彼の作品を一生かけて追いかけてきた。 このたびザシネマで、『ダウンタウン物語』と『バーディ』が放映されるという。それぞれの見どころを指摘しておこう。 『ダウンタウン物語』(76年)は、禁酒法時代のニューヨークのダウンタウンを舞台に2つのギャング団の抗争を描いたミュージカル映画だ。日本映画の大傑作『用心棒』(61年)のような話なのだ。ところが、出演しているのは全員13歳以下の子どもで、20世紀初頭のファッションに身を包んだ彼らがパイ投げマシンガンを乱射しギャングを演じている。公開当時14歳(撮影時13歳だった)のジョディ・フォスターが妖艶な歌姫を演じていて、話題になった。『アリスの恋』(74年)や『タクシードライバー』(76年)で子役として有名になったフォスターは、当時映画雑誌の花形だった。どこかの雑誌のインタビュ―記事で、愛読書を訊かれた彼女の答えは「ジャン=ポール・サルトルの『自由への道』」だった。1歳年上の筆者はあわてて、『水いらず』など、サルトルの実存主義小説の著作を読み出したのはいうまでもない。 ミュージカル映画的な側面もあるが、ミュージカル仕立てのナンバーはちと弱いと思う。『アニー』の「トゥモロー」のように、胸に迫らないのは事実である。とはいえ、銃撃戦もカーチェイスも、観客を飽きさせない凝った演出がなされており、学芸会的な芝居になりそうな内容を、ひたすらエンターテイメント性を持たせているのは好材料だ。 最後はみんなでパイ投げをする。これが両陣営入り乱れてのパイ投げ合戦で、ひたすら楽しい。大人を演じていた子どもたちは見る見るパイだらけになり、いつしか本来の子どもの笑顔に戻り、「仲良くなろう!」とストーリー的に大団円を迎える。これは、スタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情』(63年)のラスト、完成版からカットされたアメリカ合衆国国防総省の作戦室で行うパイ投げ(キューブリック監督の写真集にこの模様は取り上げられている)と非常に似ているのだ。キューブリック監督は、スニークプレビュー(覆面試写会)の観客の反応と、「これは喜劇(コメディ)ではなく、笑劇(ファース)だ」という理由でカットしたというが、背後にはジョン・F・ケネディ暗殺事件(63年11月22日)の影響もあるのだはないか。キューブリック監督はロンドン郊外のパインウッド撮影所を本拠地にしているが、『博士の異常な愛情』のラストのパイ投げの噂が、ロンドンで活躍するパーカー監督の耳に届いたとも十分に考えられるのだ。 『バーディ』(84年)は、カンヌ国際映画祭の審査員特別賞受賞作である、心に響く友情物語だ。公開当時大学を出たての筆者は、とある雑誌で御巣鷹山の日航機墜落事件を追っていて、完全に精神的な鬱病になり、主人公バーディ(マシュー・モディーン)とアル(ニコラス・ケイジ)のどちらにも共感して観ることができた。もちろん、傷をなめてくれるような、こういう友達がほしかったのである。 簡単に書くと、ウィリアム・ワートンの原作をもとに、ベトナム戦争のショックで精神科病院に入れられて、頑なに自らの幻想に心を閉ざしている青年バーディと、彼を立ち直らせようとする、同じくベトナム負傷兵の青年アルの心の交流を、鳥になることを夢見るバーディの幻想を交えて描いたヒューマンドラマである。 ピーター・ゲイブリエルによる音楽も素晴らしい。過去のアルバムに収録された既成曲が中心だが、的確に選び出された楽曲は全てのシーンで見事にフィットし、映像と一体になって観る者の心に迫ってくる。終盤、現実を逃避して鳥になったバーディが、自由に空を羽ばたく視点のショットはまさに圧巻。これは、最近では『海を飛ぶ夢』(04年)でも使われた演出手法だが、より必然性がある『バーディ』の方が遥かに印象的で胸に迫ってくる。 映画の基本イメージは、精神科病院の一室で、バーディに向かって話しかけるアルである。しかし、バーディの心にはアルの言葉は届かない。裸で部屋の隅に隠れ、ただ窓から空を見上げるだけ。苛立つアル。そうした出口の見えない現代のシーンの合間に、物語は一気に2人の過去へのフィードバックする。