ザ・シネマでは2011年の『ブレードランナー』磯部勉版以来2度目となる、吹き替え版の新録制作に挑む。
今度は『プロメテウス』の佐古真弓版。先行する20世紀フォックス公式の剛力彩芽版および芸能人吹き替えの歴史をリスペクトしつつ、
洋画専門放送としてFIXキャストでの新録に臨む!
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佐古真弓
エリザベス・ショウ博士(ノオミ・ラパス)役文学座時代より劇団内外の舞台に多数出演。声優としても吹き替え、アニメと幅広く活動。吹き替えでは、スカーレット・ヨハンソン、フェリシティ・ジョーンズ、レイチェル・マクアダムス、ジル・フリントなどを務める。
『チャイルド44 森に消えた子供たち』
『パッション』
『ミレニアム』オリジナル版三部作 -
宮本充
デヴィッド (マイケル・ファスベンダー)役劇団昴所属の俳優・声優。吹き替えではイーサン・ホーク、エイドリアン・ブロディでお馴染み。キアヌ・リーブス、ブラッド・ピットも数多く担当。『プロメテウス』の続編『エイリアン:コヴェナント』でもマイケル・ファスベンダーを担当。
20世紀フォックス公式版『プロメテウス』
『エイリアン:コヴェナント』 -
本田貴子
メレディス・ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)役シャーリーズ・セロンをはじめ、ハル・ベリー、ヒラリー・スワンク、ミラ・ジョヴォヴィッチの代表作を数多く担当。
『あの日、欲望の大地で』
『スタンドアップ』
『ハンコック』
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
- 竹田雅則
- ヤネック(イドリス・エルバ)役
- 佐々木薫
- ピーター・ウェイランド(ガイ・ピアース)役
- 大滝寛
- チャーリー・ホロウェイ(ローガン・マーシャル=グリーン)役
- 落合弘治
- ファイフィールド(ショーン・ハリス)役
- 丸山壮史
- ミルバーン(レイフ・スポール)役
- 長谷川敦央
- チャンス(エミュ・エリオット)役
- 髙階俊嗣
- ラヴェル(ベネディクト・ウォン)役
- 庄司まり
- フォード(ケイト・ディッキー)役
- 咲野俊介
- ショウの父親(パトリック・ウィルソン)役
- 他、中村章吾、羽野だい豆、井木順二、青木崇、竹内夕己美、森永麻衣子、虎島貴明、平修、一ノ瀬香織
翻訳 石原千麻
演出 伊達康将
制作 東北新社
- [初回放送]
- 2017年12月3日(日)18:45
- [再放送]
- 2018年1月6日(土)10:00、21:00
2018年1月21日(日)23:15
2018年1月28日(日)深夜2:00
- [最終放送]
- 2018年1月29日(月)13:00
※現時点で、以降の再放送ならびにソフトに収録される予定はございません。
CS放送チャンネルがあえて新録吹き替え版の制作にチャレンジする理由
文/ザ・シネマ 飯森盛良(吹き替え担当)
ザ・シネマは、開局直後より日本語吹き替え版を一貫して尊重してきた。特に、かつてTV洋画劇場にて流れた懐かしの吹き替え音源には、愛惜とリスペクトの念を深く抱き、折に触れてその想いを表明してもきた。
TV洋画劇場のうち、高島忠夫の解説でお馴染みだったフジテレビ「ゴールデン洋画劇場」は、芸能人吹き替えを呼び物にしていた。
これは余談かつ筆者の主観だが、各局の洋画劇場番組のうち、良い意味でもっとも“軟派”で“チャラい”イメージがあったのが「ゴールデン洋画劇場」だったように思う。当時飛ぶ鳥落とす勢いだったフジテレビの掲げた“軽チャー路線”とも通じる、80年代ならではの、あの浮き立つような軽佻浮薄感!
筆者も「オレたちひょうきん族」からの流れで毎週楽しみに視聴したものだ。「ひょうきん族」のEPOのエンディングテーマから「ゴールデン洋画劇場」の和田誠画伯によるアニメーションのオープニングテーマへ。1週間のうち至福の瞬間だ!その多幸感・浮遊感の効用は、翌晩「日曜洋画劇場」のあの陰鬱きわまりないエンディングテーマが流れる瞬間まで持続した。
中にさしはさまれるCMにも、私の時代であれば「真っ赤な草の葉マークの看板」アイレディース化粧品や、「ゼロゼロワンダフル」KDDなど、バブル期のリッチ感が横溢していた。当ザ・シネマは映画の途中にCMを打たないポリシーだが、筆者個人にとっては、それらCMたちも込みで、幸福な少年時代の良き思い出として今も脳裏に焼き付いているのである。高島忠夫の本編終わり解説の後の「『スクリーン』最新号をプレゼント」の告知まで、今となっては何もかもみな懐かしく、かつ愛おしい。
余談が長くなりすぎた。その「ゴールデン洋画劇場」の、芸能人吹き替えの輝かしい歴史たるや!どれほど凄いかは、Wikiでお確かめ願いたい。その頃のアイドル!お笑い芸人!バラエティタレント!大御所!圧巻としか言い様のない錚々たる名前が、1スクロールに収まりきらないほどズラリ列挙されている!
