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エイリアンシリーズ完全解説

2017年9月、新作『エイリアン:コヴェナント』公開にあわせてザ・シネマではシリーズ過去全作を総力特集。同時に徹底解説を試みる。

AVP

エイリアン・ユニバースの限界なき拡大か、神をも恐れぬイロモノ企画かーー!?
20世紀フォックスが誇る2大モンスターキャラが、戦う必然性を超えて挑む史上最強のデスマッチ。
だが決して侮るな。画面からほとばしるクリエイターたちのエイリアン愛と熱量は、正史を超えてやろうとする気概と熱意に満ちているのだ!!
(文/尾崎一男)

『エイリアン vs プレデター』

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完全生物VS全身武装の殺し屋、最凶のドリームマッチ

1979年の登場以来、スクリーンの闇を支配してきた恐怖の完全生物と、狩猟本能だけを持つ全身武装の殺し屋―。エイリアンと並び、20世紀フォックスを代表するモンスター、プレデターとの対決を描いたドリームマッチ作品。現在、マーベルのアベンジャーズやDCのジャスティス・リーグなどに代表される「クロスオーバー」の先駆けといっていい。対戦相手のプレデターは、プラズマ砲や鋭いカギ爪など全身が武器で固められ、狩猟時には透明になって獲物に襲いかかる。どう猛だが、自分たちと互角に戦った者には戦士の槍を与える気高き狩猟異星人で、単体の映画作品には『プレデター』(87)『プレデター2』(90)そしてリブート版の『プレデターズ』(10)がある。

巨大企業のドン、ウェイランド(ランス・ヘンリクセン)の依頼により、南極の巨大遺跡へと冒険家のレックス(サナ・レイサン)ら調査チームが足を踏み入れる。だが、そこはプレデターによる成人の儀式の場であり、その獲物であるエイリアンとの壮絶なバトルに、彼女たちは巻き込まれていく……。

エイリアンとプレデターの戦いは1989年、米ダークホース・コミックス社がキャラクター権を取得し、早い段階からマンガとしてシリーズ化されている。コミック版のストーリーは「プレデターが成人の儀礼の狩りのためにエイリアンを増殖させている」という設定に基づいたものになっているが、本作もそれを受け継ぐ形となっているのだ。

とはいえ、この両者がそれぞれ世界観の枠を超え、宇宙頂上決戦を果たすのは、あまりにもハイリスクだ。人気キャラクターだけに、勝敗の決定には慎重にならざるをえず、またどちらのシリーズも有名監督が手がけてきただけに、映画としてのクオリティ保持も重くのしかかる。

監督ポール・W.S.アンダーソンの徹底したこだわり

こうした不安要素を作品に対するまっすぐな姿勢で克服したのは、監督のポール・W.S.アンダーソンだ。

彼は1965年のイギリス生まれ。94年に劇場用長編映画の監督デビューを果たしたのち、95年の『モータル・コンバット』、97年の『イベント・ホライゾン』といったSF作品で注目を浴びる。そして2002年『バイオハザード』でアクション映画作家としての実力を存分に発揮したのち、本作の監督に挑んだ。ファン心理の先手を読んだ巧妙な脚本を自ら手がけ、対決モノの醍醐味を徹底して描いていく。結果『エイリアン』『プレデター』それぞれの正史として認めるには抵抗を感じるものの、東宝怪獣映画のような【20世紀フォックス・チャンピオンまつり】と解釈すれば、じつにカタルシスのあるVSモンスター映画に仕上がっているのを実感できるだろう。なによりプレデターのように、エイリアンに恐怖せず敢然と立ちはだかる生物は今までに存在しなかったし、逆にそのプレデターがエイリアンに秒殺されたりもする。そんな光景を目の当たりにした瞬間、観客は全身の血がブクブクと湧き立つような興奮を覚えるに違いない。