2人の出会いからベトナムへ向かうまでが丹念に描かれ、同時にベトナムで精神的に傷つくシーンまで丁寧に描かれる。このあいだのリッチー・バレンスの「ラ・バンバ」が彩るフィラデルフィアでの青春を謳歌する2人がすこぶる楽しい。巨乳の女の子に興味を持ち、そのおっぱいを触ることが目的なのだ、 鳥が大好きで、鳥とともに暮らし、自らも空を飛ぼうとし、鳥になることを夢想していたバーディは、本当に何を思っているのか。バーディの心を開かせることができないアルも、次第に追いつめられていく。 バーディとアルの叫びをとことん感じてほしい。ベトナムで傷ついた2人のやりきれない思いと閉塞感で観ている我々は心を痛めることになるが、自由に生きたいと願うバーディに共感し、バーディを正気に戻したいと願うアルにも共感できるはずだ。そして、人から必要とされる喜びも感じることができるだろう。ここまで誰かが誰かを想うことの尊さを素直に自分の中にとりいれて感動できる作品もめずらしいのだ。 だが、途中でバーディーがしでかす奇天烈な行動もクスッと笑えるので、暗いばかりの映画ではない。戦争という悲惨な現実と精神を病むという重いテーマを取り入れた作品なのに、観た後に爽やかな気持ちになれる、救いのある映画である。 2時間のドラマはもちろんスゴいが、それに輪をかけて深い余韻を残すラストシーンがすばらしい。バーディとアルの性格づけが違うのもいい。アルは「彼は俺の一部なんだ」というセリフにジーンとくれば、「何だ?」といい返すバーディ。それから畳みかけるような、全体的に重苦しい雰囲気を一掃するラストには唸った。もはや「やられた!」としかいいようのないラストなのだ。 まったく最後までお騒がせな鳥男(バ—ディ)である。■ © 1984 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア
悲劇のヴァンパイアがロックスターに!古典的な吸血鬼のイメージを覆すヴァンパイア・ホラー
94年のヒット作『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の続編。前作同様、不死身ゆえの孤独な運命を背負うヴァンパイアの悲劇性を切り口にしながらも、ロック音楽を絡めて描くスタイリッシュホラー。
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COLUMN/コラム2014.03.30
2014年4月のシネマ・ソムリエ
■4月5日『ダウンタウン物語』 登場するすべてのキャラクターを、平均12歳の子役たちが演じたミュージカル風のギャング・コメディ。名匠A・パーカーの軽妙な語り口が光る劇場デビュー作である。 禁酒法時代のニューヨークの雰囲気を本格的なセットで再現。才人、ポール・ウィリアムズ作曲による歌とダンス、パイ弾を放つマシンガンなどの小道具も楽しい! キャストで圧倒的な存在感を放ったのは撮影時13歳のJ・フォスター。にぎやかな抗争劇のさなか、主人公バグジー・マローンが出入りする酒場の歌姫を妖艶に演じた。 ■4月12日『バンテッドQ』 鬼才テリー・ギリアムのイマジネーションが炸裂するファンタジー。孤独な11歳の英国人少年が自宅の寝室に突如現れた6人の小人に導かれ、時空を超えた冒険に旅立つ。 ナポレオン、海坊主、悪魔らのキャラクターが次々と登場し、奇想天外な逸話が脈絡なく展開。その理屈を超越した馬力とスラップスティックなギャグに引き込まれる。 英国流のブラックな味わいの作風は、ハリウッド製ファンタジーとは異質の面白さ!アガメムノン王ともうひと役を演じるS・コネリーの出演シーンもお見逃しなく。 ■4月19日『サン★ロレンツォの夜』 ドイツ軍占領下のトスカーナ地方を舞台にした戦争ドラマ。イタリアのタヴィアーニ兄弟が幼少期の体験を基に撮った、カンヌ国際映画祭・審査員特別賞受賞作である。 物語の背景となるのは、1944年にサン・ミニアートの大聖堂で起こった虐殺事件の史実。ドイツ軍が街を爆破して撤退を図るなか、危険を感じた市民の脱出劇が展開する。 