この12月、当ザ・シネマでは、「ゴールデン洋画劇場」の野村義男×高見知佳版『超能力学園Z』を、「厳選!吹き替えシネマ」枠でお届けすることにもなっている。この映画のような悪意のないお色気が普通にお茶の間にかかっていた長閑な文化状況や(「グローイング・アップ」シリーズや「ザ・カンニング」シリーズ等も)、主要サブキャラクターをアテている声優・古川登志夫が醸す“諸星あたる感”など、80’sのあの頃の空気が真空パックされているような、上物の音源だ。
ヨッちゃんと高見知佳お二人のアテレコの上手さにも驚かされる、この『(吹)超能力学園Z』だが、「ゴールデン洋画劇場」の長い歴史の中では、迷吹き替えや珍吹き替えも確かに存在した。しかしそれさえもが、筆者にとっては、幸福な少年時代の思い出の不可欠な1ピースとなっているのである。
さて、筆者が2007年に立ち上げ、今も担当している企画「厳選!吹き替えシネマ」と、それ以外も含むそもそもの当チャンネルの吹き替え版との向き合い方は、ゆえに、芸能人吹き替えもまた日本語吹き替えの楽しみの一つである!という立場に立脚している。
そもそも「吹き替えなんて邪道だ!洋画は字幕で見るのが正しい!!」という一部の洋画ファンからの根強い声も一定数はある中で、「いや、字幕にはない魅力がある吹き替え版だって存在するのだ」と訴え続けてきた当チャンネルである。吹き替えの中でさらに仕分けをするような態度は取らない。
「ゴールデン洋画劇場」が芸能人吹き替えを好んで制作していた理由は、筆者には知る由もない。普通に考えて話題作りと視聴率のためか?それとも、あのフジ黄金期“軽チャー路線”にもとづく「いいじゃんいいじゃん、タレント使ったら派手でいいじゃん!」といったような社風のなせるわざなのか?答えはわからないが、どちらも実に健全で、素晴らしい理由ではないか!バブル期を回顧する者として、心からそう思う。
昨今では、劇場公開時に配給元が制作する公式版にもしばしば芸能人が起用されるが、その理由であれば、業界にいる以上なんとなく小耳に入ってはくる。それは「広告換算」というマーケティング的な発想にもとづく。もしくは、もとづく場合が多い、のだが、そのことについては筆者が連載している「ふきカエル 大作戦!!」に寄稿したので、あわせてご笑覧いただければ幸いである。これにしても、作品をヒットさせよう、よりメディアに多く露出し一人でも多くの観客を呼び込もう、という、実に健全な願いにもとづいていることは疑うべくもない。
『プロメテウス』は2012年夏の劇場公開時、配給元によって、ヒロインのエリザベス・ショウ博士(ノオミ・ラパス扮演)に、人気女優の剛力彩芽を起用した公式吹き替え版が制作されている。ソフトにもこの音源は収録され、去る9月、当チャンネルにて総力特集と銘打ち「エイリアン」シリーズ全作を放送した際にも、視聴者の皆様にお届けしたばかりだ。おかげさまで高視聴率を叩き出している。
ただし、声優の仕事も数多くされている劇団系の俳優さんや、完全に声のお仕事専門でやられている声優さん、まして「あるハリウッドスターの声といえばこの声優さん!」とほぼ固定の方がいるような場合には、「その人のバージョンも見てみたい、聞いてみたい」とも思わないでもない。いや、かなり強く思ってしまう!
かつてであれば、地上波民放各局が競うようにTV洋画劇場用の吹き替え版を制作していた。ある映画が2〜3タイプ吹き替えられることも珍しくなかった。しかし、そのような幸福な文化環境は、すでに失われて久しい。であれば、民放ほどの予算はないものの、そこの穴を埋めるのは我ら専門放送チャンネルであるべきだろう。
これが、今回、新録吹き替えを我々が制作する理由である。
今回だけでなく、同じ理由で、今後もこうした試みを、第3回、第4回と、続けていきたく考えている。気長にお待ちいただければ幸いだ。