筆者は本作のプロモーションで来日したアンダーソン監督にインタビューする機会に恵まれたが、彼は20世紀フォックスで映画化の話があるのを知り、自分で脚本を書いて売り込みに行ったという。その後、カンヌ映画祭の開催中にフォックスから“君に決まった”という電話を受け、正式なオファーにこぎつけたとのこと。そのため製作にとりかかっていた『バイオハザード2』(04)の監督を他の者(アレクサンダー・ウィット)に任せ、本作の監督に全力で取り組んでいる。

またアンダーソン監督は、『プレデター』は『1』を支持し、『エイリアン』も圧倒的にリドリー・スコットの『1』が優れていると見解を述べ、こういったお祭り企画こそ「リアリティ」に固執するべきだと主張。ほとんどの特殊効果をスーツやミニチュアで表現した『エイリアン』や『エイリアン2』に敬意を示し、エイリアンとプレデターをCGではなくスーツで動かし、リアルなファイトを演出している。さらに自身の『バイオハザード』と同じように、閉鎖空間や迷路といった場所での闘いを本編に組み込むことで、ただ広い場所で戦う以上の恐怖感を細かく設計しているのである。

しかし同時に取材では「エイリアンが以前から地球にいたという設定は、連中を地球に入れまいと命がけで闘ってきたリプリーに気の毒な気がする」と訊くと「作品の時空が違うということで許して欲しい」と素直に詫び、「それよりも今回の件で、ウェイランド社がエイリアンの存在と実力を知った、そのつじつま合わせに注目して欲しい」と頭を下げてきたのだ。ポール・W.S.アンダーソン、ちょっと憎めない、素直な男である。

ともかく『エイリアンVSプレデター』は、そんなファンキーな作り手に支えられた、究極のお祭り映画なのだ。

『AVP2 エイリアンズ VS.プレデター』

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エイリアン史上初の市街地戦

『エイリアンVSプレデター』の好評を受けて製作された続編。前作のラストでプレデターに寄生して生まれたチェストバスターが成長し、コントロール不能になった宇宙船がコロラドの森へ不時着。鹿狩りに来ていた父子を始めとし、地下道に住むホームレスたちが次々と宿主にされていく。そうしてネズミ算式に増えていくエイリアンを駆除するために、プレデターの母星から“掃除屋”と呼ばれる最強のプレデターが送り込まれ、証拠隠滅のためにエイリアンも人間も抹殺していく。

当然ながら丸腰の人間はエイリアンとプレデターのやられ要員でしかなく、民間人がやたら残酷に死んでいく。軍もエイリアンの前には無力で、前作では人間と共闘したプレデターも、今回は掃除に邪魔な者を容赦なく殺しまくる。

監督のストラウス兄弟は、兄のグレッグが1975年・米イリノイ州生まれ。弟のコリンとともに2002年にVFXプロダクション[ハイドラックス]を立ち上げ、『ターミネーター3』(03)を始めとする数多くの作品にたずさわってきた。そして兄弟名義で『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』(以下『AVP2』)で監督デビューを果たし、侵略SF映画『スカイライン』(10)が監督二作目となる。本編の演出は基本的に全て2人でやり、例えばカメラのオペレーションやCG合成は兄、ライティング等に関しては弟という具合に、VFXではその役割を分けるという。

そんな兄のグレッグに、筆者は『スカイライン 征服』(10)での来日時にインタビューをし、併せて『AVP2』のことも幾つか質問している。そのときに彼が本作のポイントとして、初めてエイリアンが人間の住む市街地で暴れるところだと挙げてくれた。いわく、

「エイリアンが出てくる場所は宇宙船内や未来など特殊なところが多いので、そのケタ外れのパワーや大きさを実感しにくい。でも、自分たちが住んでいるような場所なら、我々は建物の材質や大きさを知っているから、エイリアンの能力の具合が分かるだろ?」

監督はエイリアンを身近な恐怖として感じてもらいたく、とりわけ人間が被害をこうむる場面などを残酷に描写したとも語っている(プレデターの場合、地球市街地での戦いは『プレデター2』で実現しているので、特にこだわりはなかったらしい)。