幼い純真な少女の視点をとり入れた映像世界には、素朴なユーモアや魅惑的な詩情が漂う。戦時下の痛切な悲劇を寓話へと結実させ、胸に染み入る感動を呼ぶ一作だ。 ■4月26日『バーティ』 鳥をこよなく愛し、空を飛ぶことに憧れる風変わりな青年バーディとその親友アル。共にベトナム戦争で心身に傷を負って帰還した若者たちの友情を描く感動作である。 1970?80年代に量産された“ベトナム後遺症”ものの1本だが、青春映画としてのみずみずしさは絶品。デビュー間もない主演俳優2人のナイーブな演技も好感度高し! 多彩なジャンルの傑作を放ったA・パーカー監督が鮮烈なイメージを創出。裸のバーディを“籠の中の鳥”に重ねた場面や、鳥の眼差しを表現した空撮シーンが印象深い。 『ダウンタウン物語』© National Film Trustee Co Ltd 1976 『バンデットQ』© Handmade Film Partnership 1981 『サン★ロレンツォの夜』©1983 RAIUNO/Ager Cinematografica Srl. Licensed by SACIS-Rome-Itary.All Right Reserves 『バーディ』© 1984 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
セント・エルモス・ファイアー
[PG12相当]大学を卒業し社会へ踏み出した男女7人の青春模様を若手スター競演で描く傑作群像ドラマ
1980年代を席巻した若手俳優集団“ブラット・パック”のスターたちが豪華競演。大学を卒業して間もない親友7人組が直面する様々な挫折や愛を、デヴィッド・フォスターによるテーマ曲をBGMにほろ苦く綴る。
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COLUMN/コラム2008.06.12
6月の吹き替えの日は
まえにここのブログで「昭和の洋画吹き替えを無形文化財に指定せよ」という記事を書いてから、視聴者の皆様よりたくさんのご意見・ご要望をいただいてます。ありがとうございます! 「よくぞやってくれた!っていうか、いっそ吹き替え専門チャンネルになって」という激励(?)もあれば、「吹き替えなんて邪道だから字幕版だけでよい!」というご意見もあります。 結論として、ザ・シネマとしては、吹き替え専門にはなりません。けど、吹き替え特集に力は入れ続けます。 吹き替え版しかやらない、という作品が原則ないよう心がけてますので(ごくごくまれな例外中の例外はご勘弁ください)、吹き替え否定派のかたは、字幕版の放送のほうでお楽しみください。 また吹き替え肯定派のかたは、今後も特集「吹き替えの日」にご注目ください。その筋のひと的に価値ある吹き替え版を、これからも厳選してお届けします。 っていうか、その筋のエッジなひとたちのあいだで高まった吹き替え再評価の気運って、いま、広く一般ピープルのあいだにも「むかしは映画って夜9時からテレビの洋画劇場で見てたよなー、あの頃の吹き替えって懐かしいよなー」的な昭和ノスタルジアとして波及してるんですよね。 字幕のオリジナリティも良い。吹き替えの妙も捨てがたい。要はケース・バイ・ケースなのでは?という柔軟な立ち位置にザ・シネマはいますが、この気運がますます盛り上がればよいと願っており、吹き替え再評価ブームの一翼を担えれば、と思ってます。 そこで早速、またしても「6月20日は吹き替えの日」という24時間特集を組みます! 今度のラインナップは、 『レッドブル』…シュワ=玄田哲章 『ロックアップ』…スタも玄田哲章 『レッドソニア』…シュワ=今度は屋良有作 『インナースペース』…(後述) 『ユニバーサル・ソルジャー』…ヴァンダミング=山ちゃん、ドルフ・ラングレン=大塚明夫 『テキーラ・サンライズ』…(後述) というアクション系6タイトルです。 とくにご注目いただきたいのが、『レッドソニア』。これについては以前書いたとおり。 さらに追加で書くと、この映画は『コナン・ザ・グレート』の番外編だとまえに触れましたけど、正伝『コナン・ザ・グレート』でヒロインの女剣士バレリアをアテてた戸田恵子が、異伝『レッドソニア』ではヒロインの女剣士ソニアを担当してます。なるほど、『コナン』シリーズでの戸田恵子は、正義のヒロイン女剣士担当声優ってワケなんですね。 ちなみに、正伝『コナン・ザ・グレート』のヒロイン女剣士役サンダール・バーグマンは、異伝『レッドソニア』では悪の女王役です。ヒロインやった女優が今度は悪役で起用された。こういうキャスティングの遊びって、番外編ならではのお楽しみですよね。ただ、逆に言うと、戸田恵子はサンダール・バーグマンFIXの声優扱いをされなかった、ってことです。 個人的には、そうであって欲しかった!そうすれば正伝と異伝がきれいに日本語の声でもつながったのに、というらちもないマニア願望をいだかずにはいられない僕です…(すでにシュワ声優が玄田哲章と屋良有作で違っちゃってますから、その時点でつながらないのですが…)。 次に注目は『インナースペース』。DVDは、なんと『クライマーズ・ハイ』の原田眞人監督が吹き替え演出を担当、デニス・クエイド=上杉祥三、マーティン・ショート=野田秀樹、メグ・ライアン=斉藤慶子という、ある意味サプライズ人事ですが、まぁ、これに関しては各自、DVDでお楽しみください。 今回ザ・シネマで放送しますのは、見ようと思っても見れないレアなテレビ版です! こっちのバージョンですと、デニクエ=谷口節、マーティン・ショート=堀内賢雄、メグ・ライアン=佐々木優子と、手堅い人事になってて安心です。 さらに!きわめつけは『テキーラ・サンライズ』。あさ10時からはメル・ギブ=神谷明版、よる10時からは野沢那智版にて放送!(我ながらこんなマニアックな企画よくやるわ…) この映画でのメル・ギブソンは、ヤクのディーラーという「二枚目なヤバいひと」の役なんですが、メルギブの二枚目感は神谷明に、ヤバいひと感は野沢那智に、僕ならそれぞれ軍配を上げたい。ぜひ、聴き比べてみてください。 さらにさらに、『レッドブル』のジェームズ・ベルーシ=富山敬、『ロックアップ』のドナルド・サザーランド=家弓家正といった脇も、見逃せない(聴き逃せない?)配役です。 というわけで、全国の吹き替えファンの皆々様、6月20日も、ザ・シネマ吹き替えの日、ご堪能ください! コアな吹き替えマニアではない一般ピープルの皆様も、この日は、一昔前のテレビ洋画劇場、荻昌弘が、水野晴郎が、高島忠夫が、そして淀長翁が(むろん木村奈保子もですが)、夜ごとシネマの世界へと誘ってくれた、あの時代の夜の、あの雰囲気に囲まれて、幸福なノスタルジーに浸りきってみてはいかがでしょう? それにしても、いゃー、昔のテレビ洋画劇場って、本っ当にいいもんですね! 【特報!】そして盛夏8月、すごい品ぞろえで「吹き替えの日」を実施予定!詳細後日!! 乞う御期待!!!■
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PROGRAM/放送作品
テキーラ・サンライズ
Mギブソン、M・ファイファー、K・ラッセルの豪華出演者で、麻薬仲買人と刑事の友情を描いたアクション映画
メル・ギブソン、ミシェル・ファイファー、カート・ラッセルという豪華出演者で、麻薬仲買人と刑事の男同士の友情と、ひとりの女性を巡る三角関係を描いたアクション映画
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COLUMN/コラム2018.10.16
男たちのシネマ愛『スモール・タウン・イン・テキサス』
映画ライターなかざわひでゆき×ザ・シネマ飯森盛良の対談シリーズ「男たちのシネマ愛」が今、初の音声ファイルとなって帰ってきた!今回熱く語るのは、名物特集「激レア映画、買い付けてきました」として調達してきた2018年11月の3作品の2本目、ニューシネマ風味の効いた香ばしい70'sアクション、本邦初公開『スモール・タウン・イン・テキサス』!にしても何この展開!!?? 見れるのはザ・シネマのみ!!!