ただあまりリアルに徹すると後味が悪くなるので、エイリアンとプレデターの混合種“プレデリアン”のデザインを、容姿はエイリアンだが、ドレッドヘアで筋肉質なところはプレデターというふうに、ド派手でケレン味あふれるデザインにしていたという。そして掃除屋プレデターとの一騎打ちシーン(2ラウンドほどある)では見栄を切りまくっていたりと、コミックらしいニュアンスを含ませ、作品トーンのバランスをとったと語ってくれた。

「籠城もの」の伝統を継受

また本作は、ジョン・カーペンター監督の初期代表作として知られる『要塞警察』(76)や、故ジョージ・A・ロメロ監督によるモダンゾンビ映画の嚆矢『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(69)に代表される“籠城もの”のフォーマットに則ったストーリーが展開されている。このシチュエーションは監督としても特に愛着があったようで、『スカイライン』のときは脚本を担当したジョシュア・コーデスが、これまたジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』(78)とフランク・ダラボンの『ミスト』(07)を参考にし、ストラウス兄弟のこだわりを『AVP2』の後にまで徹底させている。

ちなみに意見の食い違いから、兄弟でエイリアンとプレデターばりに大きな喧嘩をすることはなかったのかと訊くと「2人ともゴールが同じところにあるのを分かっているし、最後にケンカしたのは90年代が最後じゃないかな」と笑っていたのが印象的だった。ホントかよ?

尾崎一男(おざき・かずお)
映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」、Webメディアに「ザ・シネマ」「映画.com」などがある。併せて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。

■参考文献・資料(発行順)
季刊シネフェックス3『エイリアン』バンダイ(1984)
H・R・ギーガー/田中克己 訳『ギーガーズ・エイリアン』トレヴィル(1986)
ロードショー11月号第一付録『エイリアン2大全集』集英社(1986)
DON SHAY“cinefex 27 ALIENS”(1986)
ザ・テレビジョン臨時増刊『エイリアン2』角川書店(1986)
CINEFEX 1『エイリアン3』トイズプレス(1993)
アンドリュー・マードック&レイチェル・エイバリー/石川順子・訳『メイキング・オブ・エイリアン4』ソニーマガジンズ(1998)
CINEFX18『エイリアン4』トイズプレス(1998)
アレック・ギリス&トム・ウッドラフ・Jr./村上清幸 訳『エイリアンvs.プレデターメイキングブック ーADIのクリーチャー・エフェクトー』エフエックス(2004)
レベッカ・キーガン/吉田俊太郎 訳『ジェームズ・キャメロン 世界の終わりから未来を見つめる男』フィルムアート社(2010)
イアン・ネイサン/富永和子 他 訳『エイリアン・コンプリートブック』竹書房(2011)
ポール・スキャンロン&マイケル・グロス/池谷律代 訳『ブック・オブ・エイリアン』小学館集英社プロダクション(2012)
マーク・サリスバリー『プロメテウス アート・オブ・フィルム』ヴィレッジブックス(2012)
シネフェックス日本版NUMBER26『プロメテウス』ボーンデジタル(2012)
H.R.Giger“ALIEN DIARIE 7|8”PATRICK FREY(2013)
マーク・ソールズバーリー『エイリアン|アーカイブ』ボーンデジタル(2014)
SIMON WARD“ALIENS THE SET PHOTOGRAPHY”TITAN BOOKS(1016)

■映像資料(リリース順)
スペシャルコレクションLD『エイリアン』パイオニアLDC(1995)
スペシャルコレクションLD『エイリアン2 完全版』パイオニアLDC(1992)
Blu-ray『エイリアン・アンソロジー』20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン(2010)
Blu-ray『エイリアンVS.プレデター』20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン(2012)
Blu-ray『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン(2012)
Blu-ray『プロメテウス 4枚組コレクターズ・エディション』20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン(2012)
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