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PROGRAM/放送作品
コール
命を繋ぐのは30分ごとの電話…。周到な誘拐犯と被害者家族の攻防を描いたサスペンス・スリラー
グレッグ・アイルズの全米ベストセラー小説『24時間』を自らの脚本で映画化。監督は『メッセージ・イン・ア・ボトル』のルイス・マンドーキ。シャーリーズ・セロン、天才子役ダコタ・ファニングなど豪華出演陣が揃う
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COLUMN/コラム2018.12.10
『スモール・タウン・イン・テキサス』でセリフでのみ言及される「ブラック・アイド・ピーズ」&「コーン・ブレッド」のレシピ。そしてヒーハー!あこがれのレッドネック。
写真/studio louise このところ放送しておりますウルトラ激レア映画『スモール・タウン・イン・テキサス』、お楽しみいただけてますでしょうか? 多くの方にとって、まったく聞いたこともない謎の映画ですよね?なので「よく分かんないや」と見逃してません?ナメたらいかんぜよ!これはウチでの放送が本邦初公開となっているはずの、1976年の映画で、ソフトにも何にもなったことがなく(のはず)、この機会を逃すと次に機会がめぐってくるかどうか不明なため、とりあえずは見ておくべきかと。 あらすじを作品情報からコピペします。 地元高校フットボールの元スター選手ポークは、ムショを出所した足で酔っ払いから拳銃を借り、ボロ車を蜂の巣にして喜ぶ。自分を逮捕した保安官に出会えば「お礼参りを覚悟しとけ!」と脅す。その保安官、ポークの子の母親である若いシングルマザーに横恋慕しており、女を盗られたと酒場で聞いたポークは逆上して彼女の家に向かう。後日、保安官は議員立候補者の警護を任命されるが、選挙運動の会場にポークが姿を現し絡み始め…。 というお話でして、ウチでは「ニューシネマ風味の効いた典型的70’sアクション」とも謳っております。 それと、これについて映画ライターのなかざわひでゆきさんと1時間ばかり熱く語り倒した「男たちのシネマ愛」というトーク音声番組もYouTubeの方に上げております。通勤・通学、運転のお供として、お時間ある時に是非!(俺は町山さんのTBSラジオのやつとかは毎週末クッキングパパしてる最中に聴いてる) 舞台はテキサスのド田舎で、あまり法治が確立されてないような、“フロンティアの正義”が1976年になってもまだ罷り通っているような保守的お土地柄。ここでムショ帰りのポークvs保安官の“漢の対決”が繰り広げられます。2人が奪い合うのが、ポークの元カノで保安官の今カノであるスーザン・ジョージなのです!この作品、彼女の出演作ということで中身もよく知らずに買ったのですが、フタを開けてみるとあまり出番は無く、彼女にしては露出度も低めで、そこは期待外れだったんですが、 ①漢の対決モノとして普通に手に汗握る佳作だった②ニューシネマ風味も美味だった(内容的には単純明快アクションなんですがね)③70'sファッションもオールドスクールアメカジ系で超カッコ良かった そして ④スタントがヤバかった!ひと死にが出なかったのが奇跡なレベル!! という、予期せぬ見所のいっぱい詰まった、結構な拾い物でした。 それと、出てくる奴出てくる奴がどいつもこいつも、いわゆる「レッドネック」という愛すべき田舎者の皆さんでして、それもまた大いに魅力的なのです。田舎の低所得白人労働者階級のことで、白人で肉体労働だから首が日焼けしちゃうんで「レッドネック」と呼ばれている。今だと典型的なトランプさんの支持層ですな。テキサスは南部で、キリスト教保守層が多く暮らすバイブル・ベルトにも一応含まれます(テキサスが西の端に当たる。州の人口比ではカトリック系の方が多い。これはカトリックのメキシコ系移民(ってか元メキシコ領だし)が多いからで、生粋の「レッドネック」の方達は、非カトリックの、全力でガチなキリスト教保守のはず)。 最近だとトランプさんを熱狂的に支持してる人たちなのかぁ…銃も好きなのかぁ…レイプだろうがなんだろうが中絶は絶対認めないって言ってるのかぁ…ゲイは地獄に落ちるって言ってるのかぁ…、う~ん、Let’s be キングスマン!日本とはかな~り価値観が違うんじゃなかろかと想像され、日本人としては最近のレッドネックの方達のご乱行には若干引き気味でもある訳ですが、そしてアメリカ本国では“ダサい田舎者”扱いされてんだろなぁとも思うのですが…(ってかWikiにモロにそう書かれちゃってるしね。失礼だろコレ!)。 いやいやいやいや!90年代アメカジ・ブームの洗礼を受けた世代の目から見ると、レッドネックこそが見た目的には一番カッコいいアメリカ人ですから!思想信条はともかくとして。 NYとかLAとかで着飾ってるオシャレ気取りの奴らなんて「ケっ」って感じですよ。あんなもんは日本人でもやろうと思ったら簡単にできるんだ。ストリート・ファッションのぶっとんでる感なら原宿だって負けちゃいない、ってか逆に勝ってるし。 アメリカ人にしか真似できないラフ&タフなカッコ良さに憧れるんだよ、俺たちの世代は。そしてそれは何かと問われれば、レッドネック・カジュアルっしょやっぱ!略して「レッカジ」?「レネカジ」? そして、そんな南部レッドネックの皆さんの定番ご当地グルメ、っていうか元々は黒人奴隷たちの食べ物で、黒人にとっての「ソウル(魂の)フード」でもある2品というのが、この映画の中で台詞でだけ登場しますんで、今回はそのレシピをやります。 どういうシーンでその2つの話が出てくるかというと、劇中、ポークと保安官の抗争が勃発し、保安官はポークとド派手なチェイスを演じた挙句に逃げられてしまい、映画中盤で、ポークの居場所をポークのダチの自動車整備工(この人は黒人ではなくレッドネックの人)を締め上げ聞き出そうとする展開になります。 ダチ公が働くガレージに来た保安官。そこには美麗な赤の1939年型シボレー・マスターDXが停めてある。そこでおそらく彼が時間かけコツコツとフルレストアしオールペンした、その時点で40年ほど昔の戦前のクラシック・カーであります。そのほとんど文化財級の車のボンネットとヘッドライトを、角材でベっコンベコンのバリんバリんに叩き壊してダチ公をビビり上がらせる保安官。「ポークの共犯者としてお前もパクってブタ箱送りにしたろか!?」と脅します。 しかし直後、急に笑顔になり猫なで声で「俺が何をするか教えよう。前のヘッドライトとへこんだ部分を直して、お前を家に送る。お前はママと食事を楽しむ。豆とコーンブレッドのな。(ここで声のトーンを落とし凄んで)で、ポークの居場所は?」と、ひとり“グッド・コップ/バッド・コップ”尋問を始めるのです。 この翻訳、字幕ですから字数の関係で端折られてます。以下ちょっと余談。字幕は1秒4文字とだいたい決まっていて、その字数制限を大幅にフライングすると客が読みきる前に次の字幕に移っちゃうという最悪の事態(もはや放送事故)になります。だから字幕翻訳のテクニックは要約のテクニックも問われ、要約するにはボキャブラが豊富じゃないと言葉の選択肢が少ないと無理なので、英語力だけでなく逆に日本語の国語力・語彙力も高い偏差値で求められる、という、高度プロフェッショナルなお仕事が字幕翻訳なのです。ここらへんの話は、“字幕の女王”こと最高権威・戸田奈津子先生によるこの講義が大変わかりやすい(ってことで、そんな大人の事情も知らずに女王をディスる無知蒙昧なローカルの星人みたいな輩を見つけたら、「バカこくな」「誤訳じゃないかもだ」「おっちねプッシー野郎」などと、やんわり意味不明に諭してやるとともに、直訳気味で長すぎる下手クソな字幕を見つけ時には「♪やややケッタイな 誰を呼ぼう ナッチを!」と、女神召喚の歌をみんなで歌おうではありませんか!「ナッチを!」のところで是非ご唱和を)。 閑話休題。先ほどの“グッド・コップ/バッド・コップ”台詞ですが、字数制限なしで訳すと、 「で、ウチに帰らせてやっからよ、おめえはママと一緒によ、デっケぇ鉢いっぱいのブラック・アイド・ピーズだとか、温けえコーン・ブレッドの二、三切れでも食ってろよ、な?…で(キリッ)ポークはどこなんだ?」 ってな感じになります。ブラック・アイド・ピーズ山盛りのデっカいボウルを豊満な母ちゃんがキッチンから捧げ持って来てダイニングテーブルに置きに来るという、ポポラマーマ的お袋さん像、あるいはレッドネック版ハウスシチュー的ほっこり世界観を描写しながら、「白状すれば家に帰らせてやる。何事も無かったようにポポラマーマと一緒にハウスシチュー感にひたれるぞ」と脅す、きわめて高等な心理戦術、テキサス版カツ丼尋問法ですな、これは。 ではブラック・アイド・ピーズとはなんぞや?さらにはコーン・ブレッドとはなんぞや?ですが、まずブラック・アイド・ピーズってのは豆の煮込み料理です。ブラック・アイド・ピーは日本語で「ささげ」または直訳で「黒目豆」と訳され、文字通りセンターに黒目があって可愛い、アズキぐらいのサイズの豆です。この煮込み料理、味はいたって素朴。タバスコなどの各種ソースをテーブルに取り揃えておいて、後から各自でお好みの味付けをする、家族全員が同じ味付けで食べるのではない、というのが個人主義・自由主義の米国リバタリアン流“食卓の情景”だと言われているので、我が家でもそうしてます。カブれてますから自分。 一方のコーン・ブレッドとはなんぞや?というと、実はブレッドでもなんでもありません。コーン粉(超アメリカ大陸らしい食材!)と小麦粉をベイキングソーダで膨らませただけの“なんちゃってパン”的なものです。コーン粉の挽き加減にもよりますが、キツネ色のトップ面はジャリっと砂を噛む食感(を大幅に気持ちよくしたもの。砂糖を噛む感とでも言おうか)があり、中はしっとりスポンジケーキ状。で基本、甘い!ブレッドと呼ぶには甘すぎる、というしろものです。ま、位置付けとしてはパン代わりではありますけどな。 どちらとも、黒人奴隷の食文化にルーツを持つソウルフード(黒人のソウルフルな食べ物)で、我らがレッドネック達もよく食べてる、という、あまり豪華なディナーって感じはしない、むしろちょっと貧乏なイメージの食べ物なんですが、美味いんですわ、こういうのこそが!ってかミシュラン何個星とかヌーベルキュイジーヌとかまるっきし興味ないんでね。そういうのはLAとかNYのオシャレ気取りの連中に任せて、レッドネックに憧れるアメカジ世代は、この下流フーズこそを食すべし! それでは、いってみましょうか。 【ブラック・アイド・ピーズの材料(2人分)】 ・ブラック・アイド・ピー×1カップ※日本では滅多に売ってません。ワタクシは我が心のふるさとアメ横に月一で軍モノ×食材をアメ横買い出し紀行に行く際、切らしてたら「豆のダイマス」にて買い求めてます。ネット通販もあり。 ・玉ねぎ×・吊るしベーコン×半本・チキンコンソメの素・ベイリーフ×1枚・ケイジャン・シーズニングMIX×大さじ1・ガーリック・パウダー×小さじ1 ※以下はお好みで ・タバスコ(チポートレイ) 【ブラック・アイド・ピーズの作り方】 ① 節分の豆を歳の数だけポリポリと食う時に「あんま得意な味じゃないかなぁ…ちょっとエグいかも」と感じる人(俺だ!)は、豆を前夜のうちに水煮にすることをお奨めします。これでエグい節分風味は消えます。水煮缶があればもっといいのだけれど…。豆のエグみが苦手な人には豆類は水煮缶の方が断然お奨めです。 ② 鍋に水煮した豆を入れ、それがヒタヒタになるぐらい水で浸したら、そこにタマネギみじん切り、ベイリーフ、チキンコンソメの素、ケイジャン・シーズニングMIX、ガーリック・パウダーを全部ブチ込んでただ中火で煮込むだけ。汁気がほぼほぼ無くなるまで。1時間ってとこか? ③ 伊藤ハムとか日本ハムの「吊るしベーコン」という50cmぐらいある商品を使いたい。が、この日、近所のスーパーで売ってなかった!仕方なく急遽そこらのブロックベーコンに燻製をかけて急場をしのぐ。有れば是非「吊るしベーコン」で。燻香と厚みある食感が不可欠だから。よくある普通の紙みたいなぺらっぺらのスライスベーコンはNG。で、この写真ぐらいに切って弱火で脂を引き出します(呼び水としてちょっとサラダ油かけること。じゃないとフライパンに焦げ付いちゃう)。 ④ 脂が出て、小一時間たって鍋の方の汁気もだいぶ無くなってきたら、脂ごとベーコンを鍋に投入し、混ぜて、塩(材料外)で味を整え、完成!食べる際はお好みでタバスコを。ベーコンの燻香にマッチするタバスコ・チポートレイ(燻製タバスコ)が相性よろし。 【続いて、コーン・ブレッドの材料(4人分)】 ・コーンミール×1カップ※コーンミールは、どことは言いませんがオシャレ輸入食材屋とかで買うと小さなパックに入ったものでも結構します。が、アメ横とかの中華食材屋だと、おんなじ物でもっと大きいやつが驚くほど安く袋売りしてたりする!これは横浜中華街にある「中國超級市場」というお店でヨコハマ買い出し紀行中に買ったもの。 ・強力粉×1カップ・ベーキング・パウダー×小さじ2・砂糖×大さじ4(ヤベ写真撮り忘れた!)・塩×小さじ1(ヤベ写真撮り忘れた!) 以上が粉類。 ・玉子×1(ヤベ写真撮り忘れた!)・サラダ油×大さじ1(ヤベ写真撮り忘れた!)・牛乳×1カップ※写真なくてもわかりますよね?普通の砂糖と塩と玉子とサラダ油ですよ。家にあるでしょ? 【コーン・ブレッドの作り方】 ① 全粉類をふるいに入れてボウルにふるい入れる。 ② 真ん中に玉子を割り入れる。 ③ 牛乳入れる。サラダ油大さじ1も入れる。 ④ 混ぜる。 ⑤ 焼き型にサラダ油(分量外)をまんべんなく塗る。 ⑥ 生地を流し込み、200℃に余熱したオーブンで20分以上焼く。焼き上がったと思ったらナイフ等をブッ刺し、中心部の生地が生焼けじゃなければOK。ってことで超簡単!ほとんどホットケーキ級にちょろいぜ!なお保安官が脅迫の中で「温けえコーン・ブレッド」と言っていた通り、焼きたてのうちにお召し上がりを。冷めると台無しです。 【実食】 うん、ブラック・アイド・ピーズ、地味に旨えな!たいそう素朴な味わいでして、わりと似た系統の、前回やったチリコンカンというテックス・メックス料理(あれもテキサスの食いもんだったな)みたく派手な、子供好きのする、ミートソースみたいな分っかりやすい味ではありません。豆×塩ですから超素朴。ワタクシのレシピは南部といってもおそらくテキサスより右側の州(ディープ・サウス地方)に住んでいそうな黒人オバチャンのレシピを参考にしているため、ケイジャン・シーズニングMIXも材料に入ってますので、多少は味が付いてますが、それでも素朴。真のテキサン(テキサスっ子)ならケイジャン風(ルイジアナ風)にはしないはずなので、ケイジャン・シーズニングMIXは入れず味付けは本当に塩だけで、もっと極限までシンプルなはず。さすがに味気なさそうなのでワタクシはケイジャン味にしてますが。あとのもう一味はお好みのタバスコでプラス、ってことですな。タバスコってのは本来こういう使い方をするために開発された南部の調味料ですからね。素朴な南部料理に一味パンチを効かせるためのもので、ピザとかスパゲティにかけるのは日本の独自解釈らしいです。 あとコーン・ブレッドね。これは逆に、味が派手やな~!ってか甘いよ!ってことでウチの子供たちは全員好きなんですが、大人的にはビックリするぐらい甘い。もう、ほとんどケーキの域。ケーキならいいけど“ブレッド”と詐称してオカズと一緒に主食で食うにしちゃ、これ、甘すぎだろ!? これはいかがなものかと、一度ためしに分量の半分しか砂糖を使わなかったことがあるのですが、そうすると妙に不味くなっちゃうのだから不思議なものです。まぁ、南部の人は紅茶に砂糖を尋常じゃない量入れて「美味い美味い」と喜んでガブ飲みするそうなので、やっぱり、日本とはかな~り価値観違うのでは!?とも重ねて感じる次第なのですが、そこが異国情緒を感じさせる良いところでもあるんですな。LAやNYとはやっぱ違う。そういやコカ・コーラも南部の飲み物で、あれって確かに南部料理とは相性抜群なんですけど、聞くところによると1缶に角砂糖にして10個分ぐらい入ってるんでしょ?相当な甘いもの好きですな、南部の皆さんは。 そろそろ〆ましょうか。南部の黒人や南米各国の人たちの間では、黒目豆は正月の縁起物となっており、米南部でも正月にブラック・アイド・ピーズを喰う習慣があるそうですから、今の時期、特にトライしたいレシピ、食べるべき料理なのです。おせちや雑煮をやめて、あえてブラック・アイド・ピーズで初春を迎えるという、骨の髄までカブれきった年越しなど、いかがでしょうか。■ © 1976 ORION PICTURES CORPORATION.. 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